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Entry 2019/04/22
Update

下野紘映画『クロノス・ジョウンターの伝説』ネタバレ感想とあらすじ。永劫を越える純愛を体現

  • Writer :
  • 河合のび

2019年4月19日(金)より公開の映画『クロノス・ジョウンターの伝説』

愛する人を救うため、重大な欠陥を孕んでいることを知りながらもタイムマシン《クロノス・ジョウンター》によって、過去と未来を行き来する男の愛を描いたSFタイムトラベル映画『クロノス・ジョウンターの伝説』。

人気声優である下野紘の実写初主演作となったことで話題になり、2019年4月20日(土)、監督の蜂須賀健太郎と共演した井桁弘恵ともに彼が登壇したシネ・リーブル池袋での舞台挨拶は2回ともに満席という大盛況を収めました。

映画『クロノス・ジョウンターの伝説』をご紹介します。

映画『クロノス・ジョウンターの伝説』の作品情報


(C)梶尾真治/徳間書店・映画「クロノス・ジョウンターの伝説」製作委員会

【公開】
2019年(日本映画)

【原作】
梶尾真治

【監督】
蜂須賀健太郎

【脚本】
太田龍馬、蜂須賀健太郎

【キャスト】
下野紘、井桁弘恵、尾崎右宗、岩戸秀年、五十嵐健人、寺浦麻貴、野間清史、さわまさし、林由莉恵、石井一輝、原口真紀、田中克憲、松本飛鳥、今井由希、松永毅、五頭岳夫、赤山健太

【作品概要】
小説『黄泉がえり』『この胸いっぱいの愛を』で知られる作家・梶尾真治の人気SF小説シリーズ『クロノス・ジョウンター』を映画化。

監督は映画、パペット・アニメーション、MVと様々な分野・ジャンルの映像制作を手がけてきた蜂須賀健太郎。

主人公を演じたのは、『進撃の巨人』『うたの☆プリンスさまっ♪』などで知られ、本作が実写映画の初主演となる人気声優の下野紘。

またヒロインを演じたのは、広瀬すずや吉岡里帆などを輩出した「ゼクシィ」11代目CMガールに起用され注目されている女優の井桁弘恵。

映画『クロノス・ジョウンターの伝説』のあらすじとネタバレ


(C)梶尾真治/徳間書店・映画「クロノス・ジョウンターの伝説」製作委員会

2058年、ある日の晩。あらゆる異端科学の産物を収蔵・展示している科幻博物館に身元不明の侵入者が現れました。

侵入者の男に対し、博物館の館長は「なぜ博物館に侵入したのか」「そして他の展示品には目もくれず、迷うことなく《クロノス・ジョウンター》の元へ行ったのはなぜか」と尋ねます。

やがて、侵入者の男・吹原和彦は事の全容を語り出しました。

1995年。住島重工の開発部門「Pフレック」に勤めていた和彦は、通勤途中で見かけた、花屋で働きながらも学業に励む女性・蕗来美子に一目惚れし、その想いを募らせていました。

一方、会社では物質を過去に送ることのできる「物質過去射出機」、通称《クロノス・ジョウンター》の開発が勧められ、ついに初の実験が行われようとしていました。

無機物であるシャーペンを10分前の過去に送ろうとする研究員たち。しかしながら、シャーペンはその場から消失してしまい、それから数十分後に再び現れました。

そのような現象が起こった原因の究明が続く中、来美子と挨拶を交わすようになっていた和彦。ある日、彼は彼女に銀製の小さなカエルのブローチを贈ります。

突然の贈り物に戸惑いつつも喜んでくれた来美子は、ブローチのお礼にと和彦を食事に誘います。和彦は彼女からの誘いを快諾しつつも、仕事のために花屋を後にしました。

会社では、生きたカエルを被験体とする《クロノス・ジョウンター》初の生体実験が行われます。カエルはシャーペン同様に消失。そして同様に、消失から数十分後に再び現れました。

時間遡行自体は成功したものの、被験体のカエルが再び現れた=過去から戻ってきた時間が「現在」ではないことに疑問を抱く研究員たち。実験が終わり、和彦が同僚の藤川と「人体実験はいつ行われるのだろうか」と話していると、建物が一瞬揺れ、遠くから響く爆発音を耳にしました。


(C)梶尾真治/徳間書店・映画「クロノス・ジョウンターの伝説」製作委員会

会社の屋上に登った和彦は、来美子が働いているはずの花屋が炎上しているのを目にしました。

不安がよぎった和彦は、タンクローリー同士が衝突し炎上した事故現場、燃え盛る花屋へと急ぎます。

現場に到着し、来美子の姿を探す和彦。しかし、彼は地面に落ちていたカエルのブローチを見つけてしまったことで全てを悟り、慟哭しました。

その時、彼は人体実験を控える《クロノス・ジョウンター》の存在を思い出し、会社に戻ると改良中だったそれへと急いで乗り込みます。

彼の無茶を制止しようとするも、「愛する者を救いたい」という強い想いに折れた藤川の協力を得て、とうとう和彦は《クロノス・ジョウンター》によって過去へ、事故が発生する前の時間へと遡行することに成功しました。

和彦は花屋で働いている来美子の元へと向かい、事故が起きる前にここから逃げるよう訴えますが、信じてもらえません。そして彼女を説得している最中に、彼は過去から元の時間へと引き戻されてしまいました。

以下、『クロノス・ジョウンターの伝説』ネタバレ・結末の記載がございます。『クロノス・ジョウンターの伝説』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)梶尾真治/徳間書店・映画「クロノス・ジョウンターの伝説」製作委員会

過去から戻ってきた和彦は藤川と再会しますが、和彦の姿に彼は激しく動揺します。なぜなら、過去に遡行した和彦が戻ってきたのは、《クロノス・ジョウンター》に乗り込んだ事故直後の時間ではなく、それから約2年後にあたる未来、1997年だったためです。

彼の時間遡行以降に行われた人体実験の失敗や、《クロノス・ジョウンター》の開発中止、そして《クロノス・ジョウンター》の重大な欠陥を、和彦は藤川から聞かされます。

「過去から戻る時、被験体は『現在』ではなく『未来』へと弾き飛ばされる」「過去に滞在できる時間は非常に短く、加えて、未来に弾き飛ばされた時間以前に遡行することはできなくなる」「そして、『過去』から『未来』へと弾き飛ばされる際、どのくらい先の『未来』に飛ばされるのかは分からない」。

それを知りながらも、彼は来美子を救うために再び《クロノス・ジョウンター》へと乗り込み、過去へと遡行します。

過去に戻り来美子と再会した和彦は、事故と彼女の死亡を報道した未来の新聞記事を見せつつ再度説得を試みますが、やがて未来へと弾き出されてしまいました。そして、彼は1997年から5年後にあたる2002年へと辿り着きました。

会社から撤去され倉庫へと運ばれてしまった《クロノス・ジョウンター》を求め、倉庫へ向かう和彦。そして、三度目の時間遡行を行いました。

動作不良による出現座標の誤差に苦しみながらも、来美子の元へと走る和彦。そして、事故現場で拾ったカエルのブローチを見せながら三たび説得を試みます。

来美子はとうとう彼の言葉を信じますが、花屋を出る前に「なぜ自分を救おうとしてくれるのか」という疑問に答えてほしいと和彦に求めました。

和彦はついに、自身の想いを彼女に告白します。やがて彼の言葉に来美子が応えた瞬間、和彦は未来へと弾き出されてしまいました。そしてその「未来」こそが、2058年だったのです。


(C)梶尾真治/徳間書店・映画「クロノス・ジョウンターの伝説」製作委員会

説明を終えた和彦は、館長に《クロノス・ジョウンター》に乗り込むことを許可してほしいと頼みます。

彼自身の予想によると、次に時間遡行した場合は6090年へと弾き出されてしまう和彦に「もう二度と会うことができないのに、それでも救う必要はあるのか」と館長は尋ねます。

和彦は、三度の時間遡行を経ても来美子が事故で亡くなるという事実が変わっていないこと、彼女は未だ花屋で自分のことを待っていること、そして彼女が同じ時間軸の世界で存在してくれているだけで幸せであることを語ると、《クロノス・ジョウンター》による四度目の時間遡行へと出かけました。

1995年。和彦に命を救われた来美子は、和彦が働いていた会社へと就職し、《クロノス・ジョウンター》の研究を続けていました。

やがて、改良を終えた《クロノス・ジョウンター》に来美子は乗り込みます。自分を救うために遙か未来へ弾き出されてしまった和彦に再会するためにです。

いつなのかも分からない、どこか。満点の星空の下で、和彦と来美子は再会を果たし、抱き合います。

映画『クロノス・ジョウンターの伝説』の感想と評価


(C)梶尾真治/徳間書店・映画「クロノス・ジョウンターの伝説」製作委員会

本作を語る上で最も欠かすことのできない見どころは、何よりも主人公を演じた声優・下野紘の熱演でしょう。

下野紘といえば、『進撃の巨人』『うたの☆プリンスさまっ♪』など数々の人気アニメに出演し、主演を務めることも多々ある実力・知名度ともにトップクラスの声優として知られていますが、本作では「俳優」としての彼の姿を観ることができます。

事故によって命を落とすという運命が待ち受ける来美子を救うため、《クロノス・ジョウンター》によって過去と未来を行き来する和彦。

「過去に滞在できる時間は非常に短く、過去に戻る度に遙か先の未来へと弾き飛ばされてしまう」という《クロノス・ジョウンター》が孕む重大な欠陥をその身で実感しながらも、彼女を救うべく必死にもがき、“時間”或いは時間を司るギリシャ神話の神“クロノス”の摂理に反抗し続ける彼の姿を、下野は全身全霊をもって演じています。

そして彼の全身全霊の演技を、観客たちはスクリーンを通して全身で目撃するからこそ、最後の時間遡行を決意し、自らに訪れる残酷な運命を覚悟する和彦の姿にも説得力を感じ取り、彼をそれまで突き動かしていた深く一途な愛を思い知らされるのです。

たとえ彼女を残酷な運命から救ったとしても、二度と彼女と再会することはできないという更なる残酷な運命が自身に待ち受けている。

繰り返し時間遡行を経験し、遡行後に弾き出されてしまう時間の長さの法則性も把握している和彦はその事実を誰よりも理解しています。

けれども、生き残った彼女は、自身と同じ時間軸の世界に生きていてくれる。存在してくれる。それだけで、「西暦6090年の世界へと独り弾き飛ばされる」という残酷な運命へと辿り着くことを、和彦は受け入れられるのです。

途方も無い時間の中で浮かび上がってくる、和彦の強く一途な愛。人によっては想像し難いであろうその愛を、下野は自身の演技によって、説得力という名のリアリティーを持った、誰もがその救いある結末に涙を流してしまう程の普遍的な愛として提示することに成功しました。

それは、声優・下野紘として積み上げてきたキャリアの結果でもあり、俳優・下野紘としての今後の活躍を期待させる結果でもあるのです。

まとめ


(C)梶尾真治/徳間書店・映画「クロノス・ジョウンターの伝説」製作委員会

「俳優」下野紘の熱演によって描かれる、永劫の時を越えてしまう程の深く一途な愛。

「俳優」としての彼を知ってから「声優」としての彼を知るか。それとも、「声優」としての彼を知ってから「俳優」としての彼を知るか

どちらを選択したとしても、本作が感動必至の作品であることだけは保証致します。

映画『クロノス・ジョウンターの伝説』、ぜひご鑑賞ください。





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