ウルトラマントリガー最大の戦い!25年の時を経て、最悪の巨人が復活する
2021年に放送された『ウルトラマントリガー』の特別編として製作された本作、『ウルトラマントリガー エピソードZ』。
“光”を受け継いだウルトラマントリガーに対し、“影”を引き継ぐ巨人、イーヴィルトリガーが登場。新たなキャストに中村優一を迎え、壮大なスケールでトリガーの物語が描かれます。
平和を取り戻したはずの地球で再び出現する怪獣たち。地球の危機にウルトラマントリガーが遂に復活を果たし、怪獣たちに立ち向かいます。
時空を超え、ウルトラマンゼットも駆け付けますが、ゼットに邪悪な影が忍び寄ります。
そんな中、遂に最悪の影の巨人、イーヴィルトリガーが登場、光と影の究極の戦いへと発展していきます。
ウルトラマントリガー最大の戦いが幕を挙げる映画『ウルトラマントリガー エピソードZ』をご紹介します。
映画『ウルトラマントリガー エピソードZ』の作品情報
【公開】
2022年(日本映画)
【監督】
武居正能
【キャスト】
寺坂頼我、豊田ルナ、金子隼也、春川芽生、水野直、高木勝也、細貝圭、平野宏周、安藤彰則、中村優一、宅麻伸、M・A・O、畠中祐、小野友樹
【作品概要】
『ウルトラマントリガー エピソードZ』の監督は『ウルトラマンR/B』(2018)など、多くのウルトラ作品に名を連ねる武居正能が務めます。
キャストは主演の寺坂頼我をはじめテレビシリーズから、豊田ルナ、金子隼也、春川芽生、水野直、高木勝也、細貝圭、M・A・O、が再集結。
テレビシリーズで客演を果たした平野宏周とウルトラマンゼットも登場し、新たに「仮面ライダー電王」シリーズで仮面ライダーゼロノスこと桜井侑斗役を演じた中村優一が、GUTS-SELECT新隊長トキオカにキャスティングされています。
映画『劇場版ウルトラマントリガーエピソードZ』のあらすじとネタバレ
メガロゾーアとの戦いから2年。
ウルトラマントリガーことマナカケンゴ(寺坂頼我)が暴走するエテニティコアと同化したことで宇宙は救われ、地球も平和を取り戻していました。
しかし、数カ月前から収まっていた怪獣災害が再び発生するようになっていました。
それにより怪獣災害に対応するエキスパート部隊“GUTS-SELECT”のヒジリアキト(金子隼也)、シズマユナ(豊田ルナ)、ナナセヒマリ(春川芽生)、サクマテッシン(水野直)、メトロン星人 マルゥル(声:M・A・O)らは、怪獣災害への対応を余儀なくされていました。
しかし、新隊長トキオカ リュウイチ(中村優一)の手腕もあり事なきを得ていました。そんな中、超古代文明の遺跡に侵入する謎の集団が確認されます。
情報部へ異動したGUTS-SELECTの前隊長、タツミセイヤ(高木勝也)は集団の一人、イブラを拘束、尋問により、その集団が“ライラー”と名乗り、超古代文明を信仰している事が判明します。
一方、超古代文明の巫女であるユザレの記憶と能力を引き継ぐユナは、ユザレの記憶が日に日に薄れていく中、時折ケンゴが苦しむ幻を目にし不安に感じていました。
そんな時、イブラはユナに会う事を条件にすべてを語ります。
「このままでは光が失われる」そう語るイブラは同調するようにエタニティコアの波長が乱れ始め、ユナはケンゴが消えかけていることを感じます。
トキオカはコアの中のケンゴを救出する作戦を立案、タツミ率いる情報部、ライラーの協力で作戦が決行されます。
無事救出されたケンゴですが、ウルトラマントリガーに変身するためのアイテム、ガッツハイパーキーを失ってしまいます。
ケンゴは仲間たちが催した帰還を祝う宴の途中、トキオカから“ウルトラマン”ではなく“人間”として何をしたいのか尋ねられますが、答えることが出来ません。
その頃、イブラを拘束している施設をライラーの面々が襲撃、イブラは逃げ出し、怪獣を呼び寄せる装置を使い、地底怪獣パゴスを呼び出します。
暴れるパゴスに対応するため、ユナやアキトと共に現場に向かったケンゴですが、トリガーに変身できない事に無力感を感じます。
その時、時空を裂き、ウルトラマンゼットが現れ、瞬く間にパゴスを倒します。
ゼットは人間の姿、ナツカワハルキ(平野宏周)に戻り、ケンゴらと久方ぶりの再会を喜び合います。
映画『劇場版ウルトラマントリガーエピソードZ』感想と評価
本作『ウルトラマントリガー エピソードZ』のテレビシリーズである「ウルトラマントリガー」は“光”と“闇”、“人”と“ウルトラマン”と言う点を強く意識して描かれていました。
それは本作でも変わらず、テレビシリーズ以上にそのテーマが深堀されているうえ、これまで主人公・ケンゴが抱えていた疑問に対して答えを見出す様子まで描いています。
そのきっかけとなり、“人間”というテーマが印象的に描かれていたのが、タツミに率いられたGUTS-SELECTがトリガーを助けに駆け付ける場面において各隊員が次々とケンゴへ想いを叫ぶ場面でした。
特にトキオカことザビルが繰り返し口にする“光”や“ウルトラマン”という言葉に対し、アキトはケンゴのことを「“光”でも“ウルトラマン”でもないただの“人間”」と評し自分たちの仲間であることを強調しています。
このセリフをきっかけに、“ウルトラマン”として生きるのか“人間”として生きるのか、答えを見つけ出せずにいたケンゴが、自身を“ウルトラマンに変身できるだけのただの人間”であるとしています。
この回答は一見、変身モノのヒーロー作品としては邪道のように感じられますが、現実において特別なことが出来るから神になれるわけではなく、人間だからこそ誰かに希望を与え、誰かと手を取り合える、そんなメッセージが込められているように感じました。
そして、ケンゴもまた、“人間”だからこそアキトたちの言葉に力をもらうことが出来たのではなかったのではないでしょうか。また、本作では“影”というテーマも内包されているようです。
本作で登場したイーヴィルトリガーは公式にも“影の巨人”と表現され、トリガーという強い光により生まれた濃く深い影の権化として描かれています。
あくまで“闇”ではなく“影”であるのは“闇”は光に照らされ消えるのに対し、“影”は光が何かを照らすときに必ず生じ、決して消すことが出来ない存在であるため、トリガーが照らした“光”により生じた“影”がザビルであり、イーヴィルトリガーであると示しているようです。
実際に、“闇の巨人”であったトリガーダークはテレビシリーズにおいて、トリガーの“光”により、邪悪さを失い、いつしか肩を並べて戦うようになりました。
しかし、“影”であるイーヴィルトリガーは、ケンゴがいくら言葉を重ねてもその邪悪さを失うことがありませんでした。
誰しもが忘れてしまうことですが、“光”あるところに人知れず“影”がある。そんなメッセージが描かれているのかもしれません。
このように深いテーマが描かれた本作ですが、特撮パートも必見です。
ウルトラシリーズおなじみの特撮セットを爆破したり、近年、クオリティが上がり続けるVFXによる視覚効果をふんだんに使った迫力ある映像もさることながら、細かな撮影技術による臨場感を出す工夫が見事です。
例えば、怪獣とウルトラマンが戦うシーンでは、それぞれの移動や、転倒で生じる振動をわずかにカメラを揺らすことで表現したり、低いアングルから見上げるようなカメラワークなど、その場にいるように感じる演出で臨場感を高め、迫力ある映像を作り出しています。
その他には、戦いの中で発生する衝撃波をCGで表現していたりしますが、同時に電線や街路樹を揺らし、よりリアルに見せる演出も見事でした。
また、本作ではセレブロに操られるウルトラマンゼットが登場しますが、特徴的な赤い左目もさることながら、どこかけだるげな所作であったり、普段とは違う荒っぽい戦い方であったり、表情がわからないスーツ姿のキャラクターを表現するスーツアクターの表現力を垣間見ることが出来ました。
そんな、ストーリーにおいても特撮面においても、非常に濃厚な本作『ウルトラマントリガー エピソードZ』は未だ進化を続ける“ウルトラマン”の一端が垣間見える作品となっています。
まとめ
1996年に放送された『ウルトラマンティガ』は、“人は誰でも光になれる”と言う名言に乗せ、誰もが誰かの希望になれるというメッセージが込められていました。
しかし、現実世界は目まぐるしく変化する情勢の中、そんなメッセージも時折、忘れてしまいそうになってしまいます。
その中で、劇中でシズマが語った「人は誰でも光になれる…。でも、一人では輝けないのかもしれないな…。」と言う言葉は現代の人々に向けた「苦しい時でも決して一人ではない」というメッセージに感じられました。
このメッセージは25年の時を経て“ティガ”の遺志を引き継ぐというコンセプトを持った『ウルトラマントリガー』が今、この時を生きる私たちに与えてくれる“光”なのかもしれません。
そして、2022年7月から新番組『ウルトラマンデッカー』の放送が開始され、新たなウルトラマン「デッカー」の姿が明らかにされました。
かつて、ウルトラマンティガからウルトラマンダイナへ“光”が引き継がれたように、今またトリガーからデッカーへその“光”が引き継がれようとしています。
トリガーが与えてくれた“光”、そして、デッカーが新たに照らす“光”に、強く生きていける希望を見出せることでしょう。