Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

サスペンス映画

Entry 2024/07/02
Update

『ニューノーマル』あらすじ感想と考察評価。韓国ホラー映画コンジアムのボムシク監督は最新作で何を語るか!?

  • Writer :
  • 桂伸也

映画『ニューノーマル』は2024年8月16日(金)より全国順次公開!

「ジウ姫」ことチェ・ジウが2016年の『ハッピーログイン』以来久々の映画出演を果たしたサスペンス映画『ニューノーマル』。

予想だにしない展開を見せる恐怖の事件が絡み合い、さらに予測不能の事件を引き起こすさまをトリッキーな構成で描きます。

韓国でホラーを中心に手掛けてきたチョン・ボムシク監督がバラエティーに富んだキャスト陣とともに、文字通りサスペンスの「ニューノーマル」を予感させる物語を完成させました。

映画『ニューノーマル』の作品情報


(C)2023 UNPA STUDIOS.ALL RIGHTS RESERVED.

【日本公開】
2024年(韓国映画)

【原題】
뉴 노멀

【英題】
New Normal

【監督・脚本】
チョン・ボムシク

【キャスト】
チェ・ジウ、イ・ユミ、チェ・ミンホ、ピョ・ジフン、ハ・ダイン、チョン・ドンウォン、ほか

【作品概要】
数奇な運命が微妙に絡み合うことで人々の日常を一転させ、思いもよらなかった恐ろしい事態を巻き起こすさまを描いたサスペンス・スリラー。

大ヒットを記録した韓国ホラー『コンジアム』を手掛けたチョン・ボムシクが監督、脚本を担当しました。

キャストには韓流ブームで人気を博したドラマ『冬のソナタ』(2002)『天国の階段』(2003)のチェ・ジウ、『イカゲーム』(2021)『今、私たちの学校は…』(2022)のイ・ユミ、『長沙里9.15』(2019)に出演したK-POPグループ「SHINee」のチェ・ミンホ、同じくK-POPグループ「Block B」のP.O(ピョ・ジフン)ら個性豊かな面子が出そろっています。

映画『ニューノーマル』のあらすじ


(C)2023 UNPA STUDIOS.ALL RIGHTS RESERVED.

女性を狙った殺人事件が連続して発生、そのニュースが大きく報道され、世間を恐怖に陥れていたソウルのある日。

マンションで一人暮らしをしている女性・ヒョンジョンのもとに、一人の男性が訪れてきます。彼女に何の通達もなく訪れた彼は、火災報知器の点検をしにきたといいます。

図々しく家の中に入ってくる怪しげな男に不安を覚えるヒョンジョンですが、彼の仕事が終わりを迎える頃、自体は思わぬ展開に……。

また別の時、マッチングアプリで知り合った相手と待ち合わせをしている女性ヒョンスは、待ち合わせの行き違いより思いもよらない人物と遭遇して今います。

一見する無関係な出来事はやがてほかの出来事とも複雑に交差し、さらに予想だにしない展開を見せていくのでした。

映画『ニューノーマル』の感想と評価


(C)2023 UNPA STUDIOS.ALL RIGHTS RESERVED.

本作はいくつかの章で構成されたスリラー作品ですが、物語序盤から「なぜこの人物はここに現れたのか」「なぜこの人物は危機に直面するのか」と疑問だらけで幕を開け、一筋縄ではない伏線でその疑問を拾っていくというものです。

物語序盤は、チェ・ジウが演じる一人暮らしの女性ヒョンジュンと、火災報知機の検査に来たという一人の怪しげな男性が織りなすサスペンス・ストーリー。

短い時間で緊張感を保ちながらもあっけにとられる意外な結末へとつながり、この後の物語への期待感を掻き立ててきます。次に続くのは、第一章とはまったく関係のない人物による別の物語。

しかし章が続いていくごとに、別の章に登場するキャラクターを徐々にダブらせ、どこか本作全体の物語のつながりを感じさせます。その一方で時間軸を戻したり、逆に進めたりと、同時に見る側に迷いを生じさせます。

一つ一つの章で描かれる物語は、最初の章を除くとどこかサスペンスとは関係ない「ちょっといい話」、あるいは別ジャンルを彷彿する話で幕を開け、そしてそれぞれクライマックスでゾッとするような恐ろしさに持っていくという、変わった作りで構成されたものであります。


(C)2023 UNPA STUDIOS.ALL RIGHTS RESERVED.

残酷なシーンは最小限ながらタイミングの取り方が巧みで、それぞれの章だけでもサスペンス感が満載。

さらに物語が進むにつれ、本筋に対する登場人物の意味、そして怖さ抜群のサスペンスシーンの意味合いは深くなり、最後の章が終わりを迎えた時にどこか物語の筋、テーマのようなものが見る側に、はっきりしないながら強いインパクトを残していきます。

その「一筋縄ではない」人物構成、章構成のつながりが本作の肝であり、サスペンス作品としても新鮮な刺激感を覚えさせており、ジャンルを超えて新しい作品作りの手法を、タイトル通り「ニューノーマル」なものとして提唱しているようでもあります。

チョン・ボムシク監督がかつて手掛けた映画『コンジアム』は、1999年に発表された映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』以降に多く使用されたPOV(Point of View)という手法を持ちながらも、トリッキーな技術などにそれほど頼らずに、徹底的に練られた構図やストーリー構成で独自の世界観を構築し、韓国国内のホラー作品としても大きなヒットを記録して話題となりました。

それだけに本作にもチョン監督ならではといえる独特のストーリー構築術が駆使されており、非常に見応えのある作品に仕上がっています。

まとめ


(C)2023 UNPA STUDIOS.ALL RIGHTS RESERVED.

奇抜さが前面に出る本作のような作品は、得てして物語のテーマを薄く見られがちでありますが、本作には非常に強いテーマ、メッセージ性の主張も感じられます。

本作では何らかのきっかけで殺人が起きたり、あるいは連続殺人鬼が登場したりと、人を殺めるというシーンが多く登場します。

そのシーンが登場する理由は、物語序盤ではまったく分からないわけですが、いつしか直接人に手を掛ける人物ではない別の人物が「こいつを殺したい」「こいつは死ねばいいのに」と憎しみの感情をあらわにしていく様子が現れてきます。

こうした感情は、どこか人が自分の意識を認識していない心の中で何度も「人を殺している」ようであり、この感情の集まりが結果的に殺人という悲劇を迎えている、そんな顛末を描いているように見えます。

一般的にメディアなどによる通り魔殺人の理由を「犯人が『誰でもよかった』などと言っている」と簡単に報道されていることもありますが、そんな社会の不確かな情報伝達に対して、この作品は異議を唱えているようでもあります

本作はそのように、ある意味さまざまな殺人のきっかけを掘り起こし普遍的なポイントに言及している作品であるとも言えます。そしてゆえにストレートに作られているように見えながら、どこか現実性をたたえた恐怖感を味わえるものであると言えるでしょう。

映画『ニューノーマル』は、2024年8月16日(金)より全国順次公開!




関連記事

サスペンス映画

スピルバーグ映画『ジョーズ』ネタバレあらすじ結末と感想評価の考察。動画無料フル配信の方法も解説!

名作として知られる映画『ジョーズ』はスティーブン・スピルバーグ監督の1975年に公開された代表作。 弱冠27歳のスピルバーグ監督が、映画製作の事務所のデスクに山積みされた企画書を盗み見して、見つけた企 …

サスペンス映画

映画『仮面病棟』ネタバレあらすじと感想。ラスト結末で暴かれるピエロの正体とその黒幕とは?

映画『仮面病棟」は2020年3月6日(金)ロードショー 現役医師・知念実希人のベストセラー小説『仮面病棟』を映画化。坂口健太郎と永野芽郁がW主演を務めます。 ピエロの仮面をつけた凶悪犯に占拠された病院 …

サスペンス映画

映画『鵞鳥湖の夜』あらすじと感想レビュー。ディアオイーナン監督が描いたノワール的サスペンス。

『鵞鳥湖の夜』は2020年9月25日(金)より新宿武蔵野館、HTC有楽町&渋谷ほかにて公開。 中国の気鋭監督ディアオ・イーナン監督が『薄氷の殺人』(2014)からの5年ぶりとなる待望の映画『 …

サスペンス映画

【ネタバレ】胸騒ぎ|あらすじ感想と結末の評価考察。家族に”不穏なおもてなし”が次々と襲う⁉︎

家に招かれた家族を襲う恐怖の“おもてなし” 『アフター・ウェディング』(2006)などで知られるクリスチャン・タフドルップが監督、脚本を手がけ、本作が長編第3作目となりました。 『ミッドサマー』(20 …

サスペンス映画

映画『凶悪』ネタバレあらすじ感想と評価解説。実話をもとに白石和彌x山田孝之が凶悪事件の真相と人間の業に迫る

凶悪事件の実話を白石和彌監督が映画化 死刑囚の告発をもとに、雑誌ジャーナリストが未解決の殺人事件を暴いていく過程をつづったベストセラーノンフィクション「凶悪 ある死刑囚の告発」(新潮45編集部編)を映 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学