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映画オンザミルキーロード|あらすじネタバレと感想!ラスト結末も

  • Writer :
  • 山田苺

世界3大映画祭を制覇したにも関わらず、その破天荒かつ狂喜乱舞な演出で話題を呼んでいる『黒猫・白猫』『アンダーグラウンド』の監督エミール・クストリッツァの映画『オン・ザ・ミルキー・ロード』は日本でも上映されます。

今作でも鮮やかな人々の狂乱シーンや、生き生きとした動物たちのカットも多数あるのですが、何より今作では、監督を務めるクストリッツァが主演を演じていることでも話題を読んでいます。

1.映画『オン・ザ・ミルキー・ロード』の作品情報


(C)2016 LOVE AND WAR LLC

【公開】
2017年(セルビア・イギリス・アメリカ合作映画)

【原題】
On the Milky Road

【監督】
エミール・クストリッツァ

【キャスト】
エミール・クストリッツァ、モニカ・ベルッチ、プレグラグ・ミキ・マノジョロビッチ、スロボダ・ミチャロビッチ

【作品概要】
エミール・クストリッツァが監督を務める以外にも、脚本・主演も担当した愛の逃避行を描いた作品。

主人公の前に現れる美女を『oo7スペクター』で最年長ボンドガールを務めたモニカ・ベルッチが演じていることも話題となっており、他にも本物の動物を使用したシーンの数々に、「いったいどうやって撮影したのか?」と目を奪われること間違いなしです。

音楽も監督自身所属するバンド「ノー・スモーキング・オーケストラ」に所属し、エミール・クストリッツァの息子・ストリボール・クストリッツァが担当しています。

2.映画『オン・ザ・ミルキー・ロード』のあらすじとネタバレ


(C)2016 LOVE AND WAR LLC

隣国同士で戦争をしているとある村。

牛乳配達をするコスタはロバに乗って、銃撃戦を掻い潜りながら配達をする日々を送っています。

しかし村は戦争を除けば家畜を育てたりと、どこにでも見られる普通の暮らしを営んでいます。

そんな村のはずれでは、コスタが配る牛乳をつくる一家が、おんぼろ過ぎる巨大な時計に手を焼いています。

そこに住む女性ミレナはコスタに好意を寄せていますが、当のコスタはあまりその気は無い様子。

ある日ミレナのところに、とある施設にいる女性を亡命させるという男がやってきて、ミレナの兄の花嫁を連れてくると話をします。

その花嫁になる女性はローマからセルビア人の父を捜しに来て戦争に巻き込またとのことで、コスタたちの住む村へやって来ました。

たまたま通りかかって、花嫁を見たコスタは一目見たときから花嫁に惹かれます。

花嫁も最初はコスタのことなど、どこにでもいるような男だと思いましたが、お互い辛い過去を抱えているという共通点からお互いに惹かれあうようになっていきます。

コスタには過去に目の前で父親が斬首されたという重い過去があり、村人も彼が弾丸飛び交う中牛乳配達を続けるのは、その過去のショックなのではないかといわれるほどでした。

そんなコスタが牛乳配達をしていると、こぼれたミルクを飲みだす蛇と遭遇し、これはきっと奇跡だと言い出します。

花嫁が村に着てからしばらくすると、ずっと続いていた隣国同士の戦争に休戦協定が結ばれます。

突然の吉報に村人は飲んで踊ってと大騒ぎ。コスタもバンド演奏に混じってお祭り騒ぎを楽しみます。

そんなときミレナの元に、花嫁を連れてきた男がやってきて、花嫁は多国籍軍の将軍と過去に関係があり、将軍は花嫁と結婚するために妻を殺めてしまうような男でした。

そんな凶暴な将軍が花嫁を追うこととなれば、この村も大変なことになるので彼女を引き渡して欲しいとミレナに交渉します。

ところが彼女には兄と花嫁の結婚とあわせ、自分もコスタと結婚式を挙げる計画を立てていたので、この交渉を拒否するどころか、銃を発砲して男を追い払ってしまいます。

後日、ミレナの元に兄のジャガが帰還します。

ミレナと結婚することになってしまっているコスタに、脅しに近い確認を取るジャガにたじろぎますが、彼も花嫁も完全に結婚相手以上に惹かれあっている状態でした。

そしていよいよ、村では終戦を迎え、ミレナとジャガの結婚式が着々と進んでいますが、そこへ次々と村にヘリコプターが飛んできます。

中からは多国籍軍が次々と投下され、村人を無差別に襲っていきます。

コスタはミルクを配っている途中でしたが、以前いたミルクを飲む蛇に襲われたことで、村の襲撃を逃れることが出来ました。

ミレナたちがいるところへ向かうと、既にそこは多国籍軍により火の海と化していました。

コスタは花嫁を探しますが、見つかるのは丸焦げになったミレナやジャガの遺体、さらに相棒のロバも撃たれてしまいます。

そんな時、井戸の中から花嫁の声が聞こえ、コスタは多国籍軍の目を盗んで花嫁を救出すると、2人で村を離れます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『オン・ザ・ミルキー・ロード』ネタバレ・結末の記載がございます。『オン・ザ・ミルキー・ロード』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
村から何とか逃げ出すコスタと花嫁ですが、多国籍軍の3人が追ってきます。

一度は彼らを撒いて、誰も住んでいない小屋に身を寄せる2人に、つかの間の安息が訪れます。

小屋の直ぐ傍にある池を泳ぐ2人ですが、そこへ再び多国籍軍の襲撃をうけ、逃げる2人ですが大きな滝にぶつかります。

他に逃げ道のない2人は意を決して滝を飛び込んで逃げきります。その後も過酷な逃走劇は続き、コスタは片方の足の骨を折ってしまうと花嫁に担がれながら逃げ続けるのです。

そんな時、途中で遭遇した羊飼いの羊の群れを見つけ、その中に隠れようと逃げ込みます。

しかし多国籍軍はそこまでも追ってきて、羊の群れに隠れている2人を探そうと躍起になります。

この窮地を抜けるために、コスタは付近にある地雷の埋まった対置入り禁止区域に羊を追いやり、地雷を踏ませて田億赤軍の気をそらしている隙に、2人はその立ち入り禁止区域へ逃げ出します。

その時、ミルクを飲んだあの蛇が再び現れて、今度は花嫁の体に巻きつきます。

コスタはその蛇は助けを差し伸べてくれると花嫁に叫びますが、声は届かず花嫁は地雷を踏んで吹き飛ばされてしまいます。

多国籍軍も全滅しましたが、花嫁を目の前で失った悲しみにコスタは立ち直ることはできませんでした。

15年後、村は元通りになっていましたが、コスタは今も深い悲しみの中にいてミルクを売ることもしてはいません。

彼は今教会に通い、瓦礫を集めては15年前にあった地雷の区域全てに敷き詰めていました。

途方もない年月をかけ、途方もないほどの場所に、コスタはまるで罪滅ぼしのように、ずっと岩を丁寧に敷き詰めるのでした。

3.映画『オン・ザ・ミルキー・ロード』の感想と評価


(C)2016 LOVE AND WAR LLC

全体を通して、監督特有のハツラツとした人々の演出や、生き生きとした動物たちの動きが見られます。

それゆえ、このおとぎ話のような作品はかなり明るいストーリーのように思われがちですが、後半にかけての悲しい結末や、そこに至るまでの悲劇の数々は目を覆いたくなるような演出が多いです。

それゆえエネルギッシュな演出に変わりはないのですが、若干ミスリードとも取れる展開は個人差が分かれるかもしれません。

しかし、監督の本物の動物を演出として使う意欲は、やはりすさまじいものがあります。

コスタの相棒ハヤブサのリュビツァは、彼の演奏するツィンバロム(ハンガリーを中心とする中欧・東欧地域で見られる大型の打弦楽器)のリズムに合わせてひょこひょこ動くのですが、この姿の愛らしいのなんの。

生まれて初めてハヤブサがキュートな生き物だと思い知らされた瞬間でした。

ロバのトミーも体格に明らかにあっていない量のミルクと、コスタを乗せてせっせと走る姿は、けなげ以外の何ものでもありません。がんばれ。

極めつけはラストに登場するクマ。コスタが餌をやるシーンがあるのですが、あの300キロ近いクマは本物なんだそうです。

なんでも監督は、あのクマがまだ80キロくらいしかない頃から交友関係を気づいているそうです。

もはや監督なのか、バンドメンバーなのか、畑正憲なのか。多岐にわたる才能を持っているにも拘らず、その才能がブレないのはやはりエミール・クストリッツァの力量というところでしょうか。

しかしそうなると気になるのはやはり、地雷を踏んでお星様となっていった羊たち。

さすがにそこは模造を爆破していると思いたいです。あの映画『エル・トポ』のウサギじゃあるまいし・・・

しかし傘を差しながらロバに乗るコスタの姿は、『エル・トポ』のメインビジュアルにそっくりなんです。ということは・・・

参考映像:監督・主演アレハンドロ・ホドロフスキー
エル・ポト』予告編(1970)

まとめ

資料映像:ウンザ!ウンザ!クストリッツァ!2017!
2分でわかるエミール・クストリッツァ」映像

最後はなんだか怖い話のようにまとめてしまいましたが、監督のエネルギッシュな演出は今回も健在なのは間違いありません。

ラストは救われない終わり方ですが、愛嬌ある動物たちや、おとぎ話独特の演出やコメディタッチは見ていて愉快です。

動物の演出はあんなにこだわるのに、CG演出が異常に露骨な感じも個人的にはツボでした。

そういえば、今作の公開に合わせてクストリッツァの所属しているバンド「ノー・スモーキング・オーケストラ」の来日公演が東京で行われました。

ライブレポートの画像を見たのですが、私が拝見したのはメンバー全員がステージで腕立て伏せをしている画像でした。

そういう破天荒さを含め、やはり監督の才能なんだなあと痛感しました。誰にも真似できない監督のオリジナリティに打ちのめされたい方はぜひ!

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