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Entry 2019/09/28
Update

映画『レモ第1の挑戦』あらすじと感想評価。ブルーレイが発売された“労働者階級の007”の製作秘話とは|すべての映画はアクションから始まる2

  • Writer :
  • 松平光冬

連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』第2回

“労働者階級のジェームズ・ボンド”が、裁けぬ悪を成敗する!

日本公開を控える新作から、カルト的評価を得ている知る人ぞ知る旧作といったアクション映画を網羅してピックアップする連載コラム、『すべての映画はアクションから始まる』。

第2回は、2019年9月4日に日本初のブルーレイソフトが発売された、1986年製作の『レモ/第1の挑戦』です。

【連載コラム】『すべての映画はアクションから始まる』記事一覧はこちら

映画『レモ/第1の挑戦』の作品情報


映画『レモ/第1の挑戦』

【日本公開】
1986年(アメリカ映画)

【原題】
REMO:The Adventure Begins…(別題:REMO:Unarmed and Dangerous)

【監督】
ガイ・ハミルトン

【キャスト】
フレッド・ウォード、ジョエル・グレイ、J・A・プレストン、ケイト・マルグレー、ウィルフォード・ブリムリー、チャールズ・シオッフィ

【作品概要】
朝鮮発祥の古武術“シナンジュ”を体得した政府機関エージェント、レモ・ウィリアムズが強大な悪と闘うアクション映画。

アメリカでロングセラーを誇る小説「ザ・デストロイヤー」シリーズを原作に、監督に「007」シリーズを手がけたガイ・ハミルトンを迎えました。

出演は、主人公レモ役を『トレマーズ』(1988)のフレッド・ウォード、シナンジュの使い手チュンを、アカデミー賞俳優のジョエル・グレイが演じます。

そのほか、後年にテレビドラマ「スター・トレック/ヴォイジャー」でシリーズ初の女性艦長を演じたケイト・マルグレーが脇を固めます。

惜しくも受賞は逃すも、1986年度のアカデミー賞メイクアップ賞とゴールデングローブ賞最優秀助演男優賞(ジョエル・グレイ)にそれぞれノミネートされています。

映画『レモ/第1の挑戦』のあらすじ

ニューヨーク市警のマキン警官は、ある日、政府のエージェントのマクレリー(マック)によって死を偽装された上に、顔を整形手術されて全くの別人「レモ・ウィリアムズ」となってしまいます。

マックが所属するのは、法の手の届かない強大な悪を秘かに抹殺しようという組織で、彼と大統領直属のハロルド・スミスの2人だけで構成されていました。

スミスたちはレモを完璧な暗殺者にすべく、チュンという年老いた韓国人に彼の身を預けます。

チュンは朝鮮の古武術シナンジュの名手で、銃の弾丸をよけることが出来る能力を持つ人物。

最初こそ嫌々ながらチュンの指導を受けるレモでしたが、彼の人柄に触れていくにつれ、シナンジュの奥義を会得していきます。

一方スミスは、軍需産業の大物ジョージ・グローヴが、アメリカの防衛システム開発の独占を企てていることを突き止め、彼を最初のターゲットとするのでした。

原作はロングセラーのアクション小説

本作の原作は、アメリカの推理作家ウォーレン・マーフィーがリチャード・サピアとともに執筆したアクション小説「ザ・デストロイヤー」(日本でも「殺人機械」シリーズとして東京創元社から刊行)です。

アメリカで1971年に第一作が刊行されて以降、瞬く間に人気を博しシリーズ化され、作者の交代を経るなどしながら、累計でなんと120冊超もの巻数を誇ります。

原作版は、映画版よりもレモと師であるチュン(原作ではチウン)やハロルド・スミスとのバディ感が強まっていたり、シリーズが進むにつれ、レモがシナンジュ分派との継承者争いに巻き込まれるといった展開にもなっていきます。

『マトリックス』を先取りしたレモの能力

参考:イギリス・アロービデオ社のツイッター

本作の魅力は、何といっても主人公レモが身に付けた能力“シナンジュ”にあります。

拳銃やナイフなどの武器を使わずに、素手のみでターゲットを仕留める武術に加え、拳銃の引き金を引く筋肉の音を聞き取ることで、弾丸すらかわしてしまいます。

さらには特殊な呼吸法を使って、空中に浮くこともできるのです。

まるで「マトリックス」シリーズ(1999~2003)のネオのような動きを見せるレモですが、そんな彼の能力が如何なく発揮されるのが、中盤での自由の女神像で繰り広げられるアクションシーン。

本作撮影時(1985年)、女神像は改修工事を行っていたためにパイプで作られた足場で覆われており、ここで刺客に狙われたレモは、身軽な身体を駆使して相手の攻撃をかわします。

この時代にはCG技術などないため、文字通り危険な生身のスタントを伴ったアクションシーンが展開されるので必見です。

華麗なるデビュー作となるはずが…

原作が120冊超もある上に、武器を一切使わない斬新なヒーローということで、小説「ザ・デストロイヤー」はシリーズ化を想定して映画版の製作に着手。

製作陣がレモを、“ブルーカラー(労働者階級)のジェームズ・ボンド”と評したのを裏付けるかのように、監督に『007/ゴールドフィンガー』(1964)、『007/ダイヤモンドは永遠に』(1971)など計4本の「007」シリーズを手がけたガイ・ハミルトンを、脚本に『007/私を愛したスパイ』(1977)、『007/ムーンレイカー』(1979)のクリストファー・ウッドを揃えました。

まさに強力な布陣で1985年10月のアメリカ公開に臨んだ本作でしたが、結果は約1,500万ドルの製作費すら回収できないほどの惨敗となり、シリーズ化も頓挫してしまいます。

“第2の挑戦”は今なお続く?

それでも、映画版プロデューサーのラリー・スピーゲルやジュディ・ゴールドステインは、1988年にテレビドラマでのシリーズ化を目論んでパイロット版を制作するも、こちらも頓挫(ここではURLを貼りませんが、Youtubeでパイロット版が見られます)。

また、実現はしなかったものの、『アイアンマン3』(2013)や『ナイスガイズ!』(2016)のシェーン・ブラック監督が、新たに「ザ・デストロイヤー」の映画化に動いたりもしました。

興行成績こそ芳しくなかったものの、今でも根強いファンを持つ本作。

ラリーやジュディら元プロデューサー陣は、いまだに本作の続編製作を諦めていないと表明しているだけに、ファンは“第2の挑戦”が来るのを気長に待つとしましょう。

まとめ

参考:日本版ブルーレイ発売元『是空』のツイッター

そんな本作『レモ/第1の挑戦』は、日本ではこれまでDVDが発売されていましたが、特典映像は予告編のみという寂しい仕様となっていました。

しかし2019年9月4日に、予告編にプラスして関係者のインタビュー映像やオーディオコメンタリー、さらにテレビ版の日本語吹き替え音声も収録したブルーレイソフトが発売。

プロデューサー陣の続編製作への思いや、自由の女神像でのアクションシーンの裏側に触れたコメントはもちろん、1980年代のアクション映画の系譜を追った貴重なドキュメンタリーも見逃せません。

映像も特典もパワーアップしたブルーレイの発売で、これまで観たことのない方も、これを機に是非ともチェックしてください!

次回の連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』もお楽しみに。

【連載コラム】『すべての映画はアクションから始まる』記事一覧はこちら

松平光冬プロフィール

テレビ番組の放送作家・企画リサーチャーとしてドキュメンタリー番組やバラエティを中心に担当。主に『ガイアの夜明け』『ルビコンの決断』『クイズ雑学王』などに携わる。

ウェブニュースのライターとしても活動し、『fumufumu news(フムニュー)』等で執筆。Cinemarcheでは新作レビューの他、連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』『すべてはアクションから始まる』を担当。(@PUJ920219

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