映画『二ツ星の料理人』作品情報
【公開】
2015年(アメリカ)
【原題】
Burnt
【監督】
ジョン・ウェルズ
【キャスト】
ブラッドリー・クーパー(アダム・ジョーンズ)、エレーヌ(シエナ・ミラー)、オマール・シー(ミシェル)、トニー(ダニエル・ブリュール)、リッカルド・スカマルチョ(マックス)
映画『二ツ星のレストラン』あらすじとネタバレ
新たな人生
天才肌と自負する料理人のアダム。パリの二ツ星レストランで腕を振るっていましたが、異常なまでの完璧主義と薬物依存で、店も仲間も失ってしまいます。
3年後、人生のやり直しを決意したアダムは、友人のトニーを訪ね、彼の父親が経営するホテルのシェフに雇ってほしいと強引に頼み込みます。
トニーは、精神科医のもとで毎週、薬物テストを受けることを条件に承諾します。
アダムは、共に働くシェフ探しを開始し、かつての同僚ミシェルとマックス、若いデヴィッドなど、自分が見込んだスタッフ達を集めます。
しかし新たなスタートをきったアダムのもとに、二人の男が現れます。パリで麻薬売買にからんでいた時代にアダムが作った、大きな借金を取り立てに来たのでした。
不安の中、レストランがオープン。アダムの誘いを断っていた女料理人エレーヌも、アダムの企みで働いている店を首にされ、仕方なくアダムのもとへやって来ます。
レストランは満員にならず、怒りと失望で荒れ狂ったアダムは、エレーヌのことを責めて首にします。トニーがエレーヌを説得し、なんとかアダムと仲直りさせます。
そんな時、パリで共に働き、現在はロンドンで成功しているライバルシェフのリースが店にアダムを招待。アダムはエレーヌに恋人役を頼み、二人で出かけます。
そこに、アダムの師であるジャンリュックの娘でかつての恋人、アンヌ・マリーが現れます。彼女も薬物中毒でしたが、治療を終えて今は立ち直っていました。
翌日の朝市で、アダムはエレーヌに自分の後悔について話します。気持ちが近づき、キスをする二人でしたが、借金の取り立てにきた二人が店の前で待っていました。
裏切りからの再生
アダムは男達に痛めつけられ、怪我を負いながらも店に出ます。トニーがミシュランの調査員らしき男性の二人組が来たと伝えに来ると、厨房に緊張が走ります。
調査員達の料理は途中で戻されました。ソースが辛すぎたと判明しますが、実はパリでアダムが裏切ったことを今も許せなかったミシェルが、故意にやったことでした。
三ツ星の夢が消えたアダムは、深夜のロンドンの街を徘徊し、リースのレストランに現れます。なだめるリースに、「もう疲れた」と嘆いたまま眠りに落ちるアダム。
翌朝、目覚めたアダムにオムレツを作ってやり、リースは言います。「お前はトップだ。おれ達を引っ張っていくのはお前だよ」。
ホテルに戻ると、アダムの借金の肩代わりをしたアンヌ・マリーがいました。父親の形見のナイフをアダムに手渡し、エレーヌとのことを祝福して去っていきます。
トニーが「いい知らせがある」と言います。ミシュラン調査員だと思っていた二人はセールスマンで、まだ三ツ星をとるチャンスがあると言うのです。
奮起したアダムは、エレーヌをはじめ他のシェフ達とようやく心を通わせます。みんなが家族のようになった頃、本物のミシュラン調査員がレストランに現れます。
全力を出しきり、レストランのバルコニーで結果を待つアダムに、笑顔のトニーが近づいていきました。
『二ツ星のレストラン』の感想と評価
天才と呼ばれた技術とセンスを持つ一流のシェフという役どころも、厨房でキレまくるマッチョぶりは、まんま『アメリカン・スナイパー』の狙撃兵でした。
アダムが求めているものが、世界一美味しい料理なのか、それとも三ツ星の栄光なのか、あのような態度では真意をはかりかねます。
もちろん両方ほしいに決まってんだろ!とアダムに怒られそうですが、まずい料理を出した客がミシュランの人じゃなくて一般人でよかったってアンタ、気持ちはわかりますがあそこまで心底安堵されては、一般人で悪かったなとからみたくなります。
アダムが仲間に選んだのは、個性的でユニークな料理人ばかり。なのに彼らの描写はほぼ皆無。せめて途中で裏切るミシェルの内面だけでも掘り下げてほしかったです。
レストランはうまくいきそうですし、アダムもしばらくは機嫌がよいでしょう。しかし、次なる困難を迎えた時に、アダムが暴れて厨房を破壊しないか心配です。
まとめ
『世界にひとつのプレイバック』(2012)『アメリカン・ハッスル』(2013)(『アメリカン・スナイパー』(2015)など、ここ数年、アカデミー賞でも名前が挙がることが増えたブラッドリー・クーパー主演。
次々と出てくるフランス料理はどれもみな美しく、厨房を行きかうシェフ達も、アトリエを動き回るアーティストのようです。
精神科を世話しながらも雇ってくれるトニー、文句ひとつ言わず借金の肩代わりをしてくれるアンヌ・マリー、さんざん振り回され暴言を吐かれても結局は惚れているエレーヌなど、なぜかアダムの周りがいい人すぎです。
ただ一人、ミシェルだけが過去を清算できずに裏切り行為を働きますが、まるで責める気になれません。
アダムという、才能はあるけど人としてはどうなのよという男の成長ストーリーでした。