来たる4月28日(土)、下北沢トリウッドにてロードショーされる映画『ユートピア』をご紹介します!
太陽嵐、空間鎖国、黒い災い…、『虹色☆ロケット』の伊藤峻太監督が10年の年月を掛けて完成させたSFファンタジーです!
映画『ユートピア』の作品情報
【公開】
2018年(日本映画)
【監督】
伊藤峻太
【キャスト】
松永祐佳、ミキ・クラーク、高木万平、森郁月、吉田晋一、池曳豪、ウダタカキ、まなせゆうな、椿鮒子、吉田佳代、レナ・コックス、井上善晴、秋山仁美、対馬大翔
【作品概要】
2006年に高校3年生で製作した「虹色★ロケット」が劇場公開され、DVD化もされた伊藤峻太監督が、同作以後、10年の歳月をかけて完成させた、童話「ハーメルンの笛吹き男」に着想を得たSFファンタジー。
映画『ユートピア』のあらすじ
ある夏の朝、まみが目を醒ますと外は雪が降っていました。
ふと二段ベッドを見上げると、誰かの手がベッドから出ているのが目に入りました!恐る恐るベッドの上に昇ってみると、そこには異国の少女が眠っていました。
いったいいつの間に?そしてどこから少女はやってきたのでしょうか?
言葉の通じない二人でしたが、互いの名前だけは理解しあうことが出来ました。少女はベアと名乗りました。
電気や水などのライフラインが途絶し、街は混乱していました。
まみはベアに妙な懐かしさを覚えます。どこかであったことがあったかしら?
火、音楽、宗教、お金、軍隊などの争いのもとになるものは何一つない世界に暮らしていたというベア。まみは思わず「それってユートピアね」と口にします。
「ユートピア?」とベアも繰り返しました。
行動をともにしているうちに、まみはふと一冊の絵本を思い出し、部屋の中を探し始めました。
あった!それは《ハーメルンの笛吹き男》の絵本でした。
ベアは絵本を見て驚愕します。なぜなら、ベアは、1284年にドイツのハーメルンで、笛吹き男にさらわれた130人の子どもたちの うちの一人だったからです。
他のみんなはどこに行ってどうなったのか、ベアにはわかりませんでした。懐かしい故郷に帰りたい、彼女はずっとその思いを胸に抱いて生きてきたのです。
そんな彼女たちのもとに、マンションの隣人が訪ねてきて、驚くべきことを告げました。
子どもたちが大勢行方不明になっているというのです。
あなたは大丈夫か?と問われ「私は二十歳だから」と応えたまみでしたが、近くの病院に来ていた子が二人も行方不明になったと知り、ベアと一緒にでかけていきました。
そんな中、空間的に鎖国されたユートピアからの移動、通称「渡り」に巻き込まれたユートピア人、エアリ、コニ、ハロウたちが姿を現し、ベアたちと行動をともにすることとなります。
笛吹き師たちにより、ハーメルンの悲劇が、ここ東京で繰り返されようとしていました。
次第に「ユートピア」の正体が明らかになっていきます。
ユートピアの指揮官オールデは、先代の指揮官の意志をつぎ、国民を守るのが我々の務めだと語りますが、そのためには多少の犠牲は仕方がない、と考えていました。
「ユートピアの地下には火が隠されており、それを燃やし続けるのが奴隷の子どもたちの役割である」
奴隷にすべく子どもたちをさらっていたのは彼だったのです。
この事実をベアたちは黙認することができません。
ベアたちは果たしてどのような行動をとるのでしょうか?
笛吹き男「マグス」の正体は?そして、まみには何ができるのでしょうか?
停止した東京で、お伽噺の続きが始まろうとしていました…。
映画『ユートピア』の感想と評価
「ハーメルンの笛吹男」の話が紹介されたあと、遥か上空から見下ろした風景の中に、一人の少女が走っていく姿が目に入ってきます。
その俯瞰ショットのあと、走る少女を追っていたカメラが突然さっそうと走り出します。
巧みな編集とスピード感溢れる演出に、一挙に映画の世界に引きずり込まれました。
VFXの確かな技術によって生み出された壮大な世界に驚かされますが、一方、夏に雪が降り、ライフラインが止まってしまっている東京の不穏な雰囲気も特筆すべきものがあります。
人々がパニックになるでもなく、淡々と生活を続けているのが、妙にリアリティがあり、子どもが行方不明になる事件が起きて終始、そのことを伝える放送が街中に流れている状況は、なんともいえぬ不安を掻き立てます。
「ハーメルンの笛吹男」をモチーフに、想像力豊かな物語が展開。ベアたちが所持している仮面や、笛吹き師たちのコスチュームなど、美術面も見どころの一つです。
さらに、「こことは違う何処か」への憧れと望郷に揺れ動く若者たちの姿は普遍的な共感を呼ぶことに成功しています。
「国民」「市民」として自覚していく彼らの成長する姿も見逃せません。
優れた作品は、その時代の出来事や空気を色濃く反映しているものですが、本作も、エンターティメントとしての面白さの中に、今日的な問題を多分に含んでいるように思え、刺激的でした。
まとめ
監督の伊藤峻太は2006年、高校三年生で『虹色★ロケット』を製作。2007年の正月に公開され、DVD化されました。その当時から本作『ユートピア』を構想していたといいます。
10年の歳月をかけて完成した本作は、豊かな想像力が魅力のスケールの大きな作品に仕上がっています。
監督だけでなく、脚本、編集、VFX、主題歌の作詞作曲もこなし、さらに、劇中に登場する「ユートピア語」まで作り上げたというから驚きです!
ジャンルとしてはSFやファンタジーに分類されるものでしょうが、今日的な問題や、若い人々の人間としての成長など、様々な要素を含んでおり、幅広い層に受け入れられる作品に仕上がっているのではないでしょうか。
この若き才能を是非目撃してください!
『ユートピア』は2018年4月28日(土)より、下北沢トリウッドにてロードショーされます!