ベトナム戦争に関する分析を記録した、国防総省の最高機密文書“ペンタゴン・ペーパーズ”。
機密文書の存在を世に発表しようとしたワシントン・ポスト紙のキャサリン・グラハムの姿を、巨匠スティーブンスピルバーグが描く社会派サスペンス。
映画『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』は、2018年3月29日よりTOHOシネマズ 日比谷にて当別先行上映。
また全国公開はは3月30日よりロードショーとなります!
CONTENTS
1.映画『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』の作品情報
【公開】
2018年(アメリカ映画)
【原題】
The Post
【監督】
スティーブン・スピルバーグ
【製作総指揮】
ティム・ホワイト
【キャスト】
メリル・ストリープ、トム・ハンクス、サラ・ポールソン、ボブ・オデンカーク、トレイシー・レッツ、ブラッドリー・ウィットフォード、ブルース・グリーンウッド、マシュー・リス、アリソン・ブリー
【作品概要】
政府が隠す最高機密文書、通称“ペンタゴン・ペーパーズ”。アメリカ政府の圧力と戦いながら、機密文書の存在を公表しようとしたキャサリン・グラハムの実話をスティーブン・スピルバーグ監督が映画化。
メリル・ストリープとトム・ハンクスが主演を務め、2大オスカー俳優が初共演を果たしたことで話題になっています。
2.機密文書の“ペンタゴン・ペーパーズ”とは?
「ペンタゴン・ペーパーズ」は、国防総省が7000ページに渡ってまとめた機密文書。
ベトナム戦争に関する、アメリカ政府の政策決定を、第二次大戦直後からの歴史をたどって分析された「ベトナム機密文書」の俗称です。
そこには歴代のアメリカ政府が、北ベトナムやラオス、カンボジアを爆撃し、故意的に戦線を拡大させ戦争を泥沼化させた経緯が記されています。
1971年6月13日ニューヨーク・タイムズ紙がスクープ、ニクソン政権は出版差止め命令を出しましたが、ニューヨーク・タイムズ紙は抵抗し、最高裁が政府の命令を違憲とする判定を下すという前代未聞の展開となり話題になりました。
その後、ワシントン・ポストなどの他紙も政府の圧力に屈さずに続々と機密文書の内容を公開し、大手マスコミが政府に反旗を翻したキッカケを作り出しました。
3.実在人物のキャサリン・グラハムとは?
1917年、ニューヨーク生まれ。
1933年に父親がワシントンポスト紙を買収、1940年にキャサリン・グラハムは後にワシントンポスト紙の社主となる、フィリップ・グラハムと結婚します。
キャサリン・グラハムは1946年にワシントンポスト紙を退社後は、専業主婦として4人の子供を育てます。
1948年に社主となったフィリップ・グラハムが、1963年に躁鬱病で自殺した事により、キャサリン・グラハムは46歳で初めて新聞経営を引き継ぎます。
本作で描かれている、ベトナム戦争に関する機密文書事件の他に、ウォーターゲート事件でニクソンの圧力に屈することなく真相を追求し、ニクソンを辞任に追い込みました。
独自の方法で報道の自由を確立し、アメリカで最も影響力のある女性の一人とも言われています。
1998年に自伝『キャサリン・グラハム わが人生』でピュリッツァー賞受賞、「20世紀を代表する自伝」とも称されました。
2001年7月17日に死去。
4.映画『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』のキャスト
メリル・ストリープ(キャサリン・グラハム役)
アメリカ政府の圧力に屈する事なく「ペンタゴン・ペーパーズ」の存在を世に出した、ワシントン・ポスト社主・発行人のキャサリン・グラハム。
演じるメリル・ストリープは、1977年に『ジュリア』で映画デビュー、1978年の映画『ディア・ハンター』でアカデミー助演女優賞に初ノミネートされます。
1979年の映画『クレイマー・クレイマー』で第52回アカデミー助演女優賞を受賞、1983年に『「ソフィーの選択』でも、2度目となるオスカーを獲得し、第55回アカデミー主演女優賞を受賞します。
その後、1988年の『クライ・イン・ザ・ダーク』でカンヌ国際映画祭女優賞受賞、2002年には『めぐりあう時間たち』でベルリン国際映画祭銀熊賞(女優賞)受賞します。
さらに2011年に『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』に3度目となるオスカー賞となる、第84回アカデミー主演女優賞を獲得しました。
1994年の映画『激流』、1995年の映画『マディソン郡の橋』、2006年の映画『プラダを着た悪魔』など数々の作品に出演。
アカデミー賞の俳優部門ノミネート回数は、歴代最多の記録を持ち本作『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』で21回目のノミネートを記録しました。
トム・ハンクス(ベン・ブラッドリー役)
ワシントン・ポスト編集主幹「伝説の編集者」とも呼ばれるベン・ブラッドリー。
演じるトム・ハンクスはアメリカで人気のコメディ番組『サタデー・ナイト・ライブ』に出演、コメディアンとして人気になり、1984年の映画『スプラッシュ』で俳優として一躍注目されます。
1988年の映画『ビッグ』でアカデミー賞に初ノミネート。
1993年の映画『フィラデルフィア』、翌1994年の映画『フォレスト・ガンプ 一期一会』でアカデミー主演男優賞を2年連続で受賞。
1995年の映画『アポロ13』や1995年に映画『グリーンマイル』などの主演作が次々とヒット、『トイ・ストーリー』シリーズでは主人公ウッディの声を担当しています。
2013年の映画『「キャプテン・フィリップス』、2016年の映画『ハドソン川の奇跡』など、実在の人物も数多く演じており、幅位広い演技力には定評があります。
ボブ・オデンカーク(ベン・バグディキアン役)
ワシントン・ポスト編集局次長のベン・バグディキアン。
演じるボブ・オデンカークは、海外ドラマ『ブレイキング・バッド』で犯罪者専門の弁護士、ソウル・グッドマン役を演じ話題になり、後にスピンオフドラマ『ベター・コール・ソウル』で主役を演じました。
俳優のほか、『サタデー・ナイト・ライブ』の放送作家として、1989年にエミー賞を受賞するなどマルチな才能を発揮しています。
マシュー・リス(ダニエル・エルズバーグ役)
元アメリカ合衆国、軍事アナリストのダニエル・エルズバーグ。
演じるマシュー・リスは、2006年9月から2011年5月まで放送されたアメリカの人気ドラマシリーズ『ブラザーズ&シスターズ』でウォーカー家の次男ケヴィン役で注目され、2013年開始のドラマ『ザ・アメリカンズ』で、アメリカに住むロシアスパイのカップルを演じています。
5.映画『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』のあらすじ
1971年、アメリカ。
ベトナム戦争が泥沼化したことで、アメリカ国内では反戦の方向に世論が進んでいました。
そのような風潮のなか、トップシークレットとされていた通称「ペンタゴン・ペーパーズ」の存在をニューヨーク・タイムズ紙がスクープします。
ライバル紙に先を越された、ワシントン・ポスト紙のキャサリン・グラハムは、編集主幹ベン・ブラッドリーと共に、「ペンタゴン・ペーパーズ」の残りの文書を入手します。
しかしニクソン大統領は、あらゆる手段を用いて「ペンタゴン・ペーパーズ」の公表を妨害、キャサリン・グラハムは、真実を公表する為に、アメリカ政府との戦いを開始します。
6.映画『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』のみどころ
これまで数々の社会派ドラマを手がけてきた、巨匠スティーブン・スピルバーグが、2017年1月のトランプ大統領の就任を受けて、わずか1年で撮影し完成させたという本作。
スピルバーグ監督は「1971年と2017年を映し出す緊急性があると感じた。2つの年が恐ろしいほど似通っているからだ」と語り、本作を急いで撮影した経緯を語っています。
見どころは何と言っても、大女優メリル・ストリープと名優トム・ハンクスの初共演でしょう。
メリル・ストリープは、スピルバーグ監督作への出演もこれが初めてとなり、スピルバーグ監督は「見事にキャサリンを演じてくれた。まさにはまり役」と絶賛しています。
メリル・ストリープは本作の演技が高く評価され、第90回アカデミー賞で主演女優賞にノミネートされています。
トム・ハンクスも、ベン・ブラッドリーの自叙伝を読み関係者へのインタビューを行い、徹底的なリサーチの元で役作りを行いました。
2人の立場の違いから衝突する場面もあり、予告編からも緊迫感が伝わってきて鳥肌が立ちます。
まとめ
本作は権力の暴走や、アメリカ初の女性新聞発行人への職業差別など、現代のアメリカ社会が抱える問題に酷似した部分が描かれています。
作品のテーマとなっている「報道の自由」は、実はアメリカよりも日本の方が深刻となっており、国際NGOの「国境なき記者団」が2017年に発表した「報道の自由度ランキング」で、アメリカは43位なのに対し日本は72位となっています。
同ランキングの日本は、2010年に11位だった事を考えると、昨今の報道規制は楽観視できない状況となっています。
国民に真実を伝える為に戦った、キャサリン・グラハムとベン・ブラッドリーの姿は、今の日本に訴えかけるものがあると思いますし、危機感を抱かなければなりません。
2大オスカー俳優とスピルバーグが放つ、現代社会への警鐘ともいえる映画『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』は、2018年3月30日より全国公開です。