『クローバーフィールド/HAKAISHA』(2008)から始まった「クローバーフィールド」シリーズの第二作目。
怪獣パニックのSF映画でありながら、POVの手法で撮影された前作『クローバーフィールド/HAKAISHA』の続編でありながら、直接的な物語の続きではない、SFサスペンス映画『10クローバーフィールド・レーン』。
演出を手掛けるのは、新進気鋭のダン・トラクテンンバーグ。そして脚本には、『セッション』(2014)や『ラ・ラ・ランド』(2016)のデイミアン・チャゼルが関わっています。
『夢を生きた男/ザ・ベーブ』(1991)のジョン・グッドマン、『スイス・アーミー・マン』(2016年)のメアリー・エリザベス・ウィンステッド、『ショート・ターム』(2009年)のジョン・ギャラガー・Jrが共演。
外は汚染されていると教えられ軟禁された男女が、疑心暗鬼になり、脱出を目指す様が描かれています。
映画『10クローバーフィールド・レーン』の作品情報
【公開】
2016年(アメリカ映画)
【原題】
10 Cloverfield Lane
【監督】
ダン・トラクテンバーグ
【キャスト】
ジョン・グッドマン、メアリー・エリザベス・ウィンステッド、ジョン・ギャラガー・Jr
【作品概要】
「クローバーフィールド」シリーズの第二作品目。新進気鋭の監督ダン・トラクテンバーグが演出の指揮をとり、『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼルが、脚本として参加したSFサスペンス作品。また製作総指揮に『クローバーフィールド HAKAISHA』のマット・リーブスが参戦。
映画『10クローバーフィールド・レーン』のあらすじとネタバレ
ミシェルは、婚約者のベンと同棲していました。しかし、電話で口論になり、ミシェルは酒を飲みます。そして、婚約指輪を置いて、車を走らせました。夜道を駆けるミシェルは、車と接触し、意識を無くします。
ミシェルが目を覚ますと、そこは見知らぬ部屋でした。金具に身体を縛られ、たぐり寄せた携帯も圏外の状態です。
そこに、初老の男ハワードが、食糧を持って現れます。ハワードは、ミシェルに松葉杖を渡します。ミシェルは脱出するため、ハワードを攻撃しますが、返り討ちに遭います。
ハワードはミシェルに、外の状況を説明します。核か、化学兵器か、はたまた宇宙人の襲来か、なんにせよ、外は危険な状態になり、それを救ったと語ります。ミシェルは、監禁の口実に嘘をついているのではないかと疑います。
ミシェルは部屋を出て、地下シェルターの中を探索します。そこには、若い男性のエメットがいました。エメットもまた、外からの攻撃のことを口にします。
ハワードは、ミシェルにハワードを紹介し、部屋の使い方を教えます。豚小屋には、豚の死体があり、外の攻撃に触れると死んでしまうと説明します。
ミシェルは、ハワードのことが信じられず、鍵を盗み出して脱出することを計画します。部屋の外からは、わずかに車の走るような音があり、ハワードの話す攻撃の存在を信じられませんでした。
ミシェルが鍵を盗んで、二重のドアの一つ目を開くと、外には車が見えました。車から、一人の女性が降り、扉を開けるよう、ミシェルに頼みます。
その女性は、顔が血にまみれており、ミシェルは躊躇います。女性の要求は、徐々に過激になっていき、ついには扉を頭で叩きつけます。ミシェルは、外に出ることを止めました。
戻ったミシェルに、ハワードは外気に触れている可能性を考慮し、シャワーを勧めます。ハワードは、ミシェルと事故になった原因は自分にあると認めます。
そしてそれは、攻撃に気付いてシェルターに戻ろうと焦っていたからでした。ミシェルは、ハワードの言う攻撃のことを、信じるようにしました。
ハワードは、自身の娘の話を、ミシェルにしていました。娘のメーガンは、ミシェルと同じくらいの年齢であり、離婚した妻に引き取られました。
地下シェルターには、メーガンが遊んだおもちゃが、たくさんありました。ハワードは、ミシェルに娘の写真を見せます。
ある日、シェルターの機械が故障しました。ミシェルは、換気ダクトを通り、機械の再起動を行います。その途中、天窓に「助けて」と書かれた文字がありました。
その文字は、内側から書かれた文字でした。ミシェルは再び、ハワードを疑い始めます。
映画『10クローバーフィールド・レーン』の感想と評価
映画『10クローバーフィールド・レーン』は、「クローバーフィールド」シリーズでありながら、前作、『クローバーフィールド/HAKAISHA』の物語とは直接的な繋がりがないところが特徴。
しかしながら、ひとつの作品としてもエンターテイメント性に富んでおり、「なんだ、なんだ」と引き込まれ、疑心暗鬼渦巻く閉塞的空間のサスペンスを楽しむことができます。
ストーリーの後半、前作同様怪獣が登場しますが、それに関する説明もなく、「クローバーフィールド」シリーズの全容が捉えられません。
怪獣の出現、という共通点から、同じ事象を別角度から描いたと考えられます。宇宙人らしい飛行物体が現れた点から、地球外生命であると推測できますが、目的や正体などは、謎のままです。
前作では家の中から始まり、外でのパニックを経て、恋人の家を目指していました。本作は、車で走らせているところから、地下室でのパニック、そして外を目指すという物語であり、前作とは反対に描かれ
ています。
前作からの繋がりとして、怪獣の出現という事象を別角度から描いているだけでなく、劇中の展開を、全く非対称的に描いているのです。
これにより、「クローバーフィールド」シリーズの世界は、”どういうパターンを辿っても恐怖を避けられない”という恐怖に溢れました。
また、家の中の恐怖ハワードの、サイコパス殺人鬼としての存在感は、怪獣以上のものでした。
過去に若い女性を軟禁していた描写から、ハワードは、助けを求め脱出した女性を殺し、塩化酢酸で溶かした、サイコパスであることがうかがえます。
ハワードが語る外の状況が、閉じ込めておくためのものではないかと疑うような展開は、どちらが正解かが分からなくなることで、没入感を深めています。
まとめ
「クローバーフィールド」シリーズの第二作目である映画『10クローバーフィールド・レーン』。
怪獣が現れた外の世界の恐怖のみならず、家の中で人間同士が疑心暗鬼になっていく様は、見応えのある緊張感でした。
自分を軟禁したサイコパスか否か、信じられない要素が一つでもあると、その人物が語っていたことが全て嘘だと決めつける展開は、前作同様、人間同士の分断を描いていると言えます。
一見、『クローバーフィールド/HAKAISHA』とは関係の無い物語に見えますが、怪獣の存在や展開の非対称性は、わずかに繋がりを感じることができます。
謎の多い「クローバーフィールド」シリーズですが、家の中で閉じこもり怪獣を回避することが不可能であることを、本作品は描いています。
そして、「クローバーフィールド」シリーズの世界で、逃げ場はなくなったのです。