オランダの奇才・ポール・ヴァーホーベン監督とフランスの名女優イザベル・ユペールによる話題作『エル ELLE』をご紹介します。
以下、あらすじや結末が含まれる記事となりますので、まずは『エル ELLE』の作品情報をどうぞ!
1.映画『エル ELLE』の作品情報
【公開】
2017年(フランス映画)
【原題】
Elle
【監督】
ポール・ヴァーホーベン
【キャスト】
イザベル・ユペール、ローラン・ラフィット、アンヌ・コンシニ、シャルル・ベルリング、ビルジニー・エフィラ、ジョナ・ブロケ、ジュディット・マーレ、クリスチャン・ベルケル、アリス・イザーズ、ビマーラ・ポンス、アルチュール・マゼ、ラファエル・ラングレ、リュカ・プリゾ
【作品概要】
監督は『氷の微笑』のポール・ヴァーホーヴェン。
世界を驚愕させたヒロインを演じるのは、フランスの至宝にして歳を重ねる度に魅力が増すイザベル・ユペール。
原作はラブストーリーの金字塔『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』のフィリップ・ディジャン。
刺激的でアブノーマルな才能が互いを高め合い、世界初の気品あふれる変態ムービーにして異色のサスペンスが誕生した!
様々なドラマを生んだ本年度の賞レースで、ひときわ異彩を放ちながら、次々と膨大な数の賞をさらい、フランス映画にしてアカデミー賞主演女優賞ノミネートも果たした話題作が、遂に日本をも席巻する日がやってきた!
2.映画『エル ELLE』のあらすじと結末
新鋭ゲーム会社の社長を務めるミシェルは、一人暮らしの瀟洒な自宅で覆面の男に襲われる。
その後も、送り主不明の嫌がらせのメールが届き、誰かが留守中に侵入した形跡が残される。
自分の生活リズムを把握しているかのような犯行に、周囲を怪しむミシェル。
父親にまつわる過去の衝撃的な事件から、警察に関わりたくない彼女は、自ら犯人を探し始める。
だが、次第に明かされていくのは、事件の真相よりも恐ろしいミシェルの本性だった──。
3.映画『エル ELLE』の感想と評価
ポール・ヴァーホーヴェンは決して普通の映画は撮りません。
常にギアが外れた快作ばかりを撮り続けています。
彼のことを語り尽くせるほど作品を観ているわけではありませんが、監督としての力量は間違いありません。
資料映像:『ロボコップ』(1987)
資料映像『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997)
日本だとやはり『ロボコップ』人気が高いかもしれませんが、『スターシップ・トゥルーパーズ』の強烈な面白さも忘れがたいものがあります。
そんな彼の最新作は、やはり相当に振り切った変態性溢れる一作でした。
まずもって観た方誰もが賛辞を送るであろう主演イザベル・ユペールの圧巻の演技。
彼女の存在がなければこの映画は絶対に成立しません。
ヴァーホーヴェンが彼女とは演技について一切話し合いをしなかったというエピソードがその信頼感を物語っています。
お話は、周りの男(特に父親)によって縛り付けられていたミシェルが解放され、女性としての尊厳を取り戻す物語です。
そのアプローチの仕方がどこまでも極端で、そして面白い。
ミシェルをとことん強く描きます。
男たちを嘲笑うかのように彼女が突き進む様はある種の痛快さすら持ち合わせます。
親が亡くなり、一人息子も結婚し、前夫には新しい恋人。
ミシェルは真の意味で一人ぼっち。
事故で電話が繋がらないシーンで唯一、彼女の寂しさや心許なさを垣間見れた気がします。
どこまでが計算でどこまでが偶然だったのかはわかりませんが、彼女は登場人物の中の誰よりも家族というものを信じていた人でした。
だからこそ最後は父親に会いに行く決断をし、母親との縁も決して切ってはいませんでした。バカ息子もしかり。
ミシェル以上に女の怖さを覗かせたのは、隣人のレベッカであり、あの一言は秀逸でした。
そして、ラストは性による差を描かないヴァーホーヴェンらしい画で終幕。
始まりからは想像もつかない見事な着地です。
まとめ
予告から想像した通りのサスペンス要素やホラー演出が冴え、物語にグイグイと引き込まれていきます。
しかし、それら全てはミシェルという女性の強靭さを見せつけるための役割に過ぎなかったのです。
ポール・ヴァーホーヴェンとイザベル・ユペール。
二人の偉大な表現者が作り出した女性讃歌とも言えるこの物語は、男性のちっぽけさを改めて浮き彫りにしています。
現代に生きる男性は身につまされる想いがすることでしょう。