幸せな家族を崩壊させた史上最大の金融詐欺事件を描いた社会派サスペンス
バリー・レビンソンが監督を務め、名優ロバート・デ・ニーロとタッグを組んで2017年に製作した、アメリカの社会派サスペンス映画『嘘の天才~史上最大の金融詐欺~ウィザード・オブ・ライズ』。
数十年にわたって顧客たちを騙し、虚偽の取引を続けて破綻させた、証券投資会社の会長の姿とは、具体的にどんな内容なのでしょうか。
史上最大規模の巨額詐欺事件を起こしたウォール街の実業家、バーナード・マドフの実話をもとに描かれた、彼と彼の家族を混乱の渦に巻き込んでいく社会派サスペンス映画、『嘘の天才~史上最大の金融詐欺~ウィザード・オブ・ライズ』のネタバレあらすじと作品情報をご紹介いたします。
CONTENTS
映画『嘘の天才~史上最大の金融詐欺~ウィザード・オブ・ライズ』の作品情報
2021 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO(R) and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.
【公開】
2017年(アメリカ映画)
【脚本】
サム・レビンソン、ジョン・バーナム・シュワルツ、サミュエル・ボーム
【監督】
バリー・レビンソン
【キャスト】
ロバート・デ・ニーロ、ミシェル・ファイファー、ハンク・アザリア、キャスリン・ナルドゥッチ、アレッサンドロ・ニボラ、ネイサン・ダロウ、クリステン・コノリー、リリー・レーブ
【作品概要】
『レインマン』(1989)のバリー・レビンソンが監督を務めた、アメリカの社会派サスペンス作品です。
2008年に、史上最大規模の巨額詐欺事件を起こしたウォール街の実業家、バーナード・マドフの実話をもとに描かれています。
『ゴッドファーザーPARTII』(1975)や『レイジング・ブル』(1980)、『マイ・インターン』(2015)、『ジョーカー』(2019)などに出演した名優、ロバート・デ・ニーロが主演を務めています。
映画『嘘の天才~史上最大の金融詐欺~ウィザード・オブ・ライズ』のあらすじとネタバレ
2021 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO(R) and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.
2010年8月24日。ニューヨーク・タイムズ紙の記者ダイアナ・ヘンリケスは、被害総額約650億ドルと、史上最大の金融詐欺事件を起こした犯人、バーナード・L・マドフに独占インタビューを行いました。
時を遡ること2008年12月10日、アメリカ・ニューヨーク市。ウォール街の証券投資会社「バーナード・L・マドフ証券」の会長であるバーナードは、家族にだけある秘密を告白しました。
それは、今まで16年間、多くの富豪や投資家を相手に、大掛かりな投資顧問業の詐欺を働いたということでした。
19階にある株式取引部門で働く、バーナードの息子マックスとアンドリュー、バーナードの妻のルース、法令順守部門の責任者でバーナードの弟ピーターは耳を疑いました。
投資顧問業の部署がある17階は、バーナードと忠実な部下フランク・ディパスカリ、限られた社員しか出入りできません。
そのためマックスたちは、いつも疑問に思っていた投資顧問業が、まさか書類が全て偽造されたもので、取引も何もかもでっちあげの嘘だとは思いもしませんでした。
バーナードは、ナスダックを創設し近代市場を作り出した開拓者として、業界の誰もが崇拝するほどとても有名でした。
だからこそ、マックスたち息子や、バーナードを信頼して貯蓄や財産を預けていた投資家や富豪たちは大激怒。
マックスとアンドリューは、マックスの養父で有能な弁護士マーティン・ロンドンに相談し、専門家のマーティン・フルメンバウムを紹介してもらいます。
マックスたちは、フルメンバウムから「バーナードが家族や従業員に、詐欺で手に入れた利益を分配する気なら、今も犯罪は進行している。君たちも共犯になるんだ」と指摘され、すぐさまバーナードをFBIに通報。
2008年12月11日の朝、自宅にいたバーナードは、FBI捜査官2人によって逮捕されました。FBIでの手続きを終えたのち、バーナードは連邦裁判所へ移送されました。
この時、バーナードを逮捕し連行したFBI捜査官は、「逮捕された彼は、どこか安堵した様子だった」とのちに語っています。
取り調べを受けたバーナードは、終始一貫して「私1人でやった」と主張。ところが、投資顧問業の運営を任されたフランクも共謀していたのです。
ピーターから、「バーナードが逮捕され、裁判所命令で会社は操業停止になった」と聞いたフランクは、投資顧問業に関するデータを全て削除しようとしますが、FBI捜査官に見つかり失敗しました。
バーナードの逮捕だけでなく、彼の詐欺を全く知らず、指示に従っていただけのピーターまでも、刑事責任を問われる羽目になってしまったのです。
それらをダイアナから非難されたバーナードは、こう語っています。「投資詐欺をやめたくても、どんどん巨大化していってやめれなかった」
「弟は指示に従っただけで何も知らない」「結局のところ私は、自分が失敗した事実を受け入れられなかったんだ」
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バーナードは逮捕後、ルースに頼んで保釈金1,000万ドル用意できましたが、もう1つ保釈に必要な4人分の署名は、残念ながら集まりませんでした。
ルースがマックスたちに署名を求めた結果、彼らが拒否したからです。その結果、ルースとピーターの2人しか署名しませんでした。
それを知って落胆するバーナードに、彼の弁護士ホルビッツは、「あなたは自宅軟禁に置かれ、電子監視されるようになる。不動産は全て差し押さえされる」と伝えます。
ダイアナにそう語るバーナードは、彼女に「16年間、私は51年連れ添った妻や弟に隠し事をしていた。息子たちにもだ。そんなことを続けながら正気を保っていたとは、自分でも自分のことが心配になる」と言いました。
事件発覚前の2008年の夏。モントーク・ビーチで、マドフ一家とマドフ証券、マックスたちそれぞれの家族が集まったパーティーが開かれました。
昼間は、家族みんなで肩を組んで踊っていたマドフ親子。しかしその夜、バーナードは投資詐欺に関わらせたくないばっかりに、自分にもし何かあった時に投資顧問業は誰がやるんだと問うマックスたちを、冷たく突き放してしまうのです。
バーナードは、自分にもしも何かあった時、投資顧問業は全てフランクに任せようと考えていました。しかし、マックスたちはそれに猛反対。
特にマックスは、バーナードに任された別事業もやって、父親の跡を継ぐために必死に働いてきました。
それ故に、マックスは一向にバーナードが跡継ぎに決めてくれないこと、また「同じ業務をしているアンドリューの方がマシだ」と言われたことに、不満を募らせていました。
「投資詐欺によって貯蓄や家を失った被害者に、罪悪感はなかったのか」と、ダイアナに問われたバーナード。
彼がやった投資詐欺によって、被害に遭われた人々の中には、絶望のあまり自ら命を絶った人もいたのです。
それに対し、バーナードはこう答えました。「彼らは少し欲深い面があったから、何か変だと薄々気づいていても見ないふりをした。彼らも共犯者と言える」
「彼らは誠実さに欠け、責任を負う気がなかった」「正直、今はこう思う。私の最大の弱点は“人の幸せを願うこと”だ。そのせいで窮地に陥った」
映画『嘘の天才~史上最大の金融詐欺~ウィザード・オブ・ライズ』の感想と評価
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物語の後半で、被害総額約650億ドルという史上最大の金融詐欺事件の真相が、バーナードの回想によって明らかになります。
バーナードとフランクが犯罪に手を染めたのは、株価暴落により損失した10億ドル以上の穴を埋めるためです。
恐らく、莫大な金額の損失を出したことによる焦りと、失敗を認められないバーナードのプライドの高さが相まって、招いてしまった事件でしょう。
しかしそのせいで、彼の家族であるマドフ一家は、マスコミに張り付かれる日々を送る羽目になります。
ただでさえマスコミだけでも精神的苦痛だというのに、何の罪もないマークたちが、ネットやテレビで根も葉もない噂を垂れ流され、誹謗中傷されていく姿は思わず目を背けたくなるほど辛いです。
元々は、息子夫婦共々、仲が良かったマドフ一家。しかし、投資顧問業の後任と、バーナードに何かあった時の会社の跡継ぎに関して、バーナードとマックスたちで意見は対立。
両者の話し合いは平行線のまま終わり、どんどん溝が深まっていきました。バーナードは、隠し事をしていたからか、マックスたちにちゃんと上手く自分の気持ちを伝えられていません。
バーナード逮捕後は、ますます事件に関する記事を読むことに憑りつかれていったマーク。そのせいで、彼は2年間、家族から距離を置かれてしまうのです。
疎外感と孤独、誹謗中傷による精神的苦痛に耐えきれなくなり、マークが自殺してしまった場面は、劇中で一番悲しくて泣けます。
まとめ
2021 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO(R) and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.
実際に2008年に起きた、史上最大の金融詐欺事件と犯人のバーナードについての実話と、被害者と彼の家族に怒った悲劇を描いた、アメリカの社会派サスペンス作品でした。
本作の見どころはまさに、バーナードがどうして金融詐欺事件を起こしたのか、事件によって彼の家族にどんな影響を及ぼしたのかを描いたところです。
バーナードの不器用な家族愛が、隠し事をしているが故にマークたちに上手く伝わらないもどかしさ。マークたちの無償の愛を捧げられていることに気づかないバーナードの鈍感さ。
マドフ親子のそのすれ違いと事件が招いた結末が、マークの自殺という悲劇につながってしまいます。それにより、唯一の味方を失ったバーナードの姿も、こちらの涙を誘うほど悲しいものです。
バーナードを演じるロバート・デ・ニーロの最後のセリフが、本作では特に印象に残るセリフとなっているので、これから観る人は最後まで見逃さないでください。
史上最大の金融詐欺事件にハラハラドキドキし、ロバート・デ・ニーロの演技が印象に残る社会派サスペンス映画が観たい人には、特にオススメな作品です。