『私は確信する』は2021年2月12日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開!
フランスで実際に起こり、社会を騒然とさせた未解決事件「ヴィギエ事件」をモチーフにした法廷サスペンス映画『私は確信する』。
フランス本国では口コミで広がり40万人を動員する大ヒットを記録しました。
ある日、こつ然と姿を消した妻。夫である法学部教授が殺人容疑をかけられます。果たして彼は妻を殺したのか? それとも冤罪か。
敏腕弁護士とシングルマザーが前代未聞の裁判に挑みます!
映画『私は確信する』の作品情報
【日本公開】
2021年(フランス・ベルギー合作映画)
【原題】
Une intime conviction
【監督】
アントワーヌ・ランボー
【キャスト】
マリーナ・フォイス、オリビエ・グルメ、ローラン・リュカ、フィリップ・ウシャン、インディア・ヘア、アルマンド・ブーランジェ、ジャン・ベンギーギ、スティーブ・ティアンチュー、フランソワ・フェネール、フィリップ・ドルモア
【作品概要】
2000年にフランスで実際に起こった未解決事件をモチーフにした裁判サスペンス。口コミで広がり、本国フランスで40万人を動員する大記録となりました。
主人公ノラをコメディエンヌとしても人気の高い実力派女優マリーナ・フォイスが演じ、ダルデンヌ兄弟の『息子のまなざし』の名優オリヴィエ・ グルメが実在の弁護士デュポン=モレッティを演じています。
映画『私は確信する』あらすじとネタバレ
2000年2月、フランス南西部トゥールーズ。スザンヌ・ヴィギエという38歳の女性が、3人の子供を残したまま忽然と姿を消しました。
スザンヌの遺体が発見されてもいない中、夫ジャックに殺人容疑がかけられますが、明確な動機がなく、決め手となる証拠もみつかりません。
ジャックは第一審で無罪となりますが検察はすぐさま控訴。重罪院で、再び殺人罪を問う裁判が行われることとなりました。妻が失踪してから10年の月日が経っていました。
シングルマザーのノラは、ジャックが無罪だと確信しており、ジャックの子どもたちの支援をしていました。彼女は一審の裁判の内容をまとめたものを弁護士デュポン=モレッティに持ち込み、ジャックの弁護をしてくれるよう懇願します。
デュポンは本当に望むのならジャック自身が依頼すべきだと応えますが、ノラはジャックはノイローゼになっており、代わりに自分が頼んでいるのだと応えます。
ジャックとどういう関係かと問われたノラは、ジャックの娘が自分の息子の家庭教師をしてくれているのだと応えました。
最初は忙しいと断っていたデュポンでしたが、ノラのまとめに目を通し、引き受ける決意をします。
デュポンは事件関係者による250時間にも及ぶ“電話の通話記録”のカセットテープをノラに手渡し、分析するよう求めました。
膨大な上に大変責任のある仕事でもあり、ノラは躊躇しますが、デュポンを説得した手前引くに引けず、分析を引き受けることとなりました。これらのデーターは一審では全く採用されなかったものです。
ノラは息子とスキーに行く約束をしていましたが、とても時間的に無理だと判断し、友人に息子を預けることにしました。
250時間の電話記録を調べるうちに、ノラはスザンヌの浮気相手であるデュランデがスザンヌがいなくなったのは夫が彼女を殺害したからに違いないと、自身の知人やジャックが教鞭をとっている大学の学生などに電話でいいふらしていたことが判明します。
デュランデは相手にこのことを言いふらすようにすすめていて、相手が心配すると「『夫が殺した』じゃなく、『殺したと思う』といえば名誉毀損にはならない」と言いくるめていました。
デュランデはマスコミとも連絡を取り、情報を流して記事を書かせていました。
ノラは重要だと思う会話をピックアップし、公判のたびにデュポンに手渡し、二人三脚でことにあたっていました。
スザンヌとジャックの夫婦仲は破局していました。スザンヌは不倫相手のデュランデとタロット大会に行き、朝の5時にデュランデが家まで送ったあと、行方がわからなくなっていました。
本当に妻が帰宅したのかどうかも実際のところ定かではありませんでした。
ジャックはその日の朝、子供部屋に娘がいなかったので、妻の寝室を覗くと娘が寝ているのが見えましたが、妻はいたような気がするというだけで、その姿を見たわけではないと証言します。
娘にとっても10年も前のことなので今となると記憶が定かではありません。
スザンヌが家に戻り、そのあと家を出ていったのかも争点となっていました。あとからカバンが発見され、その中には鍵も入っていました。彼女は手ぶらで鍵もかけず出ていったのか、はなはだ疑問に思われました。
そもそも、ジャックは妻の行方がわからなくなってから10日間、警察に連絡をしていませんでした。また、妻が使っていたサイドベッドのマットレスを捨てており、なぜそのようなことをしたのか、検事は厳しく追求します。
ジャックは事件のせいで精神を病み、悲痛な表情で被告席に座っていました。マットレスの件は、このベッドで妻が浮気をしたかと思うとカッとしたのだと応えました。
ジャックの父親が証人として出廷しました。彼は警察から「息子さんに罪を認めるよう説得してほしい。さもなければあなたの孫娘は将来娼婦になり、他の孫も麻薬に溺れることになるだろう」と脅されたと証言しました。
警察は頭からジャックを疑い、証拠は何ひとつないにもかかわらず全て憶測に基づいて捜査し犯人と決めつけていたことが音声データーから証明されます。
ノラは膨大なデーターの分析にのめり込み、自分では気づかないうちに息子の世話も、レストランでのシェフの仕事もないがしろにし始めていました。
そんな中、デュポンはノラが第一審の時の陪審員であったことを知ります。彼はノラに「なぜ黙っていた!」と怒鳴り、「君とは今日限りだ」と告げます。
ノラは今更あとには引けなくなっていました。陪審員での経験は誰にも話していないし、被告の家族と触れ合うことは違反ではないと反論します。
デュポンは彼女を拒絶しますが、ノラは食い下がります。ベビーシッターが月曜日にやってきた時、浴室に血のようなものを見たという重要な証言がありましたが、ベビーシッターにもデュランデは連絡をとっていたことがわかります。
ノラは法廷に向かうデュポンに無理やり書類を渡し、審議を見守りました。デュポンにとってもそのデーターは意味のあるもので、再び、2人のタッグが始まりました。
デュランデは、なぜかスザンヌの知人にも次々と連絡をとっていました。どうやってその連絡先を知ったのでしょうか。また、デュランデがスザンヌが失踪したと思しき日に、彼女の家を訪ねていた疑いも出てきました。
映画『私は確信する』感想と評価
本作はフランスで実際に起こった“ヴィギエ事件”を映画化したものです。
当時、マスコミはこの事件を「ヒッチコック狂による“完全犯罪”」とセンセーショナルに報道し、社会は騒然となったといいます。
なぜヒッチコックかというと、嫌疑をかけられた夫のジャック・ヴィギエは法学部の大学教授で、以前講義で「ヒッチコック的な完全犯罪は可能だ」と語ったことがあり、それが事件と結び付けられ、おもしろおかしく語られることとなったのです。
映画では再審の初日に裁判官が被告に今のあなたの立場をヒッチコック映画で例えれば?と質問する場面があります。ジャックは『バルカン超特急』と小声で応えますが、裁判官はもう一つありますと言って『間違えられた男』を付け加えています。
裁判官は、探偵気取りでこの裁判を見守っている世間を皮肉るつもりでこうした軽口とも取れる会話を交わしたのでしょうか?
真意は定かではありませんが、“ヴィギエ事件”は決して特別なケースではありません。妻や子どもが被害者の場合、夫や親を証拠もなく怪しいと社会全体が疑うようなことはどこででも起こっています。
こうした事件はテレビのワイドショーなどの格好の題材で、視聴者は皆探偵気取りに陥ってしまうのです。
本作はこの未解決事件の新たな犯人探しをするミステリーものではありません。寧ろこうした野次馬精神を批判するものであり、本当の「正義」とは何か?を問うことが主題となっています。
とはいえ、決して説教がましい作品ではなく、法廷ものとしても非常にスリリングな物語が展開します。
なんといっても、第一審ではなぜか採用されなかった250時間の通話記録の中から、行方不明になった妻の愛人であった男が、夫のジャックに対して「中傷キャンペーン」とも呼ぶべき行為を繰り返していた事が判明していく件には唖然とさせられます。
その記録を詳細に分析するのは、一審で陪審員を務め、ヴィギエ一家に同情した女性で、彼女はジャックを助けたいという強い思いから、子どもの養育も、仕事までもないがしろにしてしまうほど、裁判にのめり込んでいきます。
一線を超え、立ち止まることができなくなる女性を演じるのはフランスの名優、マリナ・フォイスです。女性が「正義感」ゆえに自身の人生までを投げうっていく様子を鬼気迫る圧倒的な演技で見せ、裁判の行方と同じくらいの緊張感を漂わせます。
彼女は妻の愛人だった男が真犯人であると確信してなんとかその証拠を見つけたいと奔走しますが、そんな彼女に弁護士が投げつけた言葉にははっとさせられます。
憎き男と同じ顔をしてしまっていることを指摘され、彼女は呆然と立ちすくみます。
「正義」とはなにか、「正義感」とは何かを深く考えさせる作品といえるでしょう。
まとめ
フランス映画において、法廷を舞台としたものは非常に少ないと言われています。アメリカやイギリスとは法廷制度が異なり、映画的でないと考えられているからだそうです。
監督のアントワーヌ・ランボーは本作が監督デビュー作とのことですが、そんな分野に果敢に挑み、一人の女性が「正義感」を元に突っ走る様を並行して描くことで、濃厚な法廷サスペンスを作り上げました。
オリビエ・グルメ扮する弁護士による最終弁論が最大の見せ場となっており、証拠がなくても殺人罪で起訴できるというフランス司法への痛烈な批判も映画には込められています。