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Entry 2020/05/06
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河崎実映画『三大怪獣グルメ』あらすじと感想レビュー。巨大生物を海鮮丼にして食べるという異質な面白さ|SF恐怖映画という名の観覧車101

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile101

令和の時代、激しく移り変わる世界を生き抜く上で必要不可欠と言えるのは、新たなものを生み出す「発想力」と、アイデアを実行に移す「行動力」にあると言えます。

そんな令和の時代の中、「ウルトラマン」などの特撮ヒーローに憧れ監督となった「行動力」と、普通の人には考え付かないであろう異次元の「発想力」を持った異質な監督が遂に最新作を世に放ちます。

そんな訳で、今回は『いかレスラー』(2004)や『日本以外全部沈没』(2006)など、トンデモ映画を数多く出がけてきた河崎実監督による最新映画『三大怪獣グルメ』(2020)をご紹介させていただきます。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

映画『三大怪獣グルメ』の作品情報

(C)2020 「三大怪獣グルメ」製作委員会

【公開】
2020年(日本映画)

【監督】
河崎実

【監修】
久住昌之

【キャスト】
植田圭輔、吉田綾乃クリスティー、安里勇哉、横井翔二郎、木之元亮、黒崎澪音、伊橋剛太、小林さとし

映画『三大怪獣グルメ』のあらすじ

(C)2020 「三大怪獣グルメ」製作委員会

巨大化したタコ「タッコラ」と巨大化したイカ「イカラ」が東京に現れ大暴れしたことで、東京は大きな被害を受けます。

SMAT(Seafood Monster Attack Team)に選抜された星山奈々(吉田綾乃クリスティー)の幼馴染であり、巨大化の要因である薬を開発していた元研究員で現寿司職人の田沼雄太(植田圭輔)はSMATに加入し作戦を立てますが、巨大化したカニ「カニーラ」が新たに出現したことで振り出しに戻ってしまい……。

力を抜いて楽しむシュールな娯楽映画

(C)2020 「三大怪獣グルメ」製作委員会

「巨大生物が首都東京を襲う……」。

庵野秀明監督が製作した『シン・ゴジラ』(2016)は定番となったプロットをリアリティを高め描いたことで、「ゴジラ」の恐怖を再び思い出させてくれる強烈な作品を生み出すことに成功しました。

一方、河崎実監督が手掛けた『三大怪獣グルメ』は「死の恐怖」の心配が一切無い、お気楽で力の抜けるおバカな作品であり、ある意味で究極の「娯楽映画」といえる作品です。

しかし、単におバカ作品というだけではなくとにかくあらゆる面でずば抜けており、そもそもの「巨大生物を海鮮丼にする」というプロットから本作の異質さが滲み出ています。

作中では切り落とした巨大生物の一部を調理してみたら美味しく、世間ではその食材を使った料理が一大ブームとなっていきます。

考えてみればタコやイカはそもそもが美味しい食材であり、巨大化したタコやイカが美味しくない訳がありません。

ならば巨大生物として出現したタコやイカ、そして高級食材であるカニは人類には美味しくいただける食料そのものであるといえます。

主人公の田沼雄太を演じた植田圭輔が脚本を読んだ際に、たくさんの疑問を感じたとされる独特の世界観は、力強い理論で無理やり納得させてくれるまさに異次元の作品でした。

安心できる人間関係と様々なジャンルの融合作

(C)2020 「三大怪獣グルメ」製作委員会

感性を大事にする元研究員の田沼を始め、登場人物の関係性は特撮作品の王道であり安心して楽しむことが出来ます。

特殊チームSMATの隊員であり田沼の幼馴染であるヒロインの星山奈々、かつて田沼と同じ研究所に勤め恋敵となる彦馬新次郎、そして田沼の親友であり天才の新実善五郎。

物語は異質そのものでありぶっ飛んだ展開ではありますが、登場人物の関係性や設定が地に足がついているため、あり得ない設定にも関わらずどこか現実世界との繋がりも感じさせてくれます。

食糧難問題から自然愛護問題まで、現実世界では山積みである社会問題の数々も河崎実監督にかかれば有無を言わさぬ強引な説得力で解決。

映画ジャンルとして特撮、グルメ、ラブコメ、ロボット、陰謀と必要なものは全て揃えた!と言わんばかりのジャンル総結集なコメディ作として心から楽しくなれる映画です。

「一流」が集う異質な映像空間


(C)2020 「三大怪獣グルメ」製作委員会

本作はハチャメチャでおバカな映画であれど、作品には各分野の「一流」の人間たちが登場します。

主人公の田沼を演じた植田圭輔は2007年に俳優デビュー後、舞台を中心に活動を続けアニメや漫画を題材としたいわゆる「2.5次元」舞台で主演を務めるなど舞台俳優として「一流」と言える俳優です。

さらに本作の監修を務めたのは、高い人気を誇るドラマシリーズ「孤独のグルメ」の原作者久住昌之であり、「孤独のグルメ」同様に本人もちゃっかりと出演。

グルメ会の「一流」彦麻呂や、バンド界の「一流」キュウソネコカミ、「全裸監督」で話題となったAV界の「一流」村西とおるなどジャンルを問わず様々な世界での「一流」が登場し異質すぎる映像空間が広がっていました。

映画初出演となった乃木坂46の吉田綾乃クリスティーを始め、舞台俳優としての高い演技力を持つ安里勇哉や横井翔二郎、そして刑事ドラマの名作シリーズ「太陽にほえろ!」で岩城創を演じシリーズの人気を支えた名優木之元亮も出演し、「一流」として活躍する俳優陣の演技も生える作品です。

まとめ

(C)2020 「三大怪獣グルメ」製作委員会

巨大生物と人間との熱い戦いと星山奈々を巡る恋のライバルとの戦い、そして人間の前には巨大生物もただの食料でしかないというメッセージ性。

目で見て心で感じる、そして観終わってしばらくすると主演俳優の植田圭輔のようにたくさんの疑問を感じもう一度観たくなってしまうような不思議な中毒性を持った映画『三大怪獣グルメ』。

珍作、奇作好きの方にも是非観ていただきたく、また外出自粛の続くご時世であれど海鮮丼を食べたくなってしまうような映画です。

そんな『三大怪獣グルメ』は2020年6月6日よりユーロスペースにて上映開始予定。

上映開始日等は今後の状況によって変更される可能性があるため、鑑賞予定の方は充分に上映スケジュールをご確認の上、映画館に足を運んで下さいますようお願いします。

次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…

いかがでしたか。

次回のprofile102では、国民的大人気ゲームがハリウッドで実写化されたファンタジーとSFの合体作『名探偵ピカチュウ』(2019)をネタバレあらすじを交えご紹介させていただきます。

5月13日(水)の掲載をお楽しみに!

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

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