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Entry 2019/07/06
Update

映画『ボーダーライン ソマリア・ウォー』あらすじネタバレと感想。原作者ジェイ・バハターの登場シーンは主人公の悪夢の中に

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  • 20231113

近年、そのあるべき姿と存在意義が問われる機会が増え、それをテーマにした映画も数多く作られているジャーナリズムと、それに関わる人々の姿

新たに混迷を極める地ソマリアに身を投じた、若きジャーナリストの実話を映画化した作品が公開されました。

『ボーダーライン ソマリア・ウォー』(米国版予告)

トム・ハンクス主演の映画『キャプテン・フィリップス』でも注目を集めた、ソマリア沖で活動する海賊の実態を取材した、ジェイ・バハダーの著作を映画化した作品です。

経験も無いままに成功と名声を求め、単身ソマリアに乗り込んだ青年は、そこで何を体験し、何を伝える事になったのか。

映画『ボーダーライン ソマリア・ウォー』の作品情報


ABES HEADACHE LLC (C) 2017

【日本公開】
2019年(ソマリア・ケニア・スーダン・南アフリカ・アメリカ合作映画)

【原題】
The Pirates of Somalia

【監督・脚本】
ブライアン・バックリー

【キャスト】
エヴァン・ピーターズ、メラニー・グリフィス、バーカッド・アブディ、アル・パチーノ

【作品概要】
無謀にも自らソマリアに乗り込み、海賊の取材を試みた青年の姿を描いた社会派サスペンス映画。

主人公である実在のジャーナリスト、ジェイ・バハダーを演じるのは、『Xーメン』シリーズや、『アメリカン・アニマルズ』への出演でお馴染みの、エヴァン・ピーターズ。

主人公の母をメラニー・グリフィス、彼に影響を与えた伝説的ジャーナリスト役でアル・パチーノと、2人のベテラン俳優が共演しています。

『キャプテン・フィリップス』でソマリアの海賊を演じ、一躍有名になったバーカッド・アブディが、本作では主人公を支えるソマリア人通訳として登場します。

映画『ボーダーライン ソマリア・ウォー』のあらすじとネタバレ


ABES HEADACHE LLC (C) 2017

後にリーマン・ブラザーズが破綻する事になる、金融危機の最中の2007年に大学を卒業したジェイ・バハダー(エヴァン・ピーターズ)。彼はそれを最悪のタイミングだったと語ります。

政治学と経済学で博士号を取りながらも、就職先に恵まれずスーパーを回り、市場調査を行う職についていたジェイ。彼は家族と同居して暮らしていました。

ジェイはあちこちの出版社に、自作の小説を送っていましたが、帰ってくるのは最初に「残念ながら」と書かれた、不採用を告げる返事ばかり。

クリスマスを前にした2008年のある日、ジェイは母マリア(メラニー・グリフィス)から、雪かきをするよう頼まれます。

家にお金を入れないなら、代わりに雪かきを行うのが両親との取り決めでした。仕方なく雪かきを始めるジェイ。

そんな彼の前に友人が現れ、遊びに行こうと誘いますが、ジェイはそれを断りジャーナリストになる夢を実現するため、ハーバード大に入る考えを語ります。

しかし彼は、友人から思いを寄せていた地元の女の子、トレイシーが年上の担当教授と婚約したと聞かされます。失意のジェイは挙句の果てに、雪かき中に腰を痛めます。

治療の為病院を訪れたジェイは、偶然そこに居合わせた人物が自分が憧れていたジャーナリスト、シーモア・トルビン(アル・パチーノ)と知り驚きます。シーモアは従軍記者として書いた、ベトナム戦争の記事で名を馳せた人物でした。

尊敬している人物だと彼に告白したジェイは、ジャーナリストになる夢を語ります。シーモアは彼のハーバードで学ぶ考えを否定し、ジャーナリズムは学べない、それより実際に誰も行かない危険な場所に取材に行き、経験を積むべきだと諭します。

その言葉を聞いて、ジェイはソマリアに行く事を思いつきます。彼は大学で民主政権に移行するソマリアについて、レポートを書いていました。

後日ソマリアの海賊について報じるニュースを見て、ジェイはソマリアに記者がいない事実を知ります。危険な場所で報道機関保険の対象外であり、大手記者は誰も現地に入ってませんでした。

ソマリア行きを考えたジェイにチャンスがやって来ます。2008年11月23日、彼がメールを出して接触した、ソマリアのラジオ局の担当者から電話が入ります。

モハマド・ファロレと名乗る相手は、接触してきたジャーナリストはあなただけだと伝え、ぜひソマリアに来て欲しいと告げます。ジェイの為に力になれるという彼は、ソマリア大統領の息子でした。人生初の幸運に驚くジェイ。

ジェイは早速シーモアに相談します。シーモアは彼が試しに書いた記事を読み、面白いと評価していました。

シーモアは彼を知り合いの記者、アブリル・ブノアに紹介したいと持ち掛けます。まだソマリアのラジオ局に接触しただけだと語るジェイに、強引にでも売り込める企画を作り出すようアドバイスするシーモア。

シーモアはこれからジャーナリストの道を歩むジェイに、一本の葉巻を与え吸う様に薦めます。その葉巻を記念に取っておくジェイ。

こうしてジェイのソマリア行きは具体化します。彼は両親にこれがジャーナリストになる唯一の方法だと納得させ、500ドルを借りて準備を進めます。


ABES HEADACHE LLC (C) 2017

2008年12月6日、ジェイはソマリアに向け出発します。それは何度も飛行機を乗り継ぐ旅でした。

かつてソマリアは、詩人の国として知られていたと語るジェイ。人々は争いの解決には武器ではなく、詩の力で交渉していました。

20世紀に入り、イギリスとイタリアがソマリアを植民地化を狙い動き出すと、状況は大きく変わります。植民地化を拒否した人々は、武器を持って戦います。

抵抗とそれに続く内戦は100万人の難民を生み、彼らを干ばつや洪水、そして飢餓が襲います。

目的地に到着したジェイを、ファロレが手配した通訳・アブディ(バーカッド・アブディ)が迎えます。気さくな彼はジェイに、親指を立てる仕草はソマリア人を侮辱する行為だと教えます。

ジェイは早速ソマリアの海賊についてアブディに尋ねますが、彼は海賊ではなく“海の救世主”“海上警備隊”という言葉を使います。そしてジェイに、不用意に海賊という言葉を使わぬよう説明するアブディ。

護衛の兵士と共に目的地に向かうジェイは、現地の嗜好品である植物の葉・カート(覚醒作用のある植物)を勧められ、早速自ら体験します。

ラジオ局に到着し、ファロレと会ったジェイ。ファロレは“海の救世主”との言葉を聞き、それは古い考え方で、彼らは海賊に過ぎないとアブディに注意します。ソマリアの人々にとっても、海賊に対する評価は分かれていました。

ファロレの紹介で早速大統領に会ったジェイ。大統領は彼の護衛として、オマル大佐を紹介します。大統領はジェイによって、ソマリアの現状が世界に広く知られる事を望んでいました。

ソマリアには子供たちが通える学校が少ない、と語る大統領。学ぶ機会の無い子供たちにとって、成功した大人の姿は、残念ながら海賊だと説明します。

ジェイはソマリアでの宿泊場所として、アブディが家族と共に住むアパートの一室が用意されます。ようやく彼は休む事が出来ました。

2008年12月10日。目覚めたジェイはアパートの窓を開け、外の様子をビデオカメラに収めます。窓を開ける行為は安全上、オマル大佐に禁じられていましたが、そこでジェイは美しい女性に目を留めます。

彼女を1番大きな海賊グループのボス、ガラードの妻で、市場でカートを売っているマリアンだと、ジェイに教えるアブディ。

アブディの手配で、地元に3つある海賊グループの1つのボス、ボヤを取材する事になったジェイ。ボヤは自分は500人の手下を持ち、欧米・中国・韓国の漁船から自分たちの漁場を守り、政府がやるように彼らから税金を取り、部下に分配しているだけだと説明します。

部下は誰も殺していないと語るアブディ。取材は順調に進むかに見えましたが、ジェイは渡すべき手土産を持っておらず、それに怒ったボヤは去って取材は中断します。

それでも取材が出来たジェイは、早速自分の企画をシーモアから紹介された、アブリルに売り込みます。アブリルから買い手を探すとの返事を貰い、有頂天になるジェイ。

ボヤの手土産にするカートを、マリアンから購入するジェイ。マリアンはアメリカ映画を見て英語を覚え、彼と会話する事が出来ました。マリアンも他の住民たちも、彼がソマリアの現状を世界に伝えてくれると信じていました。

ボヤへの2度目の取材は、手土産のカートも効いて順調に進みます。ジェイは彼から、海賊の船舶への襲撃方法を、細かく聞き出す事に成功します。

2009年2月28日、順調に取材を進めていたジェイは、アブリルから思わぬ返事を貰います。ジェイの企画の買い手が付かないと言うのです。

“フック船長”、すなわち明確な悪役の海賊がいないと売れない、と語るアブリル。この時期売れている本と言えば「トワイライト」シリーズ。厳しい説明にジェイは言葉を失います。

怒るジェイに対し、アブリルは自分は味方だとなだめ、一つの提案をします。海賊の人質となった船員の映像が手に入れば、CBSに1000ドルで売れると語るアブリル。

それは困難だと説明するジェイに、当座の活動費にもなるので、努力してみてはと告げるアブリル。話は物別れに終わりますが、確かに取材費は尽きかけていました。

ジェイは眠っていたアブディを起こします。2人は今や、互いを兄弟と認め合う仲になっていました。そのアブディに、ジェイは打ち明けます。

自分はここで皆が信じているような、有名なジャーナリストではない。また本を出版する話も無くなった。私は皆に対して嘘をついたと告白するジェイ。

それでもソマリアの現状を世界に伝え、取材を続けるには海賊の人質の映像を撮る事が必要だ。それが唯一の方法だが、それには君の協力が必要だ。

得た金は山分けにするとのジェイの言葉に、アブディはそれは賢明な方法ではないと答えます。お金の問題ではない、海の上ではあなたの身は守れない、海賊に殺されると告げます。

以下、『ボーダーライン ソマリア・ウォー』ネタバレ・結末の記載がございます。『ボーダーライン ソマリア・ウォー』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


ABES HEADACHE LLC (C) 2017

ジェイの告げた真実にアブディは怒らず、詩を作って独立運動を起こし、イギリスと戦った偉大なソマリアの詩人、ムハンマド(ムッラー)の話をします。

ジェイもムッラーを知っていました。アブディはジェイに、彼と同様に言葉を使って戦う様に説得します。彼はジェイが“フック船長”というべき存在、一番大きな海賊の首領・ガラードと話せるように動いていました。

ジェイはアブディの友情と努力に、深い感謝を覚えます。

エドガー・アラン・ポーにオスカーワイルド、ハーマン・メルヴィルにH.P.ラブクラフト、彼ら著名な作家の共通点は、金が尽きて命を落した事だと語るジェイ。

ジェイは残る金をつぎ込んで、ガラードとの面会用に彼の美しい妻・マリアンから最上級のカートを大量に購入します。

ジェイは、マリアンからガラートと上手く会話するヒントを求めます。マリアンはガラートが、自分の着こなしを周囲に自慢していると教えます。

ガラートとのインタビューの日、ジェイは通訳のアブディを通じ、まずガラートの服装を褒めます。そしてカートを渡すと、自分の仲間からカートを購入しているジェイは、殺さないでおいてやると告げるガラート。

ガラートはジェイのインタビューに対し、自分は800人の部下を従えている事、そして漁船だけでなく貨物船や客船まで襲っている事実を認め、どんな船でも襲う、外国船の違法な行為が無くなるまで、我々は戦い続けると宣言します。

重要な証言を得たジェイですが、取材費は尽きてしまいました。ジェイとアブディは警護のオマル大佐の紹介で、ドイツの貨物船を襲撃する海賊の同行取材を試みます。

アブディとオマル大佐の機転と努力で、襲撃する海賊との交渉にこぎつけます。しかし2人の交渉が物別れに終わりそうだと見ると、身の危険もかえりみず交渉の場に乗り込むジェイ。

ジェイの態度にCIAかもと、警戒を強めた海賊は立ち去り、アブディとオマル大佐は彼の無謀な行動を責めます。

ところがジェイを取り巻く状況が一変します。2009年4月8日、アメリカの貨物船が海賊に襲われ、フィリップス船長が人質になったのです。

事件は世界に報道され、ソマリアの現状を知り、今更のように帰国するよう、強く連絡して来たジェイの両親。

また米軍により海賊が射殺され事件が解決すると、海賊は報復にソマリアの外国人を殺そうと動きます。また協力的であったファロレと大統領も、ジェイが殺害されソマリアのイメージが悪化する事を恐れ、彼の帰国を促します。

最後の取材相手として、海賊のボス・ボヤと会ったジェイ。彼はアメリカ船を襲撃したのはガラート一味だと告げます。

しかしアメリカ船襲撃犯として、ボヤが政府当局に逮捕されます。ソマリア政府はアメリカの圧力を感じ取り、動きを見せたのです。

帰国前にマリアンと出会ったジェイ。彼女はジェイに自分の夫、ガラートが真犯人だと教えます。そして報復にジェイの命を狙っていると教え、帰国するよう告げます。ジェイにはアメリカ映画のDVDを送ってくれるよう頼み、彼に別れを告げるマリアン。

こうして帰国の日を迎えたジェイ。アブディとオマル大佐に空港に送られます。アブディは入国した際に教えた親指を立てる仕草は、ソマリア人を侮辱する行為という話は嘘で、冗談だったと教えます。

騙されずっとそれを信じていたジェイは、笑ってアブディを許し、代わりに人差し指と中指をクロスさせる、“希望”を示すハンドサインを教えます。

帰国の途に就いたジェイがメールを受信できる様になると、234件のメールを受信しました。165件は海賊のインタビューを買いたいとのオファーで、8件は出版の申し入れ、4件は思いを寄せていたトレイシーからの物でした。

帰宅したジェイを、家族や友人がサプライズパーティーで迎えます。その席には恩人であるシーモアの姿もありました。

シーモアに帰国の際、諜報機関からソマリアについての情報提供を求められたと話すジェイ。彼に対しこれはチャンスだと語るシーモア。

2012年3月18日。今はケニアのナイロビで、ソマリアに関するニュースレポートサイトを運営しているジェイ・バハダーは、ソマリアに関するアメリカ政府の会議に招かれます。

ジェイはソマリアを、かつての私たちの国がそうであった様に、民主主義が始まったばかりの国として、見守って欲しいと訴えます。

ジャーナリストとして成功し、シーモアから与えられた葉巻に火を付けたジェイ。それはどんな味だったのでしょうか。

2013年1月、アメリカはソマリアと、20年ぶりに国交を回復させました。

映画『ボーダーライン ソマリア・ウォー』の感想と評価


ABES HEADACHE LLC (C) 2017

取材困難な地でのジャーナリズムの実態

邦題から戦争映画をイメージする方が多いでしょうが、ご紹介した通りこの映画は、紛争地で困難な取材に望むジャーナリストの姿を描いた作品です

ジャーナリズムに対する自己責任論やフェイクニュースの追求、それに対し報道の自由の重要性への訴えなど、様々な意見が飛び交っていますが、本当に大切なのは取材対象に向き合う記者の姿勢です

『ボーダーライン ソマリア・ウォー』の主人公、ジェイ・バハダーはカナダ人ジャーナリスト。物語の筋書きや登場人物は映画的に創作、単純化されていますが、学校で学ぶより、困難な地を取材して本物のジャーナリストになろうとした姿勢は事実です。

彼が偶然に助けながらも地元の人々と、あらゆる手を尽くして関係を結び、そして困難な取材対象に迫る姿には、サスペンス映画的な面白さが満ちています

報道の重要性を語るには、この様な取材に対する姿勢を踏まえて語るべきでしょう。そのような示唆に富んだ、報道をテーマにした映画です

異国の地でも共通体験できる作品


ABES HEADACHE LLC (C) 2017

主人公は文化も価値観も、身の安全性も全くことなる地で取材活動を行いますが、そこで美しい女性マリアンと知り合います。

このマリアンという人物は、アメリカ映画を見て英会話を覚えた人物として描かれます。好きな映画は『G.I.ジェーン』でデミ・ムーアの大ファンです。

ソマリア人である彼女は当然、『ブラックホーク・ダウン』が嫌い。主人公は当然、米軍がソマリア市民を攻撃するから、と思いますが彼女はあの映画には、誰1人ソマリア人が登場していないから、と語ります

彼女の不満はあの映画が、ソマリアの真の姿を描いていない事でした。マーケットを視野に、様々な国を舞台にして映画が作られる一方、その描写がフィクションを口実におろそかになっている、ハリウッド映画の現状に対する風刺でしょう。

その一方彼女は、自分の口の悪さを『チーム・アメリカ ワールドポリス』に例えます。美しく若い女性が見るには、宗教を差し置いても問題がある映画ですが、時に他国で好き放題正義を振るうアメリカを皮肉った引用です。

無論映画的に創作されたエピソードですが、映画など文化の共有体験は、異国の人々との交流に有効です。政治的・文化的な、相手との違いにしか目を向けない風潮への批判と受け取れます。

映画などを通じて海外の文化にふれている人は、その様な交流のツールを持っている。そう自覚すると、映画ファンは少し胸を張れませんか。

実は南アフリカで撮影された映画

その一方で『ボーダーライン ソマリア・ウォー』は、主要なシーンを南アフリカで撮影しているという、マリアンのセリフを裏切る様な行為を行っています。これが現在の、ハリウッドの映画製作のスタイルである、と指摘する事もできます。

その一方でこの映画は、ソマリア問題に対し独自の製作姿勢を貫いています。

バーカッド・アブディだけでなく、ソマリアのシーンに登場する俳優・エキストラの大半は、実際のソマリア難民を起用しています

更に本作はエンドロールで、多くの人名の横に年月日が表示されています。これはその人物がソマリア難民であり、いつ難民となったのかを示しています

打算的にソマリアの海賊問題に関わり、成功を遂げた主人公。しかし彼の行為はソマリアの現実を世界に知らしめ、世の中を動かす原動力となりました。

映画も商業的に作られながらも、同時にソマリア難民の雇用と、彼らの存在を訴える事に力を注いでいるのです

まとめ


ABES HEADACHE LLC (C) 2017

ソマリアに対する姿勢、政治的現状も報道も、難民の存在も表も裏も含めて取り上げた映画『ボーダーライン ソマリア・ウォー』。作り手が諸問題に真摯に向き合った映画と言えます。

なおこの映画は主人公の悪夢や心象風景を描き、劇的なアクションシーンをアニメーションにするなど、表現の飛躍がある作品です

これにはアクション映画を期待して見た方には、更に違和感を感じさせるかもしれません。

監督のブライアン・バックリーは、アカデミー最優秀短編映画賞にノミネートされた事もある、優れたCM製作者として有名な人物

かつてニューヨークタイムズは、彼を“スーパーボウルの王”と呼びました。全米で注目を浴び高い視聴率を誇る、スーパーボールのコマーシャルフィルムを2000年以来50本以上も手掛け、その実績から与えられた称号です

アメリカの国民的イベント、スーパーボウルのCM料は極めて高く、それ故に大手企業期待の新商品の発表や、新作超大作映画予告のお披露目などにも使用されている、特別のCM枠です

この作品の様々な表現の飛躍には、監督ならではの計算と試みがあるのです。

なお、主人公の悪夢の中で海賊に射殺される人物が登場しますが、これが本作の自伝原作者であるジェイ・バハダー本人。監督らしいお遊びです。

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