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Entry 2017/07/04
Update

オクジャ感想とあらすじネタバレ!ラスト結末考察も【Netflix映画】

  • Writer :
  • 馬渕一平

第70回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作品に選ばれ、ネット公開と劇場公開の大論争を巻き起こしたNETFLIX配信の話題作!

韓国の名匠ポン・ジュノ監督による『オクジャ/okja』をご紹介します。

以下、あらすじやネタバレが含まれる記事となりますので、まずは『オクジャ/okja』映画作品情報をどうぞ!

1.『オクジャ/okja』作品情報

【公開】
2017年(韓国・アメリカ合作映画)

【原題】
Okja

【監督】
ポン・ジュノ

【キャスト】
ティルダ・スウィントン、ポール・ダノ、アン・ソヒョン、ピョン・ヒボン、スティーブン・ユァン、リリー・コリンズ、ユン・ジェムン、シャーリー・ヘンダーソン、ダニエル・ヘンシュオール、デボン・ボスティック、チェ・ウシク、ジャンカルロ・エスポジート、ジェイク・ギレンホール

【作品概要】
共に成長してきた心優しい巨大生物と一人の少女。田舎で平和に暮らしていた彼らが、現代社会の科学倫理と動物愛護主義、企業欲の醜い争いの渦に巻き込まれていく。

2.『オクジャ/okja』あらすじとネタバレ


(C)Netflix. All Rights Reserved.
アメリカの巨大企業ミランド社のCEOであるルーシーは、チリで見つけた「餌も排泄物も少なく、環境に良く、味もとても美味しい豚」スーパーピッグの繁殖に成功し、その26匹を世界中の畜産家に預け、10年後に最も優秀なスーパーピッグを決めるコンテストを開くことを宣言しました。

10年後――。
韓国の山奥でオクジャと名付けられたスーパーピッグと共に暮らす少女・ミジャがいました。両親を早くに亡くしたミジャにとっての家族は面倒を見てくれる祖父、そしてお互いを信頼し合っているオクジャだけでした。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『オクジャ/okja』ネタバレ・結末の記載がございます。『オクジャ/okja』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
そんな暮らしの中、叔父でありミランド社の社員であるムンドがコンテストの審査員であるウィルコックス博士と共にやってきました。オクジャを一目目にしただけでその美しさの虜になった博士は、すぐにオクジャの優勝を告げました。

祖父に連れられ両親の墓参りに来たミジャは、オクジャがアメリカに連れていかれてしまうことを知りました。

祖父はお金でオクジャのことを買おうとしましたが、ミランド社に断られたため、そのお金を純金でできた豚の置物に変えていました。

それは、こんな山奥で豚と共に暮らすミジャを心配する祖父の想いからでした。

しかし、家族であるオクジャが食料になってしまう事実に納得ができないミジャは制止しようとする祖父を振り払い、オクジャが連れて行かれたソウルに向かいます。

ソウルにあるミランド社に着いたミジャは受付が取り合ってくれないため、強化ガラスに体当たりをします。その衝撃によってガラスは粉々に砕け散り、ミジャはオクジャを探して社内を駆け出します。

すると、ちょうど窓の外でオクジャが無理やりトラックに入れられている姿を目にしました。

なんとか追っ手を振り払い、外に出たミジャはオクジャの乗っているトラックの後を追いかけ全速力で走り出し、減速したトラックの上に飛び乗ります。

そこに、走るトラックの横を併走する怪しいトラックの姿が。そのトラックの扉が開き、これまた怪しげな集団が車を止めるようにと指示してきます。

体当りして無理やり車を止めさせると、その怪しげな集団は武器を手にオクジャを自分たちのトラックに移そうとします。暴れるオクジャに手を焼く集団の前に、ミジャが姿を表します。

オクジャはミジャを乗せてそのまま街へと駆け出しました。ミランド社のトラック運転手である若者は、追えというムンドの命令を無視し、会社を辞めることを決意していました。

大混乱に陥る街の中。オクジャとミジャは地下のショッピングモールへと突入していきます。

転倒して怪我をしたオクジャを捕らえようとミランド社の社員がやってきますが、先程の怪しげな集団が助けにやってきました。

彼らの助けのおかげでオクジャをトラックに乗せて逃げ出すことに成功しました。

走るトラックの中、彼らは顔を隠していたマスクを外し、その正体を明かしました。

リーダーであるジェイが言うには彼らは「ALF(動物解放戦線)」という動物愛護団体で、人も動物も決して傷つけないことを信条に40年もの長きに渡って動物を虐待から救ってきていました。

ジェイが言うには、オクジャの母豚はアリゾナ生まれで現在はチリにいるというのも真っ赤な嘘。スーパーピッグの実体は遺伝子組み換えによって作られたものでした。

遺伝子組み換え食品は売れないため、ミランド社はその事実を隠していました。ジェイたちALFの目的は、オクジャを利用してミランド社の悪事を世間に公表することでした。

計画は、ブラックボックスと呼ばれる耳につけて体調管理をする装置にそっくりのカメラをオクジャの耳に仕込み、その映像を隠し撮りしようというものでした。

しかし、そのためには一度わざとオクジャをミランド社の手に渡さなければなりません。

ジェイはミジャの許可なくその計画を進めることは出来ないため、韓国語と英語の両方を理解するケイに通訳を頼みます。

ミジャの答えは「オクジャを連れて故郷に帰りたい」というものでしたが、ケイは自分たちの計画を優先し、ミジャが計画に賛同していくれていると嘘の通訳をジェイに伝えます。

その回答に喜んだジェイたちはミジャとオクジャをトラックに残し、川へと飛び込んでいきました。

残されたオクジャはミランド社の手に渡り、ミジャは広告塔として利用されようとしていました。

舞台はアメリカに移り、ニュージャージーの地下研究所に連れてこられたオクジャはウィルコックス博士の手によって、無理やり雄のスーパーピッグと交尾をさせられます。

その姿を映像で見ていたジェイたちはあまりの残虐さに言葉をなくします。

しかし、計画に同意してくれたミジャのためにも最後までやり遂げようと誓います。

ケイが本当は同意してくれたわけではないとふいに言葉をもらしました。メンバーが困惑する中、リーダーであるジェイは組織の信念を曲げたケイを殴ります。「翻訳は尊い」と語り、ケイの永久追放を宣言しました。

一方、動物を愛しているから学者になったはずのウィルコックス博士は自らの現状を嘆きながらも、オクジャの各部位から試食用の肉を摂取していました。

ついに「スーパーピッグコンテスト」が開催されます。ミジャは無理やりドレスアップさせられ、自室に戻ります。

そこに変装したジェイがいました。ジェイは英語と韓国語が書かれた紙を手に、今回の計画の一部始終をミジャに伝えます。

コンテストの開催を待つルーシーの元に秘書のフランクが花束を手に訪れます。

しかし、その花はフランクではなくルーシーの姉であり前CEOでもあるナンシーが選んだものでした。

ナンシーがニューヨークに来ていることを知ったルーシーは動揺し、嫌な思い出である父のことを思い出していました。

コンテストは無事スタートし、いよいよミジャとオクジャの対面の瞬間が訪れました。その瞬間を見計らってジェイが指示を出すと、画面に虐待の一部始終が流れ出しました。

パニックに陥る群衆の中から、マスクを被ったALFの他のメンバーたちが出てきました。興奮するオクジャの耳元でミジャが何かを囁くと、オクジャは正気を取り戻しました。

そこへブラック・チョークと呼ばれる武装集団が事態の収拾に駆け付けました。

ALFのメンバーが次々と拘束される中、オクジャを救い出そうとなんとか奮闘しますが、ついにはジェイも捕まってしまいました。

その後、一台のトラックが逆走して突っ込んできました。そのトラックを運転するのは追放されたはずのケイでした。

10年かけた計画が全て失敗に終わり失望するルーシーの元にナンシーがやってきました。後始末は請け負うことをルーシーに伝え、ナンシーが動き出しました。

ケイの知り合いの治療を受けながら、ジェイはミジャと共に連れ去られたオクジャの救出に向かいます。

ニュージャージーの地下施設に運び込まれたオクジャは、工場内で殺され精肉にされようとしていました。

オクジャに向けて銃を構える工場職員にミジャは、まだ小さかった頃のオクジャとの2ショット写真を見せます。

一瞬躊躇する工場職員、そこにブラック・チョークを連れたナンシーたちがやってきました。さっさと殺せと言うナンシーにミジャは交渉を持ちかけます。

それは、祖父からもらった純金の豚と引き換えにオクジャを購入するというものでした。

豚が正真正銘の純金であることがわかったナンシーは、取引成立を宣言し、オクジャをミジャに引き渡しました。

オクジャを連れ工場を後にするミジャは、他のスーパーピッグたちを救ってあげられないことに心を痛めていました。その中でまだ小さな子豚が網の外に押し出されました。

その子豚をブラック・チョークにバレないようにオクジャの耳に隠すと、残されたスーパーピッグたちはみな一斉に大きな声で鳴き、ミジャたちを見送りました。

ミジャとオクジャは子豚と共に故郷の韓国に戻ってきました。そして、以前のようにまた祖父、ミジャ、オクジャ、新しく増えた子豚の4人で穏やかな生活を送るのでした。

釈放されたジェイをケイが迎えにやってきます。ジェイはかつてのメンバーと共にバスに乗り、新メンバーとしてあの元ミランド社のトラック運転手も加わりました。

ミランド社を再び狙う彼らの新たな計画が始まります。

3.『オクジャ/okja』の感想と評価

(C)Netflix. All Rights Reserved.
70年目を迎えた今年のカンヌで話題をさらったのは、劇場未公開の作品でした。

動画配信サービスの大手であるNetflixが巨額の製作金を投じて作ったこの『オクジャ』です。

Netflix制作としてはもう1本ノア・バームバック監督の『The Meyerowitz Stories(New and Selected)』(原題)が入っていましたが、フランス国内で劇場公開予定のない作品のコンペティション部門出品に疑問の声があがりました。

審査委員長であるペドロ・アルモドバルは「個人的には、映画館で公開されない映画にはどんな賞もあげたくない。映画は大きなスクリーンで観るべきもの」と発言し、一大論争が勃発。後にこの発言を撤回し謝罪したようですが。

結果として来年以降はコンペティション部門に出品されるにはフランス国内の劇場での公開が必須項目となりました。

さらに、その騒動は韓国本土にも飛び火し、業界の映画館チェーン大手3社が、Netflix側の公開日同日配信のやり方に反発。

『オクジャ』はシネコンから閉め出された結果、監督の母国である韓国においても約120スクリーンのみの公開となりました。

ハリウッド大作が約800~1,000スクリーンで公開されるのと比べるとその規模の差がよくわかるかと思います。国を代表する映画監督の最新作と考えれば、冷遇されていることは否めません。

ここで本題とは逸れますが、韓国の現在の興業システムについてお話しします。

韓国の映画館は前述の大手映画館チェーン3社で国内の90%以上のスクリーンを保持しています。つまり日本以上にほとんどシネコン化しているということです。

そして、例えばそのシネコン10スクリーンがあればその内の5スクリーン程はハリウッド大作が占拠しているのが現状です。

つまり同じ作品がスクリーンを変えて色々な時間帯でかかっているわけです。

ハリウッド大作を観るだけなら申し分ない環境かもしれませんが、製作費の少ない小規模作品を観る機会が激減します。

韓国人の友人もこの状態を嘆いていました。しかし、それでもなお毎年興行収入ランキングの上位をほとんど自国の映画が占めるのが、韓国映画業界のパワフルさを表していますが。

内容以上に周りの騒動に注目が集まってしまいましたが、映画ファンとしてはあのポン・ジュノの最新作ですよ。期待しない訳にはいきません。

ポン・ジュノは『殺人の追憶』や『グエムル-漢江の怪物-』などパワフルかつ思わず困惑してしまうようなシーンにも溢れた傑作を連発している韓国の奇才です。

個人的に「母なる証明」は衝撃的過ぎて思わず笑いましたが、その才能は海外からも評価され、ハリウッドで『スノーピアサー』を監督。

そして今回の『オクジャ』へと繋がるわけです。

今回のお話は食肉の是非を問う社会的なメッセージが詰まっているので、きちんと撮ればものすごく格式高いものになり得るはずです。

食べなければ生きていくことのできない人間が永遠に悩み続けなければいけない一大テーマ。

しかし、監督は、見た目はカバにしか見えないスーパーピッグと少女のトトロ的な交流に重点を置いて描いていきます。

そして、ジェイク・ギレンホールやティルダ・スウィントンなどのスターに最高に気持ち悪い役(褒めてます)をやらせています。

ギレンホールなんてまさしくジム・キャリー的なはじけぶりで、あの声の出し方と足のクネクネは本当に必見です。

今作は決してメッセージだけがたつことはなく、しっかりとドラマの部分とアクションの面白さでグイグイと引き込んでいきます。

素晴らしいポイントは山程ですが、例えば役者の自然な動かし方。山を登ってきた博士が焼酎のボトルを口にしたところで自然とオクジャに目がいく流れ。

ソウルに向かうミジャが貯金箱を叩きつけ、自然と祖父が懇願する姿勢になる流れ。冒頭の部分だけでもうまいなと思えるシーンばかりです。

その後も、ミジャが強化ガラスに飛び込んでからまさに映画自体が走り出していく一連のシーン。

翻訳を巡るもうひとつのメッセージ。これに関しては勝手な解釈ですが、翻訳を間違えた(意図的ではありますが)ために悲惨な出来事が起こってしまいます。

つまり、相手の気持ちになって考えられない勝手な解釈はダメだよと言うこと。

加えて、映像表現で世界中の人にメッセージを伝えることを可能にする映画という文化の持つ素晴らしさにも触れている気がします。

ミジャがオクジャの耳元で囁く言葉が翻訳されないのも、言葉を超えた信頼関係を演出していて非常に感動的です。

しかし、他国の人を色眼鏡で見てしまう部分は私自身も反省しなければならないところですが…。

ドラマの描き込みはさすがの一言。各キャラそれぞれに間違いなくドラマがあり、それが物語に厚みをもたらしています。

例えば、叔父のムンド。彼のあの一言で奥さんとの日常生活が色々と立ち上がってきます。例えば、ウィルコックス博士。これもあの一言があるおかげでまた違って見えるわけです(ここでギレンホールが作る表情は素晴らしい)。

例えば、ルーシーとナンシーの姉妹のやり取り。実体の見えない父を含めた奇妙な関係性がよく見えてきます。それに、あのトラック運転手もアクセントとしてよく効いています。

4.まとめ

贅沢を言うならば、名匠ポン・ジュノ監督による『オクジャ/okja』は、やはり映画館のスクリーンで観たい。CG表現や映像の美しさを堪能したい。

しかし、どんな形であれ観られるわけですから。映画ファンとしてその幸せを享受しないのはもったいない話です。

今まで以上にスクリーンにかかるありがたみを感じながら、また新作映画をきちんと劇場で観ていきたい。そんな気持ちにもさせてくれる快作でした。

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