時代を席巻した伝説のコメディ映画が、まさかの復活!
「Excellent!」と叫んで2人が登場した『ビルとテッドの大冒険』。よりハチャメチャな展開を見せた『ビルとテッドの地獄旅行』。
MTVが世界を席巻した時代を代表するコンビが、ついに帰ってきました。
アレックス・ウィンター演じる”ビル”と、キアヌ・リーブス演じる”テッド”が、ウィリアム・サドラー演じる”死神”と29年ぶりに再結集を遂げた『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』
今も愛されるシリーズの魅力を解説しつつ、最新作を紹介します。
CONTENTS
映画『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』の作品情報
【公開】
2020年(アメリカ映画)
【原題】
Bill & Ted Face the Music
【監督】
ディーン・パリソット
【脚本】
クリス・マシソン、エド・ソロモン
【キャスト】
キアヌ・リーブス、アレックス・ウィンター、サマラ・ウィービング、ブリジット・ランディ=ペイン、ウィリアム・サドラー
【作品概要】
自分たちの音楽が世界を救うと信じ、活動を続けるビルとテッド。あの日から30年の時が過ぎ、今や人気も凋落。それでも世界を救おうと立ち上がる2人を描く、音楽SFコメディ映画第3弾。
前2作と同じくクリス・マシソンとエド・ソロモンが手掛けた脚本を、『ギャラクシー・クエスト』(1999)や『REDリターンズ』(2013)のディーン・パリソットが監督。キアヌ・リーブス、アレックス・ウィンター、ウィリアム・サドラーも時を越え再集結。
『スリー・ビルボード』(2017)と『ガンズ・アキンボ』(2019)のサマラ・ウィービング、『スキャンダル』(2019)に出演しドラマ『ユニークライフ』(2017~)で評価されたブリジット・ランディ=ペインが、ビルとテッドの娘として登場します。
映画『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』のあらすじとネタバレ
ビルの娘ティア・プレストン、愛称T(サマラ・ウィービング)とテッドの娘ビリー・ローガン、愛称B(ブリジット・ランディ=ペイン)が、過去の父親たちの映像を紹介します。
高校時代に”ワイルド・スタリオンズ”(綴りは”Wyld Stallyns”)を結成したビルとテッドは、未来人からの助けで時を越え、地獄を旅してロックバトルを制し、大スターとなりました。
未来人の話では、彼らの音楽が世界に愛と平和と調和をもたらします。しかし”ワイルド・スタリオンズ”の人気は低迷、メンバーの脱退が追い打ちをかけます。
音楽も作れなくなるビルとテッド。あるべき未来が崩壊した結果、時空はゆがみ始めました。
その結果歴史上の偉人たちが、そして現代のラッパー、キッド・カディ(本人)が別の時代の別の場所へ飛ばされます。このままでは世界が崩壊しかねません。
そんな事を知らず、西暦2020年のカリフォルニア州サン・ディマスの、結婚式会場でスピーチするビル・プレストン(アレックス・ウィンター)とテッド・ローガン(キアヌ・リーブス)。
今日はビルの元義母で、ビルの父と離婚後、テッドの父と結婚したテッドの義母ミッシーが、今度はテッドの父と離婚し、テッドの弟と結婚する日です。
スピーチで複雑な家族関係を説明したビルとテッドは、余興で”ワイルド・スタリオンズ”の新曲を披露しました。
テルミンやバクパイプなど様々な楽器を使う音楽は理解不能で、彼らの迷走ぶりは明らかです。
式が終わると警官であるテッドの父は、息子に音楽を断念し真面目に働くよう説得します。彼は息子たちのタイムトラベルも地獄旅行も信じていません。
それでもティアとビリーは父たちの音楽と、それが世界を救う運命を信じていました。
テッドの父から見れば、親譲りのお調子者で働きもせず、音楽活動中で実家暮らしのTとBも頭痛の種です。
問題の多い家庭は、中世イギリスから来て結婚したビルの妻ジョアンナと、テッドの妻エリザベスが支えていました。
将来を危ぶむ妻たちは、夫婦でカウンセリングを受けることにします。ところが非常識にも、2組仲良く一緒に予約するビルとテッド。
ビルとテッドがカウンセラーが呆れるほどの頭の悪さと、伴侶以上に仲の良い関係を見せつけます。
問題の多い2人を見て、カウンセラーは妻たちとだけで話したいと、ビルとテッドを帰らせました。
自宅に帰ると、ティアとビリーはガレージで音楽を作っていました。父たちの音楽を理解し、結婚式の演奏をホメるTとB。
とはいえ妻たちを苦しめ成功に程遠い現状に、音楽に捧げた年月は無駄だったかも、と話すテッド。
ビルも未来を救う運命など無いのか、と口にします。この歳までお気楽に過ごしていた2人も、ようやく現実に向き合います。
そこに最新型のタイムマシンが出現します。中から現れたのは、ビルとテッドを導いた未来人ルーファスの娘、ケリーでした。
ケリーに求められ、タイムマシンで未来に向かう2人。目撃したティアとビリーは、父たちの話は嘘でなかった、そして2人はトラブルに巻き込まれたと確信します。
複雑に交差した時空を旅して、2720年のサン・ディマスに到着するビルとテッド。
そこには旧式の電話ボックス型タイムマシンと、そこから語り掛けるルーファスのホログラム映像がありました。
未来世界の指導者たちに挨拶するビルとテッド。しかし彼らは前回ほど歓迎されません。
ケリーの母でもある、未来の偉大なリーダーは”ワイルド・スタリオンズ”の凋落を指摘しました。
彼らが世界を救う音楽を生まなかった事で、時空の歪みは広がり、このままでは世界が消滅します。
今から曲を作り、元の時代のPM7時17分にMP46地点で演奏する、それしか世界を救う道はないと告げる偉大なリーダー。
それは現時点から77分25秒後を意味していました。偉大なリーダーは2人に用意したエレキギターを選ばせます。
指導者たちは姿を消し、ケリーに詳細を聞くビルとテッド。彼女は2人にタイムトラベル中の時間経過を教える、ルーファスの形見の時計を渡します。
それにはルーファスの口ぐせ、一見無意味なことでも、結末が訪れるまでその価値は分からない、との言葉が刻まれていました。
道具があっても、今の自分たちに音楽は作れません。ならば世界を救う曲を完成させた、未来の自分から曲を頂こうと思いつく2人。
盗作になるとの疑問に、自分から頂くならパクリじゃないと納得し、曲を完成させたであろう2年後に、お馴染み電話ボックス型タイムマシンで向かいます。
2022年のサン・ディマスに到着したビルとテッド。未来の自分たちは曲を完成させるどころか落ちぶれ、2人を見ると逃げ出す始末。
未来の2人から、お前らのお陰で妻に逃げられ家族はバラバラと教えられ、余計な事はするなと言われます。
一方2720年の世界では、娘ケリーの説得にも係わらず、偉大なリーダーは世界を救うもう1つの方法を実行します。
それは過去に殺人ロボットを送り、ビルとテッドが曲を完成させなかった場合、時空を乱す要因の2人を殺害することでした。
ロボットはいずれ2020年の自宅に現れ、ビルとテッドを殺害すると考え、タイムマシンで向かうケリー。
2020年の自宅に現れたケリーを目撃したティアとビリー。2人はケリーが父たちを待つ間、タイムマシンを貸して欲しいと頼みます。
父の力になりたいと考えたTとBは、”ワイルド・スタリオンズ”の新曲を演奏する最強をミュージシャンを、過去から集めようと動きます。
ところが2020年に戻ったビルとテッドは、カウンセリング中の妻たちの元に向かいます。
目撃し聞いた知識、未来の自分たちはお前たちと別れ落ちぶれた。お前たちは未来の自分たちとタイムトラベルして、ビルとテッドの悲惨な将来を知る。
そして離婚するから、未来の自分とタイムトラベルしないでくれ、と頼むビルとテッド。
そんな話を聞かされて、妻が納得する訳がありません。これが2022年の自分たちが言った余計な事かと、やっと納得しました。
事態を収拾するには、今度こそ曲を完成させた未来の自分に会おうと急ぐ2人。入れ違いに老いた未来の妻がタイムマシンで現れ、現在の妻を連れ旅立ったとは知りません。
ケリーのタイムマシンで1967年のロンドンに向かい、ジミ・ヘンドリックスに会うティアとビリー。父のバンドに参加し世界を救えと頼んでも、承知する訳がありません。
ならばバンドに、ジミヘンが入りたがるメンバーを加えようと考えるTとB。2人は1922年のニューオーリンズに向かいます。
そこでルイ・アームストロングに、スマホで撮影したジミヘンの動画を見せるTとB。彼は興味を持ちました。
一方5年後の自分なら曲を完成させているはずと、2025年のサン・ディマスに現れたビルとテッド。
この時代の自分は成功したらしく、豪邸に住んでいました。趣味は悪いが話の判る2025年の自分から、完成させた曲のCDを渡されます。
目的は果たしたと引き上げる2人の前に、ミュージシャンのデイヴ・グロール(本人)が現れます。ここは彼の邸宅でした。
慌てた彼らは未来の自分の元に戻ります。5年後の自分たちは過去から現れるビルとテッドを、この場所で待ち伏せていたのです。
曲の生み出せなかった彼らは、過去の自分にデイヴ・グロールが生んだ曲を渡し、成功させ楽をしようと企んでいました。
未来の自分から逃げようとしても、過去の自分の行動は覚えているはず。ならば覚えられない方法で逃げれば良い、と考えたビルとテッド。
2人はゴミ箱を被ってデタラメに逃げます。その姿を目撃したのは、駆け付けた警官のテッドの父と弟でした。
今度はもっと先の未来の自分に会おうと考えた2人の前に、未来からの刺客、殺人ロボットが現れます。
ビルとテッドはタイムトラベルで逃れますが、ロボットの放ったレーザー光線はテッドの父と警察車両を破壊しました。
無関係な者の殺害に動揺するロボット。テッドの父と警察車両(?)の魂を、地獄に誘う死神(ウィリアム・サドラー)。
ティアとビリーは1967年のロンドンに戻り、若いルイをジミヘンと会わせます。信じない彼もルイの演奏を聞き承諾、2人はバンドのメンバーになりました。
次は1782年のウイーンに現れ、モーツァルトをスカウトするTとB。彼はジミヘンの演奏に誘われバンドに加わります。
一方懲りないビルとテッドは、2030年の自分たちに会おうとしました。現れた場所はなんと刑務所です。
囚人仲間にラップを披露する、筋肉モリモリの2030年のビルとテッド。こんな歌が世界を救うわけありません。
しかも過去のお前らがだらしないから、俺たちは刑務所送りだと因縁をつける始末。そこに現れた殺人ロボット。
今度こそ2020年のビルとテッドを始末しようとしますが、過去の自分を殺され消滅しては困ると、2030年の2人が邪魔をします。
囚人仲間も加わりロボットはボコボコにされます。その隙に逃げたビルとテッドの前に、タイムマシンで妻たちが現れます。
この時代の夫が囚人と知り、ますます将来に絶望した妻たちを送り出し、ビルとテッドは更なる未来の自分に会いに行きます。
ティアとビリーは紀元前2600年の中国で、音律を定めた伝説上の人物、伶倫=リンルンをスカウト。
どう選んだのか紀元前11500年の北アフリカで、太鼓を鳴らしていたグロムを仲間に加えます。
TとBはバンドのメンバーを引き連れ、ケリーが待つ2020年の自宅に戻ります。そこに時空の乱れからキッド・カディが現れました。
時空の乱れと映画の設定を解説してくれる、なぜか量子力学にも詳しいラッパー、キッド・カディもバンドに加えます。
こうしてビルとテッドの世界を救う音楽を演奏する、最強メンバーがそろいました。自宅に入ろうとTとBがカレージを開けると、待ち伏せする殺人ロボットがいました。
目標のビルとテッドと間違えティアとビリーにケリー、偉大な音楽家たちを殺すロボット。
事態に未来の偉大なリーダーは呆れ、たび重なる失敗にロボットは動揺します。殺された一同は残らず地獄堕ちです。
これが父たちが言ってた地獄かと、妙に納得したTとB。果たしてこんな状態で世界は救われるのでしょうか。
映画『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』の感想と評価
奇跡の映画化に多くのメンバーが結集
『ビルとテッド』シリーズの主要メンバーの集結は早くから発表されていましたが、テッドの父役ハル・ランドン・Jr、ミッシー役のエイミー・ストックも3作全てに出演。
シリーズ全ての脚本を担当したクリス・マシソンとエド・ソロモンは、今回地獄の悪魔として画面に登場。まさに同窓会のノリで楽しめる作品です。
前2作は90年前後の、MTVカルチャー全盛の時代を代表する人気映画でした。
その続編である本作に、多くの音楽アーティストが参加したのも当然です。
ビルとテッドの子供は男じゃなかった?年齢はもう少し上では?との疑問も湧きますが…。
前2作を知らなくとも楽しめる、ナンセンスSFコメディですが、無限に小ネタが存在するので可能であればぜひ、前2作もご覧下さい。
SF的設定とナンセンスな世界観がより発展
第1作『ビルとテッドの大冒険』は、基本的には1つの時間の流れで繰り広げられる、タイムトラベルのドタバタを描く作品でした。
第2作『ビルとテッドの地獄旅行』はそれに死後の世界を加え、ナンセンスな笑いを加えます。
そして第3作は、その2つの要素をさらに発展。前2作のタイムトラベルの矛盾も、並行世界と考えれば解決です。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)シリーズより単純な話、とされた前2作ですが、本作でより深い設定を持つタイムトラベル物に成長しました。
そんな難しい理屈は、おバカなビルとテッドに不要、ノリと勢いだけで立ち向かいます。過去と未来の自分が責任をなすりつけ合う姿に、このジャンルの面白さが再確認できます。
キアヌ・リーブスにアレックス・ウィンター、クリス・マシソンとエド・ソロモンは、自分たちの愛しファンが熱望するシリーズ3作目を、以前から準備していました。
彼らの努力の積み重ねは言うまでもありません。しかしシリーズに初めて参加した、監督のディーン・パリソットの功績も大きなものがあります。
『ギャラクシー・クエスト』で、弱者が強者に立ち向かう姿と、何かをオタク的に妄信していた者が報われる姿を、前向きなコメディとして描いたディーン・パリソット。
愚かさを受け入れることで人は強くなる、そのテーマが本作に蘇ったようです。結果の報いを受け入れる、批判を潔く認めるとの意味を持つ、本作原題の言葉「Face the Music」。
なるほど製作陣がディーン・パリソットを監督に招く訳です。
まとめ
シリーズのファンを満足させる作品『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』は、同時に愚か者や弱者への優しさに満ちた作品です。
長いブランク後に製作された本作は、ビルとテッドの中年の危機を描いた物になりました。
子供たちが前作のラストのまま男の子であれば、親と同じ性格でも、親より賢くても、親よりおバカでも面白い話にならない、と考えたクリス・マシソンとエド・ソロモン。
そこで子供を女の子に変えると決断したのです。ファン一番の疑問の答えはこれです。
ビルとテッド全く同じ資質を備えながら、同時に異なる面を持つ娘を得たことで、本作は前2作の繰り返しやパロディにならずに済んだ、と言えるでしょう。
2人の娘を演じたサマラ・ウィービングとブリジット・ランディ=ペイン。演技力のある2人が選ばれたことで、コメディとしても家族ドラマとしても成立した物語になりました。
とはいえこの2人、ビルとテッドの娘と聞いて納得の容姿です。
関係者に愛されたシリーズだけに、新たに加わる監督・俳優も慎重に適した人物を選び、成功を収めた作品と呼んで間違いありません。