9歳のルイはこれまでに9回も命の危機を迎えました。不遇すぎる運命のその真相に迫ります。
ロングセラー小説「ルイの9番目の命」を原作に、ファンタジックに描かれたサスペンス映画をご紹介します。
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映画『ルイの9番目の人生』の作品情報
【公開】
2018年公開(カナダ、イギリス合作映画)
【原題】
The 9th Life of Louis Drax
【監督】
アレクサンドル・アジャ
【キャスト】
ジェイミー・ドーナン、サラ・ガドン、エイダン・ロングワース、アーロン・ポール、モリー・パーカー、バーバラ・ハーシー、オリヴァー・プラット
【作品概要】
ダニエルラドクリフが主演を務めたことで注目を集めた『ボーンズ 容疑者と告白の角』や『ピラニア3D』などB級映画に定評のあるアレクサンドル・アジャ監督が描くファンタジーなサスペンス作品。
世界的ベストセラーとなっているリズ・ジェンセンの『ルイの9番目の命』を原作としています。
映画『ルイの9番目の人生』のあらすじとネタバレ
ルイは崖から転落しヘリで救助され病院へ緊急搬送されました。
9歳になる誕生日を祝うために別居中の両親ナタリーとピーターと3人で崖にピクニックに来ていた時の出来事でした。
ルイは不遇な人生を歩んでいました。
ひどい難産で産まれたことをはじめに、骨折、窒息、食中毒、怪我etc…。
不運な事故が絶えず、この崖の転落でなんと9回目の命の危機を迎えているのでした。
病院では全身骨折に一部臓器を摘出するなど、状態は非常に芳しくありませんでしたがルイは命をなんとか取り止めました。
しかし、意識が戻ることはなく。昏睡状態のままでした。それでも医者は奇跡的だと言います。
それにこの事故において不自然な点がありました。
事故後、ピーターが姿を消していたのです。
警察はこれを受けて事故ではなく事件として操作を進めますが、一向にピーターは見つかりませんでした。
そんなルイの元に小児昏睡が専門の医者パスカルが訪れました。
パスカルは脳が壊れても心は繋がると、脳が壊れてもルイはルイだと言い、親身にルイの回復に努めました。
またパスカルは、傷心のナタリーにも優しく接してケアします。
そんな日々を送るうちにパスカルとナタリーはお互いを思い合うようになっていました。そして病院の庭でふたりはキスをしました。
その時でした。突然ルイが目覚めナタリーとパスカルのキスをジッと見たのです。
ルイの視線に気づいたふたりは大慌てで病室へと戻りますが、再びルイは昏睡状態へと戻ってしまいました。
映画『ルイの9番目の人生』の感想と評価
昏睡状態のルイの頭の中はファンタジック。
事故や怪我などはコメディタッチ。
しかし、物語の土台はとてもシリアスでリアルな問題を扱っています。
そんなふたつの要素のメリハリの効いた作品でした。
謳い文句の「ラスト9分のどんでん返し」というキャッチフレーズとは若干違った印象を受けました。
どちらかと言うと、丁寧に積み上げて追い詰めていくような作品でした。
宣伝を強くイメージして鑑賞すると期待はずれの可能性がありますので、参考までに。
筆者が印象に深く残ったポイントを3つに分けてご紹介させて下さい。
ポイント1:エイダン・ロングワースの奇妙さ
やはりなんといっても、賢くて邪悪で純粋でなまいきで大人も驚くようなことをしでかす役に完全にハマりきっていたエイダン・ロングワースの存在が色濃かったです。
この作品はいわゆる“容疑者”に挙げられる人間がサスペンスとしてはとても少ないたった3人しかいません。
ピーターが突き落としたのか、ナタリーなのか、それともルイ自身なのか。それだけです。
なので物語が進むにつれて犯人の目星が付いて来てしまうのですが、エイダン・ロングワースの醸し出す底知れぬ奇妙さと、ファンタジックな演出でついつい目を逸らされてしまいます。
この作品がサスペンスとして成り立つ、ましてや実写で成り立っているのはエイダンくんの魅力が大きいです。
彼の今後のイケメン奇妙俳優としての活躍が今から楽しみです。
ポイント2:男はなんにもわかってない
・ルイの事件を探っているふたつの要素。
・ルイを担当しているパスカルと女性警部。
このふたりの会話が本当に面白いです。
またピーターの母親も登場するのですが、このふたりの女性は物語中盤から言わずもがな真犯人に勘付いています。
つまり女性陣はすでに“証拠”待ちの状態なのです。
しかし、容姿端麗なナタリーの魅力にやられているピーターは観客でさえもう気づいているであろうタイミングでもまだ気づきません。
ナタリーの手のひらで転がされている男とそれを知って呆れながら話す女性の構図は、きっと僕自身経験していることなんだろうなと可笑しいです。
「綺麗な人間なら、中身も綺麗だと信じたがる」というセリフが劇中登場します。
美女ならなにをしてもいいという極端な男性の意見も存在しますよね。
「そんな訳ねぇだろ」知っている女性だからこその空気感。最高でした。
ポイント3:女性サイコパス
騙しや泥棒といった“悪女”が登場する作品は数多くあれど、サイコパスのように“狂っている”女性が登場する作品は少ないのではないでしょうか。
女性だからこそ説得力のある恐怖や狂気。
女性サイコパスが登場する2作品を紹介します。
参考映像『ゴーン・ガール』(2014)
冷え切りすぎた夫婦関係。
浮気した夫に巧みな策略で自らの殺害容疑を掛け、失踪し自分は悠々自適な生活を送る嫁。
しかし、自分がピンチになったら男騙して人も殺して、挙げ句の果ては大嫌いな夫のもとに生還者として奇跡のヒロインとして戻ってきます。
マスコミなど周囲の注目を利用して、自分の利益だけを追求する。
夫は最後、全てを諦めて腑抜けのような状態で“幸せな”結婚生活を演じることになります。
『ルイの9番目の人生』のナタリーと違うのはその戦略性。
故に、絶対に周囲にはサイコパスであることがばれません。恐ろしいです。
参考映画『ミザリー』(1990)
事故を起こしたまたま立ち寄った見知らぬ家の女性ミザリーに、傷が治るまで居候させてもらうことになった作家。
ミザリーはこの作家の大ファンでした。
ミザリーは最初こそ丁寧に優しく介抱していましたが、だんだんと要求がエスカレートし、作家がすでに完結させた小説がなっとくいかないと自分の思うように書き直させます。
さらにミザリーは作家がずっと家にいるために、危害を加えようと計画を立てます。
それに気付いた作家は死に物狂いで脱出を図ります。
『ルイの9番目の人生』と比べて、こちらは愛情が行き過ぎた結果なのでしょうか。
とてもとても恐ろしい映画なので、怖いもの見たさに是非ご鑑賞ください。
4.まとめ
これからのエイダン・ロングワースくんに期待しよう!
ファンタジックなのに痛いほどリアルという不思議な作品でした。
是非、劇場で奇妙な魅力を味わっていください。