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Entry 2020/08/21
Update

『パラサイト』ネタバレ考察。映画伏線の仕掛け「石・家政婦・大洪水」の意味を深掘り解説

  • Writer :
  • ゆきむらゆきお

隠された仕掛けといくつもの伏線が絶妙な『パラサイト 半地下の家族』

2019年度の映画賞を軒並み獲得し、アジアからアカデミー賞を総なめする作品となった韓国映画『パラサイト 半地下の家族』。ポン・ジュノ監督と名優ソン・ガンホが4度目のタッグを組んだ作品です。

裕福な家庭に貧しい家族が仕事人として入り込んだことから起こる悲喜劇の数々。コメディのようでもありますが、ただのコメディではありません。

この映画が、なぜこんなにも高評価が獲得できたのか……。序盤に配された伏線、そしてクライマックスの仕掛けとして、目で見ることが出来ない物を表現させるなど、ポン・ジュノ監督の粋な演出をたっぷりと感じることができる作品です。

映画『パラサイト 半地下の家族』の作品情報

(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

【日本公開】
2020年(韓国映画)

【原題】
기생충/Parasite

【監督】
ポン・ジュノ

【キャスト】
ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム

【作品概要】
前半と後半で、ガラリと展開が変わるネタバレ厳禁の厳戒令が敷かれた、細かくジャンル分けするのも困難な韓国映画『パラサイト 半地下の家族』。

韓国映画において史上初めてとなるパルム・ドールを受賞し、2019年度のアカデミー賞をも席巻し、アジア映画=韓国の存在を決定づけたスペクタクル作品です。2013年から構想を思いつき、徐々に練っていったポン・ジュノ監督の意欲作!

映画『パラサイト 半地下の家族』のあらすじとネタバレ


(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

窓を覗くと頭の位置に地面がくる半地下に暮らす、4人の家族。父ギテク、母チュンスク、息子ギウ、娘ギジョンのキム一家は、いわゆるお金が無い貧困層に属しています。

Wi-Fiも無料の電波を探し、部屋の隅っこにかろうじて入るものを兄妹で使っていました。母親のチュンスクから、ピザの内職の連絡があるはずだからカカオトークをチェックする様に言われます。

この内職も、ピザの宅配の箱を家族4人でこなすなど、まともな仕事すら就けません。

キム一家の自宅は半地下のため、街で害虫駆除のスプレー散布もダイレクトに被害が出て、まともに息すらできません。

しかし家に出る便所コオロギの駆除にもなると父親のギテクが言い、スプレーの煙が部屋に蔓延した真っ白な状態で箱折りを続けます。

ある日、ギウの友達で大学生のミニョクがやってきました。彼は、キム家にお土産として山水景石という大きな石を贈ります。父ギテクは、その石の価値を理解していて、お礼を言います。

ミニョクがギウの元を訪れたのは、あるお願い事があったからでした。それは、ミニョクが家庭教師をしているダヘという女の子の勉強を、留学に行く自分の代わりに見てほしいとのことだったのです。

でもギウは浪人生で、大学生ではありません。ミニョクは、チャランポランの現役大学生よりも4浪もしているギウの方が学力は高いし、信頼しているとのこと。

どうやらミニョクはダヘのことが好きらしく、大学に入ったら彼女と付き合うのだと。そういった面からも、ミニョクはギウのことを信頼しているからこその打診でした。

しかし、ギウは浪人生…経歴をでっち上げる他ありません。ここは、妹のギジョンの出番です。ギジョンは、パソコン関係にめっぽう強く、偽造文書などはお手のもの。

あっという間に、大学の書類などを作成してしまうギジョン。家族の関心を買い、その才能を発揮していました。

父のギテクは、ギウを送りだす時に誇らしいと伝えます。その言葉を受け、ギウはこの偽造文書は犯罪では無いと応えます。

なぜなら来年この大学に入るから、書類を先に受け取っただけと意欲を示し、面接へと向かうのでした。

家庭教師先の家は、高台に位置する庭がとても綺麗な豪邸。この家の奥様と思わしき上品なおばさまに出迎えられるも、その人はお手伝いさんでした。その家にはヤンチャな子供がいる様で、おもちゃが散乱しています。

奥の中庭には、その家の奥様がいました。奥様は、前任のミニョクを気に入っていて、”ブリリアント”だと、どこか違和感のある表現をあえて英語にして使っている様に見えます。

この家は、パク家の豪邸。奥様は綺麗な方で、絵に書いた様な裕福な家庭だったのです。

ミニョクの紹介ということもあり、難なく家庭教師の仕事につくことが出来たギウは、最初の授業からすでにその手腕を発揮し、教え子であるダヘも含めて奥様からも気に入られます。

ギウはケビンと名乗り、見事に身分を偽って、家庭教師の職にありつくことに成功したのでした。

すると末っ子のダソンが、インディアンの格好をしておもちゃの矢を放ってきます。どうやら奥様も、ヤンチャなダソンに手を焼いていることが判明。

するとギウは、壁に飾っていたダソンの絵を見て何か感じる物があると言い、知り合いのジェシカという美術の教師を紹介すると言い、連れてくることにするのです。

次にやってきた時には、ジェシカと名乗る妹のギジョンを同行させるギウ。するとダヘは、そのジェシカにやきもちを焼き、ギウは初めて会ったしそんな関係では無いと答える。そして、少し見つめ合い2人は、キスを交わすのでした。

一方、ダソンとギジョンの方は、奥様が最初の授業を見学したいという申し出を断り授業を進めます。奥様が差し入れを持って行こうとする間もなく、ギジョンはリビングにダソンと共に座っていました。

そこでギジョンは、ダソンの絵からその一家の過去にまで迫る考察を展開します。見事に言い当てていたギジョンを、ジェシカ先生として受け入れることにした奥様でした。すると、旦那様が帰ってきます。

奥様から紹介されると、ダソンをよろしくと、上品で貴賓がある方でだということが伝わります。そして先生を送って行く様にと、若い運転手に頼むのでした。

ここから、ギジョンの仕掛けが繰り出されます。運転手が家まで送るというと、ギジョンは執拗に駅までと頼みます。ここのやりとりにつけ込んだギジョンは、自分が履いている下着を脱ぎ、わざと車に忘れて行くのでした。

今度は運転手として父のギテクを、パク家に送り込む計画であることが、翌日の食堂での会話で判明。そして案の定、事態はギジョンの思惑通りに進んでいきます。

旦那様が、車の中で下着を発見。そして家に持ち帰り奥様と良からぬ想像を繰り広げ、仕事に来ていたギジョンに尋ねます。前回送っていってもらった時に何か無かったかと。

ギジョンは、そこで執拗に家まで送ると言われたと伝え、運転手をクビにしたことが発覚するのです。そしてギジョンは、知り合いのベテラン運転手を奥様へと勧めます。

すると父のギテクは、旦那様と同じ車種が売っているディーラーに行って、カーナビなどの細かい操作を覚え面接へと向かうのでした。昔取った杵柄で運転の技術もそれなりに高いギテクは、無事に採用されることが決まります。

ここまでくると残るは母親のチュンスクだけ……。当然標的は、家政婦です。しかし家政婦は、古くからこの家に支えており、パク一家がこの豪邸に越す前からずっと務めていた古参のムングァン。

彼女の牙城を崩すのはとても難しいと見られていましたが、ある事がきっかけに一気に事態は好転していきます。

パク家では、桃が出ません。桃は、家政婦のムングァンが重度のアレルギー持ちの為、パク家では一切出されませんでした。その桃を突破口にして、ムングァンを追い込むことに成功します。

桃を使って、アレルギー症状を出してムングァンを病院に向かわせると、ギテクがその現場を抑えます。そしてそれを奥様に報告し、結核であることをでっち上げるのでした。

その計画は見事でした。小さい子供がいるパク家では、伝染病である結核はとても危険で、見事にムングァンを追い出すことに成功します。

架空の高級派遣会社を装い、母のチュンスクを家政婦としてパク家に送り込み、計画を見事にやり遂げたキム一家。そしてパク家では、これまで出なかった桃が食卓に並ぶのでした。

パク一家は、キャンプに出かけます。

豪邸の主がいなくなった瞬間、家の中ではキム一家の4人が羽を伸ばしています。お酒を飲んで、庭で騒いだり、何も考えずに楽しい時間が過ぎていきました。

すると、そこに予期せぬ訪問者が訪れます。

それは、みるも無残な姿になった前任の家政婦であるムングァンでした。

家政婦の時はしっかり者という印象がありましたが、よく笑い、どこか異様な雰囲気を醸しています。台所の地下室に、忘れ物をしたとのこと。

キム一家は仕方なく、その家政婦ムングァンを家の中へと入れるのでした。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『パラサイト 半地下の家族)』ネタバレ・結末の記載がございます。『パラサイト 半地下の家族』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

雨も強まり、ムングァンが地下に行ってもなかなか戻ってこないので、チュンスクは様子を見にいきます。

すると、ムングァンが戸棚を押していますがびくともしません。手伝ってと言われチュンスクも仕方なく手伝うと、そこには地下への階段が現れたのです。

すると、ムングァンが急いで地下に降りていきます。

地下には、ムングァンの旦那らしき男性が瀕死状態でした。ムングァンは、現在でもダソンとやりとりをしていて、今日は一家でキャンプだと聞き、チュンスクと話したくてここに来たとのこと。

ムングァンは、旦那に食糧をやって欲しくてチュンスクにお願いに来たのでした。旦那は、この地下生活を4年3ヶ月17日間も続けています。

パク一家が入居する前、この家を建てた建築家の先生がパリに行った間に旦那をここに連れてきたというムングァン。

こういった豪邸には北朝鮮の襲撃から逃れるための地下シェルターが作られており、パク一家はここの存在を知らないらしい。

ムングァンは、恵まれておらず借金取りから逃げるために旦那を地下にかくまっていたのでした。このまま地下生活を続けさせてほしいと、チュンスクに頼み込むムングァン。

チュンスクはそんなのお構いなしに、「警察に連絡する」と言ったその時、こっそり話を盗み聞きしていたギテクに、ギウに、ギジョンが倒れ込んでしまいます。ついにムングァンに彼らが家族である事がバレてしまいました。

そしてムングァンは手に持っていたスマホで、キム一家のことを動画で撮影します。それが証拠となり、立場が逆転。

ムングァンの態度が一変し、リビングでくつろぎます。一方、キム一家は手を挙げて正座をさせられてしまいました。

ムングァンとその旦那がくつろぎ、過去の思い出に浸っているその隙をついて突進し、スマホを奪いとるキム一家。

そして冷蔵庫にある桃をムングァンに擦り付けて状況を打破します。すると、電話が入ります。奥様でした。

雨が酷過ぎて、キャンプに行った渓谷で、水が溢れて帰ってきたのです。奥様は、ジャージャー・ラーメンを作って、ダソン食べさせてあげたいと呑気に言っています。そして、ナビでは8分後に到着するとの事。

キム一家は慌てふためきます。先ずチュンスクはお湯を沸かしてジャージャー・ラーメンを。

ギテクは、ムングァンの旦那を再び地下へ。ギウはムングァンを運び、とにかくこの惨状を隠し通すべく元どおりにしました。

その後ギウは、ダヘの日記を元に戻しに部屋へと急ぎます。ギジョンがテーブルの上を片付けているとパク一家が帰ってきました。

ギジョンはテーブルの下に隠れ、ギウはベッドの下に、ギテクは地下に。チュンスクは、ジャージャー・ラーメンを振る舞います。

しかしムングァンは拘束される前に気が付き、奥様に真相を明かすべくキッチンへと大急ぎ!

その異変を察知したチュンスクは、飛び出すムングァンを足で払い落とします。するとムングァンは、階段下まで転げ落ち頭を打って気絶しました。

意識のないムングァンを地下に運び込んだギテクは、そのまま地下に留まります。

奥から声が聞こえその場に行ってみるギテク。そこには、ムングァンの旦那がモールス信号で階段上のライトを点滅させていました。

それは誰も気が付かず、奥様はジャージャー・ラーメンを食べながらライトのセンサーは気まぐれね、とぼけている始末。

しかし、ダソンはスカウトに所属しているので、モールス信号を知っているはずと信じ、送り続けていたのでした。

ここで奥様が、ダソンの過去について明かします。それはダソンのトラウマ。

ダソンはかつて、自分の誕生日に幽霊を見たとかで、引きつけを起こしてしまい、それ以降ダソンの誕生日には自宅以外で過ごすというのがパク家の恒例行事になっています。

奥様は続けます。家で幽霊騒ぎが起きると事業が成功すると云われており、確かにそれ以降、事業は順調に進んでおりダソンの言っていた事を前向きに捉えているようでした。

しかしその幽霊は、ムングァンの旦那がダソンの前に現れたからだったのです。

ムングァンの旦那はギテクに、この地下生活を続けさせてほしいと頼んでいました。しかしそんな事は今はどうでもよく、とにかくパク家から脱出する事が最優先です。

ダソンは、庭にインディアンのテントを張り、そこから出ようとしません。その隙にチュンスク以外の3人は、リビングのテーブルの下に隠れます。

しかし事態はより深刻化。旦那様と奥様はダソンを見守るために、リビングのソファーで寝ることに。

手を伸ばせば届く位置に2人がおり、ギテク、ギウ、ギジョンは、息をするのも難しい状況へ陥ります。

すると旦那様は、あの匂いがすると奥様に言います。運転手を務めているギテクの匂いでした。

独特の臭いだと言い、言動や行動は度を越さないからいいと認めるも、臭いだけは度を越しやがると、愚痴をこぼしたのです。

そして夫婦の営みが始まり、気まずさと共に息を潜ませているキム一家でした。

なんともいえない時間が経過し、ようやくパク夫婦が眠りにつくと、一気に逃げ出そうとする3人。その瞬間、庭にいるダソンがトランシーバーで眠れないと旦那様に告げます。

見つかる!と一瞬ヒヤッとしますが、辛うじてパク家から抜け出すことに成功した、ギテク、ギウ、ギジョンの3人でした。

大雨の中、急いで自宅の半地下へと帰ります。しかしこの大雨で、キム一家が住んでいる地域は冠水してしまい大洪水になっています。

必要なものを急いで持ち出す中、ギウはことの始まりでもあったミニョクから贈られた山水景石の石を持ち出すのでした。

避難先で、ギテクは言います。ギウに、この後の計画を聞かれたことに対しての返答です。

「計画はある、それは無計画だ。今日誰がこの避難先で寝るなんて計画した? 計画が計画がなければ、間違いもない」計画なんてしなければ、最初から失敗する事はないと、半ば諦めとも取れるような発言をしました。

ギウは、父のその言葉を聞いて謝り、全ての責任を自分が取ると言うしかありません。

翌朝、パク家ではダソンの誕生日パーティーの準備を始めます。昨晩の事を何も知らない奥様は、ギジョンに誘いの電話を入れていました。

ギテクにも休日手当てを出すから出勤してほしいとの電話を入れ、誕生日パーティーの買い出しに同行させ、手伝いをお願いします。

すると買い出しが終わり、帰りの車中で奥様が鼻を覆い窓を開けます。ギテクの臭いでした。その動きを察知したギテクは、そんなに臭うのかと顔をしかめるしかありません。

ダヘの部屋では、ギウとキスをしていました。しかし頭の中では昨晩の出来事でいっぱいいっぱいです。

ダヘにも、「他のことを考えていたでしょ?」と、見抜かれてしまうギウ。自分で全てを終わらせよう、と考えています。山水景石の石を抱え、地下に向かおうとしていました。

一方、ギテクは旦那様と一緒にダソンのサプライズの準備をしています。

インディアンに扮し、みんなの前に登場すると言うもの。そこでダソンが現れ、旦那様とギテクが扮する悪いインディアンをやっつけてヒーローになるという計画です。

旦那様と話していると、ギテクがつい嫌味を言ってしまい釘を刺されます。「これも仕事の一環と捉えてください」と。

そしていよいよ、誕生日パーティーが始まります。

ギウは、地下に降りムングァンの旦那を石で殴って殺してしまおうと考えていたのです。しかし、その計画は破綻し、逆にムングァンの旦那に石で殴られてしまい意識を失います。

ムングァンの旦那は、血塗れになりながらもキッチンで包丁を手にし、庭でギジョンを刺してしまいます。ムングァンの仇討ちで、キム一家を皆殺しにしようとしていたのです。

誕生日パーティーは戦々恐々となり、大騒ぎ!

ギジョンは、胸辺りを深く刺され倒れます。倒れたすぐ後ろにはダソンがいました。ムングァンの旦那と目が合い恐怖を感じたダソンは、そのまま気絶します。

旦那様は、ダソンを抱え上げ病院に向かおうとします。

ギテクはギジョンの介抱をしていました。旦那様と奥様は、ギテクに車を出させようとしますが、ギジョンに付いているので、鍵をもらおうと必死です。

ムングァンの旦那は、チュンスクと格闘。敵討ちをしようと、躍起になっていました。

そしてギテクが旦那様に向けて投げた車の鍵は、2人の下に落ち、ムングァンの旦那がその上に乗っかります。

チュンスクが間一髪のところで危機を脱し、慌ててギジョンのもとに駆け寄り、旦那様はムングァンの旦那を退けて車の鍵を取ろうとしました。

その時です。長年地下にいたムングァンの旦那は、体が臭かったのです。鼻を覆い、鍵を取る旦那様。その光景を見ていたギテクは、心配していた表情が一瞬にして凍りつきます。

旦那様に殺意を覚え、衝動的に地面に置いていた包丁を手にし刺してしまうのでした。一瞬の出来事で瞬間的に我に帰ったギテクは、直ぐにその場を立ち去ります。

1ヶ月後……。ギウは目を覚ましました。脳に損傷が残り、どんな時でも笑ってしまう後遺症が残ったギウ。

偽造文書作成や傷害致死などの罪が問われ裁判となってしまうも、運よく執行猶予となり、帰宅の途につく事ができました。

その後ギジョンは亡くなってしまい、父親のギテクは行方不明となりニュースでも大きく報じられています。

ギウはその後、たまにあの豪邸を見に行きます。

現在では外国人の一家が住んでいるらしく、事情を知らない人たちを住まわせているとのこと。そしてギウは、ある光景を目にします。

階段下のライトが、点滅していたのです。それは父親のギテクからのモールス信号。見つけてくれるであろうギウに向けてのメッセージです。

ギウはそのモールス信号を解読すると、ある計画を建てます。先ずは、お金を稼ぐこと。お金を稼いで、あの家を買うこと。そして、再び家族再会の時を迎えること。

その計画を夢見て、ギウは「それでは」と、決意を胸に抱き、父への手紙を締めくくります。

映画『パラサイト 半地下の家族』の感想と評価


(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

この映画は、公開当時ネタバレ厳禁として厳戒令が敷かれるなど、とにかく話題に挙がっていた作品です。

公開直前から、劇場公開の最中にレビューをする際にも、物語の確信に触れないように気を使っていたのも多く見られた光景でした。

それもそのはず。この映画『パラサイト 半地下の家族』には、数多くの伏線が散りばめられているのです。

「山水景石」を解く


(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

先ず、最初に目につくのは、冒頭に登場する違和感。山水景石という石

この石は、単純に山や川といった自然の風景を思わせます。これを、収入格差という当たり前の風景として暗喩で描いているのです。

貧困層の格差を風景として捉えこの山水景石を凶器にしているのは、その当たり前を壊すべきというメッセージが込められているのかもしれません。

次に登場するのは、「プリテンド」。ギウがダヘに教える時に例題として出した単語です。

これは、意味を調べると簡単にわかるので、ある意味であからさまなものでした。「プリテンド」の意味は、簡単に言えば、見せかけ。フリをするという意味も含まれています。これは、まさしくキム一家のことを刺している様な単語でした。

「家政婦ムングァン」を解く


(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

次に、家政婦だったムングァンへの疑いです。ムングァンが解雇された際に、旦那様とギテクの車中での会話にて。

旦那様が家政婦ムングァンの愚痴をこぼす際、2人分の食事を摂っていたと漏らします。それはまさしく後に繋がる伏線的な会話でした。

キム一家の全員が、ついにパク家に支えることになり、最後の母チュンスクが家政婦としてやってきます。

するとダソンが、ギテクとチュンスクの臭いが同じと言い、次のシーンでギジョンが半地下の臭いと言っていました。

もちろんこの臭いというのは、クライマックスに向けて大きな鍵となるもの。しかしここでは、家族である事がバレない様にするためのミスリードを誘発させていたのです。

「大洪水」を解く


(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

そして最後に紹介する伏線は、ギウが酔っ払いをペットボトルの水で追い払う場面。妹のギジョンがスマホで動画を撮り、そのシーンを撮影する際にいう言葉、「大洪水だ」。

もちろん、この後に本当に大洪水になるとは、この時点では、誰も思わないでしょう。

そしてこれらのシーンが、前半部分である開始1時間以内に全て登場するのです。もはや、注意深く観てさえいれば、この後に何が起きるかは全て最初の1時間ではっきりと予想がつくのです。

それだけ、この映画に配された仕掛けの多くに、改めて鑑賞すると圧巻と感じざるを得ませんでした。

そして最後の仕掛けである、見えない鍵

それは当然”臭い”です。どんなに技術が進歩しようとも、映像では絶対に表現する事ができないもの。その”臭い”を使って、クライマックスを一気に戦々恐々の場面に仕立て上げるのです。

この目にみえない仕掛けこそ、この映画のハイライトでもありました。

ポン・ジュノ監督の見事な仕掛けに、アジア映画では頭一つ飛び抜けている韓国映画の素晴らしさを感じ、戦々恐々とする映画さながらの恐ろしさを覚えるとともに、これまでにないワクワク感がこみ上げてきます。

まとめ

(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

この映画『パラサイト 半地下の家族』は、前半は見事なコメディでした。

キム一家が、徐々にあの豪邸にパラサイトしていく様子は、思わず笑いがこみ上げてきます。そして、後半の怒涛の展開に、想像を軽く超えてくる驚きを仕掛けを用意しているという作品です。

この映画を改めて見返すと、1度目の頃には気がつかなった幾つもの仕掛けがありました。その仕掛けに気がつくと、この作品が持つ意味などは、余計な考察かもしれません。

それは単純に映画としての質、エンターテイメントとしての映画の素晴らしさにやられたのですから

そもそもこの映画のあらすじを聞いて、大洪水に巻き込まれラストにあんな殺戮ショーが展開されるなんて、誰が想像しますか?

しかもその引き金となるシーンを、主演のソン・ガンホの表情だけでもっていくなんて…

これぞ映画ができる素晴らしい表現方法だと、その評価の高さが物語っている事でしょう。




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