Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

仮面ライダー×ウィザード&フォーゼMOVIE大戦アルティメタム|映画感想と考察評価。浦沢義雄をはじめとする東映特撮スタッフが総結集|邦画特撮大全71

  • Writer :
  • 森谷秀

連載コラム「邦画特撮大全」第71章

今回の邦画特撮大全は2012年の映画『仮面ライダー×仮面ライダーウィザード&フォーゼMOVIE大戦アルティメタム』。

この作品は、石ノ森章太郎原作で、アクションを含む監督は坂本浩一、脚本は浦沢義雄が手がけました。

実は浦沢は、公開が迫る映画『がんばれいわ!!ロボコン』の脚本も担当しています。浦沢義雄が東映特撮の脚本を執筆するのは『仮面ライダー×仮面ライダーウィザード&フォーゼMOVIE大戦アルティメタム』(2012)以来、8年ぶりのこと。“浦沢義雄の仮面ライダー”をじっくりご紹介します。

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら

『仮面ライダーウィザード&フォーゼMOVIE大戦アルティメタム』の作品情報

「ウィザード&フォーゼ」製作委員会 (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映
【公開】
2012年(日本映画)

【原作】
石ノ森章太郎

【監督・アクション監督】
坂本浩一

【脚本】
中島かずき、浦沢義雄

【キャスト】
白石隼也、福士蒼汰、吉沢亮、高橋龍輝、清水富美加、坂田梨香子、富森ジャスティン、土屋シオン、志保、田中卓志、原幹恵、真野恵里菜、須賀健太、足立梨花、山谷花純、長澤奈央、神保悟志、遠山俊也、奥仲麻琴、高山侑子、戸塚純貴、中川絵梨奈、篤海、小宮孝泰、KABA.ちゃん、小倉久寛、入来茉里、渡部秀、関智一、三ツ矢雄二、デーモン小暮

【作品概要】
本作『MOVIE大戦アルティメタム』は新旧仮面ライダーが競演する映画「MOVIE大戦」シリーズの第4弾で、今回は『仮面ライダーフォーゼ』(2011~2012)と『仮面ライダーウィザード』(2012~2013)の競演作品です。

『フォーゼ』編はTVシリーズ最終回から5年後を舞台にしており、教師になった主人公・如月弦太朗をはじめ仮面ライダー部のその後の姿が描かれます。福士蒼汰、吉沢亮らオリジナル出演者が集結。そして『ウィザード』編には伝説のスーパーヒロイン“美少女仮面ポワトリン”が登場。

『フォーゼ』編の脚本は、TVシリーズのメイン脚本家で劇団☆新感線の座付き作家・中島かずきが担当。『ウィザード』編、『MOVIE大戦』パートの脚本は、『美少女仮面ポワトリン』(1990)のTVシリーズのメイン脚本家・浦沢義雄が担当しています。監督、アクション監督は『仮面ライダーフォーゼ』のメイン監督・坂本浩一が担当しました。

美少女仮面ポワトリンほか集結する石ノ森ヒーローたち

「ウィザード&フォーゼ」製作委員会 (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映

本作『MOVIE大戦アルティメタム』には仮面ライダー以外にも石ノ森章太郎が生み出したヒーロー、ヒロインたちが多数登場します。

まずは『美少女仮面ポワトリン』。“東映不思議コメディーシリーズ”の一作で、この作品のメイン脚本家が本作MOVIE大戦アルティメタム』を執筆した浦沢義雄です。

町中の人間がポワトリンの誕生日を祝うシュールな展開や、ぬいぐるみにされる怪人など、ポワトリンが活躍するアンダーワールド(精神世界)の不思議な雰囲気はまさに浦沢義雄ワールドです。

原典通り「コスモマジックメタモルフォーゼ」、「愛ある限り戦いましょう。命燃え尽きるまで」など、ポワトリンの決め台詞も健在でした。

「○○が許してもポワトリンが許さない!!」というTVシリーズの決め台詞は今回、「ミッツ・マングローブが許してもマツコ・デラックスが許さない」に変更されています。

一見ギャグに感じるこの台詞ですが、実はポワトリンの正体に関する大きな伏線となっています。

『フォーゼ』編には『イナズマン』が登場。敵役の番場影人/ヘラクレス・ゾディアーツの名前も、『イナズマン』の敵・帝王バンバがモチーフです。

そして作品全体の悪役である“アクマイザー”は『アクマイザー3』が原典です。「アクマ」という訳で、アクマイザーのリーダー・ザダン(原典のザビダン)の声はデーモン小暮が担当しました。

坂本浩一監督はアクマイザーに強い思い入れがあったようで、3人のポージングや攻撃など、オリジナルへのリスペクトを強く感じる描写も多数登場しています。

観客を圧倒する坂本浩一監督渾身のアクション

「ウィザード&フォーゼ」製作委員会 (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映

監督とアクション監督を共に坂本浩一監督が担当したこともあり、本作は全篇に亘ってアクションシーンが満載です。以下、見所のアクションを見ていきましょう。

まず冒頭の朔田流星のアクションはTVシリーズ同様に、ブルース・リーが考案したジークンドーを基調にしたものです。この冒頭のアクションから一気に観客を引き込みます。

そして弦太朗と三郎の追跡劇にはパルクールが取り入れられています。パルクールとは街中をアクロバティックに駆けて行くスポーツで、坂本監督は以前から作品内にこのアクションを導入したかったと言います。

小型カメラGoPro(ゴープロ)による主観映像を織り交ぜた映像はスピーディーで、アクションと撮影と編集、各パートの力が見事に重なり結晶した迫力ある映像となっています。

余談ですがアパートの階段から弦太朗と三郎の2人が飛び降りる描写は、ジャッキー・チェン映画へのオマージュです。

『ウィザード』編ではTVシリーズ同様、仮面ライダーウィザードのエクストリーム・マーシャル・アーツ(XMA)を堪能できます。ワイヤーを使用しない華麗なアクションは必見です。

刑事・大門凛子のガンアクションにも力が入っています。また美少女仮面ポワトリンのアクションは、演じる入来茉里が新体操経験者だったため、柔軟系のアクションとなりました。

終盤には『マッドマックス2』(1981)を意識した装甲車によるアクションも登場。本作の公開は2012年で、『マッドマックス 怒りのデスロード』(2015)よりも数年早いのです。

まとめ

「ウィザード&フォーゼ」製作委員会 (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映

王道の青春モノである『仮面ライダーフォーゼ』と、浦沢義雄脚本によるシュールな世界が展開するTVシリーズとは一風変わった『仮面ライダーウィザード』。

一見水と油に感じる2つの作品の要素を見事に成立させた本作『仮面ライダー×仮面ライダーウィザード&フォーゼMOVIE大戦アルティメタム』。全篇を通してアクションが満載の一大娯楽大作となっています。

次回の『邦画特撮大全』は…

(C)石森プロ・東映

次回の邦画特撮大全は『がんばれいわ!!ロボコン』(2020)を特集します。お楽しみに。

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら



関連記事

連載コラム

映画『ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』感想レビュー。“略奪という行為”は社会に存在してはならない|銀幕の月光遊戯26

連載コラム「銀幕の月光遊戯」第26回 ピカソ、フェルメール、ルノワール、ブリューゲル、マティス、ムンク、モネ…。ナチス・ドイツに略奪され、今なお行方不明の名画たち。 なぜナチス・ドイツは美術品を略奪し …

連載コラム

映画『クローブヒッチ・キラー』感想評価とレビュー考察。結末の展開が読めない連続殺人事件の真相に俳優チャーリー・プラマーの演技が光る|サスペンスの神様の鼓動41

サスペンスの神様の鼓動41 映画『クローブヒッチ・キラー』は2021年6月11日(金)より新宿武蔵野館ほかロードショー予定!! 10年前に、ある小さな町で起きた未解決事件「巻き結び(クローブヒッチ)連 …

連載コラム

『ゴーストランドの惨劇』感想と評価【トラウマ映画・どんでん返し】の鬼才パスカル・ロジェが描く新たなホラーの恐怖|SF恐怖映画という名の観覧車61

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile061 『マーターズ』(2009)で世界にトラウマを植え付けたホラー界の鬼才パスカル・ロジェ。 理不尽な暴力を描く作品が評価を集める一方で、前回 …

連載コラム

大林宣彦監督が新作『海辺の映画館』にて、東京国際映画祭2019のレッドカーペットに登場|TIFF2019リポート3

第32回東京国際映画祭は2019年10月28日(月)から11月5日(火)にかけて10日間開催! 2019年にて32回目を迎える東京国際映画祭。令和初となる本映画祭がついに2019年10月28日(月)に …

連載コラム

【未体験ゾーンの映画たち2021おすすめベスト10】Wiki情報より詳細な考察ランキング発表。全41本を全て見たシネマダイバー《増田健セレクション》

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」第42回【最終回】 さまざまな理由から日本公開が見送られていた映画を紹介する、毎年恒例の劇場発信型映画祭”未体験ゾーンの映画たち”。今回10回目となる …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学