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Entry 2021/03/22
Update

映画『ステキな金縛り』ネタバレあらすじ感想と結末解説。面白い“シナモンと幽霊の関係”が光る三谷幸喜代表作の法廷コメディ

  • Writer :
  • r-h-zaitsu

落武者が法廷に登場する作品『ステキな金縛り』

映画『ザ・マジックアワー』以来、3年ぶりとなる三谷幸喜監督が脚本も兼務した、2011年公開の映画『ステキな金縛り』

三流弁護士のエミが、担当する殺人事件の弁護のため、被告人のアリバイを唯一証明できる落ち武者の幽霊・更科六兵衛を法廷に引っ張り出そうと奮闘する姿を描いています。

主演は深津絵里、西田敏行。共演に竹内結子、浅野忠信、篠原涼子、佐藤浩市ら豪華キャストが集結しました。

法廷サスペンスやファンタジーの要素も盛り込んで送り出すオリジナル長編コメディ映画『ステキな金縛り』をネタバレありでご紹介します。

映画『ステキな金縛り』の作品情報


(C)2011 フジテレビ 東宝

【公開】
2011年(日本映画)

【監督】
三谷幸喜

【キャスト】
深津絵里、西田敏行、阿部寛、竹内結子、浅野忠信、草なぎ剛、中井貴一、佐藤浩市、深田恭子、篠原涼子、唐沢寿明、生瀬勝久、KAN

【作品概要】
『ステキな金縛り』は、三谷幸喜監督による、落ちこぼれ弁護士の法廷コメディ。落武者幽霊が証人として登場するファンタジー色の強い作品です。ニューヨークのアカデミーシアターでも2011年にプレミア上映された、映画ファンにとっても話題となった作品です。

主演は深津絵里、西田敏行。共演に竹内結子、浅野忠信、篠原涼子、佐藤浩市ら豪華キャストが揃いました。

映画『ステキな金縛り』のあらすじとネタバレ


(C)2011 フジテレビ 東宝

ある日の朝。ベッドから飛び起きた弁護士の宝生エミは、バタバタ外へ繰り出します。

トラックと接触しかけて転んでしまいました。「死んだらどうすんのよ!」と運転手に言葉をなげ、走り去ります。

エミが着いた先は法廷です。その場でドジを踏んでしまい、弁護人を変えるように要請を出されたエミ。上司の蓮水から最後のチャンスとして、別の殺人事件を担当するよう命じられました。

その殺人事件の被害者は矢部鈴子といい、風子という名の姉がいます。死因は転落死。別居中の夫・矢部五郎が逮捕されたが、全面否認しています。

エミは被告人の矢部五郎に会いに行きます。矢部から、旅館に泊まっていた事件当日は、落武者が体に乗っていて動けなかったとアリバイを説明されます。検事や裁判長には「落ち武者を証人として呼んでくるしかない」と笑われてしまいました。

バスに揺られてエミは旅館(しかばね荘)へ向かいます。

旅館の主人と女将に、五郎が宿泊していた様子を聞き取ります。バスが止まってしまい、エミはその(耳鳴りの間)へ泊まることにしました。

部屋の中で1人、事件の概要や自身のピンチな状況を思い返します。そのまま横になり目を閉じると、父親の思い出が蘇ってきました。

桜が舞う中、父親と手を繋いで歩いているエミ。おぼろげな記憶にまどろんでいると、ハッと体が硬直しました。

少しの間金縛りにあい、目をひらくと、青白い顔の男が目の前に現れています。矢部の写真を見せ「2月24日の夜にまたがっていましたね?」と確認をし、法廷での証言を依頼しました。

雨の中、タクシーで帰宅することになった2人。お腹がすいた六兵衛のため、ファミリーレストランへ寄ることにしました。

大量のメニューを注文した六兵衛は、慰霊碑を建てることを条件に証人になることを承諾します。物を食べられないことが判明し、困るエミの前で、六兵衛はメロンジュースのストローに息を吹き込んでいました。

2人はオフィスへ到着します。上司である蓮水には、六兵衛が見えている様子がありません。

エミはいい作戦を思いついたようで、六兵衛と話し合うと蓮水の部屋から離れます。誰もいなくなったはずの1人の部屋で、蓮水はチョコをつまんだり練習中のダンスを踊ったりして過ごします。

この様子を見ていた六兵衛はエミを大声で呼びます。慌てて全て片付け、すました蓮水に、入室したエミが「チョコを食べましたね。」と詰め寄ります。

戸惑う蓮水に「見られていたんですよ。六兵衛さんに」と真実を告げるエミ。蓮水はもう信じるしかありませんでした。

エミは六兵衛と帰宅します。エミと同居する工藤万亀夫は六兵衛が見えないようですが、存在を否定せずに挨拶をして迎え入れます。

2人は食卓を囲んだり、夜の銀座を歩いたり、被告人と再会したりして日々を過ごします。街ですれ違った派手な出立の女性は、六兵衛が見えたらしく、悲鳴をあげています。役者をしている万亀夫の仕事場に付いていったりもしました。

裁判が始まりました。聴衆には六兵衛が見えていないのですが、エミは淡々と進めます。裁判所に持ち込まれた大きな機械の中で砂鉄が徐々に人の形をなしてゆきます。

六兵衛の姿がぼんやりと浮かび上がり、その場にいる人を驚かせました。六兵衛が証人として認めてもらえることにはなりましたが、声が聞こえないことがネックとなります。

エミが言葉を代弁することになりました。しかし、一人芝居であると検事の小佐野に一蹴されてしまいます。

エミは困りますが、蓮水の持っていたラムネを見て、はっと気づくことがありました。準備をして「あなたは六兵衛ですね?」と問いかけると、ピーと音が響きました。

六兵衛がラムネを吹いたからです。質問への反応があったことに裁判所がざわつきます。

小佐野は幽霊が証言することに対しての頑な反対意思を示します。その様子を見てエミは苛立ちますが、六兵衛はあることに気がついていました。

小佐野の「見えない証人はありえない」という力強い語りに呼応するように、六兵衛がやんや大声を張り上げはじめます。

2人の声が大きく重なっていき、余りの騒がしさに小佐野は「うるさい!!」と応戦してしまいました。小佐野には自分が見えていると証明する六兵衛の作戦だったのです。

エミは謎を解こうと、六兵衛の姿が見えた人を事務所に集めました。ファミレス定員の女性とそのファミレスにいた男性、夜の街ですれ違った女性、そして六兵衛の姿を捉えた法廷画家。エミは六兵衛が見える人の共通点を探ります。

1人で食事をしている小佐野のところへ六兵衛とエミが近寄ってきました。

「1つ、最近ついていない。2つ、最近死を身近に感じた。3つ、シナモンが好き」。

六兵衛(幽霊)が見える3つの条件を説明します。小佐野の愛犬の存在を思い起こさせているうちに、ワンワンと犬の鳴き声が聞こえてきました。

「僕の宝物です」と感動する小佐野は、ラブちゃんと思う存分戯れます。周りの人からすると、大人が歓喜しながら1人で転がり続ける奇妙な光景でした。

小佐野は、「幽霊だろうが私は容赦はしない」と言いつつも、六兵衛の登壇を認めざるをえませんでした。

数多くのカメラ、列をなす人々。日本初の幽霊裁判は注目の的となっています。

裁判所の中に、不気味な男が立っていることをエミは気づきました。白いスーツと白いハット、明らかにこちらの人ではない様子の男にエミは問います。

「六兵衛さんが見えるんですか?」男はハットをとり「公安局公安課の段田譲治。もちろん向こうの世界の」と名乗りました。

六兵衛を強制送還させるためにやってきたのです。抵抗する2人ですが、淡々とした態度の段田に連れて帰られそうです。

そこへ小佐野が立ちはだかりました。どうして助けてくれたのかという問いに、「真実を求めるという意味では見方だ」と答えました。

はじまった法廷には、「あいや、またれい」と陰陽師が登場し、仰々しく呪文を唱えています。

風子と夫が依頼していたのです。それを見て苛立った段田は陰陽師を吹き飛ばし退散させました。気を取り直して、六兵衛の人間性に焦点を当てた裁判が始まります。

歴史研究家で六兵衛の子孫である木戸健一が証人として六兵衛の無実を証明しようとしますが、小佐野は「裏切り者は信用できない」「なぜ人の上に跨り続けたのか、人間は理由もなくそのようなことはしない」と詰め寄ります。

幽霊とはそんなものだと反論する六兵衛とエミに「幽霊だって人間だ」ときっぱり言葉を返しました。

落ち込んでいるところを励ます万亀夫に、エミは「人を感動させるようなお芝居したことがあるのか」と返してしまいました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『ステキな金縛り』ネタバレ・結末の記載がございます。『ステキな金縛り』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

(C)2011 フジテレビ 東宝

万亀夫は家を出て行ってしまいます。エミと六兵衛は公園にやってきました。

「どうして死後の世界を信じなくなったか教えてあげる」とエミは話をしています。

父親との記憶と大切にしているエミには、大好きだった父親の声が聞こえることはなかったのです。六兵衛は「お父上は必ず其方を見ておる」と励ましました。

六兵衛に鈴子を頼んで連れてきてもらうように頼むエミ。被害者に証言してもらうことにしたのです。

ふっとした一瞬に、部屋の中に段田が立っていました。ついに連れて帰ってしまいそうな段田に『スミス都へ行く』の映画を見るように勧めました。

段田は感心して待ってあげることにしました。エミはその時間で、六兵衛を慰霊碑建立の予定地に連れて行きました。六兵衛は「ご武運をお祈り申す」と去ってゆきます。

家に帰り事件のことを考えているエミには、思いついたことがありました。

鈴子は死んでおらず、風子になりすましているのではないかということ。浮気をして内輪揉めをしているうちに、妹の鈴子が姉の風子を殺害してしまったのではないかということ。エミは、実際に風子に会って真相を確認することにしました。

よそよそしい様子の風子と夫にエミは確信します。後日、エミはベッドに横たわっている蓮水のそばで渾々と掴んだ真実を説明し、頼み事も伝えます。

蓮水は苦悶の表情を浮かべながら必死に頷いて聞いていましたが、とうとう息たえてしまいました。驚いてエミがベッドを離れると、目の前に蓮水が現れました。エミが頼んだ通り段田を連れてきてくれていました。

前回と同じように「素晴らしきかな人生」の上演中に死者をこちらの世界へ送ってもらえるようにエミは段田に頼みます。

その後の裁判でエミは風子に問いかけます。

「あなたは、風子さんではありませんね。あなたは妹の鈴子です。真犯人はあなたです」

裏は取れているのかと確認する小佐野にエミは「裏は今から取ります」と宣言し、アルプス一万尺の鼻歌を歌いながら、シナモンを吹きかけます。

シナモンを払った鈴子の前に、本物の風子が現れていました。段田へ頼んでこちらへ連れてきた人は、風子だったのです。

2人は殺害をめぐり姉妹喧嘩をはじめました。このやりとりを見ていた小佐野は、幽霊の風子が「自分を殺したのは彼女だ」と妹を指したことを裁判官へ伝えます。前代未聞、殺害された被害者が堂々と新犯人を宣言し、被告人の矢部は無罪となりました。

小佐野は裁判は勝ち負けではないと何度も主張しながら帰って行きました。

エミは忘れ物をしたことに気がつき引き返します。無事にバナナを見つけたエミは、裁判の終わった法廷にふと立ち寄ります。

その場には、六兵衛がエミの父親を連れてやってきているのですが、実はエミはもう見えなくなっていました。

語りかけても反応しないエミに、自分たちが見えていないことを悟り落胆しますが、父親は思い出の「アルプス一万尺」をハーモニカで奏でます。

1人ではないと気がついたエミは父の気配に寄り添います。蓮水も姿を現し、タップダンスを踊ったり小佐野と会話をしていました…。

映画『ステキな金縛り』の感想と評価


(C)2011 フジテレビ 東宝

食に、歌に、生きるということが心に残る

『ステキな金縛りは』優しい気持ちになれるチャーミングな映画です

“幽霊が見える”という非現実的なモチーフではありますが、出演者の演技が自然で温かく、テーマを主張しすぎないステキな映画に仕上がっています。

非現実的な題材を抱えた中でも、現実的な日常を醸し出す場面がいくつかありました。

死んでしまった直後、上司の蓮水はこの世に舞い戻ってきます。椅子にゆっくりと腰掛け、ため息をつきながら頭を抱え「ちくしょう…もう一度ラーメン食いたかったなぁ…」と呟きます。

日常で聞くとなんでもない言葉ですが、死んでしまってからおもむろに呟く蓮水に、言葉の重みが感じられて、今の日々を大切に生きようと勇気が出るシーンとなっています。

仕事がうまくいかず、恋人も家を出ていってしまい、落ち込んだエミは、公園へ出かけ幽霊の六兵衛に励まされます。

警察に1人で話している様子を怪しまれたエミは、とっさにお芝居の稽古をしているとごまかし、セリフを高らかに述べ、陽気に歌います。

チャーミングにキラキラと輝いていて、映画を見るひとのモヤモヤした思いも吹き飛ばすような晴れやかなシーンでした。

魅力的なキャラクターたち

この作品のキーマンとなっていたのは、三谷幸喜作品に数多く出演する中井貴一でしょう。

彼が演じる小佐野検事は、はじめは幽霊が見えていない素振りで、頑なにその存在を否定しています。しかし、作品中盤に‟見えていること”を見破られてしまい、そこからまた大きく物語が進んでいきます。

物語のキーパーソンとなる小佐野検事が非科学的なことが大嫌いな人物であること。

それを表現するために、中井貴一はコミカルな表情で手品を披露したり、1人で床に転がりながらその場に存在しない愛犬と戯れてみたりと、”ステキなキャラクター”ぶりを発揮します。

一方最近ついていなかった弁護士のエミは、事件に真摯に向き合い解決すると、幽霊が見えなくなっていきます。

エンドロールでは万亀夫と結婚したエミの幸せそうな写真が映し出されるのですが、全て六兵衛が映り込むユーモアのある心霊写真となっています。

主人公の父親が亡くなっていたり、上司があちらの世界へ行ってしまったりと「死」が描かれる作品ですが、幽霊が見えることが悲観的に描かれる場面はなく、落ちこぼれ弁護士エミ役の深津絵里のキュートな魅力が詰まった作品でした。

まとめ

(C)2011 フジテレビ 東宝

映画『ステキな金縛り』は、公開時は三谷幸喜監督自身がJRAとのコラボCMで深津絵里と共演し宣伝していました。

50歳となった記念に「三谷幸喜大感謝祭」と銘打った2011年に発表された作品です。

427スクリーンで公開され、映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)初登場第1位という記録を打ち立てました。

タイトルに”金縛り”というワードが入った、幽霊ファンタジーのコメディ作品。

本作の最後には、主人公エミの父親があちらの世界からもずっと家族を見守っていたことがわかります。声が届かずとも、寄り添い続けていたのです。

遠く離れた地にいても、誰かがあなたのことを見守っているかもしれません。

2つの世界が繋がってゆくこの作品を観て、大切な人に思いをはせてみてください





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