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『君だけが知らない』あらすじ感想と評価解説。韓国映画界の実力派キム・ガンウが複雑なキャラクターを熱演

  • Writer :
  • 桂伸也

韓国映画『君だけが知らない』は2022年10月28日(金)より全国ロードショー!

記憶を失いながらも、自己から目覚めた一人の女性。突然備わった特別な能力に困惑する中、彼女は一つの事件に巻き込まれていくのでした…

一人の女性の失われた過去を巡って、複雑な人間模様がもつれ、展開していくドラマ『君だけが知らない』。

新鋭女性監督ソ・ユミンとソ・イェジ、キム・ガンウら実力派の役者陣タッグによるシリアスなサスペンス・ストーリーです。

韓国映画『君だけが知らない』の作品情報


(C)2021 CJ ENM. All Rights Reserved.

【日本公開】
2022年(韓国映画)

【英題】
Recalled(原題:내일의 기억)

【監督・脚本】
ソ・ユミン

【キャスト】
ソ・イェジ、キム・ガンウ、パク・サンウク、ソンヒョク

【作品概要】
とある事故で記憶を失いながらも目覚めた一人の女性が、幻覚から未来を見る能力を手にしたことで不穏な事件に巻き込まれていく様を描いたサスペンス。

作品を手掛けたのは、本作が長編デビュー作となる女性監督ソ・ユミン。主人公スジンを演じたのは、映画『量子物理学』やドラマ「無法弁護士」「サイコだけど大丈夫」などのソ・イェジ。また夫のジフン役は『背徳の王宮』『ニューイヤー・ブルース』などのキム・ガンウが演じました。

韓国映画『君だけが知らない』のあらすじ


(C)2021 CJ ENM. All Rights Reserved.
一人の女性が、昏睡状態から目覚めます。彼女の名はスジン。ある事故より無事生還しながらも、記憶をなくしてしまいます。

彼女は夫のジフンによる献身的な介護で、平穏な日常生活に戻っていきますが、ある時幻覚を見ることに。そしてその幻覚の中で見たビジョンが、実は実際に未来に起こる事態であることを知ります。

目の前で起きていることは実際に本当に起きていることなのか、あるいは単なる妄想なのか?その境目のあいまいさにスジンは次第に混乱してきます。そしてある日…。

韓国映画『君だけが知らない』の感想と評価


(C)2021 CJ ENM. All Rights Reserved.
本作はサスペンスを感じさせるパートにはいわゆる「韓国ノワール」と呼ばれるダークな風味を感じさせますが、その一方で複雑な伏線をうまく絡ませながらも、最後にはほんのりと暖かくなるような空気感を持った物語としてまとめられています。

ある事故で過去の記憶を失いつつ、見えるはずのない未来のビジョンが見えるようになった主人公スジン。

彼女はその数奇な出来事から波乱の事件に巻き込まれていくわけですが、彼女に特殊な能力が備わった理由、そして何の変哲もないはずの日常に現れる不穏な影は、物語の終わりで彼女の忘れ去った記憶の中の意識が作り出したものであったことが明確となります。

その複雑な展開は、どこか彼女の存在、あるいはその周辺の人間の生死までもあいまいなものにしています。

このような曖昧さは、例えば2021年の映画『スピリットウォーカー』、『手紙と線路と小さな奇跡』といった作品や2018年のドラマ「私だけに見える探偵」、2020年の「ミッシング:彼らがいた」といった物語などにも見られ、韓国作品の傾向としても一つの流れを感じさせます

またそのミステリー的要素の中に人間的な温かさを風味としてまぶしているのも、これら作品群の大きな特徴といえるでしょう。


(C)2021 CJ ENM. All Rights Reserved.
ポイントとしては「未来が見える」という、スジンが得た超常現象的能力の行方ですが、重要なのはむしろその非現実的な能力自体より、能力が何を表しているか、という点になります。

記憶を失いながらも意識を取り戻した彼女は、その後さまざまな人の未来を目にする中で、その光景が実は自分の人生の中で目にするビジョンと大きく関わっていることに徐々に気づいていきます。

その展開は非常にトリッキーな伏線の張り方を表面的に見せている一方で、物語の結末に示される作品の重要な視点を表す強い向心力を示しており、単純なミステリー的要素を作るという方向性よりはさらにレベルの高いプロット構築を感じさせられるものであります。

ラストは決してハッピーエンドとはいえないものの、スジンのその後の運命を含めどこかあいまいながらもほんのりとポジティブな空気感を醸し出しており、女性監督ならではの柔らかさ、美しさを感じる画を見せています。

ステレオタイプなサスペンス作品を期待すると肩透かしを食らう可能性もありますが、逆にいえばこの展開こそが本作の主題を示しており、ジャンルを超えた作品のレベルの高さを示しているともいえるでしょう。

まとめ


(C)2021 CJ ENM. All Rights Reserved.
スジン役を務めたソ・イェジの演技もさることながら、本作の登場人物像の中では、夫ジフン役のキム・ガンウが見せる存在感が際立って見られます。

これまでも数々の映画、ドラマでメインキャストを務めてきた彼ですが、その役どころはどれも複雑な性格、境遇を伴い物語の重要なキーとなるものが多い印象です。

本作でもキムの役柄は、どこか怪しい雰囲気を持つ一方で強い情熱にあふれた役柄を演じており、単なる「イケメン俳優」では終わらない彼ならではの存在感を示しており、まさに彼あっての作品ともいえるでしょう。

映画『君だけが知らない』は2022年10月28日(金)より全国ロードショー




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