『ルクス・エテルナ 永遠の光』は2020年11月20日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開!
中編映画『カルネ』(1991)でカンヌ国際映画祭にて受賞、以降衝撃的な作品を世に送り、今も挑発的な映画を撮り続けるギャスパー・ノエ。
久々に公開された長編映画『CLIMAX クライマックス』(2018)でも、その姿勢は健在でした。
ファッションブランド”サンローラン”の、アートプロジェクト「SELF」の一環として製作された、彼の新作中編映画が『ルクス・エテルナ 永遠の光』です。
原点の『カルネ』に回帰したかのような、野心と実験精神に富み、観客を強く刺激する本作はカンヌ国際映画祭に出品され、賛否両論渦巻く反応を引き起こしました。
衝撃を保ち続けるギャスパー・ノエの『ルクス・エテルナ 永遠の光』が、ついにその全貌を露わにします。
CONTENTS
映画『ルクス・エテルナ 永遠の光』の作品情報
【日本公開】
2020年(フランス映画)
【原題】
Lux aeterna
【監督・脚本・製作】
ギャスパー・ノエ
【出演】
シャルロット・ゲンズブール、ベアトリス・ダル、アビー・リー・カーショウ、クララ3000、クロード・ガジャン・マウル、フェリックス・マリトー、フレッド・カンビエ、カール・グルスマン、ローラ・ピリュ・ペリエ、ルー・ブランコヴィッチ、ルカ・アイザック、マキシム・ルイス、ミカ・アルガナラズ、ポール・ハメリン、ステファニア・クリスティアン、トム・カン、ヤニック・ボノ
【作品概要】
過激な映画を作り続けるギャスパー・ノエ。
製作の母体となったアートプロジェクト「SELF」の、サンローランを想起させるアーティストの視点を通し、現代社会を描くというコンセプトに、実に相応しい作品です。
本作がカンヌ国際映画祭で上映されると、批評家から絶賛と酷評を呼ぶ激しい反応を引き起こしました。
出演は『なまいきシャルロット』(1985)以来不動の人気とキャリアとを誇る、フランスの大女優シャルロット・ゲンズブール。
そして『ベティ・ブルー 愛と激情の日々』(1986)で一躍有名になった個性派女優ベアトリス・ダル。
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)のアビー・リー・カーショウや、ミカ・アルガナラズにルカ・アイザック、ポール・ハメリンらトップモデルも出演しています。
映画『ルクス・エテルナ 永遠の光』のあらすじ
魔女狩りを題材にした、映画の製作現場で語り合う主演女優のシャルロット(シャルロット・ゲンズブール)と、女優でこの作品の監督を務めるベアトリス(ベアトリス・ダル)。
現場ではプロデューサーや撮影監督、環境の異なるフランスでの仕事に戸惑う女優アビー(アビー・リー・カーショウ)や、出演者とスタッフたちの様々な思惑が渦巻いていました。
シャルロットやベアトリスの思いとは別に混沌を深める撮影現場を、映画は分割した画面や様々なカメラワークで描き出します。
カオスを極めた現場はやがて大きなトラブルに見舞われます。それを描いた映像のよって、狂気の感覚を味わうことになる本作の観客たち。
混乱を極めた映画撮影は、果たして何を生み出したのか…。
映画『ルクス・エテルナ 永遠の光』の感想と評価
刺激的な映像が観客を襲う
予告でも警告している、光に敏感な観客には刺激が強い、実に強烈でビビットな暴力的な色彩。
『CLIMAX クライマックス』にも同様の映像表現がありましたが、それを上回る体験が観客を待っています。
ギャスパー・ノエ作品と言えば、激しく凄惨、そして生々しく描いた暴力や性といった、衝撃的な描写がまず思い浮かぶでしょう。
しかし本作で、監督の生んだ暴力にさらされるのは観客自身です。なるほど長編映画にすると観客が耐えられず、鑑賞した評論家から賛否両論の声が巻き起こる訳です。
心して、ギャスパー・ノエの生み出した狂気の映像世界に向き合って下さい。
映画作りの現場を描いたメタフィクション的作品
本作に登場する人物は、皆劇中において自身の名で呼ばれます。
出演者自身のアイデンティティーが、登場人物の姿に反映された結果、劇中の混沌はリアルに感じられます。映画ファンなら出演者の個性が、本作の役柄に反映されていると気付くでしょう。
特に本作で女優でありながら、映画監督に挑戦する役どころのベアトリス・ダル。
彼女は出世作『ベティ・ブルー 愛と激情の日々』の役柄さながらの、波乱万丈の役者人生を歩み、今は『屋敷女』(2007)など強烈な印象を残す役柄で活躍しています。
激しい気性を持つ女優である彼女が、本作では混沌とした撮影現場を納めるべき監督です。しかし皆が集うスタジオには様々な思惑と、予期せぬ事態が待ち受けていました。
コントロール不可能のカオスの場となった映画製作現場は、果たして何を生み出すのでしょうか。
今回は映画作りの舞台裏を描いたギャスパー・ノエ。そこに時代を挑発する作品を世に送る、彼自身の思惑が重ねられていることは、言うまでもありません。
では『ルクス・エテルナ 永遠の光』には、映画監督ギャスパー・ノエからの、どのようなメッセージが込められているのか。それを紐解きましょう。
実験的映画を作った先駆者へのリスペクト
劇中のシーンの間に、観客に画面に文字でメッセージを発するスタイルを好むギャスパー・ノエ。
その原点はアバンギャルドなサイレント映画や、ジャン=リュック・ゴダールの映画にあります。
本作の劇中で製作される映画は、魔女狩りを描く映画です。これはデンマーク出身の映画監督、カール・テオドア・ドライヤーへのオマージュです。
ジャーナリスト・評論家から映画監督に転身したドライヤー。
彼は『裁かるるジャンヌ』(1928)や『吸血鬼』(1932)、『怒りの日』(1943)など巧みな映像表現と、社会秩序に挑む内容を持つ映画を作りました。
後にゴダールやフランソワ・トリュフォー、ピエル・パオロ・パゾリーニやラース・フォン・トリアーに高く評価され、大きな影響を与えたドライヤー。
『ルクス・エテルナ 永遠の光』は映像の間に、ドライヤーやゴダール、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー、そしてルイス・ブニュエル監督の言葉を、文字で登場させます。
いずれも商業映画や既存の映画の枠組みを、破壊しようと挑んだ監督たちであり、その革新的で特異な性格を持つ作品の前に追随する者は現れず、未だ孤高の輝きを放つ作品を生み出しました。
ギャスパー・ノエは本作で、我こそが映画界において唯一、これらの先駆者と同じ姿勢で人々を挑発する映画を作っていると、高らかに宣言しているのです。
まとめ
本作『ルクス・エテルナ 永遠の光』は、まず冒頭に、ある状況下で感じる恍惚について記した、ロシアの文豪フョードル・ドストエフスキーの言葉から始まります。
それはやがて映画に登場する、観客の感覚に対する刺激的なかつ暴力的な表現の登場を宣言するものです。
次いで登場するのは、カール・テオドア・ドライヤーの魔女狩りを題材にした映画、『怒りの日』からの映像。
そしてドライヤーの言葉を紹介して映画の本編は始まり、ルイス・ブニュエルの言葉を紹介して幕を閉じます。
この2人の言葉には、映画が従来の表現を壊すだけでなく、社会の価値観に縛られない創造を成し遂げるべきと表明する、誇り高い思いが込められていました。
本作は映画製作の混沌を描いたドラマと、様々な挑発的かつ危険な映像が存在し、それが広く注目を集めるでしょう。
それと別に孤高の映画監督ギャスパー・ノエが、自身の創造に対する考え方を世に示した作品として、どうか受けとめて下さい。
『ルクス・エテルナ 永遠の光』は2020年11月20日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開!