製作30周年を迎えたジョン・カーペンター監督のカルトSF映画『ゼイリブ』がデジタルリマスター版で蘇り、2018年9月29日より新宿シネマカリテにてレイトショー上映。
当時から世相を鋭く風刺した映画でしたが、格差社会が拡大し希望を持ちにくい昨今、さらに鋭い批評性を持った作品として再評価されています。
「支配層は人間ではない。そして支配している連中のことを同じ生物とは見なしていない」
そんな恐ろしい現実を突き付けてくる本作。色褪せないメッセージを持った不朽の名作を紹介します。
映画『ゼイリブ』の作品情報
【公開】
1988年(アメリカ映画)
【原題】
A Quiet Place
【脚本・監督】
ジョン・カーペンター
【キャスト】
ロディ・パイパー、メグ・フォスター、キース・デヴィッド、ジョージ・“バック”・フラワー、ピーター・ジェイソン、レイモン・サン・ジャック、ジェイソン・ロバーズⅢ世
【作品概要】
監督は『ハロウィン』『遊星からの物体X』等のホラーの巨匠ジョン・カーペンター。
主演は80年代の人気プロレスラーのロディ・パイパーが務めます。
日本では1989年に劇場初公開され、今回は30周年を記念してHDリマスター版でのリバイバル上映です。
支配階級がエイリアンで秘密裏に世界を乗っ取ろうとしている。
そんな設定が笑えない程に物事の本質を突いています。
その名作が公開から30年経った今、デジタルリマスター版として鮮やかに蘇ります。
ジョン・カーペンター監督の持つ反骨、反権威精神、社会派としての一面が如実に現れた一作です。
映画『ゼイリブ』のあらすじとネタバレ
不景気で失業者だらけのアメリカ。肉体労働者のネイダは役所に行くも仕事はないとあしらわれてしまいます。
役所の外の路上では黒人の牧師が失業者たちに熱弁をふるっていました。
「俺たちは騙されている!」
「表にはいないが俺たちを管理している奴らがいる!」
近所の工事現場になんとか雇ってもらうネイダ。
そこで働いていた黒人の男フランクと仲良くなったネイダは、彼や大勢の労働者が住むキャンプ地に連れて行ってもらいます。
フランクには妻子がいましたが非常に苦しい生活をしているらしく、ネイダとフランクは厳しい現状を愚痴り合います。
その夜、ネイダはそこにある唯一のテレビを大勢の労働者と一緒に見ていました。
突如、受信映像が乱れ、正規の放送局ではない映像が流れ始めました。ひとりの男性が現れ妙なことを語り始めます。
「我々は人工的な仮眠状態にされています。信号が発信され、彼らは抑圧的な社会を作り出しています。
彼らの目的は皆の意識をなくすことです。彼らの目的は人々を欲に目をくらませることです。
彼らは自分たちの目的のため我々を眠ったままにしている。我々は“奴隷”にされているのです」
そして画面が再び乱れ普通のTV放送に戻り、人々は何だったのかといぶかしがります。
映像が終わると同じくしてその場を立ち去ろうとする男がいました。
ネイダが不審がり後をつけていくと、その男は近くの教会に入っていきます。
そこは“自由教会”という名前で中から讃美歌が聞こえていました。
ネイダが教会に入ってみると、讃美歌は録音テープから流れており、それを隠れ蓑にして集まった人々が何かを話し合っていました。
ネイダは見つからないようにその様子を見ていましたが、壁に収納スペースがあり段ボール箱がいくつもあることに気がつきます。
教会の壁にはスプレーの殴り書きで「THEY LIVE.WE SLEEP(奴らは生きている。我々は眠っている)」と書かれていました。
その教会が気になったネイダは翌日から仕事終わりに観察を続けていました。
ある夜、教会から荷物が運び出され、次々と人が出ていき、路上で演説していた牧師も逃げ出そうとしていました。
上空には警察のヘリが飛び交い、武装した警官隊がキャンプ地を襲撃してきます。
暮らしていた労働者たちは逃げまどい、その場を立ち退く羽目になりました。
ネイダも何とか逃げ延び、翌日教会に再び行ってみますが、収納スペースの段ボールはそのままに、既にもぬけの殻になっていました。
ネイダは街の路地裏に行き、そこで段ボールを開けると中にはサングラスがぎっしりと入っていました。
ネイダはサングラスを一つだけ手に取り、残りは段ボールごと近くのゴミ箱に捨て、街を歩きながらふとそのサングラスをかけてみます。
すると世界がモノクロになったように見えました。
近くのビルにある看板を見てみると、そこには白地に太い黒文字で「従え」と書かれていました。
サングラスを取るとただのパソコンの広告看板です。
驚いて隣のビルにある旅行会社の「カリブ海へようこそ」の看板をサングラスで見ると「結婚して子供を作れ」と書いてあります。
ネイダはサングラスをかけたまま恐る恐るあたりを見回します。
街中に溢れた広告看板や標識やポスター。
そこには「買え」「眠っていろ」「何も考えるな」「消費しろ」「お上に逆らうな」などの言葉が書かれていました。
近くの書店の本をめくっても各ページに同じようなことが書いてあり、店の中に飾ってある絵までメッセージが書かれています。
そして、その書店にやってきた身なりのいい男の顔を見てネイダは驚愕します。
その男の顔はむき出しの骸骨のようで、飛び出た目玉がらんらんと光っており、明らかに地球人ではありませんでした。
店の店主はその男と普通にやり取りをしています。
男が財布から出したお札には「これはお前の神だ」と書かれていました。
ネイダが道行く人や、店の中にいる人間を見ると、普通の人間に混じってその異星人のような人間が一定数いました。
異星人たちは皆金持ち風の格好をしており、高級な店で食事や買い物をしています。
ネイダは近くの高級スーパーに入っていきます。そこにも異星人が多数おり、店内にあるテレビに映った演説をしている政治家も異星人でした。
ネイダは「そんなことだろうと思ってたぜ」と笑います。
ネイダはそのうちの金持ち婦人の格好をした1人に「あんたの顔は溶けたチーズをかけられたようだ」と語りかけます。
婦人異星人は驚いたような顔をしますが、着けていた腕時計に向かって「気づいた人間がいるわ」と言います。
ほかの異星人も一斉に腕時計に向かってネイダの特徴を喋っていました。
ネイダは怖くなり店の外に出ますが、そこに警官の2人組がやってきます。
その2人も異星人でした。
ネイダは逮捕されそうになりますが、格闘の末に警官の銃を奪い2人とも射殺します。
ネイダはパトカーの中にあったショットガンをとって、近くの銀行に入っていき、沢山の異星人に向かって発砲を繰り返します。
1人の異星人が撃たれそうになった瞬間、腕時計を操作してその場から一瞬で姿を消してしまいました。
ネイダは路地裏に逃げ込みます。
上空から明らかに地球のものではない偵察装置のような機械が飛んできます。
ネイダはそれを銃で打ち落とすと近くのビルの駐車場に入りました。
彼はたまたま車を出そうとしていたホリーという名の女性を銃で脅し、そのまま発進させます。
なんとか警官にも見つからずその場を脱出したネイダは車を彼女の家に向かわせます。
サングラスを長時間かけると疲労が生じるようで、ネイダはホリーの自宅でサングラスをはずして一息つきました。
ネイダは世界が大変なんだとホリーにサングラスをかけさせようとしますが、彼女はやんわり拒否します。
ホリーに職業を聞くとTV局員と答えます。
ネイダは電波ジャックした男の話を思い出し、「そうだ連中はTVから変な電波を出しているんだ!」と立ち上がって窓際にあるTVをつけようとします。
しかしホリーはネイダが背を見せた瞬間に空き瓶で彼の後頭部を殴り、窓を突き破って転落させました。
家の外の坂を転げ落ちるネイダ。
ホリーはどこかに電話をして「私は無事ですが逃げられました」と伝えます。
ネイダはふらふらになりながらも歩いて移動し、た路地裏に戻って別のサングラスをいくつか回収し、フランクのいる工事現場にやってきました。
フランクはネイダに気がつくと他の作業員にばれないように路地裏に連れて行きます。
ネイダが人を大勢殺して大騒ぎになっていることを教えた後、彼は見逃してやるから失せろと言いました。
しかしネイダはフランクに真実が見えるからサングラスをかけろと強要します。
フランクは近寄ってきたネイダにパンチを食らわせました。
ネイダも殴り返し、2人は5分以上に渡って取っ組み合います。
最終的にネイダはフランクをねじ伏せ、無理やりサングラスをかけさせて街の様子を見せます。
サングラスを通して広告や街にいる異星人たちを見て、フランクもすべてを察しました。