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Entry 2021/02/17
Update

映画『キー・ラーゴ』ネタバレ感想と結末あらすじ解説。フィルムノワール×アクションで描くギャングと復員兵の対決

  • Writer :
  • タキザワレオ

ハンフリー・ボガートのハードボイルドな演技が光る『キー・ラーゴ』

『マルタの鷹』でハンフリー・ボガートとタッグを組んだジョン・ヒューストン監督が手掛けるフィルム・ノワール映画。

撮影当時はハンフリー・ボガートと婚姻関係にあったローレン・バコールとの共演から、「夫婦共演作」の作品としても知られている作品です。

戦友の死を伝えるべく、彼の父親とその未亡人が経営するキー・ラーゴ島のホテルを訪れたハンフリー・ボガート演じる復員兵のフランク。

時を同じくして島を襲ったハリケーンの影響で助けも呼べぬまま、フランクはホテルに潜んでいたギャングたちとの対決を余儀なくされるのですが……。

映画『キー・ラーゴ』の作品情報


(C)1948 ワーナー・ブラザース

【公開】
1948年(アメリカ映画)

【原題】
Key Largo

【監督】
ジョン・ヒューストン

【キャスト】
ハンフリー・ボガート、ローレン・バコール、クレア・トレヴァー、エドワード・G・ロビンソン、ライオネル・バリモア、モンテ・ブルー、トーマス・ゴメス

【作品概要】
1939年に発表されたマクスウェル・アンダーソンの戯曲を映画化。『マルタの鷹』(1941)でボガートとタッグを組んだジョン・ヒューストン監督が手掛けるフィルムノワールで、当時婚姻関係にあったローレン・バコールとの夫婦共演作としても知られています。

タイトルであり、作品の舞台となるキー・ラーゴとはアメリカフロリダ州南部、フロリダ半島の先端に連なるフロリダキーズ諸島最大の島のこと。「ハードボイルド」の代名詞とも称される名優ハンフリー・ボガートを堪能できる作品です。


映画『キー・ラーゴ』のあらすじとネタバレ


(C)1948 ワーナー・ブラザース

舞台は1940年代のフロリダ。

橋を渡るバスを保安官の乗る車が止めました。保安官のウェイドが窓越しに運転手に話しかけ、副保安官のソーヤーがバスに乗り込みました。

脱獄したアメリカ先住民のオショラ兄弟を捜索中だというウェイド保安官は、運転手に兄弟を見たら署まで連絡するように頼みました。

保安官が去った後に運転手は振り返り、後ろで話を聞いていた退役軍人で元少佐のフランク・マクラウドに「彼らはいつも家に帰るので、この辺にいるかもしれない」と言います。「家はキー・ラーゴなのか」とフランクは呟きました。

バスは島にあるラーゴホテルに到着しました。フランクは少ない荷物を手に、ホテルに足を踏み入れますが、ロビーの周りには誰もいません。フロントでベルを鳴らすと、ロビーで新聞を読んでいた男がフランクに「店の主人はいない」と声をかけてきました。

「いつ戻ってくるかもわからない」という男の返答に困ったフランクは、隣のバーに行きました。バーにはラジオで競馬を聞いている女と男数名がいました。

フランクはビールを注文しますが、店員は「ホテルは夏休みで、すべてが閉まっている」と注文を断ります。しかし女はフランクに一杯おごると声を荒げ、店員はしぶしぶ用意します。

フランクは感謝し、彼女の隣に座りました。彼の目から見ても、彼女は明らかに酔っていました。フランクの名を尋ねてきた彼女は、自らをゲイ・ドーンと名乗ります。

先ほどロビーで新聞を読んでいた男が、バーの定員から受け取った酒を二階へと運んで、戻ってきました。男はゲイに「ボスがお呼びだ」と伝えます。

隣にいたバーの客の男はフランクに何の用で来たのかを尋ねた上で、ホテルは閉鎖中でありもう1カ月は宿泊できないことを彼に伝えます。フランクはここで何をしているかを逆に尋ねますが、彼らは「自分たちは特別な客だ」と語るのみでした。

フランクは店の主人に用があるだけだと言うと、ボートハウスまで案内されました。ホテルの裏口には桟橋で繋がったボートハウスがあり、そこに車椅子に腰かけている経営者のジェームズ・テンプルがいました。

フランクが自己紹介すると、ジェームズは自身の息子ジョージの妻であり義娘のノラを呼びつけます。会話を続ける中で、やがて三人は島に伝わる未だ誰も掘り当てたことのない海賊の宝の噂をします。

フランクは、キーウェストに向かう途中で通りかかっただけですぐ帰ると言いますが、積もる話があるジェームズの主張で、ジョージが暮らしていた部屋に泊まることになりました。

ノラがホテルへ戻ると、すれ違いでウェイド保安官とソーヤー副保安官がホテルに来ました。

二人はジェームズに「家宅捜索がしたい」と言いますが、「ここにはいない」という彼の言葉を信じ、その場を後にしました。またジェームズは、脱獄したオショラ兄弟は息子ジョージの親友であったことをフランクに明かします。

ホテルへ戻った後、ジェームズはフランクにロビーで新聞を読んでいたエドワード・ベース、バーの店員のエンジェル・ガルシアを紹介します。

突然、二階から叫び声が聞こえてきます。それはゲイの悲鳴でした。

バーにいた三人目の男がゲイを殴って部屋に押し込んでいるのが見えます。フランクは彼女を殴った理由を尋ねると、男は「ゲイはアル中で幻覚症状を見ると厄介なんだ」と答えました。

ノラはフランクを部屋に案内しました。部屋で二人きりになったノラは、カーリーが1週間前ホテルを貸し切ってほしいと頼んできたこと。また4日前に来て11号室に宿泊しているブラウンは、女たらしの金持ちで夜しか出てこないことをフランクに話します。

そしてノラはフランクに、夫ジョージの最期を尋ねました。フランクは即死だったことを伝えると、彼女はどこか安心したようでした。

フランクの部屋へ立ち寄ってきたカーリーは自己紹介をし、バーでの無愛想な態度を謝罪しました。カーリーは仲直りの印として酒をおごると言いますが、フランクは断ります。

その時、ノラは電話でハリケーンが島に向かっているという知らせを受けました。

その後ノラは、フランクをジェームズの部屋へと案内しました。ジェームズとノラはフランクにジョージについて尋ねます。彼らが持っていたのは陸軍省からの手紙だけだったからです。

フランクは二人にジョージの活躍ぶりを語ります。ジェームズは息子ジョージがどこに埋葬されているかを尋ね、フランクはイタリアの墓地に眠っていると言いました。

話を聞き終えた後、ノラはハリケーンに備え、ボートを沖に停める準備をします。彼らがボートに近づくとカーリーが現れ、フランクに仲間のラルフ・フィーニーを紹介しました。

ハリケーンが来るので、固定する必要があるボートをフランクが縛りました。準備が済んだところへ、アメリカ先住民の家族がいくつかの小さなボートで到着しました。

ハリケーンのとき、アメリカ先住民がホテルへ避難することを説明します。その中には、保安官が探していたオショラ兄弟も姿もありました。自首するという兄弟の身柄をジェームズに預け、ホテルから警察へ連絡をします。

ノラとフランクが話していると、風が吹き始め、嵐が始まります。再び準備を始めるために中へ戻りました。ラルフはハリケーンを心配していましたが、カーリーはそんなラルフを嘲笑していました。

ジェームズはオショラ兄弟に付き添われてロビーへ来ました。保安官の車が外にあるので、誰かウェイド保安官を見たかどうか尋ねますが、誰も答えません。ジェームズはオショラ兄弟に探しに行かせました。

カーリーは何度もみんなに酒を勧めますが、誰も受け入れませんでした。電話が鳴り、カーリーが勝手に出ると「ホテルの主人も義娘もいない。ソーヤーが現れたらすぐに電話をかけ直す」と言い、電話を切りました。

ノラに電話を回さないカーリーを不審に思ったフランクが近づくと、カーリーとトゥーツの両方が彼に銃を向けました。

カーリーがブラウンの部屋に入ると、ブラウンは浴槽から出て、ロビーであったことを聞きました。そして「電話が入った」「取引相手が今夜来る」とカーリーに言います。

ブラウンの部屋には、ソーヤー副保安官が頭から出血して横たわっていました。そして今、ウェイド保安官が彼を探しています。

ブラウンの部屋に集められたフランク・ノラ・ジェームズは、泥棒なのか強盗なのかと彼らに尋ねます。ブラウンは「数時間でいなくなる」「その間、面倒を起こさないでくれ」とだけ答えました。

そこにソーヤーが連れて来られました。「警官だから痛めつけてやった」それを聞いたフランクは、「ブラウン」と名乗る男の正体がジョニー・ロッコだと悟りました。ジョニー・ロッコはアメリカを国外追放されたギャングとして有名でした。

「追放ではなく死刑にすべきだった」とジェームズは激昂し、車椅子から立ち上がってロッコに掴みかかろうとします。ですが、あえなく転倒。ロッコは部屋を出てフランクとノラはジェームズが椅子に戻るのを手伝いました。

ロッコは「ジギー」という名前の男から「取引の手筈が整い、そちらへ向かっている」との連絡を受けます。ロッコはホテルに避難してきたアメリカ先住民たちを、ハリケーンが直撃している外へ追い出しました。

部屋へ戻ったロッコは、ノラを挑発します。威勢よくロッコに歯向かってくるノラを「ゲイ・ドーンのようだ」と言います。「ゲイは昔は美人であったが、酒とギャンブルに溺れ、今は見る影もない」とも。

その後、ロッコはフランクに銃を与えるように言いました。フランクに自分を撃たせるためです。しかし銃を使うことを恐れたフランクは、地面に投げ捨ててしまいました。そんな彼をロッコは臆病者と嘲笑しますが、それが「戦争を生き延びる方法」でした。

突然、ソーヤーが立ち上がりフランクの捨てた銃をつかみ、ロッコへ向けます。彼は部屋を出て保安官ヘの連絡を試みますが、ロッコに撃たれてしまいます。

ソーヤーは撃ち返しますが、ロッコがフランクに与えた銃には弾が装填されていませんでした。ロッコは再びソーヤーを撃ち、彼は絶命しました。

一部始終を見ていたゲイは、フランクの行動は賢かったと言います。「死んだ英雄よりも生きた臆病者である方が良い」しかし、ノラもジェームズも理解を示しませんでした。

その後、ハリケーンの影響でホテルは停電しました。全員ロビー横のバーへ身を寄せ、ゲイはバーに行き酒を欲しますが、ロッコがそれを阻みました。

ロッコは、昔スター歌手であった彼女に「歌を歌うなら飲ませてやっても良い」と言います。 しかし今のゲイが歌う歌は非常に貧弱でした。ロッコは彼女を見世物にして、屈辱を与えました。

歌い終わり、バーに駆け込むゲイにフランクは酒を渡します。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『キー・ラーゴ』ネタバレ・結末の記載がございます。『キー・ラーゴ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

しばらく経ちハリケーンが収まった頃、オショラ兄弟が現れ、ホテルから家族を追い出したことでジェームズを責め立てました。

ジェームズはロッコに彼らが外で死んだかもしれないと言いますが、ロッコは気にも留めていませんでした。彼は島を離れキューバへ脱出する計画をフランクに提案し、「自分の手下として働かせてやる」と誘いました。

そこへウェイド保安官がやってきました。ソーヤーから連絡を受けたが応答がないので、オショラ兄弟をホテルが匿っているのではと調査に来たのです。

ロッコは身分を「ブラウン」と偽った上で、オショラ兄弟がソーヤーを殺害しその後逃亡したと保安官に吹き込みます。

オショラ兄弟は、ちょうどボートで去るところでした。ウェイド保安官は桟橋へ走り、その場で兄弟を撃ち殺しました。

ホテルには観光客のふりをして来たジギーが到着しました。ロッコとジギーが偽札の取引をしている間、別の部屋でゲイとノラは、ロッコと一緒に行かないようフランクに懇願していました。

用が済んだら殺されてしまう。しかし、理性に従って生きてきたフランクは逃げるよりもロッコと決着をつける道を選びました。

取引が終了し、ホテルを去る準備をするロッコ。冗談交じりに、ノラに一緒に来るか尋ねるロッコでしたが、ついて行きたいと懇願するゲイを冷たくあしらいます。

ロッコにすがるゲイの目的は、彼のポケットから銃を抜き取ることでした。彼女はそれをこっそりとフランクに渡します。

フランクはロッコ一味と共にボートに乗り込み、操縦を任されます。部下たちは大人しくついてきた彼を警戒しますが、船酔いと共に彼に対する注意を払わなくなりました。

フランクはその隙を見て、部下を一人ずつ片付けていきます。銃声が聞こえ、何が起こったのかとデッキを確認しに来たカーリーも撃ち殺したフランクは、操舵室の屋根に登りました。

フランクと二人きりになったロッコは、持ち金を山分けしようと提案しますが、返事がありません。フランクの姿も見えず、どこから撃たれるか不安になったロッコは「金はすべてやる、オレは丸腰だ」と言いながら、隠し持っていた銃を構え、デッキに上がってきました。

フランクは上方から彼を撃ち、ロッコはデッキに倒れました。フランクは屋根から降り、すぐに舵を切って島に戻ります。彼は無線で助けを求めた後、ホテルに連絡しました。

一方ホテルでは、ウェイド保安官がロッコの取引相手ジギーと彼の部下を捕まえたことをジェームズに話し、オショラ兄弟を誤って殺したことを謝罪しました。

電話が鳴り、ノラはフランクが戻ってくることを知りました。彼女は窓を開け、そこにようやく太陽の光が差し込みます。フランクはボートを彼の「新しい家」へと戻します。

映画『キー・ラーゴ』の感想と評価


(C)1948 ワーナー・ブラザース

俳優の実生活から垣間見えるキャストの空気感

ハワード・ホークスの手掛けた『脱出』(1944)『三つ数えろ』(1946)で共演したハンフリー・ボガート、ローレン・バコールの年の差はなんと25歳。二人は1945年に結婚し、本作は『潜行者』(1947)に続く「夫婦共演」の2作目となっています。

本作監督のジョン・ヒューストンが脚本段階で結末を検討していた時、映画版『脱出』では使用されなかった銃撃戦というアイデアを、ホークスが提案したという逸話も残されています。

画面のコントラストが暗いノワール映画の本作において、ひと際存在感を放つのは、ローレン・バコール演じるノラが、ボガート演じるフランクを見つめるショットです。

振り返った彼女がフランクを見つめ、「少佐、うちの夫は死ぬときは苦しんだの?」と夫の最期を尋ねます。ボガートを見つめる彼女にソフトフォーカスしたショットが、宝石のように輝いて見えます。

モノクロ映画において女優をソフトフォーカスし、モワっとした画面を作り出す技法はハリウッドでは主流でしたが、このワンカットは映像技術や技法を越えて、本作に特別な何かをもたらしたキラーショットだと言えます。

ギャングの象徴、エドワード・G・ロビンソン

「存在感」でいえば、主演夫婦に引けを取らない圧倒的なオーラを放つ、エドワード・G・ロビンソンが扮するロッコを忘れてはならないでしょう。

エドワード・G・ロビンソンは、『犯罪王リコ』(1931)や遺作となった『ソイレント・グリーン』(1973)で知られる俳優ですが、本作ではアル・カポネをモデルにしたギャングスターを演じています。

彼は今作の出演後、冷戦期の共産主義者およびシンパへの攻撃・追放、いわゆる「赤狩り」の影響でハリウッドを離れることになります。本作では、ロッコが自身に見舞われたアメリカ国外追放の憂き目をぼやく場面がありますが、それはのちに訪れるロビンソンの未来を予言したかのような不思議な場面でもあります。

まとめ

本作は、戦争から戻った帰還兵が後ろ暗い戦争犯罪の重みを背負わされることなく、純然たる英雄として描かれる「最後」の時代の作品です。そういう意味では非常にクラシックな、悪い言い方をすれば前時代性を感じさせられる映画です。

しかしその一方で、ホテル内の位置関係がはっきりと分かるようなカメラワーク、ハリケーンに襲われる海沿いにある建物を外から捉えたミニチュア特撮シーンの見事さなど、映画としての出来が素晴らしいのは確かです。

また原作が戯曲を基にしていることもあり、物語の大部分がホテルという密室内にて展開されていく中、嵐という主人公フランクたちの「耐え忍ぶ時」がついに過ぎ去ったのちに繰り広げられる船上での銃撃シーンはまさにカタルシスの一言であり、物語も典型的なフィルム・ノワールとは少々異なる結末を迎えることになります。

そうした展開とカタルシスは、映画『キー・ラーゴ』がフィルム・ノワールある以上にハンフリー・ボガートによる「ハードボイルド・アクション」の作品であることを示しています。





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