映画『ロマンスドール』は、2020年1月24日(金)より全国ロードショー!
2008年に『百万円と苦虫女』、2012年には『ふがいない僕は空を見た』などで知られるタナダユキ監督が、10年前に発表した同名小説映画化。
タナダユキ監督が、自身初のオリジナル小説を自ら監督と脚本を手がけて実写映画化した大人のためのラブストーリーです。
キャストには、不器用さと複雑さをあわせ持った主人公・北村哲雄役を『嘘を愛する女』『億男』の高橋一生が演じ、優しさと強さを持つ妻の園子を『長いお別れ』『宮本から君へ』の蒼井優が演じています。
映画『ロマンスドール』の作品情報
【公開】
2020年(日本映画)
【脚本・監督】
タナダユキ
【キャスト】
高橋一生、蒼井優、浜野謙太、三浦透子、大倉孝二、ピエール瀧、渡辺えり、きたろう
【作品概要】
『百万円と苦虫女』『ふがいない僕は空を見た』を見たのタナダユキ監督が10年前に発表した同名小説を映画化。キャストには主人公・北村哲雄役を『嘘を愛する女』『億男』の高橋一生が演じ、妻の園子を『長いお別れ』『宮本から君へ』の蒼井優が演じています。
撮影は『ロマンス』や『お父さんと伊藤さん』でタナダ監督とタッグを組んだ大塚亮。編集は『アルキメデスの大戦』『ダンスウィズミー』『おいしい家族』など日本を代表する宮島竜治。
映画『ロマンスドール』のあらすじとネタバレ
美大の彫刻科を卒業したものの、その技術をモノにすることができず、フリーター生活を送っていた哲雄はある日、紹介された工場でラブドール職人として働くことになります。
扱うモノが扱うモノなので表立っては自分の仕事のことを語ることもはばかれる哲雄ですが、そこは彫刻科出身ということもあって、職人気質を発揮、先輩社員の相川とともにラブドール作りに没頭していくようになります。
社長の命令でシリコン素材で人肌に限りなく近いドールを作ることになった二人は、リアルなモデルがないことが問題なのではないかという結論に行き着きます。
美大ではヌードのデッサンや彫刻などで実際にモデルを読んだことを思い出した哲雄は、そんな存在の女性たちがいることを相川に伝えます。
本当のことを言えるわけもなく、不謹慎を承知で病で乳房を無くした女性向けの人口乳房の製作という理由をでっちあげて、モデルを工場に呼びます。
そして、やってきたモデルが園子でした。気まずい仕事のあと、忘れ物を届けるために後を追った哲雄は、その勢いのままで一目惚れしたことを告白します。
驚く園子でしたが、意外にも答えは即答でYES。二人はすぐに交際を始め、ほどなくして結婚ん夫婦となります。
哲雄のラブドール作りは忙しくなる一方で新婚にもかかわらず、園子を家で独りにすることも多くなります。それでも園子は聞き分け良く状況を受け入れます。ただ、少しづつ二人はすれ違う時間が増えていきました。
そんなある日、父親が病気になったといって園子が家を空けます。独りになった哲雄はどこか解放感のようなものを感じながら、束の間の一人暮らしを楽しんでいましたが、そんな時に当の園子の実家から園子の携帯が通じないという電話が入ります。
園子の嘘と無断外泊を知った哲雄はその後、帰宅した園子を問い詰めます。園子は理由を話さずに離婚しようと言い出し始めます。
映画『ロマンスドール』の感想と評価
2017年には『彼女がその名を知らない鳥たち』、また2019年の『斬、』『宮本から君へ』などで、ヒロインを務めた最近作の並びをみると、激情型の女優さん、見る時にはこちらの体力がいるような女優さんという感じもある蒼井優ですが、実際にはこの位のテンションの緩さ、低さでも充分魅力を発揮する女優です。
脇に回った「家族はつらいよ」シリーズや『長いお別れ』(2019)などを見直していただくと、そういうところもよくわかるのではないでしょうか。
本作品『ロマンスドール』のヒロイン園子は、「そうそう、蒼井優ってこういう女優だったよな」と思い出させてくれる、いい意味でカウンターになっている作品です。近作では熱量の強い蒼井優が続いていたので、とても新鮮でもありました。
相手役に高橋一生という、これまた低いテンションのキャラに、感情をたっぷり込めることができる俳優がキャスティングされました。
2001年に蒼井優がスクリーンデビューを果たした、岩井俊二監督の『リリイ・シュシュのすべて』以来の共演ということですから、約20年ぶりの共演。それでも蒼井優の向かい側に高橋一生という俳優を持ってきたのはいいチョイスでした。
実は、結構キワドイ描写もありますし、二人の濡れ場もあるんですが、タナダユキ監督の描き方と二人の低体温感覚がぴたりとはまり、とてもユニークなカップルのラブストーリーに仕上がりました。
カップルで見ると気まずくなるかもしれませんが、カップルにこそ見て欲しい作品です。
まとめ
原作小説を書いた時点では映画化ということに対しては、そこまで現実的に考えていなかったタナダユキ監督。
そんなタナダ監督が自分の著作に改めて向かいなおして、映画『ロマンスドール』に遭った形に物語を再構築していきます。
物語をグッと二人の一般的な若い夫婦に焦点を絞ったこともあって、小説にあったいくつかの肉付けの部分がほぼほぼ丸々削ぎ落とされています。
原作小説は感情が軽いときも重いときも、物語が薄いときも厚いときも変わらぬテンションで綴られるのが心地よい文体が気持ちよかったのですが、映画になるとそういうわけにもいかず、ある程度の起承転結と感情の盛り上がりの起伏を作らなくていけません。
ただ、ここでも“今回は淡々と”という基本路線がキープされているから、悲劇も喜劇も実際の事柄もつ熱量の8割ぐらいのカタチで描かれます。
一風変わった『ロマンスドール』は、それでいてとてもチャーミングなロマンス映画が出来上がりました。