映画『私は確信する』は2021年2月12日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー。
映画『私は確信する』は、妻の失踪事件から10年間殺害容疑をかけられた夫の裁判を描いたスリリングな法廷劇です。
実際に起きた事件をもとにした本作はフランスで観客数40万人動員の大ヒットを記録しています。
本作が初長編映画となった監督のアントワーヌ・ランボーは、この映画の題材となった実際の裁判を傍聴し、当事者である家族らに話を聞いてリアリティ溢れる脚本を書き上げました。
キャストには、2018年のヒット映画『シンクオアスイム』からマリーナ・フォイス。『イゴールの約束』のオリヴィエ・グルメら実力派俳優の演技が光ります。
映画『私は確信する』の作品情報
【日本公開】
2021年(フランス・ベルギー合作映画)
【原題】
Une intime conviction
【監督】
アントワーヌ・ランボー
【キャスト】
マリーナ・フォイス、オリヴィエ・グルメ、ローラン・リュカ、ジャン・ベンギ―ギ、フランソワ・フェネール、フランソワ・カロン、フィリップ・ドルモワ、ジャン=クロード・ルゲー、フィリップ・ウシャン、アルマンド・ブーランジェ、スティーブ・ティアンチュー、レオ・ラバートランディ、ローラン・シリング、ロジェ・ソーザ、インディアナ・ヘア
【作品概要】
監督のアントワーヌ・ランボーは映画の編集者でありつつ、短編作品の監督を務め、ランブイエ映画祭など国内の映画祭で数々の賞を受賞して注目を集めました。
その中でも、本作で描かれているデュポン・モレッティ弁護士を主演に起用した『Vos Violences』は10以上の賞を獲得しています。
本作はそんな監督の、フランス司法の不合理さや正義についての強い思いが込められた映画となっています。
ノラ役を演じたマリーナ・フォイスはコメディグループに属し、テレビや映画などで活躍するほかカンヌ国際映画祭グランプリを受賞した『パリ警視庁:未成年保護特別部隊』(2011)でのシリアスな演技が評価されました。
セザール賞最優秀女優賞にノミネートされた経歴のある実力派女優です。
デュポン・モレッティ弁護士を演じたオリヴィエ・グルメは、『イゴールの約束』(1996)や『ロゼッタ』(1999)『ある子供』(2005)などダルデンヌ兄弟作品の常連俳優として知られている俳優です。黒沢清監督『タゲレオタイプの女』(2016)など近年も活躍し続けています。
映画『私は確信する』のあらすじ
2000年フランスのトゥールーズで女性の失踪事件が発生しました。
彼女には3人の子どもと夫がおり、夫のジャック・ヴィキエに妻殺害の容疑がかけられます。
証拠不十分で釈放されたものの、2009年にはさらに裁判にかけられます。
そして翌年の第2審で殺人罪に問われたジャックは、マスコミの過激な報道によって殺人犯のレッテルを貼られ、10年をすごしてきました。
その姿をそばで見ていたシングルマザーのノラが弁護士の助手になり、事件の真相究明に立ち向かいます。
映画『私は確信する』の感想と評価
本作はスリリングな法廷劇に最後まで目が離せない緊張感のある上質なサスペンス映画です。
先が読めない裁判の行方に手に汗握るのはもちろんのこと、普通の主婦であるノラが事件の真相に近づいていくにつれてその感情をむき出しする姿に引き込まれるはずです。
上質なサスペンスであるとともに、誰しもが当事者になりうるという「正義感をまとった他者への断罪の心理」を描いた骨太な作品だといえます。
第三者の視点に入りこむ臨場感
本作の重要なキャラクターは裁判にかけられたジャック・ヴィギエではなく彼の弁護士の助手をする女性ノラです。
ジャック・ヴィギエの娘がノラの息子の家庭教師をしていることがきっかけで、ノラはこの事件について関心を持つようになりました。
当事者ではなく、事件の関係者でもない彼女が必死になっていく姿は観ているものに臨場感を与えます。
ノラはシェフとして働きつつ息子を育てるどこにでもいる中年の女性です。だからこそ観る者に共感を与えやすく、物語へ引き込んでいくのです。
自分だったらどうするだろう?という視点で物語を観るようにうまく演出している場面もいくつかあります。
ノラが通話記録から隠された真実を暴き、弁護士がそれを裁判で公にするという一連のコンビネーションからは爽快さを感じられますし、真相究明にのめり込むあまりノラの精神状態が次第に追い詰められていく様子にはハラハラさせられるはずです。
そして怒涛のラストシーンでは彼女と一緒に手に汗を握ってしまうでしょう。
殺人者として生きた10年間
実際に起きた事件がもとになっているということで、冤罪の恐怖、マスコミの偏った報道による被害について深く考えさせられる内容になっています。
はじめに殺人罪に問われてから9年後に裁判が行われたというのは事実の通りだそうで、そこにはアメリカや日本とは異なる司法体制とるフランスならではの事情があるようです。
まずフランスでの犯罪の発生率は、
窃盗で8倍、殺人で5倍多い上、重大事件では正式裁判の前に予審も行われるのでそれだけ時間がかかるのです。
(島岡まな著『私は確信する』を楽しむためのフランス司法と映画解説より)
また、フランスの裁判において尋問や反対尋問などの形式はなく、合理性による判決ではなく確信という名の「印象」によって左右されます。
「印象」つまりは感情やイメージが優先で、証拠や事実はどちらかというと二の次なのです。
監督はその司法制度について異論を唱えるメッセージを込めたとインタビューで語っています。
このことを知った上で本作を観るとより深い観点で物語を楽しめるのではないでしょうか。
また、マスメディアによる過激な印象操作やSNSの誹謗中傷などは日本でも起きています。とても他人ごととは言い切れない内容に、社会への問題意識を改めさせられる映画となっています。
まとめ
本作はサスペンスフルな法廷劇としてのおもしろさと、ヒューマンドラマの一面をしっかりと描いた見ごたえのある作品です。
法廷劇といえば、難しい言葉の羅列でついていくのが大変という人がいるかもしれませんが、本作ではあまり専門用語は飛び交いません。
どちらかといえば、謎解きが重なっていく中でひとりの発言がドラマを生むような作りになってるので、観やすいはずです。
ぜひ映画館でご覧ください。
『私は確信する』は2021年2月12日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。