1998年に製作・脚本をリュック・ベッソンが放った、ハイスピードカーアクションシリーズ開幕!
マルセイユの街を舞台にスピード感のあるカー・アクション映像で描いた痛快エンターテインメント作品。
演出を務めたのはレーサー出身のジェラール・ピレス。製作・脚本は『ニキータ』『レオン』などで知られるリュック・ベッソン監督。
キャストには『レオン』のサミー・ナセリ、『おせっかいな天使』のフレデリック・ディーファンタル、『そして僕は恋をする』のマリオン・コティヤールが共演しました。
スピード狂のタクシードライバーのダニエルとマヌケな刑事エミリアンがひょんなことから凶悪強盗団に挑む、映画『TAXi』をご紹介します。
映画『TAXi』の作品情報
(C)AFP-TF1 FILMS PRODUCTION-LE STUDIO CANAL+1997
【日本公開】
1998年(フランス映画)
【原題】
TAXi
【監督】
ジェラール・ピレス
【キャスト】
サミー・ナセリ、フレデリック・ディフェンタール、マリオン・コティヤール、エマ・シェーベルイ、マヌエラ・グーレリ、ベルナール・ファルシー
【作品概要】
『レオン』『フィフス・エレメント』などで知られるリュック・ベッソン、製作・脚本を担当、監督は元レーサーと言う異色の経歴を持つジェラール・ピレスが務めます。
撮影はジャン=ピエール・ソヴェール、音楽はフランスを代表するヒップホップ・グループ IAM、録音はヴァンサン・テュリ。そのほか、美術はジャン=ジャック・ジェルノル、編集はヴェロニク・ランジュが担当。
またキャストのひとりエマ・シェーベルイは初の映画出演となっています。
映画『TAXi』のネタバレ
(C)AFP-TF1 FILMS PRODUCTION-LE STUDIO CANAL+1997
ピザの配達員だったダニエル・モラレース(サミー・ナセリ)は夢を叶え、ピザ屋を退職。その記念に宅配のスピード記録を更新、仲間に惜しまれつつ見送られます。
さらにその日、ダニエルは恋人のリリー(マリオン・コティヤール)と初めての夜を過ごそうと、ベットに入りますが、午前6時のアラームが鳴り響きます。
出かけようとするダニエルをリリーは引き止めようとしますが、ダニエルは「新しい仕事」と言い出かけた彼が向かった先は陸運局でした。
そこで個人タクシーの営業許可書を受け取り、晴れてタクシードライバーになったダニエルは愛車、プジョー・406で街へ繰り出します。
ダニエルは市場で初めての乗客、カミーユ(マヌエラ・グーレリ)を乗せます。
大荷物だったカミーユの部屋まで荷物を運ぶ親切なダニエルをカミーユは気に入り、部屋でもてなすと共に、自分の息子がその日、運転免許の路上テストだと話します。
まさにその頃、カミーユの息子、エミリアン・クタン=ケルバレーク(フレデリック・ディーファンタル)は8度目の路上テストを受けていました。
エミリアンは極度に緊張しており、パン屋に突っ込んでしまい、テストは不合格となります。
カミーユの家を後にしたダニエルは25分以内に空港に行きたいという客を乗せます。
以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『TAXi』ネタバレ・結末の記載がございます。『TAXi』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
「あんたは運がいい」と笑うダニエルはグローブボックスを開け、そこにあったスイッチを次々と操作します。
すると、プジョーはエアロやリアウイングが飛び出し、タイヤもフェンダーいっぱいまでせり出したまるでレーシングカーのような姿に変わります。
ダニエルはアクセルを踏み、プジョーを加速させるとほかの車を軽々と抜き、当然のように信号を無視、高速道路では200キロの速度で走り、空港まで13分で到着しました。
路上テストに落ちたエミリアンは職場であるマルセイユ警察に戻ります。そこで、驚異的な速度で走っていたタクシーの噂を耳にしますが、意気消沈するエミリアンはそれどころではありません。
その頃、マルセイユ警察署長のジベール(ベルナール・ファルシー)はドイツや至りで話題になっていた強盗団がマルセイユの銀行に犯行予告をしてきた事を受け、作戦会議を行っていました。
強盗団は派手な赤いベンツ・500Eの改造車で現れ銀行を襲撃することから、「ベンツの強盗団」と呼ばれていました。
ジベールは強盗団が銀行を襲撃、出てきたところを現行犯逮捕する作戦を立て、署員に出動命令を出します。
会議を終え、現場に向かおうとするエミリアンは密かに思いを寄せる(と本人は思っているが周囲にはバレバレ)ぺトラ(エマ・シェーベルイ)の姿を見掛け、食事に誘います。
ぺトラの「強盗団を捕まえたら」という返事にエミリアンは、気合を入れ現場に向かいます。
現場で強盗団を待ち構える、ジベールを始めとしたマルセイユ署員たちの前に強盗団が現れ、銀行に入っていきます。
強盗団が行内で現金をかき集める中、待機するエミリアンは便意をもよおしていました。
我慢できず、張り込み車両から出ようエミリアンが開けた扉が通行中の車両に接触、それをきっかけに銀行前で連鎖的に交通事故が発生します。
銀行から出てきた強盗団を追うことができなくなったジベールは発砲し、強盗団を止めようとします。
さらに、間が悪く、マルセイユを訪れていたフランス政府の閣僚も車が銃撃戦の真ん中へ侵入、閣僚を狙ったテロと勘違いした警護官とマルセイユ警察の間で不毛な銃撃戦が発生します。
ほどなく、誤解は解けましたが、強盗団は逃げた後でした。責任を問われ、ジベールに絞られ意気消沈のエミリアンはカミーユの元で食事をした後、再び署へ戻ろうとするエミリアンのためにタクシーを呼びます。
現れたダニエルはエミリアンを警察署に送ります。世間体を気にするカミーユはダニエルにエミリアンはシステムエンジニアだと話していました。
そうとは知らず警官の悪口を言うダニエルに怒ったエミリアンは、タクシードライバーの悪口を言います。
ダニエルはタクシードライバーは本業じゃないと言うと、プジョーを変形させ爆走させます。警察署前につき、警察手帳をダニエルに見せるエミリアン、ダニエルの表情はたちまち凍り付きます。
エミリアンのオフィスに連れて来られたダニエルは普通なら運転免許はく奪ですが、交換条件としてエミリアンの捜査に協力することを提案されます。
エミリアンは車に詳しいダニエルの知識と、レーサー顔負けのドライビングテクニック、そしてダニエルのプジョー・406が強盗団を捕まえるため必要だと考えていました。
その条件を不承不承ながら飲み込んだダニエルは、強盗団のベンツの映像から犯人がドイツ人だと断定します。
理由はベンツに乗ってるから、ではなく、タイヤの形状からドイツ製だと見抜いたダニエルはタイヤのすり減り具合から近く交換する事、そしてマルセイユでドイツ製タイヤを扱っている店はただ一軒、クルーガーの店だと言います。
ダニエルとエミリアンは早速、その店を監視、深夜、4人組の男がグレーのベンツに乗って現れます。
店に入っていく男たちを見たエミリアンは喜び勇んでベンツのトランクに乗り込み、強盗団と思しき男たちの隠れ家を確かめようとします。
必死に止めるダニエルを無視してトランクに乗り込んだエミリアン、タイヤを抱え出てきた男たちは当然、トランクを開けます。
必然的に見つかってしまったエミリアンは男たちにダストボックスに投げ込まれ、ダニエルに助けられます。結果、空振りに終わった二人は別れ、ダニエルはリリーが待つ自宅に向かいます。
今度こそ初めての夜をと思いますがまたもアラームが鳴り響き、リリーは仕事に出て行ってしまいます。
少し休んで合流したダニエルとエミリアンはクルーガーの店へ戻ります。
店主、クルーガーに話を聞こうとする二人ですが、エミリアンが警察手帳を見せた瞬間、クルーガーは銃を取り出し発砲してきます。
エミリアンも必死に応戦しますが、エミリアンは弾丸を撃ち尽くしてしまいます。「弾切れだ!」叫ぶエミリアンにダニエルはクルーガーがとっくに逃げていたことを教えます。
またも空振りに終わった二人はカミーユの家で休みます。
薬をもらいに行くというカミーユのためにダニエルが車を出す間、手持無沙汰になったエミリアンは刑事ドラマで犯人の車に発信機を取り付ける場面をみてひらめき、あわてて署へ向かいます。
この時、エミリアンはヤカンの火をかけっぱなしにしたまま出かけてしまい、カミーユの家は全焼してしまいます。
その頃、ジベールは再び犯行予告をしてきた強盗団に頭を悩ませていました。そこへ、エミリアンがやってきて、発信機を仕掛けるアイディアを話し、ジベールもそれを承認します。
こうして再び現れた強盗団のベンツに発信機を仕掛けることに成功、追跡しますが、途中で信号が途絶えてしまいます。
ジベールは最後に信号が途絶えた周辺を封鎖を支持します。
通行する車を調べるジベールですがそれらしい車はなく、唯一同型のベンツが通りますが、色はグレー、念のため荷物を調べますが、特に現金らしいものは持っていませんでした。
その夜、ようやく初めての夜を迎えようといていたダニエルとリリーですが、家をなくしたエミリアン、カミーユ親子の訪問でまたも邪魔されてしまいます。
エミリアンは二度も強盗団を逃がした責任を問われ後がなくなっていました。助けと、カミーユのしばらくの宿を乞うエミリアンにダニエルは後ろ髪引かれながらも、協力を決意、エミリアンと共に家を出ます。
エミリアンは検問に現れたグレーのベンツが怪しいと考えていました。
強盗団は赤のベンツで注意を引き、どこかでグレーのベンツに乗り換え逃走奪った金もどこかに隠し、後から持ち出すつもりではないかと。その頃、前日に襲撃を受けた銀行で清掃員が空調室から大きな袋を持ち出します。
清掃員はその袋を廃工場で4人の男たちに渡します。その男たちはダニエルとエミリアンがクルーガーの店で見かけ、検問にグレーのベンツに乗って通った男たちでした。
同じ頃、ダニエルはベンツは色を塗り替えたのではないかと考えていました。
最近、発売されたごく短時間で乾く車用塗料の存在をエミリアンに話すと、知り合いの業者に塗料の在庫を確認します。すると、赤とグレーだけが在庫切れであり、購入先がマルセイユ市内のサーキットであることがわかります。
早速向かったダニエルとエミリアンはサーキットを走るグレーのベンツ、それに乗る4人の男たちが依然、クルーガーの店で見た車、男たちだと気が付きます。
ダニエルはコースに乱入するとベンツの男たちを挑発、レースを挑みます。見事、勝利するダニエルにエミリアンはこちらの顔を見られたと怒りますが、ダニエルはレースをすることで相手の性格を見ていました。
ダニエルはレースで分かった性格から、作戦を考えます。そのためには信号を操作する鍵が必要でした。エミリアンは署のシャワールームで交通担当の警官から鍵を拝借すると合鍵を作製します。
翌日、三度目の犯行予告が強盗団から届きます。
ダニエルはピザの宅配員だったころの仲間に無線と鍵を渡します。銀行を襲撃、出てきた強盗団を警察は追いますが、振り切られます。
強盗団は待機させてあった、トレーラーで車を赤からグレーに塗装、何食わぬ顔で出てきます。信号に停車していた強盗団のベンツの前にダニエルとエミリアンが現れ、勝負を挑みます。
安い挑発に乗ってきた強盗団から追われながら、エミリアンはダニエルの仲間に指示、信号機を操作し進路を作ります。そして、高速道路入ったダニエルは道の脇にあるバリケードを突き破り、工事中の橋に侵入します。
200キロ近い速度で走るプジョーとベンツですが、橋が途中で途切れていました。プジョーはぎりぎりでブレーキをかけ停車、ベンツはそのまま、宙を飛び、向かいの道になんとか飛び移ります。
しかし、ベンツが飛び移った先は前にも後にも道が途絶え、孤立していました。こうして、ベンツの強盗団はつかまり、ダニエルとエミリアンは警察の功労者として表彰されます。
二人の表彰式に出席した警視総監はダニエルにスピード違反や交通違反の数々は恩赦できるが、運転免許はく奪の撤回は難しいと言います。途方に暮れるダニエルに警視総監はある取引を持ちかけます。
数日後、ダニエルはマルセイユで開かれるF3のレースに出場。最高の舞台とマシンに乗る機会を与えられたはずのダニエルは表情はさえません。
その理由はマシンに書かれたスポンサーの「警察機動隊」と言う文字でした。しかし、気にするなというエミリアンの励ましでダニエルはレースに集中します。
「シャンパンを用意しとけよ!」と言い残し、ダニエルのマシンはレースへ出走していきます。
映画『TAXi』の感想と評価
(C)AFP-TF1 FILMS PRODUCTION-LE STUDIO CANAL+1997
美しいマルセイユの街並みを背景に、プジョー・406とベンツ・500Eの興奮のカーチェイスが繰り広げられた、本作、『TAXi』は、迫力あるカーアクションシーンが満載の映画です。
例えば、クライマックスのカーチェイスの場面では、走行する車を縫うようにスレスレで追い越す映像は手に汗を握り迫力あるシーンとして描かれています。
また、カーチェイスに巻き込まれ、事故を起こす車やベンツに衝突され横転する自動車のクラッシュする場面は、予期せぬタイミングに起こり、突然、観客の意表を突くような演出が成され、驚かされることは必至であり、超高速でのチェイスを見事に表現しています。
それと一転して緊張感を緩めるような、もう一つの魅力である個性豊かなキャラクターが繰り広げるコミカルな場面の数々は思わず吹き出してしまうという、緩急の演出が巧みで、なかでもダニエルとエミリアンの掛け合いが絶妙です。
間抜けな発言、間違いをするエミリアンをダニエルが冷静に指摘する場面を見るとダニエルが常識人のように見えますが、ダニエル自身がスピード狂であるため、ハンドルを握るとダニエルとエミリアンの立場が逆転するところなど笑いが抑えられませんでした。
そんな典型的なデコボココンビの二人が友情を育み、親友と言える中に発展していく姿に胸が熱くなりました。
まとめ
本作品『TAXi』はフランスが生んだヒットメーカー、リュック・ベッソンが製作・脚本を担当。
しかし、当時のベッソン作品から考えるとコメディ×アクションの融合は異色ではあるものの、本国フランスのみならず大ヒットを記録し以降、シリーズ化がされました。
また、この作品をただのコメディで終わらせないリュック・ベッソンを始め、制作スタッフたちのこだわりが多く見られます。
なかでも、監督を務めたジェラール・ピレスは元レーサーであったり、元ラリードライバーのジャン・ラニョッティをスタントドライバーに起用したり「走りのプロフェッショナル」が担当をすることにより、リアルで迫力ある映像を実現させました。
そんな笑いと迫力のあるスピード感覚を化学反応させたことにより、世界中で愛される作品になったのかもしれません。