夢うつつ手懐けて、自由自在、気分次第。
脳細胞の支配下で世界を創れ。
「the pillows」の結成30周年プロジェクトの一環として製作された映画『王様になれ』。
リーダーの中山さわおの原案を、俳優で舞台演出家としても活躍するオクイシュージが初監督作品として映像化しました。
夢を抱き現実の厳しさの中で押しつぶされそうになる主人公が、ある女性との出会い、そしてthe pillowsとの出会いで、諦めず前に進んで行く姿を描いた青春ストーリー。
その出会いは必然だったのか?映画『王様になれ』を紹介します。
映画『王様になれ』の作品情報
【日本公開】
2019年(日本映画)
【原案】
山中さわお(the pillows)
【監督】
オクイシュージ
【キャスト】
岡山天音、後東ようこ、岩井拳士朗、奥村佳恵、平田敦子、村杉蝉之介、野口かおる、オクイシュージ、岡田義徳、TERU、JIRO、ホリエアツシ、日向秀和、高橋宏貴、佐々木亮介、田淵智也、田淵智也、新井弘毅、鈴木浩之、yoko、楠部真也、平田ぱんだ、ビートりょう、星川ドントレットミーダウン、本間ドミノ、千葉オライリー、宮本英一、藤田恵名、宮崎朝子、松岡彩、吉川美冴貴、山中さわお、真鍋吉明、佐藤シンイチロウ
【作品概要】
2019年に結成30周年を迎えたthe pillowsの記念映画『王様になれ』。
ドキュメンタリー・フィルムではなく、山中さわおの原案をオクイシュージ監督が映像化。
主人公・祐介役には、本作が初の単独主演となる岡山天音を迎え、後東ようこ、岡田義徳などの俳優陣と、the pillowsのメンバーが本人役で登場。
さらに、GLAY、ストレイテナーなど、the pillowsと交流のあるミュージシャン達の共演が見どころです。
映画『王様になれ』のあらすじとネタバレ
「今の生活に不満はない。でも僕の本業はこれじゃない」。
神津祐介は、2年前父親を亡くしてから、伯父のラーメン屋で働いています。祐介には夢がありました。父の影響で始めたカメラの道でプロになることです。
カメラマンのアシスタントとしてスタジオでバイトをしながらも、いつまでもチャンスを掴めない自分に焦っていました。
専門学校の同期・西小路健は、今やプロカメラマンとして名を馳せています。同期の活躍に嫉妬し、苛立ちが募ります。
その日、祐介はラーメン屋にやってきた女性・藤沢ユカリに一目ぼれをします。彼女は伯父と同じ劇団員で、the pillowsの大ファンでした。
ユカリに近付きたいがために祐介は、the pillowsのライブへと足を運びます。会場はthe pillowsのファンたち(バスターズ)で大盛り上がりです。
祐介はライブより、ライブを撮影しているカメラマンの存在が気になります。
ライブ終了後、ユカリと話すことが出来た祐介でしたが、the pillowsトークに全く追いつけません。まだ聞き出したばかりなんだと、ユカリから教わることに。
ユカリとの距離が縮まるにつれ、祐介はthe pillowsにどんどんハマっていきます。そんな祐介にユカリは「必然かもね。ピロウズと出会ったの」と嬉しそうです。
「祐介君は今、第何期?」。ユカリはthe pillowsのこれまでの軌跡に掛けて祐介に問います。「僕はまだ、何者でもないんだ」。
祐介は、スタジオを首になってしまいます。落ち込む祐介に伯父は、祐介の父が同じ年ぐらいに撮ったという写真を見せてくれます。「お前の本当にやりたいことが、そこにはなかったんだろ」。
祐介は、the pillowsのライブでカメラを撮っていた虻川の存在を知り、弟子入りを希望します。「俺、前に進みたいんです」。土下座し必死に頼み込む祐介を、虻川はしぶしぶ受け入れることにします。
虻川に同行し、THE KEBABSのライブに行けることになった祐介は、嬉しい気持ちをユカリに報告。
ユカリはそんな祐介にthe pillowsのオフィシャルグッズ「RED BATカーディガン」をプレゼントします。「祐介君の第二期のお祝いだから」。ユカリも喜んでくれました。
自分の思いを告白できない祐介は、ユカリに落ち込んだ時の立ち直り方を聞きます。「宛先のない手紙を書くわ」。ユカリの答えにはどこか寂しさが滲んでいました。
祐介のラーメン屋にthe pillowsのメンバーが食べにやってきます。驚く祐介は、リーダーの山中さわおの「ネギなし」注文に、間違えて「ネギ入り」で出してしまいます。
「作り直してよ」と引かない山中に祐介は呆れます。そのことを、ユカリに愚痴る祐介。ユカリは気分を悪くし帰ろうとします。
「あなたのミスでしょ。私がどれだけピロウズの曲に助けられたか知らないくせに!」。祐介とユカリは初めての喧嘩をします。
仲直りしたい祐介は、ユカリと以前行った小高い丘にカメラを持ってやってきます。ユカリはそこで手紙を書いていました。祐介は、ユカリをカメラに収めます。
告白をしようとする祐介に、ユカリは「もう会わないほうがいい」と拒絶します。
The pillowsの30周年が迫っていました。「私が生まれた頃からずっと続けているなんてスゴイよね。さわおにとってのギターと、祐介君にとってのカメラは一緒。写真やめないでね。いつか見れるのを楽しみにしてるわ」。ユカリの言葉が蘇ります。
映画『王様になれ』の感想と評価
the pillowsの山中さわおが、バンド30周年のプロジェクトとの一環として原案に携わった映画『王様になれ』。
the pillowsが、これまで音楽を通して伝えてきたことを映像にしたと言っても過言ではありません。
主人公の祐介は、夢を追いかけることに疲れ、現実の厳しさに打ちのめされ、諦めそうになった時、the pillowsの歌に救われます。
好きなアーティストの存在が、生きる道しるべになり、前に進む勇気を与えてくれる。そして、日々を生きるパワーになる。
アーティストの熱き思いはファンに伝わり、共感と感動を生む。ライブは、直にその思いを交換できる特別な空間です。
映画『王様になれ』は、そんなアーティストとファンとの関係を見事に表現した映画でした。
それは、the pillowsの記念映画だからと言って、本人たちのドキュメンタリー映画にしなかった部分も大きいように思います。
映画『あの頃ペニー・レインと』を彷彿させるような、主人公を通してみるアーティストの姿が描かれていて、観るものは共感を覚えます。
また、山中さわおが語るように、この映画はthe pillowsの三作目のトリビュートアルバムのような一面もあります。
それは、the pillowsと交流のある多くのアーティストが出演し、演奏するシーンが満載だからです。
中でも、同郷のGLAYのTERUとJIROによる弾き語りの「スケアクロウ」。染み入ります。
もちろん、the pillowsのライブ映像としても楽しめます。「Funny Bunny」「ストレンジカメレオン」「ハイブリットレインボウ」「どこでもない世界」「この世の果てまで」。the pillowsのベストさながらのラインナップに染み入ります。
さらに、the pillowsファンなら楽しめる小ネタも満載です。
祐介がTHE BOHEMIANSのジャケ写を担当するシーンがありますが、実際のTHE BOHEMIANSのベストアルバムのジャケ写の撮影場所を彷彿させています。
映画の中では、黒スーツで決めてカッコつけて撮った写真に、山中がダメ出しするという展開になりましたが、実際のエピソードにちなんだシーンとなっています。
そして2019年、荒吐ロックフェスティバルの最終日。メインステージの大トリは、「the pillows-30th ANNIVERSARY CARNIVAL OF BUSTERS in ARABAKI-」と題したthe pillowsのステージでした。
関根史織(Base Ball Bear)、佐々木亮介(a flood of circle)、菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)、田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)、宮崎朝子(SHISHAMO)、ホリエアツシ(ストレイテナー)、TERU、JIRO(GLAY)、佐野元春という豪華アーティスト共演でのトリビュートライブとなりました。
にわかファンの自分でも、心震える感動のステージでした。30年続けてきたことへの敬意と、共に歩んできたと思わせてくれる聞き馴染んだメロディーは、まさに王者の貫禄でした。
多くの仲間、そして多くのロックファンに愛され続けてきた王者the pillows。まさにthe pillowsの魅力が詰まった集大成の映画となりました。
まとめ
the pillowsの結成30周年記念プロジェクト映画『王様になれ』を紹介しました。
the pillowsのファン・バスターズはもちろん、ロックを好まない人も共感できる物語になっています。
日々の生活の中で、音楽が与えてくれる力。一曲との出会いが、自分の限界を超える力を与えてくれるかもしれません。
そして、その出会いは必然なのです。脳細胞の支配下で世界を創れ。「王様になれ」。