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映画『コリーニ事件』ネタバレ考察と内容解説。法廷サスペンスものとしてドイツの負の歴史に真正面から向き合う

  • Writer :
  • 松平光冬

世界的ベストセラーとなった法廷サスペンス小説を完全映画化

新米弁護士が挑む、ドイツ史上最大の司法スキャンダル。

映画『コリーニ事件』が、2020年6月12日(金)より新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショーされます。

ドイツの現役弁護士作家フェルディナント・フォン・シーラッハの世界的ベストセラー小説を、完全映画化。監督は、『クラバート 闇の魔法学校』(2008)で数々のドイツ国内映画賞を受賞したマルコ・クロイツパイントナー。新米弁護士ライネンをエリアス・ムバレク、そして被告人コリーニを、マカロニウエスタンで人気を博したフランコ・ネロが演じます。

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映画『コリーニ事件』の作品情報

(C)2019 Constantin Film Produktion GmbH

【日本公開】
2020年(ドイツ映画)

【原題】
Der Fall Collini(英題:The Collini Case)

【監督】
マルコ・クロイツパイントナー

【脚本】
クリスティアン・ツバート、ロバート・ゴールド、イェンス=フレドリク・オットー

【原作】
フェルディナント・フォン・シーラッハ

【撮影】
ヤクブ・ベイナロビッチュ

【編集】
ヨハネス・フーブリヒ

【キャスト】
エリアス・ムバレク、アレクサンドラ・マリア・ララ、ハイナー・ラウターバッハ、フランコ・ネロ、ピア・シュトゥッツェンシュタイン、マンフレート・ザパトカ、ザビーネ・ティモテオ

【作品概要】
ドイツの現役弁護士作家フェルディナント・フォン・シーラッハの世界的ベストセラー小説を映画化した、法廷サスペンス。

新米弁護士ライネンを、『ピエロがお前を嘲笑う』(2014)のエリアス・ムバレク、そして被告人コリーニを、『続・荒野の用心棒』(1966)などのマカロニウエスタンで人気を博したフランコ・ネロが演じます。

監督は、『クラバート 闇の魔法学校』(2008)で数々のドイツ国内映画賞を受賞したマルコ・クロイツパイントナーです。

映画『コリーニ事件』のあらすじとネタバレ

(C)2019 Constantin Film Produktion GmbH

2001年、ベルリンのとある高級ホテル。

最上階スイートから、返り血を付けた老人がフロントに降りてきて、「奴は死んだ」と殺人を告白します。

殺されたのは実業家のジャン・B・マイヤー、そして容疑者は1934年生まれのイタリア人、ファブリツァーニ・コリーニでした。

コリーニの国選弁護人として選ばれたのは、弁護士になったばかりのトルコ人青年、カスパー・ライネン。

初の参審裁判に意欲を燃やすライネンは早速、被告人のコリーニと面会するも、彼は一言も口を開きません。

その後、殺されたジャン・B・マイヤーが、ドイツでは知らない者がいないマイヤー機械工業の社長ハンス・マイヤーと知り、ライネンは驚きます。

実はマイヤーは、ライネンにとって幼少時からの恩人であり、彼の孫のヨハナとフィリップの姉弟とも家族ぐるみの付き合いがあったのです。

かつての恋人で、フィリップの不慮の事故死により疎遠となっていたヨハナと久々に再会したライネンでしたが、彼女から祖父を殺した人物の弁護など辞めるように言われ、悩みます。

しかし、彼女の公訴参加代理人で、かつて師事を受けた弁護士マッティンガーから、「望んで就いた仕事なら職務を全うしろ」との助言を受け、弁護をすることに。

数日後、審理が始まるも、コリーニが殺害の動機を全く語ろうとしないため、ライネンも打つ手がありません。

マッティンガーがコリーニを謀殺罪で起訴して終身刑にしようと考えているとして、ライネンは情状酌量に持ち込めば減刑できると訴えるも、それでもコリーニは押し黙ったまま。

一向に事態が進展しない状況から、ついライネンは、マイヤーが幼少時に放蕩な父親に見放された自分を救ってくれたと、コリーニに身の上話をします。

するとコリーニは初めて口を開き、「永遠にいるわけじゃないから会っておけ」と、実の父親との再会を促すのでした。

マッティンガーから、裁判の長期化を避けるためにコリーニに自白させるよう指示され、ライネンは悩みます。

そんな中、マイヤーが現在の市場では出回ることのない拳銃ワルサーP38で頭を撃たれたことが判明。

その銃に見覚えのあったライネンは、再び親密な関係となっていたヨハナの邸宅に向かい、一夜を共に。

その夜、幼少時にその邸宅で過ごした記憶を頼りに、密かにマイヤーの書斎を調べたライネンは、そこからワルサーP38を見つけます。

後日、拳銃の画像を見て動揺したコリーニを見て取ったライネンは、審理の中断を申し出ます。

コリーニの生まれ故郷であるイタリアのモンテカティーニに行けば、犯行の動機を掴めるのでは――そう考えたライネンは、ふとしたことで知り合った経営学とイタリア語を学ぶピザ店員の女性ニーナを、通訳として帯同させることに。

さらに、連邦文書館に依頼していたマイヤーに関する大量の調査報告書を速読してもらうため、疎遠となっていた、フランクフルトで古書店を営む父のベルンハルトの元へと向かいました。

(C)2019 Constantin Film Produktion GmbH

ベルンハルトから、父子の関係を失いたくないという思いを聞き、過去のわだかまりを払拭することにしたライネンは、モンテカティーニでコリーニをよく知る老人ルケージに会います。

ドイツに戻ったライネンから、「1944年6月19日に何が起こったのか調べました」と言われたコリーニは、それまで勧められても拒んでいたタバコを、自ら咥えました。

そんなライネンの行動に苛立つヨハナは、「祖父がいなかったら、あなたは今頃ケバブ店の店員よ」と吐き捨てるように罵ります。

審理が再開され、弁護側の証人として呼ばれた連邦文書館員は、マイヤーが第二次大戦時、ナチスの将校だったことを証言。

同じく弁護側の証人として現れたルケージは、ドイツ語通訳としてナチスに協力させられた自分の父親が終戦後に処刑されたことと、1944年6月19日にパルチザンのテロでドイツ兵が2人殺された報復として、マイヤーの命令で、その倍数のモンテカティーニ市民が殺されたことを明かします。

そして、殺された市民の中には、コリーニの父ニコラも含まれていたのです。コリーニの殺害動機は、父の復讐でした。

しかしここでマッティンガーは、68年にコリーニ姉弟がマイヤーを戦争犯罪者として告発するも、翌年に退けられていたことを明かします。

ナチ党員だったとはいえ、マイヤーは女性や子どもは殺さなかった上に、虐殺行為は最高幹部の命に従って行ったこと、しかも終戦から20年経っているとして、彼の行為は時効になっている。

そのため、マイヤーは現時点では罪なき一般人であり、コリーニはその人物を殺した罪人であると、マッティンガーは主張します。

審理後、過去に告発していたことを聞かされていなかったライネンがコリーニを問い詰めると、「訴えが却下された後、姉から『自分が生きている間は何もせず黙っているように』と誓わされた」と答えます。

その姉が2カ月前に亡くなったことで、マイヤー殺害に及んだのでした。

「何故マイヤーは起訴されなかったのか」と問うコリーニに、ライネンは何も返答できません。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『コリーニ事件』のネタバレ・結末の記載がございます。本作をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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同僚やニーナ、ベルンハルトたちと共に、マイヤーが不起訴となった経緯について調べたライネンは、次の公判の場で、ドイツの法制史に関する証人としてマッティンガーを指名。

証言席に座ったマッティンガーに、ライネンは、彼が弁護士資格を習得した1968年後半に、当時の刑法局長だったエドゥアルド・ドレーアー検事が起草した、秩序違反法に関する施行法について尋ねます。

謀殺ほう助者は故殺としてしか裁けなくなった、通称「ドレーアー法」と呼ばれるその法律。

故殺の時効が15年なので、「謀殺のほう助者にあたる故殺者」とみなされたマイヤーは、コリーニ姉弟の訴追を免れたのです。

さらに、そのドレーアー法の起草を決める会議にマッティンガーも出席していたことを、ライネンは明かすのでした。

「当時の法律では合法だった」と反論するマッティンガーに、「では今の観点では、マイヤーの不起訴は正当だったのでしょうか」と問うライネン。

わずかな沈黙ののち、マッティンガーは「違う」と答えるのでした。法廷がざわめく中、判決申し渡しを明日に行うと裁判長が告げ、審理は終了。

コリーニは「死者は報復を望まない」とライネンに握手を求め、拘置所へと戻っていきました。

裁判所を後にしようとした際、ヨハナに「私も祖父と同じ?」と問われ、「君は君だ」と答えるライネン。

翌日、判決が言い渡される法廷に、コリーニが姿を現しません。ライネンや傍聴人たちが不思議がる中、現れた裁判長は、コリーニが独房で自ら命を絶ったことを報せます。

被告人の死亡で訴訟は中止されることとなるも、ざわめきと悲しみの間が法廷を包みます。

数日後、ライネンの事務所にベルリン地方裁判所からの手紙が……。中には、コリーニの遺品である「俺たちの父さんだ」と書かれたコリーニ父子の写真が入っていました。

秘書となったニーナとともに、モンテカティーニでのコリーニの埋葬に立ち会ったライネン。

故人を偲ぶ酒席の場にいたライネンは、足元にあったサッカーボールに気づき、何かを思いついたかのように、誰もいない方向に転がします。

すると少年時代のコリーニが現れボールをキャッチし、笑顔でライネンを見ます。

直後、「おいで、ファブリツァーニ」と声をかけた父ニコラと手をつなぎ、去っていくコリーニ少年。

遠くなっていく父子の後ろ姿を見ながら、ライネンは笑みを浮かべるのでした――

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映画『コリーニ事件』の感想と評価


(C)2019 Constantin Film Produktion GmbH

ドイツの現役弁護士作家によるベストセラー小説を映画化

本作『コリーニ事件』は、ドイツで屈指の刑事事件の弁護士である、フェルディナント・フォン・シーラッハの同名小説を映画化したものです。

2009年の作家デビュー短編小説『犯罪』がドイツで45万部を超えるベストセラーとなり、日本でも本屋大賞「翻訳小説部門」第1位に選ばれるなど、早くから注目を浴びます。

一方で、戯曲家として2015年に発表した『テロ』も、世界の現代演劇で最も成功を収めた舞台の一つと称されており、日本でも翌16年に朗読劇として、また18年に橋爪功、今井朋彦、前田亜季らが出演の舞台『TERROR-テロ-』として上演されています。

『コリーニ事件』は、そうした研ぎ澄まされた筆力を持つシーラッハ初の長編作となります。

参考映像:舞台『TERROR-テロ-』公開ゲネプロ

「過ぎたこと」では済まされない、ドイツの負の歴史


(C)2019 Constantin Film Produktion GmbH

本作は、新米弁護士と公訴参加代理人のベテラン弁護士が、とある刑事裁判をめぐり法廷で争うサスペンスドラマの形式をとっていますが、その裏にはナチス政権時のドイツの複雑な法制度があります。

主人公カスパー・ライネンにとって心優しき恩人のハンス・マイヤーが、実は元ナチ党員だったという衝撃の事実。

そのマイヤーが行った1944年のモンテカティーニ市民の虐殺が、あくまでも謀殺ではなく故殺にあたるとして、69年に時効となった根拠になるのが、エドゥアルド・ドレーアー検事による秩序違反法に関する施行法、通称「ドレーアー法」です。

劇中では細かく触れられていませんが、ドレーアー自身もナチ党員でした。

しかし終戦後は戦犯として裁かれることなく、西ドイツ法務省に入省してドイツ刑法の改正に関与します。

つまり、多くのナチ戦犯を無罪放免としたこのドレーアー法は、ドレーアー自身の身を守る目的もあったとされます。

ナチ時代の法制度の問題は、ドイツで長らく議論の的となっていましたが、1980年後半から、ようやく「過ぎたこと」とせずに、戦争犯罪者として刑罰を与える動きが活発化。

そして原作『コリーニ事件』の出版がきっかけでナチ戦犯に対する時効問題も見直され、ドイツ連邦法務省内にナチの過去再検討委員会が設置されることとなったのです。

事件の真相を知ったマイヤーの孫ヨハナの「私も祖父と同じ?」の問いに、ライネンは「君は君だ」と答えます。

彼の返答は、アーネスト・ヘミングウェイの『キリマンジャロの雪』の一節「我々は、自分にふさわしい生き方をするようにできている」の引用です。

原作者シーラッハの祖父も、第二次大戦時、ナチ党全国青少年最高指導者としてファシズム政権の中核を担った人物でした。

ライネンの言葉は、祖父の過去を12歳の時に初めて知ったというシーラッハの心情に他なりません。

まとめ


(C)2019 Constantin Film Produktion GmbH

映画版『コリーニ事件』は、饒舌なコリーニを寡黙にしたり、ライネンの複雑な父子関係を加え、相棒となる女性ニーナを登場させるなど、原作からの変更点がいくつかあります。

特に、現実のライネンと幻想のコリーニ少年が邂逅するラストは、『ラストエンペラー』(1988)や『ローン・レンジャー』(2013)、『LION/ライオン~25年目のただいま~』(2017)でも見られた、映画ならでの演出といえましょう。

自身の減刑ではなく、「欲しいのは正義だけ」とマイヤーの罪の立証を求めたコリーニと、そんな彼の執念を成就させたライネン。

2人の笑顔で締めくくられるラストが、感動を呼びます。

映画『コリーニ事件』は、2020年6月12日(金)より新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー



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