ティム・バートン監督とジョニー・デップ主演のおすすめミュージカル映画!
トニー賞8部門に輝いたスティーブン・ソンドハイム作のミュージカルを奇才ティム・バートン監督がジョニー・デップ主演で映画化した『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』。
腕利きの理髪師の相棒はよく切れるカミソリ。そのカミソリが向くのは髭と、それから…。
今回は恐ろしくも哀しいミュージカル映画『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』をご紹介します。
CONTENTS
映画『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』の作品情報
【公開】
2008年 (アメリカ映画)
【原題】
Sweeney Todd: The Demon Barber of Fleet Street
【監督】
ティム・バートン
【キャスト】
ジョニー・デップ、ヘレナ・ボナム・カーター、アラン・リックマン、サシャ・バロン・コーエン、ティモシー・スポール
【作品概要】
『シザーハンズ』(1990)『チャーリーとチョコレート工場』(2005)でおなじみのティム・バートン監督がトニー賞を獲得した1979年の同名ミュージカルを映画化。
『スウィーニー・トッド』の作詞、作曲を手掛けたのは長年愛され続けるブロードウェイの金字塔『ウエスト・サイド物語』(1957)の作詞を手がけ、アカデミー賞、トニー賞、グラミー賞、ピューリッツァー賞、ローレンス・オリヴィエ賞の受賞歴を持つスティーヴン・ソンドハイム。
ゴールデングローブ賞 映画部門 作品賞 (ミュージカル・コメディ部門)、ゴールデングローブ賞 映画部門 主演男優賞 (ミュージカル・コメディ部門)、アカデミー美術賞など多くの賞を獲得しました。
映画『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』のあらすじとネタバレ
19世紀、ロンドン。船から降りてくるのはアンソニーと白髪がひとふさ生えた怪しげな男。
彼の名前はスウィーニー・トッド。
トッドはかつてこの街でベンジャミン・バーカーとして理髪店を営み、愛する妻と娘と共と幸せに暮らしていました。
しかし彼の妻を狙う好色な判事、ターピンによってトッドは濡れ衣を着せられ、流罪の刑に処されていたのです。
トッドは復讐のためにフリート街の地を再び踏みました。
トッドが自分の店があった場所を訪れると、そこは寂れたパイ屋でした。
トッドは店を営むラヴェット夫人から彼の妻は自死し、1人娘はターピン判事に半ば軟禁状態で暮らしていることを知ります。
ラヴェット夫人はトッドに協力することに決め、彼女の店の2階を理髪店として彼に貸しました。
一方街を出歩いていた若い船乗りアンソニーは、怪しげな女性がうろつく屋敷の窓辺で美しい少女を見かけます。
彼女に一目惚れするアンソニーでしたが、彼女はターピン判事に幽閉されているジョアンナ。
アンソニーに気づいたターピンは彼にジョアンナには近づかないよう脅されます。
今までに何人もの若者がジョアンナに近づこうと試み、ターピンと小役人のバムフォードによって痛い目に合わされていました。
しかしアンソニーは彼女を必ず屋敷からさらうと決意を固めます。
ラヴェット夫人と共に市場に出かけたトッドは、イタリアから来たという理髪師ピレリが子供のトビーと毛生え薬を大人達に販売していました。
トッドはピレリの薬をいかさまだと見破り、髭剃り競争で彼を負かします。
その様子を見ていたターピンの腰巾着バムフォードは、近々店に行くと約束しました。
店に戻ったトッドの元へアンソニーが駆け込み、ジョアンナと駆け落ちするため助けが欲しいと訴えます。
了承するトッド。それから間もなく、ペテンを見破られたピレリがトビーと共に訪ねてきました。
ピレリはトッドが実はベンジャミン・バーカーだと知っているといい、役人にバラされたくなければ儲けの半分を渡すよう要求しました。
トッドは咄嗟に彼を殴り喉を剃刀で掻っ切りました。
ラヴェット夫人は主人を失った少年トビーの身の上を案じ、自分のパイ屋で働かせることにしました。
一方、ターピン判事はジョアンナに求婚していました。
ジョアンナがあまり嬉しそうでなかったことを懸念するターピン判事に、バムフォードは身なりを整え、無精髭を剃るよう提案します。
トッドの店にターピンがやってきて、トッドは彼を殺す機会が早く来たことに心を躍らせます。
獲物が自分の手にあることを喜び、ゆっくりと丁寧にターピン判事の髭を剃るトッド。
しかしその時、タイミング悪くアンソニーが駆け落ちの相談のため店に駆け込んできました。
ターピン判事は激怒しもう二度とこの店には来ないと言い放ちます。
映画『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』の感想と評価
ティム・バートンの念願の映画化
本作の演出を務めたティム・バートン監督は、学生時代に同名のミュージカルを鑑賞した際に感銘を受け、ずっと映画化する夢を抱いてきたのだそうです。
そんなこともり製作時にはスティーヴン・ソンドハイムも全面協力しています。
主人公ベンジャミン・バーカー/スウィーニー・トッドを演じるのは、バートン監督作品に欠かせないと言っても過言ではない、ジョニー・デップ。
ラヴェット夫人を演じるのはヘレナ・ボナム=カーターです。
ジョニー・デップはバンドを組んでいた過去があるものの、その歌声はほとんど知られていませんでしたが、公開後はキャラクターに合った声だと評価されました。
また今は亡きイギリスの名優で「ハリー・ポッター」シリーズのスネイプ先生役でおなじみのアラン・リックマン、同シリーズのティモシー・スポール、ジェイミー・キャンベル・バウアーも出演しています。
作品の見どころはドイツ表現主義
1920年代を中心に繁栄した映画のムーブメントであるドイツ表現主義。
暗くファンタジックな物語に人間の心の暗部や社会の闇を写した、荒削りな映像や陰影のコントラストが特徴的です。
このドイツ表現主義に大きな影響を受けているティム・バートン監督。
本作も色彩を抑えたダークな世界観に仕上がっています。
そのため作品で使われた血のりは色彩に溶け込むようオレンジ色に変えられたそう。トッドによる殺戮シーンは劇的に演出するため、1シーンにつき人間の総血液量を超える血のりが使われたそうです。
また衣装は全て手縫いであり、ラヴェット夫人のドレスの中にはヴィクトリア朝のカーテン布を探し出して作られたものも存在します。
スウィーニー・トッドを突き動かしたものは?
主人公スウィーニー・トッドを殺人鬼へと駆り立てたものはたった1つの復讐心。
彼の目を取り囲む影や髪に混じるひとふさの白髪が、彼が街を出てからどんな悲痛な思いをして過ごしてきたか連想させます。
1度死んだも同然のトッドを突き動かす燃える復讐心の刃は最後彼の首に向く。
愛する人を奪われた悲しみが負のエネルギーへ変わり、心を失った人間には悲劇が訪れます。
トッドの共犯者であるラヴェット夫人もまた、トッドの正体を知りながらも彼を愛し、支えていたにも関わらず彼の犠牲になってしまいます。
曲の1つ1つや、恐ろしい劇的な演出が本作『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』を唯一無二のメロドラマにティム・バートン監督は昇華させています。
まとめ
悲しみが憎しみへと変わる人の心、悪に支配され何もかも見えなくなった人間の末路、復讐や愛といった普遍的なテーマを音楽とゴシックな世界観に乗せて劇的に描く『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』。
ティム・バートン監督が長年映像化を夢見た本作は、強烈なインパクトを放ってカルト的人気を誇り続けています。
ハロウィンも近いこの季節、ぜひ今一度『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』の世界をご堪能ください。