連載コラム「邦画特撮大全」第70章
今年2020年7月31日に公開の新作映画『がんばれいわ!!ロボコン』。今年4月1日に製作決定の報が出た時には石田秀範監督と脚本の浦沢義雄と、メインスタッフ2人しか発表されていませんでしたが、少しずつ情報が解禁されてきました。
今回の邦画特撮大全は、先日解禁された情報から映画『がんばれいわ!!ロボコン ウララ~!恋する汁なしタンタンメン!!の巻』(以下、『がんばれいわ!!ロボコン』)を紹介していきます。
CONTENTS
映画『がんばれいわ!!ロボコン』の作品情報
【公開】
2020年(日本映画)
【原作】
石ノ森章太郎
【監督】
石田秀範
【脚本】
浦沢義雄
【出演】
斎藤千和、土屋希乃、江原正士、鈴村健一
映画『がんばれいわ!!ロボコン』の魅力的なキャスト陣
新型コロナウィルスの影響で撮影開始が延期となっていた『がんばれいわ!!ロボコン』ですが、スタッフのマスク着用と検温、全篇オールアフレコで撮影人数を減らすなどの感染症対策を行い、先日無事クランクアップを迎えたそうです。
令和のロボコンの声を担当するのは、アニメ『ケロロ軍曹』や日向夏美、『魔法少女まどか☆マギカ』の種美ほむらなどで知られる声優の斎藤千和。ロボコンのアクションは前作『燃えろ!!ロボコン』と同じく、ジャパン・アクション・エンタープライズの神尾直子が担当。
令和に復活したロボコンの姿は一部変更されています。赤いタマゴ形のシルエットとお腹のハートマークは変わりませんが、手足はより頑丈な造りとなっています。また動力源は前々作のガソリン、前作の電気を経て、本作では太陽光に進化。頭のアンテナも、太陽光を集めると同時にレーダー機能を兼ね備えた「サンサンレーダー」に進化しています。斎藤千和の声による新しいデザインのロボコンが、どんなロボコン像もとい「ロボ根性」を見せてくれるのか期待大です。
「ロボコン0点」のフレーズと厳しい採点でお馴染みのガンツ先生。本作でガンツ先生を担当するのは江原正士。トム・ハンクスやウィル・スミスの吹替えなどで知られる実力派声優です。これまでガンツ先生の声は一貫して野田圭一が担当してきたことや、江原正士の特撮作品への出演経歴が少なかったこともあり、筆者個人としては今回発表された中でガンツ先生役が一番意外に感じたキャスティングです。
また物語の鍵を握る「汁なしタンタンメン」の声には、アニメ『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』のシン・アスカや『銀魂』の沖田総悟などで知られる鈴村健一。特撮ファンとしても知られる鈴村健一は、『仮面ライダー電王』のリュウタロス、現在放送中のスーパー戦隊シリーズ『魔進戦隊キラメイジャー』の魔進ファイヤの声を担当するなど、今や東映特撮作品でお馴染みの声優の一人となっています。
衝撃ワード「汁なしタンタンメン」と「トルネード婆々」への歴史
発表されたストーリーに登場した「汁なしタンタンメン」と「トルネード婆々」というワードを見て、多くの方が衝撃を受けたでしょう。また脚本を担当する浦沢義雄の作風を知っている方は、納得したのではないでしょうか。
脚本を担当する浦沢義雄の作風のひとつに、「無生物が意志を持って活動する」というものがあり、今回の汁なしタンタンメンもその系譜にあるからです。では過去にはどのようなものがあったのか見て行きましょう。
まずファンの間で語り草となっている、東映不思議コメディーシリーズの第3弾『ペットントン』(1983~1984)の第30話「横浜チャーハン物語」。この回では、恋に落ちたチャーハンとシュウマイの駆け落ちが描かれます。続く第36話「豆腐が怒った日」では、麻婆豆腐になりたかった豆腐が味噌汁の具にされ、登場人物たちが豆腐に襲われるというシュールな展開を繰り広げます。
この作風は次作『どきんちょ!ネムリン』(1984~1985)ではさらにパワーアップ。都会の喧騒に疲れたバス停が焼身自殺を図ったり、肉まんとアイスクリームが戦争をしたり、受験に失敗したタコが暴走族になり、除夜の鐘は撞かれるのがイヤになり逃亡するのです。『ペットントン』では実際にチャーハンや豆腐が意志を持っているように撮影されるだけでしたが、『どきんちょ!ネムリン』では無生物たちに声が重ねられました。
他にもあげるとキリがありませんが、このように浦沢義雄が脚本に参加した「東映不思議コメディーシリーズ」では、無生物が意志を持って動くというのが当たり前なのです。
また無生物が意志を持って動くパターンとは違いますが、『テツワン探偵ロボタック』(1998~1999)の第14話「恋する餃子の涙」を忘れる訳にはいきません。
サブタイトルにある「恋する餃子の涙」の謎を解くため、主人公のロボタックが餃子と他の中華料理をデートさせるというもの。ブランコに乗せた中華料理を前に、ロボタックがムードを出すためヴァイオリンを弾く映像はシュールです。結局のところ、「恋する餃子の涙」とはハート型の餃子にラー油を大量にかけて食べ涙を流すことだったのですが、ハート型餃子が涙を流す様子を合成で見せるなど、馬鹿馬鹿しい展開に映像技術が使用されています。
この浦沢義雄による脚本を演出したのが「ヒデ・I」こと石田秀範監督。実はこの回での演出手腕が評価され、石田監督は『仮面ライダークウガ』のメイン監督に抜擢されたというのですから驚きです。「恋する餃子の涙」を生み出したコンビが、20年後に世に送り出す「恋する汁なしタンタンメン」は一体どんな作品になるのか、まだ全容がつかめません。
次に「トルネード婆々」ですが、『おもいっきり探偵団覇悪怒組』には豆板醤婆あ、『美少女仮面ポワトリン』にはバリカン婆々と、浦沢義雄は過去にこうした強烈なキャラクターを登場させています。
そして『魔法少女ちゅうかなぱいぱい』の三軒茶屋小百合や、『美少女仮面ポワトリン』の本田警部など、WAHAHA本舗の柴田理恵が東映不思議コメディーシリーズで演じてきたキャラクターたちも非常に強烈でした。そのためネット上では、「柴田理恵がトルネード婆々を演じるのでは?」という声もあります。
しかし『ペットントン』ではペットントンが居候する畑家の祖母セロリを斉藤晴彦、前述の『美少女仮面ポワトリン』のバリカン婆々を市川勇が、青島幸男の『意地悪ばあさん』かばってん荒川を彷彿とさせる女装スタイルで演じていました。老婦人の役だからといって、女性が演じるとは限らないのです。一体、トルネード婆々役を誰が演じるのか気になる所です。
まとめ
まだまだ解禁情報が少ない『がんばれいわ!!ロボコン』。20年ぶりに復活するロボコンが一体どんな映画になるのか、期待が膨らみます。公開まで1カ月と少し、続報を待ちましょう。
次回の『邦画特撮大全』は…
次回の邦画特撮大全は『仮面ライダー×仮面ライダーウィザード&フォーゼMOVIE大戦アルティメタム』(2012)を紹介します。お楽しみに。