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Entry 2020/11/30
Update

映画『プラスチックの海』感想レビューと考察解説。海洋環境問題の“原因と対策”をドキュメンタリーで描く

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

映画『プラスチックの海』はアップリンク渋谷・吉祥寺にて2020年11月13日(金)より上映中!

ジャーナリストのクレイグ・リーソンが監督を務め、海洋プラスチック問題に焦点をあてたドキュメンタリー。年間800万トンものプラスチックが海に捨てられ、その大半は海底に沈み、その他は海面を漂い、分解されることもありません。

海に年間800万トンものプラスチックゴミが捨てられていることを知り、海洋学者、環境活動家やジャーナリスト達と共に世界の海でプラスチックゴミが海洋系に及ぼす影響、世界の取り組みを撮影していくドキュメンタリー。

映画『プラスチックの海』の作品情報

【日本公開】
2020年(イギリス・香港合作)

【監督】
クレイグ・リーソン

【脚本】
クレイグ・リーソン、ミンディ・エリオット

【製作】
ジョー・ラクストン、アダム・リープツィグ

【キャスト】
クレイグ・リーソン、デビッド・アッテンボロー、バラク・オバマ、シルビア・アール、タニヤ・ストリーター、リンジー・ポルター、ジョー・ラクストン、ダグ・アラン、ベン・フォーグル、マイケル・ゴンジオール

【作品概要】
ニュースレポーターや司会者としても活動しているジャーナリストのクレイグ・リーソンはシロナガスクジラに魅せられ撮影に訪れたスリランカで海面に漂うプラスチックゴミの現状を知り、真実を伝える映画の制作をはじめました。バラク・オバマ前アメリカ大統領も出演しています。

映画『プラスチックの海』のあらすじ

ジャーナリストのクレイグ・リーソンは子供の頃見たシロナガスクジラに魅せられ、撮影のためスリランカに向かいます。そして、見事子供のピグミーシロナガスクジラを海中で捉えます。そんなスリランカの海で目にしたのは大量のプラスチックゴミでした。

スリランカでは内戦があり、30年間漁業が出来ずにいました。しかし、そこに広がっていたのは手付かずの青い海ではなく、海水と混ざった油やプラスチックが浮かんでいます。クジラは大量の水と共に餌のオキアミを食べ、餌とプラスチックの区別はつけられません。大量にプラスチックを飲み込んだクジラは消化出来ず、栄養失調や消化器の異常を起こし死んでしまいます。

ダイバーであり、環境活動家のタニヤ・ストリーターさんがスピーチをしています。現在、20世紀より多くのプラスチックを製造し、その多くは使い捨てにされ、リサイクルされるのはほんの一部だそうです。分解できないプラスチックは地球上に残り続け、生態系を壊しているのです。

潜水艦で海底に潜ってみると、大量のペットボトルが沈殿しているのが分かります。中には網のようなものもあります。潜水艦に絡まると浮上できなくなります。今回の調査では不発弾とパラシュートまで見つかりました。

海底に沈殿せず、浮遊しているプラスチックは海水にさらわれ、紫外線を浴びるうちに細かくなっていきます。それをプランクトンや稚魚が食べることにより、食物連鎖の中にプラスチックが組み込まれていきます。プラスチックは分解されることなく、魚の中に毒素として沈殿し、稚魚やプランクトンを食べた魚、そしてそれを食べる他の生態系へとプラスチックは摂取され続けていきます。人間も無関係ではないのです。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『プラスチックの海』ネタバレ・結末の記載がございます。『プラスチックの海』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

フィジーでは日常的に点火にプラスチックを使っています。それは安価で手に入り、灯油より火がつきやすいからです。しかし、プラスチックは燃やすと有害物質が出て、咳が出たり、息が苦しくなったり、酷い時は頭痛にもなります。また、プラスチックの煙には発がん性物質が含まれています。

自然豊かなロード・ハウ島には多くの渡り鳥がやってきて巣を作ります。渡り鳥の多くは一生のうちにプラスチックを餌と間違えて食べています。更にはひな鳥にあげる餌にもプラスチックが含まれています。浜辺にはプラスチックを食べ、お腹の中に分解されずに残った結果重くなり飛び立てずにいるひな鳥がいます。ジェニファー・レイバース博士はそんなひな鳥の胃にチューブを入れ、水を飲ませ胃の中の物を吐き出させます。ひな鳥が吐き出した物を見ると多くのプラスチックが見受けられます。中には石油や油が入ったものもあります。

それだけでなく、浜辺では多くの鳥が重みで飛び立てず、死んでいます。そのような鳥のお腹の中をジェニファー・レイバース博士は解剖し、中に入ったプラスチックを取り出します。重さをはかると鳥の体重の15%に相当する量のプラスチックが検出されました。

イタリアではプラスチックを食べ、体内にガスがたまり潜れなくなったウミガメが見受けられます。その原因はポリ袋です。ウミガメの餌となるクラゲがポリ袋に似ているのでウミガメが間違えて食べてしまうのです。海中に漂うゴミの問題ばかりではありません。

マニラのスモーキーマウンテンはゴミ処理場として多くのゴミが埋め立てられ、そのゴミからメタンが発生し、時には発火して火事になります。そんなゴミ処理場でプラスチックを探し、お金を稼いでいる人々がいます。その多くは次第に肺疾患、結核や肺気腫になってしまいます。マニラでは日常的にゴミを川に捨てています。それはゴミの回収の業者がいないからです。そのような川の汚染を改善しようと活動している人もいます。その活動は、汚染された川に汚染物質を吸収する植物や、土壌改善効果のある植物を植えて、汚染された土壌を改善しようとするバイオレメディエーションやファイトレメディエーションです。けれど何より重要なのはそういった活動を通して人々の意識を変えることです。

その他にもプラスチックをプラズマ炉で分子構造を変え再利用できる物質に変化させる試みを米空軍が利用しています。このプラズマ炉を東南アジア諸国に持っていけば、増え続けるゴミを処理することができます。そうしなければ、ゴミは増え続け汚染は拡大していきます。

アメリカでは、スーパーに行っても、ファストフード店に行っても、プラスチックを使っていない製品はありません。試しに様々なファストフード店でプラスチック以外の容器で頼むと多くの店はプラスチック以外の容器はありませんでした。アメリカの家庭ゴミの大半はこのようなプラスチックの包装や容器です。

社会全体でこの問題に取り組もうとする国や地域があります。その一つがドイツです。ドイツではスーパーでペットボトルの回収をはじめました。プラスチックは回収され、再利用されます。ルワンダはポリ袋を禁止した数少ない国の一つです。更にハイチでは、プラスチックを回収し、3Dプリントの材料に再利用しています。オバマ前アメリカ大統領もこの問題に社会全体で取り組んでいこうと考えている一人でした。一人一人の認識、更には社会全体で解決策を考えていくことが重要なのです。

映画『プラスチックの海』の感想と評価

美しい海、そして悠々と泳ぐイルカ。そんな美しい映像と共に映し出されるゴミに絡まったアザラシやウミガメの姿。更には体内に分解されずに残ったプラスチックが原因で命を落としてしまう海洋生物たち。ショッキングな映像と共にこれが今地球上で起こっている出来事だと言うことに唖然とします。

アメリカのスーパーの映像が流れ、どれもプラスチックで包装されプラスチックを使っていない製品は殆どと言っていいほどありませんでした。これはアメリカだけの話ではないでしょう。日本のスーパーに陳列された商品を思い返してみてください。プラスチックを使っていない製品はあるでしょうか。

日本では2020年7月からレジ袋が有料化になりました。レジ袋を買わずにマイバックを使う人も増えたと思います。しかし依然として様々な所にプラスチックは使われています。日本ではペットボトルの再利用率は80%を越え、他の先進国よりかなり高い数値だと言えます。しかし、ペットボトルの生産量は多いままです。

世界各国に溢れかえるゴミの問題。多くの先進国はその問題にあまり目を向けず、多くの生活ゴミを排出し続けています。レジ袋が有料化され、様々なメディアや日常で“サステナブル”“SDGs”というワードを目にするようになりました。そんな今だからこそこのドキュメンタリーを見て、今世界中で何が起こっているのか。自分に何ができるのか考えてみましょう。

まとめ

海洋プラスチック問題に焦点をあてた本作は、世界各国で起こっている海洋プラスチック問題を、海洋生物が受けている被害について浮き彫りにし、それが海洋生物だけでなく、人間も含めた地球全体の問題であることを強調しています。そしてプラスチックにより、健康被害にあっている地域の人々を映し出していきます。

最後に先進国であるアメリカの現状、それぞれの国や地域で解決のために取り組んでいることを取り上げています。本作のラストにも言っているように海洋プラスチック問題は社会全体で解決策を考えていくべき問題です。使い捨てではなく、再利用を。解決のための試みに参加することが大事なのです。

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