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Entry 2019/10/02
Update

ホラー映画『血を吸う粘土~派生』感想と評価。前作ラストから新たな恐怖を作り出す|SF恐怖映画という名の観覧車69

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile069

今回の記事ではNETFLIXが独占配信した中国産SF映画『上海要塞』(2019)をご紹介する予定でした。

しかし、profile067でご紹介させていただいた「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション 2019」の開催が迫り、どうしても当コラムで取り上げたい作品が目白押しなため、予定を変更し数週に渡り上映作のほぼ全てをご紹介させていただくことになりました。

開催記念第2弾となる今回ご紹介するのは、特殊メイクのプロとして日本の映画及びドラマ界で広く活躍する梅沢壮一が監督として製作した映画『血を吸う粘土~派生』(2019)。

和製ホラー界に衝撃を巻き起こした前作を交え、本作の見どころと魅力を深掘りしていきたいと思います。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

映画『血を吸う粘土~派生』の作品情報


(C)2019『血を吸う粘土~派生』製作委員会

【日本公開】
2019年(日本映画)

【監督】
梅沢壮一

【キャスト】
藤井愛稀、AMIKO、藍染カレン、正本レイラ、美鈴、やね、ろるらり、笹野鈴々音、笠原紳司、津田寛治、黒沢あすか 

映画『血を吸う粘土~派生』のあらすじ


(C)2019『血を吸う粘土~派生』製作委員会

彫刻作家の三田塚(奥瀬繁)の激しい憎悪の詰まった粘土「カカメ」の暴走によって死亡した伏見恭三(津田寛治)。

父の恭三と確執のあった娘、果林(藤井愛稀)は画家を目指し著名なアーティスト主催の共同制作合宿に参加しますが、カカメの一部を取り込んだ恭三の遺骨が持ち込まれたことで再びカカメによる惨劇が巻き起こることになり…。

前作『血を吸う粘土』(2017)とは


(C)2017「血を吸う粘土」製作委員会 キングレコード/ソイチウム

2017年に特殊メイクの専門家として活躍していた梅沢壮一が長編映画監督として初めて製作したホラー映画『血を吸う粘土』。

この作品は本作と同じく「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション 2019」で上映される『WELCOME TO JAPAN 日の丸ランチボックス』(2019)で主演を務めた藤田恵名を始め、大規模な映画からインディーズ作品まで手広く出演する津田寛治や、『冷たい熱帯魚』(2010)で圧倒的な存在感を誇った黒沢あすかなど名だたる名優が出演したことでも話題となりました。

さらに『血を吸う粘土』は「第42回トロント国際映画祭」において「ミッドナイト・マッドネス部門」のクロージング作品に選出されると言う快挙を成し遂げ、惜しくも受賞は逃しますが世界に向けて強烈な印象を残しました。

長編監督第1作から日本と言う枠を越えた作品を残した梅沢壮一の『血を吸う粘土』。

本作から地続きとなる2作目『血を吸う粘土~派生』は彼の才能を更に深く感じる作品となっていました。

「カカメ」の恐怖と和製ホラーらしからぬ演出の融合


(C)2019『血を吸う粘土~派生』製作委員会

粉と化した状態からも水分を摂取することで行動を開始し、貪欲に血を求め始める生きた粘土「カカメ」。

人に擬態し、身体を自在に変形させるカカメの動きの全てがグロテスクかつおどろおどろしく、それでいて静かに襲い来る恐怖として描かれています。

カカメのビジュアル自体は不思議とどこか可愛らしく見える部分もあり、動きや雰囲気だけで全く違うと言っていいほどの印象付けを成し遂げている部分には「和製ホラー」としてのノウハウが活かされています。

しかし、その一方でホラーらしからぬ独特の演出が良い意味で目立つ本作。

「血を吸う粘土」シリーズでは売れない彫刻家の非業の死から始まり、粘土や美術学校など「芸術」が1つの主題となっています。

そのため彫刻や絵画、音楽やダンスなど様々な「芸術」の要素が演出にも取り入れられており、単なる「和製ホラー」のくくりには収まりきらない新たな境地に足を踏み入れていました。

新進気鋭の若手出演者たち


(C)2019『血を吸う粘土~派生』製作委員会

講談社が主催する「ミスiD2017」のグランプリを受賞した武田杏香が主演した前作に続き、今作でも「ミスiD2018」からAMIKOや、やね、ろるらりなど新進気鋭の若手女優が多数出演しています。

彼女たちの演じた「才能ある若手芸術家」たちはハマり役であると自信を持って言うことが出来、アイドルグループZOCの藍染カレン演じる芸術家が音楽に併せ踊る様子など、各個人が特徴のある役を演じていました。

主人公の果林を演じた藤井愛稀も、父親に対する軽蔑の心を深く持ち、義理の姉妹への背徳感を抱える果林の孤独を演じきっており、他人に対し自身の心情をしっかりと伝えることをしなかった果林が合宿の最中に変わっていく様子にしっかりと感情移入出来ます。

さらに本作には、前作にも出演したベテラン俳優の津田寛治と黒沢あすかが続投しており、黒沢あすか演じる藍那ゆりが、ある決意を固めたことにより果林たちを襲う惨劇にどう絡んでいくか、にも目が離せない作品となっています。

まとめ


(C)2019『血を吸う粘土~派生』製作委員会

前作『血を吸う粘土』の惨劇を生き延び、カカメの弱点も倒し方も知る登場人物が今作にも大きく関わる、と言う熱い展開も用意されている本作は終盤の衝撃的な展開もみどころの1つ。

斬新な演出と、静かな恐怖が蔓延する新たな「和製ホラー」の世界を目の当たりにできる最新和製ホラー映画『血を吸う粘土~派生』。

本作が上映される「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション」は、10月よりヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田、シネマスコーレ(名古屋)の3劇場で開催。

気になる作品のある方はぜひとも劇場に足を運んでみてください。

次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…

いかがでしたか。

次回のprofile070も「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション 2019」の上映作品から1作を選びご紹介させていただきます。

10月9日(水)の掲載をお楽しみに!

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら





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