芸能界デビューから30年、映画、ドラマ、舞台に、第一線で変わらぬ魅力を放ち続ける女優、深津絵里。
その表情は時にあどけなく、時に妖艶、時に力強さを湛えます。一体どの顔が本当の彼女なのか?観る側の視線はいつも釘付け。
そんな彼女の演技力が遺憾なく発揮される、主演おすすめ映画5作品をご紹介します。
CONTENTS
セーラー服のフレッシュな演技力『満月のくちづけ』(1989)
『満月のくちづけ』の作品概要
片思いの成就のために行った恋のおまじないで、間違って悪霊を呼び出してしまった女子高生の恐怖を描く。
劇中、悪霊による容赦ない惨殺シーンがありながらも、当時16歳の深津絵里のショートカットとセーラー服姿のキュートさが光る。
監督は『牙狼〈GARO〉』の金田龍。深津絵里は本作で1989年ローマ国際ファンタスティック映画祭最優秀主演女優賞受賞。製作総指揮にコメディアン三宅裕司を起用。俳優寺脇康文の映画デビュー作。
『満月のくちづけ』のあらすじ
美術の沢田先生に恋心を抱く、横浜の女子高生里絵。
仲良しの友達で集まって恋のおまじないをすることになったが、同級生の麻美のいたずらが災いし、間違って悪霊を呼び出してしまう。
以来、学校で飼われている兎が無惨な姿で発見され、続いて理絵の恋敵や友達が校内で次々と惨殺される。
悪霊はついに沢田先生に取り憑いてしまい、残された理絵に襲いかかる。一人で学校中を逃げ惑う理絵。
「午前0時までに悪霊に満月の光を浴びせれば助かる」。
彼女は愛しい先生から悪霊を追い出し、二人で助かることができるのか?
『満月のくちづけ』おすすめポイント
恋する乙女姿を熱演する、実年齢でも高校生だった深津絵里。
デビュー間もない16歳当時から、優れた演技力を発揮しています。
製作側の力が入った愛幻想的な美しいロマンスシーンは、ホラー映画ならではの残虐なシーンとは対象的。
中でも秀逸なのは、愛しい先生を想い絵里が満月に咽び泣くシーン。切なさに胸が締め付けられます。
ディスプレイを通し、若者の孤独な想いが交錯する『(ハル)』(1996)
『(ハル)』の作品概要
「それから」「キッチン」の監督森田芳光が、1980年代後半から1990年代に全盛であったパソコン通信から発想を得た作品。
パソコンのディスプレイ画面に映る、通信の会話文字シーンが劇中に多く登場。物語の進行役を果たすという、実験的要素が斬新です。
深津絵里は、平凡ながらもどこか憂いを帯びた等身大の現代女性を好演。共演の内野聖陽は本作が映画デビュー作。
『(ハル)』のあらすじ
持病のために夢を見失い、東京で平凡なサラリーマン生活を送る速見昇。
「ハル」というハンドルネームで参加したパソコン通信を通じて、「ほし」というユーザーと意気投合し、個人的なやりとりを始める。
やがて、当初男性だと思っていた「ほし」は、盛岡に住む女性であることがわかる。
ある日「ハル」が東北へ出張する機会に約束をした二人。「ハル」の乗った新幹線が「ほし」の待つ沿線を通り過ぎる時に一瞬の対面を果たす。
時を経て、孤独な心を抱える二人は、お互いの存在がかけがえのないものになっていることを確信するが。。
『(ハル)』のおすすめポイント
人生の挫折を味わい、その傷と共に日々の生活を送る若者二人。
パソコンや携帯の普及が今ほどなかった時代を背景に、その愛はゆっくりと育まれていきます。
決定的な甘い言葉やアクションがなくても、文字、風景、音楽で紡がれていくお互いへの想い。
お互いを癒し合いながら心を通じあわせていく様は、実際に二人が出会うまでの道のりを楽しみにさせてくれることでしょう。
深津絵里の憂いを帯びた切ない表情に注目です。
自身の業に身を焼かれる女たち『阿修羅のごとく』(2010)
『阿修羅のごとく』作品概要
向田邦子原作のNHK放映テレビドラマを「ハル」「失楽園」の森田芳光監督が映画化。
父親の愛人と子供が発覚したことで久し振りに集まった4姉妹が、それぞれの恋愛と欲望、家族愛の狭間で葛藤する模様を描く。
深津絵里は3女役、姉妹に大竹しのぶ、黒木瞳、深田恭子と他豪華キャストを起用。
『阿修羅のごとく』あらすじ
3女、滝子の呼び掛けで久し振りに竹沢家に集まった4姉妹。
70歳を超える父、恒太郎が愛人と写っている写真を前に、この事は母、ふじの耳に決して入れまいと誓いあう。
さらに愛人との間には子供がいるらしい。
この事件で集ったことをきっかけに、離れて暮らしている時には見えなかった4姉妹それぞれの事情が露呈していくことになる。恋愛、家庭、浮気、妊娠、自身の幸せを守るべく奮闘する4姉妹。
彼女たちを取り巻く環境が日々目まぐるしく変化していく中、静かに暮らしていた両親の生活にも変化が。。
『阿修羅のごとく』おすすめポイント
豪華キャストによる、怒涛のストーリー展開は観客を飽きさせることがありません。深津絵里は恋愛に奥手で堅物の三女、滝子を好演しています。
愛憎の渦に飲み込まれながら『阿修羅のごとく』、それぞれの人生に立ち向かう女の姿には十分な迫力ありです。
昭和を背景に描かれる女の幸せ。あなたはどの女の人生に、最も共感できるでしょうか?
本当の悪人は一体誰なのか?『悪人』(2015)
『悪人』作品概要
朝日新聞にて連載され、第61回毎日出版文化賞と第34回大佛次郎賞を受賞した吉田修一の長編小説を映画化。
監督は『フラガール』の李相日。殺人を犯してしまった肉体労働者を妻夫木聡、刹那的に結ばれ彼と行動をともにすることになった女性を深津絵里が演じる。
背徳的な恋愛に身を焦がしながらも、多くの人物の人生をその罪に巻き込んで葛藤し、追い詰められていく二人。
逃亡の果てに二人が辿り着いた風景は、一体どのようなものだったのか。。?
『悪人』あらすじ
保険外交員女性・石橋佳乃が殺された。事件当初の容疑者は大学生・増尾圭吾だったが、証言により土木作業員・清水祐一が新たな容疑者として浮かび上がる。
清水祐一と馬込光代は、出合い系サイトで知り合った。
お互いの空虚感を埋め合うように惹かれ合うが、自分を逮捕するために警察が近くにいることを悟った清水は、光代を連れて逃避行をはかり、やがて無人の灯台に辿り着く。
一度は警察に保護されるが、自らの意思でまた灯台に戻る光代。人を愛する喜び知り、それまでの自分を激しく後悔する祐一。
かけがえのない存在であることを確かめ合う二人だが、とうとう灯台に警察が入り込む時がやって来る。
『悪人』おすすめポイント
一見、理性をなくした犯人が犯したごく一般的な殺人事件。
捜査が進むにつれて、殺された佳乃の人格、大学生圭吾の傲慢さが明らかになり、あぶり出される人間の闇。
主人公はなぜ罪を犯すことになってしまったのか?ヒロインはなぜそんな悪人を愛すようになったのか。背景には、夢中になれるもがなく空虚な生活に身を置いた若者の侘しさがよぎります。
置かれた状況によって人は簡単に悪人になってしまうこともある。自分の日々の生活に照らし合わせることで、十分に考えさせられる作品です。
夫婦水入らずの旅によぎる別れの予感『岸辺の旅』(2015)
『岸辺の旅』作品概要
湯本香樹実の原作を黒沢清が映画化。第68回カンヌ国際映画祭 ある視点部門 日本人初の監督賞受賞。
永遠の別れを前に、死者とその妻が思い出を巡る旅に出る。深津絵里と浅野忠信、海外作品での活躍も目覚ましい、日本を代表する2人の俳優によるダブル主演作品。
『岸辺の旅』あらすじ
ピアノ教師の瑞希は、3年前に突然に失踪した夫、優介に遭遇。彼は一緒に思い出の地を巡る旅に出ようと告げます。
自分はすでに死んでいる、という優介の言葉に驚きながらも瑞希は従うことに。
その旅で出会うのは、優介が失踪してから3年の間に彼と関わりを持った人たち。
それまで知らずにいた秘密にも触れ、葛藤がありながらも、道中改めて愛と絆を確かめ合う夫婦。だが無常にも、二人には永遠の別れが近づいていました。。
『岸辺の旅』おすすめポイント
一見混じり合うはずのない生者と死者が織りなす、不思議なロードムービー。
日常から離れた旅の風景を、淡々とした展開と繊細なユーモアで飽きることなく見せ続けてくれます。
浅野忠信の抑え気味ながらも深い愛情を湛えた演技、深津絵里の少女のようなたた住まいの中に凛とした美しさを持つ女性の演技は秀逸です。
まとめ
作品ごとに全く違う人物を、リアルに演じ分けることができる稀有な女優、深津絵里。彼女の演技に関する感の良さは、各作品関係者が絶賛しています。
今や、日本の代表的な女優に登りつめた彼女の抜群の演技センスと、それぞれが醸し出す深い作品世界。ぜひ、映画館でどっぷりハマって下さい♪