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Entry 2020/03/20
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映画『愛について書く』あらすじ感想と解説レビュー。脚本家の“お仕事映画”としての愉しみ|OAFF大阪アジアン映画祭2020見聞録8

  • Writer :
  • 西川ちょり

第15回大阪アジアン映画祭上映作品『愛について書く』

2020年3月15日(日)、第15回大阪アジアン映画祭が10日間の会期を終え、閉幕しました。コロナウイルス感染の拡大に伴い、イベントや、舞台挨拶などを中止し、上映だけに特化した映画祭として、無事、全58作品が上映されました。

グランプリに輝いたタイの『ハッピー・オールド・イヤー』をはじめ、2020年もアジア各国の素晴らしい作品の数々に出逢うことができました。

映画祭は終わりましたが、本コラムはまだまだ続きます。

今回紹介するのはコンペティション部門で上映され、ABCテレビ賞に輝いたフィリピン映画『愛について書く』(2019)です。

【連載コラム】『OAFF大阪アジアン映画祭2020見聞録』記事一覧はこちら

映画『愛について書く』の作品情報

【日本公開】
2020年公開(フィリピン映画)

【原題】
Write about Love

【監督・脚本】
クリッサント・アキーノ

【キャスト】
マイルス・オカンポ、ロコ・ナシーノ、ジョエム・バスコン、イェン・コンスタンティーノ

【作品概要】
「ラヴストーリーの脚本家たちのラヴストーリー」としてフィリピン映画最大の祭典メトロ・マニラ映画祭で絶讃されたラブロマンス。クシッサント・アキーノ監督は本作で単独長編デビューを果たした。

クリッサント・アキーノ監督のプロフィール

2006年にフィリピンの映画制作会社「Star Cinema」のプロダクションアシスタントとしてキャリアをスタート。

OAFF2016上映作品『ないでしょ、永遠』のダン・ヴィリエガス監督、OAFF2018上映作品『愛して星に』のアントワネット・ハダオネ監督らに師事し、スクリプターや助監督として活躍。本作で監督・脚本デビューを果たしました。

映画『愛について書く』のあらすじ

渾身の映画企画プレゼンの末、新作ロマンティック・コメディーを執筆することになった女性脚本家。ところが別の日、プロデューサーから呼び出しを受けた彼女は、別の企画の作品とストーリーがバッティングしていることを告げられます。

プロデューサーから出された条件は「ベテラン男性脚本家との共作」でした。彼女の作品は王道のラブコメでしたが、彼らはそこに人間ドラマを入れるよう注文。人間を描くことに定評のある男性脚本家を紹介されます。

書き直しまでの期限は30日。ベテラン男性脚本家との共同作業が始まりました。彼はいきなり、書き出しを変更します。

女性は2人の出会いを最初に書いていたのですが、男性が書き始めたのは、彼らが付き合って100日目の記念の日の朝の会話でした。

女性は反発心を覚えながらもやがて脚本作りにのめり込んでいきます。

『愛について書く』感想と評価

本作の魅力としてまず脚本家のお仕事映画としての面白さがあげられるでしょう。

一人の作家が描くのではなく共作という形をとるのですが、かたや新進脚本家の若い女性、かたや業界で評価もされているベテランの男性作家という正反対の組み合わせが新鮮です。

女性脚本家の初稿では、主人公の男女2人の出会いから物語をスタートさせていたのに対し、男性は彼女たちの交際記念日から始まるように書き直します。さらに、女性の実家のユニークな家族構成も作り上げ、ベテラン脚本家の実力のほどを見せつけます。

一方で、女性は、彼らのさらなる記念日にゴージャスでロマンチックな展開を提案し、男性脚本家を感心させます。

当初、この映画のプロットを聞いたときは、ハワード・ホークス作品のように、性格も何もかもが正反対の男女が最初はいがみあってけんかばかりしていたのが、1つのことに打ち込むうちに恋愛関係になっていくといったスクリューボールコメディー的なものを想像していました。

けれどもここでは2人は多少の反発はするものの、ベテランの男性が、若い女性を見下しているようなところもありませんし、女性の反発も最小限におさえられています。

彼らが描く作品が「ラブコメ」から「人間ドラマ」にシフトしていったように、現実世界の方も、男女2人の関係を恋愛ばかりでない広義な意味での「愛」へと広げていきます。

脚本家たちの現実世界はスタンダードサイズで、脚本家たちが書く劇中劇にはビスタサイズが使われ、2つの世界は交錯しながら進行していきます。

創作において、作家の個人的体験や、これまでの人生観が色濃く反映される様子が描かれていますが、同時に映画は、作品もまた、実生活に影響を及ぼしていると仄めかしています。

脚本家たちは、いつしか自分たちが作ったキャラクターたちと人生をともにしていきます。創作の世界の2人と現実世界の2人の境遇が次第に重なっていく様子が巧みに描かれています。

さらに、この“現実世界”を描いているのは、クリッサント・アキーノ監督その人です。こうした入れ子構造的といいますか、メタフィクション的な構造のもと、「愛」をテーマにした物語は、誠実に優しく進行していきます。

脚本家の男女に名前がないのも特徴的です。同じく第15回大阪アジアン映画祭のコンペティション部門で上映された『女と銃』も、ヒロインの女性に名前がありませんでした。

偶然にもどちらもフィリピン映画なのが面白く、こうした斬新な試みがなされるフィリピン映画についてもっともっと知りたくなるのでした。

まとめ

マイルス・オカンボ扮する女性脚本家は、恋をしたことがなく、そんな彼女が王道ラブロマンスを得意としているのが面白いのですが、恋の経験がなくても立派な脚本を書くことができるのだと映画は主張します。

一方、劇中劇の女性は、歌手として活躍しているという設定で、イェン・コンスタンティーノが抜擢されました。

彼女が劇中で歌っているのは、フィリピンの国民的歌手で女優でタレントのJolina Magdangal (ジョリーナ・マグダンガル)の『Kapag Ako Nagmahal』という曲です。

イェン・コンスタンティーノは、元歌よりも抑揚をおさえて、今風に歌い、大変素敵な歌声を聞かせてくれます。

この女性は念願だった韓国公演が決まったことを喜ぶのですが、それが、側にいてほしいと願う男性とのすれ違いを招いてしまいます。その本筋も興味深いのですが、彼女が韓国から家族のもとに返った時、すっかり韓流メイクになっていたのが印象的です。韓流ブームが世界的であることがよくわかるシーンとなっています。

『愛について書く』は本年度のABC賞に選ばれました。来年、2021年の1月ごろ、朝日放送テレビ(関西圏のみ)で放映されます。

【連載コラム】『OAFF大阪アジアン映画祭2020見聞録』記事一覧はこちら

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