ある日すべての親が謎の衝動に駆られ子供を殺しだす!「アドレナリン」の監督が送る予測不能の超ハイテンションスリラー。
荒唐無稽な設定を全力でやり切ってみせたB級の快作『マッドダディ』。
ブライアン・テイラー監督と、ニコラス・ケイジがタッグを組んだ『マッドダディ』をご紹介します。
映画『マッドダディ』の作品情報
【公開】
2018年(アメリカ映画)
【脚本・監督】
ブライアン・テイラー
【キャスト】
ニコラス・ケイジ、セルマ・ブレア、アン・ウィンターズ、ザカリー・アーサー、
ランス・ヘンリクセン、オリビア・クロチッチア
【作品概要】
“親たちが謎の衝動に駆られ子供を殺し始める”という荒唐無稽すぎる設定の映画。
監督はブライアン・テイラー。彼の代表作は2007年の映画『アドレナリン』。心臓に特殊な薬品を投与され、アドレナリンを常に分泌し続けないと死ぬので無理やりずっと怒り狂いながら敵を追う男という普通なら速攻でボツにされそうなアイデアを、ハイテンションな編集と度派手なアクションと細かい演出でしっかりと面白い劇映画に仕上げてB級の職人として評価されました。
子供を殺しにかかる父親を演じるのは、オスカー俳優でありながらB級映画に嬉々として出続ける信頼できる俳優ニコラス・ケイジ。母親役には「ヘルボーイ」シリーズのヒロイン”リズ”でおなじみ、セルマ・ブレア。
さらに父親を殺しにやってくる祖父役には『エイリアン2』のアンドロイド”ビショップ”役のランス・ヘンリクセンと、B級マニア垂涎のキャスティング。
映画『マッドダディ』のあらすじとネタバレ
郊外に一軒家を買い、美しい妻と可愛い子供2人と暮らす会社員のブレント・ライアン。
その日は久しぶりにブレントの両親がやってくる少し特別な日でした。
朝、テレビをつけると「母親が子供を乗せたまま車を線路の真ん中に放置し、ひき殺させた」という、ニュースが流れていました。
産婦人科医の妻ケンドールは、それを見て「嫌なニュースね」と呟きます。
ケンドールは高校1年生の娘カーリーを車で学校に送り届けます。
家事と息子のジョシュの面倒は、お手伝いの中国人スーとその娘がやってくれていました。
学校に向かう車中で2人は、カーリーの新しいボーイフレンドのデーモンについて口論になります。
ブレントは会社に行こうとしたとき、自分が学生時代から大切にしていた車にジョシュがイタズラをしていることに気づき叱り付けます。
すると、ジョシュは逃げ出します。
ため息をつきながら車を運転して出社するブレント。彼の脳内にはその車に乗りながら女性と派手に遊んでいた頃の思い出がよぎります。
しかし、今はくたびれたただの中年サラリーマンでした。
ジョシュがキッチンに向かおうとすると、スーの娘の悲鳴と何かを殴るような音が聞こえます。
怖くなったジョシュは2階の自分の部屋のベッドに隠れます。
娘を学校に届けてからママ友とランチをするケンドール。お財布を見て中身が減っていることに気づきます。
ママ友は彼女に「きっと娘がお金を抜いているのよ。自分の娘だけど腹が立つことっていっぱいあるわ」と言いました。
複雑な顔のケンドール。そこに彼女が勤めている病院から電話が入ります。
妊娠して入院していたケンドールの妹ジェンナが産気づいたと聞き、休暇の日でしたが彼女は急遽病院に向かいます。
そのころ、カーリーの高校では急に一切操作していないにも拘わらず、テレビやラジオの電源が突然入るという怪奇現象が起き始めます。
しかも、授業中に担任に頻繁に電話がかかってきています。
授業を中断し外に出てみると、昼間にもかかわらず、生徒の両親たちが校門の前に押し寄せてきていました。
皆それぞれの子供をしきりに呼び、ただ事ではない雰囲気です。
そして、親たちは警備員や教員の制止も振り切って、フェンスを超えて学校になだれ込んできます。
彼らは自らの子供を見つけると襲い掛かり、殴ったり首を絞めたりして殺し始めました。
カーリーは友人のライリーと一緒に車を運転して逃げます。
ライリーの家に逃げ込んだ2人は、昨日からテレビに突然入るようになった砂嵐を見た親が発狂して自分の子供だけに殺意を抱き、襲い始めているというニュースを見ます。
様子を見に2階に上がったライリーは居合わせた母親に殺されてしまいます。カーリーは恐怖のあまり家を飛び出し、ボーイフレンドのデーモンの家に向かいます。
その頃、デーモンも家に帰ったとたんに父親に襲われ、もみ合った結果父親を殺してしまっていました。
デーモンはカーリーに「君の弟が危ない。家に戻って彼を保護して逃げよう」と提案し、2人はライアン家に向かいます。
一方ケンドールは妹ジェンナの出産に立会い、無事分娩を成功させます。
生まれた赤ん坊をジェンナに抱かせますが、突然計器に変な砂嵐が入り彼女は錯乱、自分が出産したばかりの子供を殺そうとします。
ケンドールは赤ん坊を保護したあと、ニュースで子供殺し現象が起きていることを知り、心配で家に戻ることにします。
ブレントも会社で居眠りをしていましたが、起きてニュースを知り家に向かって車を走らせます。
映画『マッドダディ』の感想と評価
不謹慎極まりない話とニコケイの怪演
どうでしょうか、このとんでもない話!“不謹慎極まりない映画”ですね。笑
映画は85分と非常にタイトに作られ、度派手なBGMとハイスピードな編集が行われ、“子供殺し”というショッキングな題材をアクションとしてしっかり見せています。
とはいっても、直接的なゴア表現の描写は意外と少なくし、映っても編集が早すぎてガッツリ見えないので、苦手な方も安心です。
後半は家だけのワンシチュエーションでの攻防になりますが、地下室、扉、ガス、凶器を駆使した地味ながらもハラハラできるシーンの連続で楽しめます。
ブライアン・タイラー監督は、今回も彼にしかできないいい仕事をしています。
しかし、この映画の最大の魅力はやはり!ニコラス・ケイジの演技と顔芸です!
疲れきった中年の悲哀、前半のよき父親から一変してタガが外れた殺人親の顔、さらに、爆発に巻き込まれたあとの完全にプッツンきてしまった顔など、狂った親という設定であっても、多くの豊かな表情を見せてくれます。
さすが!オスカー受賞の名優の迫力は、怖いと同時にかなり笑えます。笑
1980年に制作されたスタンリー・キューブリック監督の名作ホラー映画『シャイニング』にジャック・トランス役で出演していた、ジャック・ニコルソンの演技を参考にしたそうです。
参考映像:『シャイニング』(1980)
完全にB級のジャンルホラーですが、「実の子供とはいえ憎くなることもあるし、親だって親として以外の人生を欲してしまうこともある」という深読みできるテーマがあるのでしょう。
導入だけ聞くとくだらないと思うかもしれませんが、サックと見れるし、ゲラゲラ笑いつつ、ちょっと怖くなるメッセージも孕んだ良作です。
また、今回の“子供殺し”現象が起きる原因は、まったく明かされないので、ちょっと考えてみるのも面白いですね。
そのような気持ちを起こしてしまう“くたびれた大人たちの反乱”に、もしくは意味などないのかも…?笑
まとめ
ニコラス・ケイジは、あと数年で俳優を引退することを公言しています。
貴重な主演作ですので、ぜひ劇場で見てください!
友達とお酒飲んだ状態で見たりしたら、大いに盛り上がれるかもしれません。
ちなみに、“親が子供を殺し始める”という設定が気に入った方は、漫画家の永井豪の描いた『ススムちゃん大ショック』という短編コミックスを読んでみるのもオススメですよ!