共感率100%!21世紀の青春映画の傑作誕生!
こじらせたまま大人になった全ての人に捧ぐ『スウィート17モンスター』をご紹介します。
CONTENTS
映画『スウィート17モンスター』の作品情報
【公開】
2016年(アメリカ)
【原題】
The Edge of Seventeen
【監督】
ケリー・フレモン・クレイグ
【キャスト】
ヘイリー・スタインフェルド、ウディ・ハレルソン、キーラ・セジウィック、ブレイク・ジェナー、ヘイリー・ルー・リチャードソン、ヘイデン・ゼトー
【作品概要】
新進気鋭の脚本家ケリー・フレモン・クレイグが初監督を務め、注目の若手女優ヘイリー・スタインフェルドが主演する青春映画。
第74回ゴールデングローブ賞(2017年)コメディ/ミュージカル部門最優秀主演女優賞(ヘイリー・スタインフェルド)ノミネートなど、賞レース4受賞18部門ノミネートの快挙を達成した作品。
映画『スウィート17モンスター』のキャスト一覧
ネイディーン / ヘイリー・スタインフェルド
女優であり歌手としても活動しているヘイリー・スタインフェルドが映画デビューを飾ったのは若干14歳の頃(撮影時13歳)。
15,000人を超える女優の中から選ばれ、コーエン兄弟の『トゥルー・グリット』にマティ・ロス役として大抜擢されたのです。
この作品でアカデミー賞助演女優賞や英国アカデミー賞主演女優賞にノミネートされた他、放送映画批評家協会賞の若手俳優賞やシカゴ映画批評家協会賞など様々な賞レースを席巻しました。
2013年には『エンダーのゲーム』、ジョン・カーニー監督の『はじまりのうた』に出演、2015年の『ピッチ・パーフェクト2』ではアカペラを披露し、演技だけでなく歌唱力の高さにも注目を集めることに。
また、タイムズ誌(2013)が選ぶ“最も影響力のある16人のティーン”の一人に選ばれるなど、今最も勢いのある若手女優の一人となっています。
そんなヘイリー・スタインフェルドが今回演じているのは、主人公のネイディーン。まだ恋愛にはウブな17歳の少女ネイディーンは、なんと大嫌いな兄と親友が恋に落ちてしまったことを知ってしまうのだとか。
何かと母親たち大人を困らせてしまうこじらせ女子をヘイリー・スタインフェルドが一体どのように表現しているのか…注目が集まっていますね!
ブルーナー / ウディ・ハレルソン
悪役や超個性的な役をやらせたら右に出る者はいない個性派俳優ウディ・ハレルソン。
1985年からスタートしたテレビドラマ『チアーズ』のバーテンダー役で一躍その名を知られる存在になりました。
1985年には『ワイルドキャッツ』で映画デビュー。1994年にはオリバー・ストーン監督の『ナチュラル・ボーン・キラーズ』に出演し注目を集めます。
その後、ミロシュ・フォアマン監督の『ラリー・フリント』(1996)で強烈に個性的な実在の人物ラリー・フリントを演じ、アカデミー賞やゴールデングローブ賞でノミネートされることに。
他にもテレンス・マリック監督の『シン・レッド・ライン』(1998)やコーエン兄弟の『ノーカントリー』(2007)、『メッセンジャー』(2009)ではインディペンデント・スピリット賞助演男優賞を受賞、アカデミー助演男優賞にもノミネートされるなどどんな映画にも欠かせない存在ですね。
最近でも『ハンガーゲーム』シリーズや『グランド・イリュージョン』などの話題作に立て続けに出演し続けています。
本作『スウィート17モンスター』で演じているのは、ネイディーンの担任の教師ブルーナー。
どうやらブルーナーというのは変わり者(やはり?!)の教師で、なぜかネイディーンと波長が合うのだそう。一体どんな風に演じているのか…楽しみですね!
モナ / キーラ・セジウィック
ケヴィン・ベーコンの愛妻としてその仲睦まじい姿が印象的なキーラ・セジウィック。
映画デビューは1985年の『愛と動乱のワルシャワ』で、本格的にブレイクを果たすことになるのは、オリバー・ストーン監督の『7月4日に生まれて』(1989)でしょう。
この作品でトム・クルーズの恋人役を好演してことで、一気にその名が知られるようになります。
その後は『シングルス』(1992)、『告発』(1995)、『ポゼッション』(2012)などに出演。
テレビドラマ界でも活躍を見せており、2005年から2012年まで出演種続けた『クローザー』でブレンダ・リー・ジョンソン役として主演を務め、ゴールデングローブ賞主演女優賞(テレビシリーズ部門)を 受賞しました。
そんなキーラ・セジウィックは本作でネイディーンの母親モナを演じています。すでに夫は他界しており、それ以来何かと取り乱しがちだというモナが、娘のネイディーンとどう向き合っていくのか、そしてその姿をキーラ・セジウィックがどう見せてくれるのかに注目です。
クリスタ / ヘイリー・ルー・リチャードソン
1995年生まれのヘイリー・ルー・リチャードソンは、16歳の時『ラスト・サバイバーズ』という作品でハリウッドデビュー。
その後『ブロンズ!私の銅メダル人生』(2015)に出演し、2017年にはM・ナイト・シャマラン監督、ジェームズ・マカヴォイ主演の『スプリット』の公開を控えています。(日本公開は2017年5月12日~)
そんなヘイリー・ルー・リチャードソンが演じているのは、ネイディーンの親友クリスタ。
ネイディーンの兄ダリアンと恋仲になってしまうという役どころですが、ティーンのもどかしさや甘酸っぱい雰囲気を一体どう表現しているのかに注目して見ていきましょう。
ダリアン / ブレイク・ジェナー
幼い頃から演劇を学んでいたというブレイク・ジェナーが一躍脚光を浴びることになったのは、大人気テレビドラマ『Glee/グリー』でしょう。
そもそもは2012年に行われたリアリティ番組『Glee プロジェクト 〜主役は君だ!』に出演したことがきっかけ。
この番組は、14人の参加者による『Glee/グリー』の7話分の出演権を獲得に向けたオーディション番組となっており、ブレイク・ジェナーはファイナリストの3名に残り、最終的に優勝を果たします。
これにより『Glee/グリー』のシーズン4第5話からライダー・リン役として初登場を果たし、一気に注目を集めることになりました。
2016年にはリチャード・リンクレイター監督の『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』の主演に抜擢されるなど、今大注目の若手俳優の一人ですね。
そんなブレイク・ジェナーは、本作でネイディーンの兄ダリアンを演じています。
イケメンで誰からも愛されるというダリアンは、妹の親友クリスタと深い仲になってしまう訳ですが…果たして妹との関係がどうなってしまうのか…注目ですね!
映画『スウィート17モンスター』の監督とプロデューサー紹介
監督:ケリー・フレモン・クレイグ
映画『スウィート17モンスター』の監督を務めるのは、ケリー・フレモン・クレイグです。
1981年生まれのケリー・フレモン・クレイグは、カリフォルニア大学アーバイン校で短編や詩を学んでいました。
映画界に身を置くようになったきっかけは、“Immortal Entertainment”という制作会社の映画部門でインターンをしていた時、初めて映画脚本に触れたことだったようですね。
こうして執筆活動を始め、脚本家としてヴィッキー・ジェンソン監督の『恋する履歴書』(2009)でデビュー。
この作品が本作でプロデューサーを務めるジェームズ・L・ブルックスの目にとまったかまでは不明ですが、本作で監督として抜擢されることに。
ケリー・フレモン・クレイグは自身の脚本で初めて本作で監督を務めることになった訳ですが、その評価の高さは凄まじいですね。
権威あるNY映画批評家協会賞第一回作品賞を受賞した他、全米監督協会(DGA)初監督賞にノミネートされるなど賞レースを席巻します。
このとてつもない新人の恐るべき才能に今、映画界が釘付けとなっていますね!
プロデューサー:ジェームズ・L・ブルックス
そして、その才能を見出したのが本作でプロデューサーを務めるジェームズ・L・ブルックスです。
ジェームズ・L・ブルックスは、アメリカ・FOXテレビで1989年に放送開始した、アメリカアニメ史上最長寿番組である『ザ・シンプソンズ』のプロデューサーを務めたことでも非常に有名ですよね。
脚本家としても良く知られていて、デビューを果たした『結婚ゲーム』(1979)、監督も兼務した『愛と追憶の日々』(1983)では第56回アカデミー賞作品賞や第41回ゴールデングローブ賞ドラマ部門作品賞を受賞するなど、最高の評価を得ることに。
続く『ブロードキャスト・ニュース』(1987)でも高評価を得て、1996年にはウェス・アンダーソンという新たな才能を発掘し、『アンソニーのハッピー・モーテル』で製作総指揮を務めます。
さらに、1996年にはキャメロン・クロウ監督の『ザ・エージェント』でも製作を担当し、大ヒットを記録。
自信が監督・脚本・製作を務めた『恋愛小説家』も様々な賞レースを席巻するなど、彼が関わった作品はほぼ全て最高の評価を得ていることが良く分かると思います。
本作『スウィート17モンスター』で見出したケリー・フレモン・クレイグという才能も、ウェス・アンダーソンやキャメロン・クロウのように花開くに違いありません!
映画『スウィート17モンスター』のあらすじ
ネイディーンは17歳。
キスも未経験、もちろん恋愛経験もなし。
そんなイケてない毎日を送っているネイディーンは、妄想だけが大きく膨らみ、空回りするばかり。
そんなネイディーンに教師のMr.ブルーナーや母のモナも手を焼いていました。
唯一心を許せるのは親友のクリスタただ一人。
しかし、そんな親友との間に衝撃の事件が起こってしまいます。
なんと兄ダリアンにクリスタが恋に落ちてしまったのです。何をしても敵わない兄の存在は、ネイディーンにとってコンプレックスでしかなかったため、なおさらショックでした。
これを機にネイディーンは、新たな視点で周りの人々に気持ちを向けざるを得なくなってしまいます。
父が亡くなって以来、何かと取り乱しがちな母…。
なぜかシンパシーを感じる変わり者の教師ブルーナー…。
イケメンで誰からも愛される兄ダリアン…。
いつもと違った見方をすると見えてくるもの…。
それは、もっと単純なものだと思っていた人生も、実はもっと複雑で、本当はみんな何かをこじらせながら大人になっていくのだということ。
果たして、ネイディーンはこの事件を境に、どのうように思い、どのように変化していくのか…?!
映画『スウィート17モンスター』感想と評価
ずーっとつるんでいた親友に恋人が出来、生活ががらりと変わっていたたまれない事に・・・といえば、ノア・バームバック監督の『フランシス・ハ』が思い出されます。
グレタ・ガーウィグが扮したフランシスのいたたまれないけどどこか滑稽で愛すべきキャラは、『スウィート17モンスター』のネイディーンにもあてはまる部分があります。
フランシスは27歳で、ネイディーンは17歳。いくつになっても人間って基本的には同じなんだなあと感じたのですが、社会に出てからは出てからの苦労があると同時に、学生生活を生き抜くことも相当大変な試練です。
ヨアキム・トリアー監督の『母の残像』(15)では、兄が弟に高校は特殊な場所だから「変に目立つことなく息を潜めてやり過ごせ」と説いていますし、『ぼくとアールと彼女のさよなら』(15アルフォンソ・ゴメス=レホン監督 )の主人公は、目をつけられないように目立たず空気のように生きてきた、と独白しています。
アメリカの学園生活では、迂闊なことをしていじわるなジョックス(体育会系イケてる男女)に目をつけられようものなら地獄の日々が待っているのです(様々な学園映画がそのことを教えてくれています)
ネイディーンはおしゃべりな上に表現が独特(アーウィンを老紳士といって褒めたり)なので、もろにターゲットになりそうですが、親友の存在がそれをふせいでいたのでしょうか。ただ、そんな彼女もやっぱり親しい人以外には自分を出せないようです。パーティーで親友に置いてけぼりをくらって、誰にもしゃべりかけられず孤立する様子は観ていていたたまれなくなります。
ひとりぼっちになってしまったネイディーンがまずぶちあたるのが、昼食をとる場所がないことです。スクール・カーストに沿って細かく別れたグループのいずれかに今さら彼女が加わるなんて無理な話。彼女が選んだ場所は教師の側で、これまたいたたまれなくなります。
さらに彼女は自ら災厄を招いてしまいます。彼女は不平不満を口にしますが、彼女自身の性格も大いに問題あり。母のお気に入りで学園の人気者の兄に幼い頃からコンプレックスを抱いており、その兄と親友がひっついてしまったものだから当然祝福などできず、自分を被害者としか思えない。
世を拗ねて、達観して世間を観ているという若者の一つのタイプは映画や文学でしばし描かれますが、彼女の場合、自分で自分を居づらくしてしまうタイプのように思えます。そんなこと本人もわかってるんだけど、軌道修正できないどころか、どっぷり迷路に迷い込んでいる。そのあたりがもう本当にいたたまれない…。
“青春あるある”というのでしょうか、こんなにいたたまれなくなるのは、若い頃の自分を思い出してしまうからでしょうか。
そんな主人公をヘイリー・ステインフェルドが演じているんですが、『ピッチ・パーフェクト2』(15 エリザベス・バンクス監督)の素直で可愛らしい役柄とはほぼ真逆のこの個性的なキャラクターを実に生き生きと演じています。
ヘイリーが演じたからこそ、ユーモアの漂う、感情移入できる憎めないキャラクターになったに違いありません。
兄のブレイク・ジェナーも文句なしの配役。何の悩みもなさそうな兄も、人知れず苦悩しており、また、一昔前のティーン映画なら、ただの「敵」という記号でしかなかった親や先生にも、丁寧なキャラクター作りがなされていて、それがこの作品の大きな魅力になっています。家族の再生物語として読み解く事もできると思います。
ちなみに、13歳のときに、ネイディーンが自分の髪型を観て「『ナポレオン・ダイナマイト』みたい!」と悲鳴をあげるシーンがありますが、『ナポレオン・ダイナマイト』(04 ジャレッド・ヘス監督)は、アイダホの田舎町の高校を舞台に、いつもポカーンと口を開けているさえない男子高校生の日常を描いた、学園ものの快(怪?)作です。
また、ウディ・ハレルソン扮するブルーナー先生(最高!)が授業の手抜きのため(?)生徒に映画を見せる場面がありますが、『若き日のリンカン』だと言っていました。この作品はジョン・フォードの1938年の作品で、リンカンにはヘンリー・フォンダが扮し、人権に目覚めていく様が描かれています。
ジョン・フォードを仕込んでくるあたり、監督(脚本も)のケリー・フレモン・クレイグはかなりのシネフィルなのでしょうか(単純に昔、歴史の授業で教師に見せられた経験に基づくだけかもしれませんが)?
そして、学園映画の神様といえば、ジョン・ヒューズ。ここではアーウィンの両親が不在で大豪邸に一人で過ごしているのを知ったネイディーンが「強盗にはいってもらって『ホーム・アローン』ごっこは?」という笑えないジョークを言うシーンがあります。
『ホーム・アローン』は、学園ものを作らなくなってからのジョン・ヒューズの代表的作品。『ブレックファスト・クラブ』や、『すてきな片想い』などの彼の学園ものの作品でなく、『ホーム・アローン』を引用するというところに、ケリー・フレモン・クレイグの、奥ゆかしいヒューズへの敬意を感じました。
。
まとめ
映画批評No.1サイト「ロッテントマト」でフレッシュ95%というとてつもない数値を叩きだした『スウィート17モンスター』。
現代の若者だけでなく、大人たちにとっても“あの頃”のリアリティ溢れるイタさを思い出させてくれ、共感すること必至だと思われます。
また、主演のヘイリー・スタインフェルドや監督のケリー・フレモン・クレイグといった新しい才能を目撃する貴重な機会でもありますね!
注目の劇場公開は2017年4月22日(土)より始まります!ぜひ劇場でネイディーンの行く末を確かめてみて下さい!