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Entry 2020/04/22
Update

『クローバーフィールドHAKAISHA』ネタバレ感想と結末までのあらすじ。主観的な撮影を用い“怪獣”を見せすぎない

  • Writer :
  • 中西翼

海外ドラマ『LOST』で話題を集めたJ・J・エイブラムス製作作品

映画『クローバーフィールド/HAKAISHA』は、2010年にバンパイア映画『モールス』や、2014年には映画史に残るSF映画の新シリーズ『猿の惑星:新世紀』など、リメーク、リブート作品で実績を積んできたマット・リーヴス監督。

今回ご紹介する『クローバーフィールド/HAKAISHA』は、劇場公開では「クローバーフィ-ルド」シリーズの第1作目にあたります。

また、2018年にマット監督自身は、本作の前日譚となる、Netflix映画『クローバーフィールド・パラドックス』では、製作総指揮を務めています。

突如、ニューヨークに怪獣が現れ、街を破壊し、逃げ惑う市民をPOV(Point Of View:主観ショット)で捉えた怪獣・パニック映画。

POVを用いたフェイクドキュメンタリーという手法により、被害の渦中にいる恋人の探索、滅び行く街を臨場感や迫力が並々ならぬものとなっております。

映画『クローバーフィールド/HAKAISHA』の作品情報


Copyright (C) 2008 Paramount Pictures. All rights reserved.

【公開】
2008年(アメリカ映画)

【原題】
Cloverfield

【監督】
マット・リーヴス

【キャスト】
マイケル・スタール=デヴィッド、マイク・ヴォーゲル、オデット・ユーストマン、リジー・キャプラン、ジェシカ・ルーカス、T・J・ミラー

【作品概要】
『猿の惑星:新世紀』の監督を手がけたマット・リーヴスが監督を務めるパニック映画。ニューヨークに現れた怪獣に逃げ惑う様子を、ホームビデオ風のPOV映像で非常に近い距離感、息が詰まるほどの臨場感の中で、愛する人のの救出を目指す物語です。

製作は『スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け』『スター・トレック イントゥ・ダークネス』などで知られるJ・J・エイブラムスです。

映画『クローバーフィールド/HAKAISHA』のあらすじとネタバレ


Copyright (C) 2008 Paramount Pictures. All rights reserved.

4月27日、ニューヨーク、ロブは恋人のベスの寝起きの姿をカメラに収めていました。ベスはネットに流すつもりかと、冗談めかします。ロブは、ベスの父が出張中なのをいいことに、宿泊していました。二人はなんとも、幸せな様子でした。

5月22日、ロブは仕事の都合で日本に行くことになりました。

送別会は盛大に行われ、ロブの兄ジェイソンや、ロブの友達ハッドは、パーティの様子をカメラに写し、送別のメッセージを集めます。

ベスは日本行きを直前まで知らされず、自分は遊びだったんだと、嘆き、恋心は少し冷めています。

ハッドは送別のメッセージをマリーナにも求めます。ハッドはマリーナのことが好きで、メッセージをマリーナに近づく口実にしました。

会場にロブが到着し、サプライズパーティに驚きを隠せないでいました。

ベスもメッセージを求められますが、日本行きを知らされなかった怒りに震えており、ロブとベスは会場の外で口論になります。

兄のジェイソンは、ロブのためにベスと仲直りをして欲しいと願い、それをロブに伝えます。ロブはベスへの愛の告白を考えます。

そんな時、突如大きな揺れが起こります。マンハッタンの様子を見に、屋上まで行くと、遠くでは爆発が起こっていました。危機を感じ、パーティを中止して非常階段で降ります。

地上に降りると、自由の女神の頭が飛んできます。

パニックに陥る人々の中、ロブとジェイソン、ジェイソンの恋人のリリーやハッドは、近くのコンビニに避難。そこにマリーナが合流します。

隙間からは、非常に巨大な生物の足のような物が見えます。ビデオは一度止まり、ロブとベスの幸福なデートが移し出されます。

一同はマンハッタンからの脱出を図り、ブルックリン橋へと向かいます。ロブはベスからの電話に気付き、ベスが自宅から身動きできなくなっていることを知ります。

脱出のため、橋は人や車で溢れかえっていました。そしてそこに、大きな尻尾のようなものが橋を崩します。ジェイソンはそこで、崩壊に巻き込まれ落命しました。

ロブは再び、ベスの様子を知ろうと電話をかけますが、充電切れのため、家電店に入ります。

テレビには、ありえないほど大きく、醜い生物がいました。尻尾は長く、奇妙な足が街を踏み荒らす、また、小さな生物を産み落とす。今回の騒動は、この怪獣によるものでした。

ロブはベスを助け出すため、怪物が暴れているまさに渦中へ行くと言い出し、ベスのアパートを目指します。

怪獣は目の前にいました。軍隊が攻撃するも、有効なダメージは与えられません。ロブ達は地下へと逃げ込みます。

なるべく安全なルートをとり、思惑通り、怪獣が歩く地下を通りぬけていきます。ロブの母がロブを心配し、電話を鳴らします。

ロブはそこで、ジェイソンが命を落としたことを告げました。

以下、『クローバーフィールド/HAKAISHA』ネタバレ・結末の記載がございます。『クローバーフィールド/HAKAISHA』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


Copyright (C) 2008 Paramount Pictures. All rights reserved.

マリーナはパニックになり、危険な場所へ向かうロブと意見が対立します。

ロブの意思は強く、ベスを助けるという選択を変えるつもりはありませんでした。

マリーナはそれでも、引き返そうと言いますが、一人で戻ることはかえって危険だと判断し、ロブについて行くことにしました。

ハッドは、恐怖で萎縮した空気を盛り上げようと、怪獣に関する話題を持ち出しますが、周りからは無視されます。

その時、大量に蠢くネズミたちが、同じ方向へと走っていきました。懐中電灯を頼りに、回りを確かめると、そこには蜘蛛の形をしたおぞましい生き物がいました。

ロブ達は一目散に逃げますが、リリーが襲われます。

マリーナはリリーのため、怪物を鉄の棒で攻撃しますが、怪物の攻撃対象はマリーナに代わり、マリーナは襲われてしまいます。

怪物をなぎ払い、別の部屋へ入り込むと扉を閉め、なんとか逃げることに成功しました。

マリーナの身体には、痛々しい傷跡が残されていましたが、不思議なことに、出血はそこまでたいしたものではありませんでした。

ハッドはマリーナに応急処置を施します。マリーナはハッドに感謝をし、一同は地上へと顔を出します。

マリーナは突然頭がくらみ、軍隊に緊急治療室へと運ばれました。

そこには凄惨な被害を受けた人たちが何人もいました。ロブは軍隊にこれ以上先に進むことを止めるよう、忠告されます。

負傷したマリーナは一人、別のテントへと連れられます。テントの白い幕の奥で、マリーナの身体は膨れ上がり、やがて亡くなります。

ロブはそれでも、ベスを助けることを諦めませんでした。そんなロブに、軍隊の一人が、マンハッタン全土を爆破するつもりであることを教えます。

最後の救出の便は朝6時、ロブ達はそれに間に合うよう、ベスの元へと向かいます。

ベスのアパートは既に半壊の状態でした。ベスの部屋は39階と高く、エレベーターが動くわけもないため、階段で昇っていきます。

ハッドはその途中、怪獣についての持論を展開します。政府が作ったかもしれない、そんな妄想に似た話で、ハッドは自我を保ちます。

そしてようやく、ベスの部屋へとたどり着きました。ベスは瓦礫の中、金属の細い棒が肩に刺さって抜けない状態でした。

三人はなんとか、ベスに刺さった金属を抜き、窓から見える怪獣を避けて逃げます。

階段にはマリーナを殺した蜘蛛の怪物がおり、ロブが斧を手に取り撃退します。朝6時には間に合い、リリーが先にヘリコプターに乗り込みます。

ヘリコプターは定員いっぱいになり、ベスとロブ、そしてハッドは次のヘリコプターに乗ります。しかし、そのヘリコプターは怪獣によって墜落させられてしまうのでした。

気絶から目が覚めます。爆弾の投下は刻一刻と迫っていました。

怪獣は未だに活動を続けており、ハッドがカメラを取るために移動すると、そこに怪獣が現れ、ハッドは殺されます。ロブはカメラを手にし、怪獣から逃げます。

しかし、爆弾の投下は間近でした。ロブはカメラに向かって、今日起こった出来事を説明します。そして、ベスも助けを待つと希望を言い残し、二人は爆発に飲み込まれました。

ロブとベスのデートの映像が映されます。「良い一日だった」彼らはカメラの中で笑い合います。

映画『クローバーフィールド/HAKAISHA』の感想と評価


Copyright (C) 2008 Paramount Pictures. All rights reserved.

臨場感を生み出した撮影

本作品『クローバーフィールド/HAKAISHA』は、POVによるフェイクドキュメンタリーという演出も相まって、怪獣が街を破壊していく様子を、ミクロで主観的に描いた映像は、鬼気迫る迫力があり、鑑賞後もしばらくは緊張感が冷めません。

マット・リーヴス監督の演出による、劇中で途中で挟む“ロブとベスの幸せな日常の映像”も、二人を引き裂いた悲惨な状況をギャップにより、より一層引き立たせています

また、著名なキャストを使わずに、それまで露出が少なかった俳優を起用し、撮影を行ったことも、フィクションであることを忘れさせ没入させてくれます。

怪獣といえば象徴としての“メタファー(隠喩)”


Copyright (C) 2008 Paramount Pictures. All rights reserved.

世界的な人気を誇る怪獣王ゴジラが原水爆のメタファーであることは、言わずと知れた事実です。

では、『クローバーフィールド/HAKAISHA』に現れる怪獣は、どのようなメタファーなのでしょうか。

劇中、ベスとロブは離れています。この怪獣は人と人の絆を分断させたのです。

2000年に入って人々をなんとなく包み込んでいた恐怖や不安。ベスがロブを勝手に突き放したように、自分の想像で他人を決めつけるような自己保身が、人々を分断させたことを暗示しているのです。

恐怖する個人を切り抜いたことにより、物語の全体像や設定は見えにくくなっています。

それでも怪獣が恐ろしいのは、逆に映像に現れすぎないことで、見せないことで増幅させています。

1954年に劇場公開された初代の恐ろしいゴジラは、「ゴジラ」シリーズが進むごとに恐ろしさなど薄れていきました。

それはゴジラ自身の人気も相まって、カメラに写りすぎたことにより、観客とフレンドリーに慣れてしまったからです。

その点、本作のように姿を見せずに恐怖心を煽り続ける怪獣には決して慣れず、強大な怪獣を前に我々は、恐れるしかありません

まとめ


Copyright (C) 2008 Paramount Pictures. All rights reserved.

怪獣が巣くう世界を描いた「クローバーフィールド」シリーズの劇場公開の第1作である本作『『クローバーフィールド/HAKAISHA』。

ロブがベスの救出を目指すといったシンプルなストーリーながら、多くの観客を虜にしました。

怪獣はなぜ現れたのか、それはシリーズが進むと分かっていくのですが、この時点ではあまりにヒントが少なく、頭を抱える人も少なくはありませんでした。

それでも本作品をシリーズ化するほどの人気になったのは、POVで怪獣を描いたという手法の成功です。怪獣を見せすぎず、人にスポットライトを当てた“怪獣映画”という、異例の演出が斬新かつ素晴らしいと言っても過言ではありません。

そして、自由の女神の顔が何者かによって吹き飛ばされる。そんなショッキングな映像も相まって、『クローバーフィールド/HAKAISHA』は多くの観客を痺れるほど緊迫する、怪獣と超至近距離の世界へと誘い、熱狂させたのです。



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