映画『暗数殺人』は2020年4月3日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほかでロードショー。
収監された一人の殺人犯から「実は全部で7人を殺害した」と謎の告白を受けた刑事。果たしてその真実とは……?
実際に韓国で起きた連続殺人事件をモチーフに、一人の刑事が殺人犯の発した謎の告白に翻弄されながらも真実を追い求めていく姿を描いたサスペンス映画『暗数殺人』。
監督には『百万長者の初恋』『クロッシング』を手掛けたキム・テギュン。そしてキャストには、W主演として事件を追う刑事役に『チェイサー』『1987年、ある闘いの真実』などのキム・ユンソク、謎の告白をする殺人犯役に『アシュラ』や「神と共に」シリーズなどで人気を博したチュ・ジフン。二大スターの競演が実現しました。
映画『暗数殺人』の作品情報
【日本公開】
2020年(韓国映画)
【原題】
암수살인
【英題】
Dark Figure of Crime
【監督】
キム・テギュン
【脚本】
キム・テギュン、クァク・キョンテク
【キャスト】
キム・ユンソク、チュ・ジフン、チン・ソンギュ、チョン・ジョンジュン、ホ・ジン
【作品概要】
一人の刑事が殺人犯の発した謎の真相を追う様を描きます。本作は韓国興行収入ランキング初登場第2位、2週目には1位に浮上しロングランヒットし観客動員400万を記録しました。また青龍映画賞や韓国映画批評家協会賞で脚本賞を受賞するなど、観客・批評家の双方から高い評価を獲得した話題作です。
実際の連続殺人事件を元に、『百万長者の初恋』『クロッシング』を手掛けたキム・テギュン監督が作品を手がけました。脚本はテギュン監督と『友へ チング』『痛み』のクァク・キョンテクによる共同執筆。
キャストには事件を追う執念に燃えた刑事ヒョンミン役に『チェイサー』『哀しき獣』『海にかかる霧』『1987年、ある闘いの真実』などのキム・ユンソク、謎の告白をする殺人犯テオ役にドラマ『宮(クン)~Love in Palace』や映画『アシュラ』、「神と共に」シリーズなどのチュ・ジフンがW主演を果たしています。さらにヒョンミンとバディとなる刑事役として映画『エクストリーム・ジョブ』などのチン・ソンギュらも出演しています。
映画『暗数殺人』のあらすじ
キム・ヒョンミン刑事(キム・ユンソク)は麻薬捜査の重要参考人としてカン・テオ(チュ・ジフン)という一人の男性と接触しますが、テオはその場で恋人を殺害した容疑で逮捕されます。
その後、ヒョンミンは収監されたテオから呼び出され突然の告白を受けます。
「7人だ。俺が殺したのは全部で7人。」……周囲の人間は一切耳を貸さないその告白に、腑に落ちないものを感じたヒョンミン。
そもそも彼は、何故自らそのような告白を始めたのか。その謎も含め、ヒョンミンは直感的にテオの言葉が真実であると確信し上司の反対を押し切って捜査を進めていきます。そしてヒョンミンは、テオの証言から白骨化した死体を発見します。
ところがそれに対してテオは突然「俺は死体を運んだだけだ」と殺人の証言をくつがえします。さらに奇妙な発言を続け、ヒョンミンを翻弄していくテオ。果たして彼の目的とは……?
映画『暗数殺人』の感想と評価
二大スターの緊迫感あふれる対立
この作品の最大の見どころは、やはりキム・ユンソク、チュ・ジフンという二大スターの競演にあります。お互いの手の内を探りながらも、確固たる意志によって自己の“ブレ”を排する。そんな緊迫した対立を激しいアクションなど一切挿入することなく表現できているのは、それぞれが完全に作品の中で生きているように演じているからです。
ユンソク演じるヒョンミン刑事は飄々とした雰囲気の一方、ジフンが演じる犯人・テオからの奇妙な証言の数々で徐々に立場を悪くしていきます。しかしその逆境においても表情一つ変えず、確固たる自分の意思を公で語るシーンでは警察としての正義をためらいなく表し、見る側の気持ちを熱くさせます。
一方でジフンが演じるテオはそんなヒョンミンの前でコロコロと変わる供述を繰り返し、いいかげんな人間像を見せながらも瞳の奥にヒョンミンを、そして警察や司法制度までも出し抜こうとする執念の炎を燃やしています。そのサイコパスとしての表情にはゾッとさせられることでしょう。
そんな二人が火花を散らし合い戦況は紆余曲折しながらクライマックスの意外な展開ですべての謎が明らかになると、見る側は大きなカタルシスに包まれます。それはまさしく二人が本気で対峙していると思わせる演技を細部まで徹底して追求した結果でしょう。さらにそれぞれの役柄と立ち振る舞いの性質としてハマり役であるため、このキャスティングは大きな成功と言っても過言ではないでしょう。
隠れた社会問題に切り込んだテーマ
一方で実際の事件を元に映画化したこの作品は、当初映画公開に関し実際の事件における描写を同意なく使用したとして事件被害者家族から上映中止の訴訟を起こされたという経緯があります。これに対し、製作側は後に被害者家族に謝罪をおこなったそうです。また表現として事実との乖離も指摘されており、物議を醸した作品でもあります。
しかしこのような問題に対し、一人の被害者家族が表明をしたことで上映中止を回避しました。その方は母子家庭で、殺人犯の行為によって母が疾走したという人物のモデルの方です。失踪に対して被害届も出さず、誰もその失踪に関心を示さなかった一人の女性の姿を最後まで追い続けるヒョンミン刑事の姿に胸を打たれ、実際の社会が安心して暮らせることを願ったと語り、「この映画は世に出るべき」と伝えたといいます。
「暗数」とは、実際の数値と統計結果との誤差をいい、なんらかの原因により統計に表れなかった数字のことを示します。この作品では刑事事件の中で「暗数」とされる隠れた問題があることを明確に表しています。そしてそんな問題に付け込んでさらに悪事が企てられる可能性もあり、その事実に社会としてはどう向き合っていくべきか、世にそんな問い掛けをしているのかもしれません。
まとめ
物語はクライマックスで一応の決着を見つけますが、エンディングではその結果に従わず主役の二人とも煮え切らない結末を迎えることになります。実はこの結末こそが物語の最も強いメッセージ性を表しているのでしょう。
激動の情勢の中にある近年、さまざまな局面でなかなか細かい部分に目が行き届かない状況も多く発生していますが、この作品はそういったことすべてに課題を投げかけているのではないでしょうか。
映画『暗数殺人』は2020年4月3日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほかで順次公開されます。