アルフレッド・ヒッチコックによるラブ・サスペンス『泥棒成金』
南仏リビエラを舞台に、汚名を着せられた元宝石泥棒が、自分の手口を真似た神出鬼没の宝石泥棒を捕らえるために大奮闘。
名匠アルフレッド・ヒッチコックが軽快なタッチで描くラブサスペンスです。
主役の宝石泥棒にケイリー・グラント、ヒロインのフランセスはヒッチコック作品3作連続でヒロインに抜擢されることになったグレイス・ケリーが務めます。
もと宝石泥棒は偽者の正体を突き止めて自分の汚名をはらせるのでしょうか。泥棒の正義を追究しながらラブが発生する見応えたっぷりの『泥棒成金』をネタバレありでご紹介します。
映画『泥棒成金』の作品情報
【公開】
1955年(アメリカ映画)
【原作】
デヴィッド・ダッジ
【脚本】
ジョン・マイケル・ヘイズ
【監督】
アルフレッド・ヒッチコック
【音楽】
リン・マーレイ
【キャスト】
ケイリー・グラント、グレイス・ケリー、シャルル・ヴァネル、ブリジット・オーベース、ジェシー・ロイス・ランディス、ジョン・ウィリアムズ
【作品概要】
自分の偽者を追う天才宝石泥棒の恋と冒険を描く、アルフレッド・ヒッチコックのロマンティック・サスペンス『泥棒成金』。
フランセス役はグレイス・ケリー。1954年の『ダイヤルMを廻せ』『裏窓』に続き、3作連続でヒッチコック作品のヒロインを務めました。本作はアカデミー賞の撮影賞受賞作品。
映画『泥棒成金』あらすじとネタバレ
ゴージャスなお屋敷が建ち並ぶ南仏リビエラ。そこでは、富裕層の屋敷を狙った宝石泥棒が世間を騒がせていました。
夜の闇に紛れ、屋根伝いに窓から屋敷に忍び込んで、宝石を奪って逃げるという手口は、まるで猫のよう。
かつて「キャット」と呼ばれた宝石泥棒そっくりの手口のため、警察は再び「キャット」ことジョン・ロビーの仕業かと、すでに足を洗っている彼のもとへ向かいます。
しかしジョンは以前に捕まって以来堅気となり、リビエラの別荘で悠々自適の生活を送っていました。
身に覚えが無いにもかかわらず警察に疑われた彼は、かつての仲間に裏切り者がいるのではないかと、当時の仲間ベルタニが経営するレストランを訪ねます。
しかし仲間たちのほうでもジョンの仕業と考えていて、自分たちがとばっちりを受けることを恐れ、ジョンを敵視していました。
そこでジョンは偽者が盗みに入りそうな屋敷に先回りして真犯人を明らかにしようとします。
ベルタニの指示でカンヌのビーチクラブへ行き、そこで保険会社の調査員ヒューソンに会って、宝石を持っている人のリストをもらいました。
その変わりに、盗んだ宝石をヒューソンに渡す取引をしました。
手始めにジョンはヒューソンが会うと言っていたアメリカ人の石油成金スティーブンス母娘に近づきます。
ですが、盗難被害にあったのは他の客でした。その時、ジョンは偽キャットから「深入りするな」という警告のメッセージを受け取りました。
そんなジョンにスティーブンス夫人の娘フランセスが興味を抱き、彼をドライブに誘います。
途中、リストの中にあった貴族の屋敷に立ち寄り下見をしていると、ジョンはそこでベルタニの姿を見かけて不審に思いました。
フランセスはジョンの様子から彼が「キャット」だと見抜き、宝石への欲望を駆り立てようと挑発します。
否定しながらもジョンはフランセスに惹かれ、2人は一夜を共にしました。
そしてその晩ついにスティーブンス夫人の宝石が盗まれたのです。
映画『泥棒成金』感想と評価
「キャット」とよばれる宝石泥棒の手口そっくりの犯行が行われ、引退した本物の「キャット」ことジョン・ロビーが犯人探しにのりだすサスペンス『泥棒成金』。
ただのサスペンスだけで終わらず、そこへ絡めてくるのは、成金母娘との出会いであり成金娘とのラブロマンスです。
成金娘のフランセスを演じるのは、アルフレッド・ヒッチコック監督と3度目のタッグとなるグレイス・ケリー。
ジョン・ロビーを誘って2人でドライブするシーンでは、警察の追っ手を交わすスピード感あふれるドライブテクニックが見られ、成金娘の自由奔放さが伝わってきます。
グレイス・ケリーは、この後本作のロケ地のひとつであったモナコ公国のレーニエ大公と結婚します。
モナコの美しい風景がグレイス・ケリーの心にも強い印象を与え、その後の人生を決定づけたのかもしれません。
成金娘の宝石を狙うと見せかけて、罠をはっていたジョン・ロビーの前に偽者のキャットが現れて捕まったことにより、ジョン・ロビーの汚名は晴れました。
泥棒には泥棒のプライドがあります。自分の流儀を守り切った大泥棒が見せるのは、なんと清々しい笑顔でしょう。
そんな大泥棒に魅かれるフランセスは彼の住まいを訪ねて別れを告げますが、立ち去ろうとしないラストに、今後の2人の行く末が想像されます。
機知に富んだ微笑ましいヒッチコックのラブロマンス……。
堂々としたイケメン宝石泥棒のケイリー・グラントに対峙する、美貌のグレイス・ケリーのキュートさが映えるワンシーンです。
まとめ
『ダイヤルMを廻せ』『裏窓』と名作を生みだしたヒッチコック監督の『泥棒成金』。
サスペンスに満ち溢れた本作は、名匠ヒッチコックの手によって、ラブロマンスも加わり、ミステリーの古典ともいうべき作品です。
ヒッチコック初のワイドスクリーン作品でもあり、バスでケーリー・グラントの隣に座る乗客としてヒッチコックも登場。
そして、本作はヒロインを演じたグレイス・ケリーがモナコ王妃となり引退する前年の最後のヒッチコック映画出演作となりました。
話題の多い作品のなかでも注目したいのは、輝くばかりのグレイス・ケリーの美しさでしょう。