Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2019/09/21
Update

映画『マイ・ビューティフル・デイズ』あらすじと感想評価。シャラメの眼差しに高校教師が揺れる

  • Writer :
  • 石井夏子

傷つき笑い恋をした、忘れられない週末。
あの時、あなたはたしかに私を見つめていた。

ティモシー・シャラメが出演した『マイ・ビューティフル・デイズ』が2019年11月1日(金)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開されます。

本作は2016年に製作され、撮影当時19歳だったシャラメの成長期ならではのアンバランスな妖艶さと、彼が恋するスティーブンス先生を演じたリリー・レーブのあらゆる葛藤を抱えた佇まいが胸に残る作品です。

また、おもな登場人物は5人と少ないため、よりキャラクターへの共感をしやすく、それぞれの個性が際立ちました。

この記事では、不器用さゆえに生まれるユーモアたっぷりの映画『マイ・ビューティフル・デイズ』をご紹介します。

映画『マイ・ビューティフル・デイズ』の作品情報


(c)2016Young Dramatists, LLC.All Rights Reserved.

【日本公開】
2019年(アメリカ映画)

【原題】
Miss Stevens

【監督・脚本】
ジュリア・ハート

【キャスト】
ティモシー・シャラメ、リリー・レーブ、リリ・ラインハート、アンソニー・クインタル、ロブ・ヒューベル

【作品概要】
本作は2016年に製作されました。

監督・脚本を務めたジュリア・ハートは、本作が長編初監督。

プロデューサー兼共同脚本のジョーダン・ホロウィッツは『ラ・ラ・ランド』(2017)のプロデューサーとして知られ、ジュリア・ハート監督のパートナーでもあります。

『君の名前で僕を呼んで』(2018)でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた俳優ティモシー・シャラメが、英語教師ミス・スティーヴンスに秘かに恋心を抱く、行動障害がある男子学生ビリーを演じました。

スティーヴンス先生役のリリー・レーブは本作でサウス・バイ・サウスウエスト映画祭最優秀女優賞を獲得。

そのほか、『キング・オブ・サマー』(2017)『ガルヴェストン』(2018)のリリ・ラインハートや、カリスマYouTuberのアンソニー・クインタルが出演しています。

映画『マイ・ビューティフル・デイズ』のあらすじ


(c)2016Young Dramatists, LLC.All Rights Reserved.

高校で英語を教えている、29歳のスティーブンス先生。

生徒の前では凛とした姿を見せていますが、内なる悩みを抱えています。

クラスのリーダー的存在・マーゴットに頼まれ、先生は週末の3日間、演劇大会の引率をすることに。参加者はマーゴット、いつも明るいサム、そして無口なビリーです。

ビリーは友達がおらず、課題も提出しない、ちょっと問題を抱えている生徒。スティーブンス先生は校長先生から、ビリーには行動障がいがあり服薬しているため、目を離さず薬の管理をするよう念を押されます。

金曜の放課後、先生の自家用車に乗り込み、大会へと向かう4人。ビリーは自然と助手席に座ります。

生徒との関係には細心の注意を払うスティーヴンス先生でしたが、ストレートに感情をぶつけてくるビリーに翻弄されていき…。

映画『マイ・ビューティフル・デイズ』の感想と評価


(c)2016Young Dramatists, LLC.All Rights Reserved.

理想を叶える舞台という場所

ビリーには優れた芸術的才能がありながら、集団生活になじむことができません。

言ってはいけないことの線引きをうまく引けない、他人との距離感がわからない、突然衝動的なスイッチが入る…。彼は他者とコミュニケーションを取るのが困難です。

そんなビリーですが、他人の気持ちにはとても敏感で、殊に他人に扮する演劇では特異な才能を発揮します。

舞台の上でなら、感情も言葉も真っすぐに伝えられるのに、舞台からおりるとなにもかもうまくいかない。そんな葛藤が「セールスマンの死」のビフ役のセリフと重なり、彼の独白は本作必見の場面となっています。

スティーズンス先生がふとした瞬間に見せる翳りを見逃さず、ビリーなりの愛情を持って励ます様子は微笑ましくもありますが、距離の詰め方は少し恐ろしく感じてしまうほど危うく、少年から青年への転換期ならではの不安定さと相まって、独特の色気を発しています。

泣き方を忘れてしまった大人へ

大人になると、誰かに頼ることが難しくなり、自分の感情を押し殺すことが増えていきます。

いつも優しく親身で芯の強いスティーブンス先生。29歳という、まだ若いけれど、夢を見るには現実を知りすぎた年齢。

加えて、彼女にはずっとぬぐえない“喪失”が付きまとっています。

常に微笑んでいるかのような彼女の顔は、能面の小面のようで、泣き顔と表裏一体。

スティーブンス先生の笑顔の裏を見抜いたビリーは、彼なりの愛情をぶつけ、先生の心の柔らかい部分に踏み込みます。そして先生も、彼に振り回されながら、自分自身と向き合っていきます。

原題は『Miss Stevens』。本作は、“先生”であり、“お嬢さん”でもあったミス・スティーブンスが、誰かの力を借りながらも再び立ち上がれるようになるまでを描いた作品です。

スティーヴンス先生とビリーが選んだ道は、ぜひ劇場で確かめてください。

まとめ


(c)2016Young Dramatists, LLC.All Rights Reserved.

本作の監督、ジュリア・ハートはインタビューでこう答えています。

「世の中の映画を見ていると、女性には失恋しか悩みがないみたいに思えるでしょ。でも女性には、恋愛とは全く無関係の色々なことが同時に起こっている」

失恋では無い“喪失”に悩み、それでも目の前にいる生徒と向き合おうとするスティーブンス先生は、教師としては未熟ながらも親しみのある等身大の人物として存在しています。

彼女に新たな悩みを与えるビリーの熱を帯びた眼差しも印象深く、頭から離れません。

スティーブンス先生を演じた、トニー賞ノミネート経験者であり、本作でサウス・バイ・サウスウエスト映画祭最優秀女優賞を獲得したリリー・レーブと、あどけなさと妖艶さが共存する19歳のティモシー・シャラメの駆け引きに、ぜひ惹きこまれてください。

span class=”caption”>
(c)2016Young Dramatists, LLC.All Rights Reserved.

関連記事

ヒューマンドラマ映画

映画『生きちゃった』ネタバレ感想と結末ラスト考察。タイトルの意味に変化が起きて観客それぞれにメッセージは託される

映画『生きちゃった』は人によって解釈の違うタイトル。 高校時代からの友人である3人の男女が、それぞれ複雑な感情を隠し、悲劇的とも言える運命に直面する映画『生きちゃった』。 『川の底からこんにちは』(2 …

ヒューマンドラマ映画

【ネタバレあり】戦争と女の顔|感想考察と解説評価。心身に傷を負った女性兵士たちの“戦後”を描く

PTSDを抱えた元ロシア人女性兵士の“過酷な戦後” 2022年7月15日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国順次公開を迎えた映画『戦争と女の顔』。 ノーベル賞作家スヴェトラ …

ヒューマンドラマ映画

映画『エレノアってグレイト。』あらすじ感想と評価考察。スカーレット・ヨハンソン初監督作は“年の差を超えた友情”を描くヒューマンドラマ

悪気のない嘘から始まるハートウォーミングドラマ 俳優スカーレット・ヨハンソンが長編初監督を務めた映画『エレノアってグレイト。』が、2026年6月12日(金)より新宿バルト9ほか全国順次ロードショーされ …

ヒューマンドラマ映画

映画『復活の日』あらすじネタバレと感想考察。コロナウイルス感染拡大の“類似と差異”を解説

1980年公開の邦画『復活の日』は、“いま”こそ見るべき秀作 世界各地で猛威をふるう新型コロナウイルス感染症“COVID-19”。 外出自粛要請や緊急事態宣言など、日本国内にも大きな影響が出ており、状 …

ヒューマンドラマ映画

映画感想レビュー『イングランド・イズ・マイン モリッシー,はじまりの物語』ザ・スミスはこうして誕生した

今明かされる、伝説のブリティッシュ・ロックバンド“ザ・スミス”の誕生前日譚。 1980年代前半のイギリスに颯爽と現れ、世界のミュージックシーンを席巻したバンド、ザ・スミス。 そのボーカリストであるステ …

Cinemago|想像力の海へ、シネマダイビング。
ACT1|次の物語は、人からはじまる。
Cinemagoオンラインショップ|DVD・鑑賞チケット・オリジナルグッズ
『血を吸うスマトラオオコンニャク』
【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学