「この恋愛小説がすごい(2016版)」第1位に輝く島本理生の小説『ナラタージュ』を、松本潤と有村架純の共演で映画化。
島本理生が20歳の時に執筆した鮮烈な書き下ろし作『ナラタージュ』を、『世界の中心で愛を叫ぶ』から『ピンクとグレー』までの感情を揺さぶるラブストーリーを発表し続ける行定勲監督が映画化。
主演は松本潤と有村架純。ともに今までにないキャラクターに挑んで新境地を開拓したと言っていいのではないでしょうか。
以前ドラマ『失恋ショコラティエ』では姉妹を演じた二人が今度は身を焦がす恋に翻弄される二人を演じています。
共演は坂口健太郎、瀬戸康史、市川実日子。それぞれ決して多い出番ではありませんが印象深い演技を残しています、主題歌はRADWIPMSの野田洋次郎プロデュース。
1.映画『ナラタージュ』の作品情報
【公開】
2017年(日本映画)
【原作】
島本理生
【監督】
行定勲
【キャスト】
松本潤、有村架純、坂口健太郎、大西礼芳、古舘佑太郎、神岡実希、駒木根隆介、金子大地、市川実日子、瀬戸康史
【作品概要】
2006年版「この恋愛小説がすごい」第1位に輝いた島本理生の小説を、松本潤&有村架純で映画化。
映画『世界の中心で、愛をさけぶ』で知られる恋愛作品に定評がある行定勲監督が描く、高校教師と元生徒が織り成す禁断の純愛。
2.映画『ナラタージュ』のキャスト一覧
松本潤(葉山貴司)
泉の高校の社会科教師で演劇部顧問、心に傷を持ち泉に依存していく。
有村架純(工藤泉)
孤独な高校生活の中で葉山に救われる。再会したこと葉山への恋が再燃。
坂口健太郎(小野怜二郎)
演劇部に助っ人でやってくる。泉に惹かれていく。
瀬戸康史(宮沢慶太)
社会人となった泉が働く映画会社の後輩社員。
市川実日子(葉山美雪)
葉山の妻、心のバランスを崩して葉山と離れる。
3.映画『ナラタージュ』のあらすじ
現代
映画業界で働く工藤泉は夜遅くまで残業の日々。
地元の友人からは働きすぎだとあきれられる。外はいつしか大雨になっていました。出先から帰ってきたずぶ濡れで帰ってきた後輩社員の宮沢にタオルを渡す泉。
泉は外の雨を見ながら泉はそっともう動かない懐中時計を取り出します。
雨とこの懐中時計は泉の “壊れるほどの恋”を想いださせるものでした。
それは、かつて心から愛した高校時代の教師、で泉の所属した演劇部の顧問の葉山貴司(松本潤)から贈られたものでした。
高校生時代
泉は自分の居場所を感じられず高校生活を過ごしていました。
高校三年生のある日、偶然すれ違った教師の葉山から演劇部に誘われます。
そこで泉はやっと居場所を得られたような気がします、と共に葉山の存在が自分の中でどんどん大きくなっていくのでした。
一方で葉山の中でも泉の純粋さが大きくなっていきました。
葉山は実は既婚者だったということを打ち明けます。葉山はどこかで妻を想い続け、籍は抜かずに帰りを待っていました。
しかし、その一方で葉山もまた心が揺れ動き、泉の純粋さに依存していきます。
卒業の日、互いへの想いから葉山と泉は唇を重ねるのでした。
泉は“一生に一度の恋”として葉山への想いを抱えたまま卒業していきました。
大学生時代
大学2年。卒業の日のキスから丸2年、泉の心の中には葉山が居続けています。
そんなある日、泉のもとに葉山から連絡が入ります、二人にとって二年ぶりの会話。
葉山からの話は演劇部の卒業公演の手伝ってくれないかという話でした。
今の演劇部員は3人しかいなくてまともに一つの演目もできない状態でした。
そこで泉と同級生だった山田志緒と黒川博文のカップルと黒川の友人で演劇経験のある小野玲二が加わって卒業公演は何とか形になっていきます。
期せずして再会を果たした二人、週に一度高校で演劇の練習を重ねるうちに二人の心が動き出してきます。
一方でOB組と小野は4人で過ごす時間が増え仲も深まっていく、その中で小野は泉に惹かれていきます。
ある雨の夜、葉山からの弱々しい声で電話がかかります。駆け付けた泉そこには深酒をして動けなくなっていた葉山がいました。
泉は葉山を家まで送ることに。一瞬近くなった二人の距離、しかし泉は葉山の嘘を知ってしまいます。
葉山の妻は心を病みそれゆえに妻の両親に求められて別々に暮らしていることを、そして葉山は籍を抜かずに妻の帰りを待っていることを。葉山の嘘に混乱する泉をきつく抱きしめますが泉の心には大きな穴がぽっかりと空いたようだった。
本公演は終わっても泉は葉山に距離を感じたままだった。心揺れる泉を見て小野は突然実家に誘います。
思わぬ暖かみに心和む泉。そんな泉に小野は想いを告げます。葉山の存在を振り切るために泉は小野の想いを受けることにしました。
最初は順調に見えた泉と小野の交際は、泉の行動や物事のはしはしに見え隠れする葉山の存在に小野は嫉妬を覚えるようになっていきます。
それでも泉は葉山の存在を自分の中から少しでも消し去って小野に接しようとします。
4.映画『ナラタージュ』の感想と評価
『ナラタージュ』の映画化は行定勲監督の12年越しの企画でした。
監督のもとに原作が持ち込まれたのがちょうど『世界の中心で愛を叫ぶ』のころの話です。
原作『ナラタージュ』は島本理生の初の本格書下ろし作品ということで、デビュー作に近い作品です。
それゆえに文章の表現、構成などには正直粗さも感じました。
ただ、その粗さが“本当の恋愛の形”、“恋愛の現実(=リアル)の痛み”を語っていくには合っていました。
一方で行定監督自身の『世界の中心で愛を叫ぶ』以降ライトなテイストのボーイミーツガール型ラブストーリーが日本映画の主流になっていきました。
皮肉にも行定監督自身が作った流れが『ナラタージュ』の映画化の道を険しいものにしてしまいました。
しかし、その時間は決して無駄ではありませんでした。
行定監督は大型企画もこなせるヒットメーカーとなり、主演に松本潤と有村架純を得ることができました。
まとめ
はっきりとした性愛描写も松本潤と有村架純は受け入れました。
松本潤は本来のスター性・強い目地からを封印、監督からの“100%の松本潤を40%の松本潤”にという求めに応えました。
そこにいたのは精神的なもろさを抱える一人の男でした。
有村架純も今までにない包容力と母性を感じさせる役どころで、松本潤演じる葉山を一途に想い続ける儚さと、時に葉山を支える強さを併せ持つヒロインを好演しました。
「キラキラした映画はたくさん作られているけど、現実の恋愛はそうじゃない、こんなことだったら恋愛なんてしなきゃよかったという恋愛の一面を描いて、いい意味で若い人たちを傷つけたかった」という監督の狙いは見事にはまった、久しぶりに痛みを感じる恋愛映画が誕生しました。