夜のロンドンを舞台に、謎に包まれた魅力的な悪女、アニーが仕掛ける復讐劇を描いた映画『アニー・イン・ザ・ターミナル』。
2018年の「アカデミー賞主演女優賞」にもノミネートされ、話題作への出演も続く、人気実力共にトップクラスの女優、マーゴット・ロビーの他、サイモン・ペッグなどの実力派俳優が集結した、本作をご紹介します。
映画『アニー・イン・ザ・ターミナル』の作品情報
(C)2017, Mr. Lively, LLC. All Rights Reserved.
【公開】
2003年公開(イギリス・ハンガリー・アメリカ・香港合作映画)
【原題】
Terminal
【監督・脚本】
ボーン・ステイン
【キャスト】
マーゴット・ロビー、サイモン・ペッグ、デクスター・フレッチャー、マックス・アイアンズ、マイク・マイヤーズ
【作品概要】
ロンドンの駅構内にある、24時間営業のダイナーでウェイトレスとして働く、謎の美女アニーを中心に、さまざまな人物が錯綜するリベンジスリラー。ハーレー・クイン役が話題になり、トップ女優として活躍するマーゴット・ロビーが、主演に加え、本作ではプロデューサーも務めています。
アニーと出会う、余命わずかな国語教師を、『ショーン・オブ・ザ・デッド』で世界的にブレイクしたサイモン・ペッグ。謎の老駅員を、大ヒットコメディ「オースティン・パワーズ」シリーズのマイク・マイヤーズが演じるなど、実力派の俳優が集結しています。
映画『アニー・イン・ザ・ターミナル』あらすじ
(C)2017, Mr. Lively, LLC. All Rights Reserved.
ロンドンのとある地下鉄。
駅の構内で次の電車を待っていた、国語教師のビルは、夜間の駅を管理する、足の不自由な老駅員から「本日の電車は全て出てしまい、朝の4時まで電車が来ない」事を伝えられます。
困った様子のビルに、老駅員は、24時間営業しているダイナーがある事を伝えます。
ビルは、老駅員から教えてもらったダイナー「終着駅」で、1人で時間を潰していました。
店内には、他に客の姿は無く、金髪のウェイトレス、アニーがいるだけです。
アニーは、咳込みながらも、煙草を吸い続けるビルに興味を示し、話しかけてきます。
ビルは、謎の病を患っており、自身に死が迫っている事を感じていましたが、医者や神父にも助言をもらえず、半ば自暴自棄になっています。
そんなビルに、アニーは「死は自分を自由にするチャンス」と語り、死を迎える事を、楽しむように提案します。
アニーは、ビルに自ら命を絶つ事を勧めましたが、ビルはその提案を拒否します。
アニーが、次に出した提案は、アニーの新しい恋人である殺し屋に、命を狙ってもらうという事でした。
(C)2017, Mr. Lively, LLC. All Rights Reserved.
以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『アニー・イン・ザ・ターミナル』ネタバレ・結末の記載がございます。『アニー・イン・ザ・ターミナル』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
ビルがアニーと出会う3週間前、2人組の殺し屋、ヴィンスとアルフレッドは、ダイナー「終着駅」で仕事の話をしていました。
堅物で切れ者のヴィンスは、軽い性格で、物事を深く考えないアルフレッドに、不満を抱いている様子です。
ヴィンスは、自宅の留守番電話に入っていたメッセージに従い、地下鉄の駅のロッカーを開け、黒いアタッシュケースを手に入れていました。
黒いアタッシュケースには、次に行う指示が書かれています。
この、独特の接触方法から、ヴィンスとアルフレッドは、裏世界の大物、 ミスター・フランクリンが自分たちに仕事を与えようとしていると察し、興奮します。
ヴィンスとアルフレッドは指示通り、ストリップバーを訪ねますが、そこにいたのは、アニーでした。
「終着駅」のウェイトレスのアニーが、ミスター・フランクリンのアタッシュケースを預かる、ダンサーとして現れた事に、ヴィンスは警戒しますが、アニーに好意を抱くアルフレッドは、気にしていない様子でした。
ミスター・フランクリンのアタッシュケースから得られた次の指示は「ある廃墟ビルで直接会い、仕事の話をする」という事でした。
ただし、廃墟ビルには、ヴィンスとアルフレッドの、どちらか1人で来る事が条件です。
ヴィンスが、指定された廃墟ビルに1人で向かうと、そこには、またアニーがいました。
アニーに導かれるように入った部屋には、電話があり、ミスター・フランクリンからの連絡を、ヴィンスは受けます。
一方、1人になったアルフレッドは、「終着駅」にいるアニーに会いに行きます。
そこに、老駅員が現れ、アタッシュケースをアルフレッドに渡します。
ヴィンスとアルフレッドが受け取ったメッセージは同じ。
「ある部屋で待機をして、ターゲットが通ったら連絡するから、そいつを狙撃してほしい」という内容でした。
そして、もう一つ「仕事が終わり次第、パートナーも消す事」と伝えられます。
別々の場所でメッセージを聞いたヴィンスとアルフレッドは、「パートナーも消す」という条件に納得がいかず激高します。
3週間後、ミスター・フランクリンの指示通り、部屋で待機しているヴィンスとアルフレッド。
ターゲットが現れない苛立ちと、お互いへの不信感から、精神的に疲弊した様子を見せます。
ビルは、アニーに連れられて、ロンドン駅構内の地下にある、巨大な穴がある場所へと行きます。
アニーはビルに、穴の中に飛び降りるよう提案しますが、アニーの異常な要求にビルは怒りを覚え「君のような、ありきたりな異常者は山のように見て来た」と、まくしたてます。
そして、ビルはアニーに「悪い子だ!」と叫んだ瞬間、ある記憶が蘇ります。
孤児の子供が集まる施設で、教師をしていたビルは、ある晩、1人の女子生徒に性的な暴行を加えました。
「悪い子だ、おしおきしないと」と言いながら。
そして、成長したその子供こそ、目の前にいるアニーでした。
アニーは、ビルが自分を思い出す瞬間を待っており、自身の罪を謝罪するビルの首筋に刃物を突き刺し、穴の底へと落とします。
3週間以上が経過し、精神的に限界を迎えていた、ヴィンスとアルフレッド。
ですが、突然電話が鳴り、ヴィンスが狙撃用ライフルのスコープを覗くと、そこにいたのはアニーでした。
戸惑うヴィンスに、アルフレッドが銃口を突き付けます。
アニーが部屋に入って来たタイミングで、アルフレッドは「今後は、アニーと組む」事を伝え、アニーを罵るヴィンスを射殺します。
アルフレッドは、部屋の清掃に来た老駅員に、死体の処理を任して、アニーと共に部屋を去ります。
アニーとの、新たな可能性に喜ぶアルフレッドですが、アニーは突然、アルフレッドを拒絶し、アルフレッドの額に銃弾を撃ち込みます。
アニーは、アルフレッドの死体を、老駅員と共に始末し、その場を立ち去ります。
死体を始末した老駅員は、駅員室に戻ります。
老駅員は、入れ歯や顔に張り付けた特殊な皮膚をはがし、変装を解きます。
老駅員こそが、裏世界の大物、ミスター・フランクリンでした。
ミスター・フランクリンは、アニーから、あるゲームを提案されていました。
その内容は「ミスター・フランクリンが雇った殺し屋と、命を懸けたゲームをしたい。アニーが勝利した場合、ある人物を探してほしい。アニーが敗北した場合、その時は死ぬ」というものです。
アニーは、ヴィンスとアルフレッドを始末した事で、ゲームに勝利し、幼少期に自身にトラウマを植え付けた、ビルを探し出してもらい、復讐を果たしたのです。
ミスター・フランクリンが、駅員室を出ると、アニーが待っていました。
アニーの出現に警戒するミスター・フランクリンの後ろに、もう1人アニーが現れます。
アニーは「双子なの」と伝え、ミスター・フランクリンを気絶させます。
椅子に括りつけられた状態の、ミスター・フランクリンが目を覚ますと、そこは地下室で、目の前には拷問道具が並んでおり、ナース姿の2人のアニーがいました。
アニーは、ある過去を語ります。
ミスター・フランクリンは若い頃に、バーで出会った若い女性、クロエと一夜を共にしました。
クロエは双子の女の子を出産しましたが、ミスター・フランクリンが裏の世界の住人である事を知り、逃げるように身を潜めて生活していました。
ですが、ある晩、クロエはミスター・フランクリンが2人の男を射殺する現場に遭遇します。
クロエは自宅に逃げ込みますが、追ってきたミスター・フランクリンは、家ごと燃やしてクロエの命を奪います。
アニーたちは、クロエが最後の力を振り絞り、窓から逃がした双子でした。
絶望の中、アニーたちは、ミスター・フランクリンへの復讐を誓って、辛い人生を生き抜いてきました。
そして、ミスター・フランクリンに復讐する為、接触してきたのです。
ミスター・フランクリンは、アニーたちに命乞いをしますが、聞き入れられず拷問を受けた後、絶命します。
復讐を果たした、アニーたちは、夜のロンドンに消えて行くのでした。
映画『アニー・イン・ザ・ターミナル』感想と評価
(C)2017, Mr. Lively, LLC. All Rights Reserved.
原色のネオンが輝く、独特の世界観を持った、夜のロンドンを舞台に繰り広げられる復讐劇『アニー・イン・ザ・ターミナル』。
本作で、主人公のアニーを演じるマーゴット・ロビーは、話題作にも多く出演し、高い演技力で、本当にさまざまな顔を見せてくれていますが、本作では男を手玉に取る、魅力的な女性を演じています。
『アニー・イン・ザ・ターミナル』は、過去と現在が交差する、少し複雑な構成となっています。
死が間近に迫っている、ビルとアニーの会話劇と、3週間、同じ部屋に待機している2人の殺し屋のエピソードが、交互に進行しますが、全く関係の無い話のように見える為、初見だと、おそらく最後の最後まで、何が起きているのか全体を掴む事は難しいでしょう。
2つのエピソードを繋ぐのは、アニーという存在で、最終的には裏社会の大物、ミスター・フランクリンへの復讐劇へと、物語は収束していきます。
復讐劇の多くは、主人公が、強大な力を持つ闇組織に戦いを挑み「復讐が達成できるか?」が大きな鍵になりますが、本作は、終始アニーが優位な状況で物語が進み「気が付いたら、復讐が果たされていた」という部分が、他とは違う大きな特徴です。
主人公であるはずなのに、終盤まで謎が明かされないアニーに、作中の登場人物だけでなく、映画を観ている、こちら側も翻弄され、最終的には、アニーの完全勝利で幕が閉じます。
終始アニーの手のひらで転がされ続けたような、不思議な感覚に陥る作品となっています。
まとめ
(C)2017, Mr. Lively, LLC. All Rights Reserved.
『アニー・イン・ザ・ターミナル』は、終始夜の場面だけで構成された作品です。
前述したように、夜の世界を彩る原色のネオンなど、ビジュアル面で独特の世界を作り出しており、特に2人のアニーが、ミスター・フランクリンへの復習を果たす、クライマックスが、白を基調とした部屋に、拷問道具が並ぶ異常な空間を作り出しており、悪夢的な印象を与えています。
この独特の世界観で、マーゴット・ロビーが「ウェイトレス」「ダンサー」「殺し屋」など、さまざまな衣装を身に纏い、妖艶で魅力的な悪女を演じており、マーゴット・ロビーの魅力が全開となっています。
時系列が交差する作風ですので、中盤まで混乱するかもしれませんが、最期は分かりやすく全部を説明してくれるので、気軽に楽しめる作品です。
クエンティン・タランティーノの初期の作品や、ガイ・リッチー作品が好きな方には、特におススメの内容となっていますよ。