Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2021/02/05
Update

映画『空(カラ)の味』あらすじ感想と評価解説。摂食障害を抱える女子高生の揺れ動く“心情”

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

摂食障害に悩む女子高生の不安と葛藤を描く映画『空(カラ)の味』。

「家族も、友達も、ちゃんとあるのに、眩しくて、私何もない気がする」気づいたら食べて吐いて、そんなことを繰り返す自分が嫌なのに止めることもできない。

摂食障害に悩み、追い詰められた聡子が、ある女性との交流を通して解放されていく様を描くヒューマンドラマ。

新鋭・塚田万理奈監督をはじめ、主人公聡子役にはインディーズ映画界の新人・堀春菜、同級生役には笠松七海、柴田瑠歌などが顔を揃え、揺れ動く女子高生の心情をみずみずしく、幻想的に描いています。

映画『空(カラ)の味』の作品情報


(C)2016「空(カラ)の味」

【公開】
2017年(日本映画)

【監督・脚本】
塚田万理奈

【キャスト】
堀春菜、松井薫平、南久松真奈、井上智之、イワゴウサトシ、柴田瑠歌、松本恭子、笠松七海、林田沙希絵

【作品概要】
監督を務めるのは日本大学芸術学部の卒業制作『還るばしょ』で注目された新鋭・塚田万理奈監督。初長編作となった本作は第10回田辺・弁慶映画祭で弁慶グランプリ、映検審査員賞、市民賞、女優賞と主要賞独占の4冠の快挙を成し遂げました。そして、同映画祭で受賞した新人監督3人にスポットを当てた特集上映「田辺・弁慶映画祭セレクション2017」で劇場公開されました。

主人公・聡子役を演じるのは『ガンバレとかうるせぇ』(2019)、『ぼくらのさいご』(2015)の堀春菜、マキ役には演劇ユニット・BELGANALの林田沙希絵、『家族ごっこ』(2015)の南久松真奈、『下衆の愛』(2015)の松井薫平、『まあだだよ』(1993)の井上智之など。

塚田万理奈監督の新作映画クラウドファンディング実施中

長野県出身の映画監督・塚田万理奈の新作映画『刻』を
10年かけて16mmフィルムで制作したい

*目標金額を達成し、2021年5月10日に終了致しました。皆さん、ありがとうございました。

映画『空(カラ)の味』のあらすじ


(C)2016「空(カラ)の味」

家族や友人に囲まれ、何不自由なく暮らしていた女子高生の聡子(堀春菜)でしたが、ある日摂食障害に陥ります。暴食をし、吐いてしまうという衝動を抑えきれず、聡子自身も自分がどうしたいのか、どうしたら治るのか分からず戸惑います。

次第に家族や友人との距離感もぎこちなくなり、うまく言えないまま聡子は追い詰められていきます。そんな聡子が出会ったどこか危なげな女性マキ(南久松真奈)。

聡子のことを直そうとするのでもなく、自由に話したいことを話す風変わりなマキと時間を過ごすことで、追い詰められていた聡子の肩の力が少しずつ抜けていきます。

しかし、マキとの間にも変化が起きていき…

映画『空(カラ)の味』の感想と評価


(C)2016「空(カラ)の味」

主人公の聡子は部活の子とダイエットや恋愛など他愛のない話をし、家族とも仲が悪いわけではない、ごく普通の女子高生です。そんな彼女は摂食障害に陥ってしまいます。

何より聡子自身がその原因が分からず、どうしたら良いのか戸惑います。明確な原因があるわけでもないのですが、漠然と自分には何もないのではないかと虚無感を抱えています。しかし、自分が得たいもの、したいことも分からないのです。

聡子の摂食障害を知った家族は何とかして治そうとし、助けてと求めなかった聡子に対し、そんなに頼りなかったのかと聡子を責めるような言い方をします。

更に「こんなことになってしまって」と泣き出す母親に、聡子は「助けてと言わないのは私の勝手で、結局心配も自己満足でしょう、私は頼んでない」と言います。

家族に言えないのではなく、何と言えば良いのか分からないのではないでしょうか。誰しも、誰にも言えない、説明できない漠然とした不安や虚無感を抱えているということはあるでしょう。

追い詰められていた聡子が出会ったどこか危なげなマキは、聡子のことを治そうとするわけでもなく、「さとちゃん面白いね」「さとちゃんのこだわり何だね」と今の聡子のままを受け入れてくれる存在でした。

ありのままを受け入れてくれ、会いたい時に会い、話したいことを話すマキと親しくなるにつれ、聡子も失ったもの、得られないものではなく、それでも残ったもの、自分のそばにあるものに目を向けるようになります。

さまざまな環境の変化に敏感な十代の少女の虚無感、漠然とした不安、それと同時に家族という身近なものに対する距離感の難しさを感じ始める様子を繊細に切り取った本作。

冒頭聡子が仮面をつけ、交差点で踊る場面が移され、その後幾度か同じ仮面をつけた聡子の場面が映し出されます。

それはどこかで家族や友達との距離感に息苦しさを感じ、誰からも心配されたり、気を使われたり気を使うことのない、誰でもない存在になって解放されたい聡子の様子をあらわしているかのようです。

同時に危うげではありますが、誰にも縛られることなくありのままの姿でいるマキに対し、こうありたい、こうなれたらと思う気持ちがあったのかもしれません。だからこそ、マキには変わらないでいてほしいと聡子は強く願うのです。

まとめ


(C)2016「空(カラ)の味」

摂食障害に悩み、揺れ動く少女の葛藤と解放を描いた映画『空(カラ)の味』

誰もが経験したことのある漠然とした不安を、聡子演じる堀春菜がみずみずしく、空虚な演技で映し出します。更に冒頭の仮面をかぶった場面や、土手を歩くマキの姿など幻想的な映像が心の揺れ動きを繊細に描きます。

聡子を支えようとするも追い詰めてしまう家族、他愛のない話をしつつも聡子の様子の変化に気づき、戸惑いぎくしゃくしてしまう友人達の演技も注目です。



Warning: Use of undefined constant php - assumed 'php' (this will throw an Error in a future version of PHP) in /home/demachi2026/cinemarche.net/public_html/wp-content/themes/stinger8-child/single.php on line 150

関連記事

ヒューマンドラマ映画

映画『43年後のアイ・ラヴ・ユー』感想評価と解説レビュー。大人の恋愛ロマンスは長きに渡り熟成した想いを告げる

映画『43年後のアイ・ラヴ・ユー』は2021年1月15日より全国順次ロードショー。 映画『43年後のアイ・ラヴ・ユー』は、アルツハイマーによって記憶を失くしたかつての恋人に43年の時を経て愛を伝える感 …

ヒューマンドラマ映画

映画『パブリック 図書館の奇跡』ネタバレ感想と考察評価。結末までのあらすじで“民主主義の象徴”である図書館を占拠したホームレスたち

“命の避難所”となった公共図書館で展開するハートフルドラマ エミリオ・エステベス監督&主演で贈る、格差社会とフェイクニュースへの問題提起。 映画『パブリック 図書館の奇跡』が、2020年7月17日(金 …

ヒューマンドラマ映画

映画『シリアにて』感想と考察評価。内戦の恐怖に耐える名もなき市民の生きる希望を描く

戦地シリアでアパートの一室に身を寄せる市民たちの緊迫の24時間 第67回ベルリン国際映画祭で観客賞を受賞した映画『シリアにて』が、2020年8月22日(土)より岩波ホールほか全国順次公開されます。 今 …

ヒューマンドラマ映画

映画『洗骨』あらすじと感想レビュー。キャストが信頼するガレッジセールのゴリ(照屋年之)監督が描いた祖先と家族の絆

映画『洗骨』は、2019年1月18日(金)より沖縄先行公開、その後、2月9日(土)から丸の内TOEIほか全国公開! お笑い芸人「ガレッジセール」のゴリとして活躍する、照屋年之監督が制作した映画『洗骨』 …

ヒューマンドラマ映画

映画『私は何度も私になる』あらすじ感想と評価考察。監督タン・チュイムイは主演作×長編復帰作でアクション訓練を通じて《自分自身》を取り戻す

タン・チュイムイ監督&主演作『私は何度も私になる』は2025年6月28日(土)ポレポレ東中野で先行公開、シネマリス(神保町に開館予定)で開館記念公開! 『タレンタイム~優しい歌』(2009)の名匠ヤス …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学