対立か協調か、
迫るファイナルディシジョン(究極の決断)
人気アメコミ実写作品第3弾は、後に「X-MENオリジナル三部作」と呼ばれたシリーズの最終章にあたる『X-MEN:ファイナルディシジョン』です。
本作では原作コミックスで初期からの人気キャラクター“ビースト”が登場。過去最大数のキャラクターが登場し、壮絶な戦いを繰り広げます。
人類がついにミュータント因子を無効化する“キュア”を開発。ミュータントと人類の緊張が一気に高まる中、死んだはずのジーンが現れます。またマグニートーもミュータント軍団“ブラザーフッド”を組織し、人類に宣戦布告します。
X-MENはブラザーフッドと人類の戦い、フェニックスの暴走を止められるのか。進化したVFXによる迫力映像も必見の映画『X-MEN:ファイナルディシジョン』をご紹介します!
映画『X-MEN:ファイナルディシジョン』の作品概要
【日本公開】
2006年(アメリカ映画)
【原題】
X-Men:The Last Stand
【監督】
ブレット・ラトナー
【キャスト】
ヒュー・ジャックマン、ハル・ベリー、イアン・マッケラン、ファムケ・ヤンセン、アンナ・パキン、ケルシー・グラマー、ジェームズ・マースデン、レベッカ・ローミン、ショーン・アシュモア、アーロン・スタンフォード、ビニー・ジョーンズ、パトリック・スチュワート、エレン・ペイジ、ショーレ・アグダシュルー、ベン・フォスター、ダニエル・クドモア
【作品概要】
監督は『X-MEN』(2000)『X-MEN2』(2003)と前2作を手がけたブライアン・シンガーから、「ラッシュアワー」シリーズや「プリズンブレイク」シリーズで知られるブレット・ラトナーにバトンタッチ。
ヒュー・ジャックマンをはじめ、イアン・マッケラン、パトリック・スチュワート、ハル・ベリーらお馴染みのキャストに加え、新キャラクター・ビースト役にテレビドラマ『そりゃないぜ!? フレイジャー』で一躍有名となったケルシー・グラマーが出演しています。
映画『X-MEN:ファイナルディシジョン』のあらすじとネタバレ
前作『X-MEN2』にてストライカーの陰謀を阻止して以降、ミュータントと人類の均衡は保たれていました。しかし、いつ人類との戦争が勃発するかわからない中、“恵まれし子らの学園”ではミュータントの学生たちが自身を守るため訓練の日々を送っていました。
学園で教鞭をとっていた「サイクロップス」ことスコット・サマーズ(ジェームズ・マースデン)は、恋人であるジーン・グレイ(ファムケ・ヤンセン)を失ったことをきっかけに自堕落な生活を送っていました。
またスコットに代わって「ウルヴァリン」ことローガン(ヒュー・ジャックマン)教鞭をとっていました、彼の破天荒な指導の仕方には同じく教鞭をとる「ストーム」ことオロロ・マンロー(ハル・ベリー)は不安を感じていました。
その頃、エリック配下のミュータントである「ミスティーク」ことレイヴン・ダークホルム(レベッカ・ローミン)は政府施設に侵入したとされ拘束されていました。
政府閣僚が対応を協議する中、唯一ミュータントの官僚としてミュータント省長官に任命されていた「ビースト」ことハンク・マッコイ(ケルシー・グラマー)は、レイヴンが盗もうとした資料から、あらゆるミュータントの能力を無効化できる能力を持つ「リーチ」こと少年ジミー(キャメロン・ブライト)の存在を知ります。
またハンクは、ジミーの遺伝子の研究によって、ミュータント因子の活動を抑制させ、ミュータントを普通の人間へと戻す薬“キュア”が開発されたことを知ります。
“キュア”開発の事実はすぐに公表され、社会に衝撃を与えます。
ミュータントの中には、望まずに発現した能力のせいで社会に溶け込めないが故にキュアを求める者、政府がキュアを用いてミュータントを根絶しようとしているのではと警戒する者と、賛否が分かれていました。
キュアを求める者の中には、学園生ながらも「相手の生命力を無意識に吸収してしまう」という能力故に、恋人の「アイスマン」ことボビー・ドレイク(ショーン・アシュモア)との関係に悩む「ローグ」ことマリー・ダンキャント(アンナ・パキン)の姿もありました。
一方、キュア反対派のミュータントの集会に、人類に対する徹底抗戦を表明する男が現れます。その男こそ「マグニートー」ことエリック・レーンシャー(イアン・マッケラン)であり、エリックに同調するミュータントたちは自らを“ブラザーフッド”と名乗り、徐々に勢力を拡大していきます。
そんな時、スコットはジーンが助けを求める幻聴を聞き取り、前作『X-MEN2』にてジーンが最期を遂げた地である、カナダ山中の湖へ1人向かいます。
スコットがそこで見たのは、死んだはずのジーンでした。
映画『X-MEN:ファイナルディシジョン』の感想と評価
「X-MENオリジナル三部作」の最終章にあたる『X-MEN:ファイナルディシジョン』。
『X-MEN』『X-MEN2』で活躍したスコットとチャールズの相次いでの喪失というショッキングな展開をはじめ、復活を果たしたジーンと別人格「フェニックス」の覚醒、人類によるミュータント因子抑制薬“キュア”の開発、マグニートー率いる“ブラザーフッド”の台頭によって、ミュータント集団“X-MEN”はかつてない危機に立たされます。
エキサイティングなストーリー展開によって、最終章にふさわしい壮絶な戦いが描かれた本作ですが、その中でもそれぞれのキャラクターの“愛”が描かれていました。
前作『X-MEN2』のラストで恋人ジーンを失ったことで、喪失感に耐えられないスコットは生きる気力を失い自堕落な生活を送りますが、それもジーンへの“愛”の深さ故です。
また自身の能力故に恋人ボビーとの関係に悩むマリーが、苦悩の末にキュアを接種しミュータントでなくなる決意をする様子、対してレイヴンの“愛”故の献身が「ミュータントではなくなった」のエリックの一言で切り捨てられてしまう虚しい顛末も描かれています。
しかし、そうしたそれぞれの“愛”の中でも最も印象的だったのは、ローガンのジーンへの“愛”でした。
本作のクライマックスでは、暴走する別人格フェニックスに苦しめられるジーンを解放するため、ローガンは自らの手で愛するジーンを殺めます。シリーズ第1作の『X-MEN』から描かれ続けてきたローガンのジーンへの想いは、最も残酷で衝撃的な結末によって幕を引かれたのです。
ジーンの「暴走するフェニックスを止めるため、自身を殺してほしい」という願いを、ローガンはジーンを愛するが故に聞き届け、その願いを果たします。しかし、自らが殺めたジーンの亡骸に対してローガンが泣き叫ぶ様子には、誰もが胸を締めつけられます。
そして、ジーンが息を引き取る直前の穏やかな表情は、願いを果たしてくれたローガンへの感謝なのか、あるいは秘められた想いの現れなのか……その答えを、観客に判断を委ねさせる演出でもありました。
このようにそれぞれのキャラクターが抱く“愛”を描いた本作ですが、シリーズとともに進化を続けていったVFXによる圧巻のアクションシーンもまた、物語をより壮大に彩っています。
特にクライマックスの、フェニックスの強大な能力で建物や人物が風にさらされた砂山のように消滅してゆく場面は、迫力もさることながら、すべての物があっけなく消えていく演出に、恐怖を感じる場面となっています。
反面、ローガンがその中をフェニックスに近づいていく場面では、露わになった金属の骨格が見えるなど、ローガンの体のあらゆる部位が次々と消滅・再生を繰り返す演出には生々しささえ感じられ、VFXの技術の高さが感じられる映像となっていました。
まとめ
本作『X-MEN:ファイナルディシジョン』では、物語を牽引してきたエリックとチャールズが役目を終えたかのように思えましたが、それぞれの復活を予期させるエンディングが描かれています。
この演出は元々、第4作の製作を見据えての伏線だったのですが、残念ながら本作でシリーズは完結。後に『X-MEN』『X-MEN2』『X-MEN:ファイナルディシジョン』はのちに「X-MENオリジナル三部作」と呼ばれるようになりますが、このエンディングは宙に浮いてしまう形になります。
しかし後に展開される新シリーズにて、この伏線は見事に回収されています。
それは、新たにシリーズが展開されるだけの人気を誇っていたことを意味している他、新シリーズ以外にも数々のスピンオフも展開されたことからも、『X-MEN』の潜在的な人気とそれを確固たるものにした「X-MENオリジナル三部作」はなくてはならない実写映画化シリーズであったといえるのです。