社会は「想像」という行為によって支えられている。
世界的に注目されている演劇カンパニー・チェルフィッチュ。
本作『想像』は、オーディションを経てチェルフィッシュの舞台『三月の5日間』キャストに選ばれた俳優のうち1人に焦点を当て、その俳優の2年間を追っていきます。
2021年5月28日(金)より、アップリンク吉祥寺、5月29日(土)より横浜シネマ・ジャック&ベティほかロードショーとなる映画『想像』についてお伝えいたします。
映画『想像』について
チェルフィッチュの舞台『三月の5日間』の出演者として、オーディションを経て選ばれた7人の俳優のうち1人に焦点を当てた本作。
道路で事故が起きないためにはどうすれば良いか?どんな料理を作ればお客が喜ぶか?障害を持った人が健常者と同じように通勤するためには何が必要か?
生活空間は、そのような多層的な想像、その実践の集積の上に成り立っていると言っても過言ではありません。
チェルフィッチュを率いる演出家・岡田利規もまた、「想像」という営みを重要視しています。
演劇作品における「想像」とは、多様なアウトプットの形を想定すること。
俳優の演技、美術や音楽、照明や客席づくり……。岡田の演劇のクリエーションがユニークなのは、「想像」という営みを俳優にも徹底して求めることです。
彼の演劇作品において、俳優は演出家の指示通りに動く着せ替え人形のような存在ではありません。
現場では演劇作品のクリエーションにおいて、演出家が想像を働かせるのと同様に、俳優も徹底して「想像」を行っていきます。
そしてその結果、生み出された動きや、それに伴う発話が、観客のイマジネーションを膨らませるんです。
岡田はこのように語っています。「演劇が社会に対してできるだけ大きな効果を持って欲しい」
チェルフィッチュとは?
チェルフィッチュは、岡田利規が全作品の脚本と演出を務める演劇カンパニーとして1997年に設立。
独特な言葉と身体の関係性を用いた手法が評価され、現代を代表する演劇カンパニーとして国内外で高い注目を集めます。
その日常的所作を誇張しているようなしていないような、だらだらとしてノイジーな身体性は時にダンス的とも評価されている、唯一無二のカンパニーです。
舞台『三月の5日間』とは?
2003年3月、アメリカ軍がイラク空爆を開始した日を含む5日間の若者達の日常を描いた舞台『三月の5日間』。
若者のしゃべり言葉をそのまま書き起こしたような戯曲と、そうした言葉によって引き出される無意識な体の動きを過剰に誇張した身体とのスリリングな関係性が、それまで当たり前とされてきた劇構造を根本から覆し、日本現代演劇の転機として語られるチェルフィッチュの代表作です。
2005年第49回岸田國士戯曲賞を受賞。2007年クンステン・フェスティバル・デザールにて海外初演以降、世界30都市以上で上演。
また同作の小説版を含む小説集は、第二回大江健三郎賞を受賞しました。
映画『想像』の作品情報
【日本公開】
2021年(日本映画)
【監督】
太田信吾
【キャスト】
板橋優里、チェルフィッチュ、岡田利規
映画『想像』のあらすじ
世界的に注目されてる演劇カンパニー・チェルフィッチュ。
演出家の岡田利規は俳優の「想像」という作業を重要視して代表作『三月の5日間』のリクリエーションに挑みます。
本作は、オーディションを経て選ばれた7人の俳優のうち、1人に焦点を当てました。
その俳優が本読みからパリ公演まで、2年間に渡りパフォーマンスを「想像」によって豊かにしていく過程を、ミニマルにリフレインさせる手法を用いて描く新感覚ドキュメンタリー映画です。
小道具やセットを極力、配したシンプルな空間で俳優が「想像」だけを武器に充実したパフォーマンスを繰り広げるまでのプロセス、その映画は、「他者への想像」が希薄化した現代に痛烈な批評性をもって作用することでしょう。
まとめ
鑑賞者は本作を通じて、岡田や若い俳優たちが取り組むクリエーションのプロセスから、「想像」の持つ大きな力を自らの中に再発見することになるはず。
その気付きが、誰かを、何かを、あなた自身が「想像」し、行動することに繋がることを願って、本作は今、放たれます。
映画『想像』は、2021年5月28日(金)より、アップリンク吉祥寺、5月29日(土)より横浜シネマ・ジャック&ベティほかロードショーです。