ロカルノ国際映画祭での反応に期待
『淵に立つ』の深田晃司監督と筒井真理子が再びタッグを組み、世界を目指すヒューマンストーリー『よこがお』。
2019年7月27日(土)に東京・テアトル新宿にて公開記念の舞台挨拶が行われました。
キャストの筒井真理子、市川実日子、池松壮亮、吹越満と、深田晃司監督が登壇した舞台挨拶の様子をお届けします。
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映画『よこがお』舞台挨拶リポート
映画『よこがお』の完成披露上映会が2019年7月27日に東京・テアトル新宿にて開催され、キャストの筒井真理子、市川実日子、池松壮亮、吹越満と、深田晃司監督が登壇しました。
多様なとらえ方ができる映画
自身も映画を見たときに、様々な思いが自身の中に湧き上がったという筒井は、そのことを振り返り「この映画はとても不思議な作品だと思っています」と語ります。
そして見た人それぞれに、様々な思いが生まれることを想像しつつ「今後、どんな風に育っていくのか楽しみ」と、今後の展開への期待を明かします。
一方、深田監督も筒井の意見に賛同し「映画って、監督が全部知っているかというと、実は違っていて親と子の関係みたいなもの。だから(映画を)作るだけが完成じゃなく、見てもらって感想を聞いてわかることがある」と、同じく今後どのような反応があるかに対し、興味を寄せられている様子を語ります。
さらに加えて近年日々報じられる様々な社会問題を考えさせられる事件に通じる物語であることを改めて感じ「今時流にフィットしている映画であることを実感しており、まさに今見てほしい映画だと思っています」と作品をアピールしました。
出演者からの感想
市川は映像を見て最初に思ったのが「台本より爽やかだった」と、微妙な表現で会場を沸かせながら「(脚本だけ読むと)もうちょっと重苦しく、心がえぐられる感じがしたんですが、(爽やかと感じたのは)きっと監督がネアカな方なんだからなんだろうと思って」とその真意を語ります。
また池松は「脚本からは、らせんの階段のように感情がぐるぐるとなっていて、それでいてキャラクターと一緒に階段を上っていけば、いつの間にエスカレータのように上っていける、そして連れて行かれる。そんな風に感じる、すごく作り込まれた素晴らしい作品でしたね」と脚本のファーストインプレッションを語ります。
一方で吹越は「とりあえずは酷い話だなと思いながら見ていました」などと発言、再び会場を沸かせながら「考えると、こういう映画がいっぱいあればいいなと思う」と、映画の内容を賞賛します。
また、合わせて吹越はこの映画の『よこがお』というタイトルの意味を検証。「人って会うと大体正面だけど、ちゃんと見てないときは横顔が見えるんです。で、横顔だけ見ると、その人の全部がよくわからない」という一つのポイントを語ります。
こういった出演者の感想の一方で監督は「結構辛い話だけど、最後に希望を感じたという人も多くいる」と、現在までに寄せられた感想の一部を挙げながら「自分の性格というよりは俳優さんの力かなと」と素敵な作品に仕上がる要因を作ってくれたキャスト陣へ、感謝の言葉を贈っていました。
脚本づくりから参加した筒井
今回の脚本は、執筆の段階で筒井も参加。プロットの段階で雑談などを行ったといい、様々なイメージを膨らませた様子をうかがわせます。
その一方で、筒井は相当に追い詰められた現場を回想。「今回もどこまで市子をいじめるのだろう、サディストだなと」とかなり追い込まれた様子を振り返ります。
他方、冒頭に筒井が見せるユニークなシーンに関して、深田監督が筒井に対し「女優としては世界初なんです、と言われたりしてそそのかされた」とうまくのせられたこともあったと語り、笑いを誘います。
そんなひと時に関して、深田監督は「脚本を書く前から筒井さんにOKもらえたということで“筒井さんならここまでなら演技してもらえるだろう”“なんでもやってもらえるだろう”という思いで、すごく幸せな脚本を書かせてもらった」と、筒井とのタッグが自身にとって非常に有意義であったことを振り返りました。
キャラクターを演じたポイント
市川、池松、吹越の3名に自身の役作りや現場の様子などがたずられると、市川は「途中から(役のことを)考えるのをやめたんです。(基子(市川の役名)は)つなげようとしても、その点がつながらないし、動物っぽいというか自分の欲しいものに真っすぐ行動できる人なのかな、と思って」と自身の演技への向き合い方を回想。
池松は「ある意味この物語世界に加担しないことで、一番(物語に)加担できるんじゃないか、という方法を選んだんです。普通映画って、自分の意識の中で描くので、割と台詞とか言動とか意識がつながっている。でも深田さんの作品って無自覚、無意識を抽出する。そんな印象の本だったので」とコメント、物語の登場人物という印象からは一線を置いた存在として生きた様子がうかがえます。
吹越は「珍しく僕としてはいい人の役だなと思って」などとコメントし笑いを誘いながら「だから変に“この人となんかあるんじゃないか”とか“このあとに別の形で関わってくるんじゃないか”と思われないようにすることを意識しました」とコメント、池松の考えに通ずる思いを感じさせる一方で、深田監督の演出が非常に繊細で、その現場にいられた喜びを振り返っていました。
映画『よこがお』の作品情報
【公開】
2019年(日本映画)
【監督】
深田晃司
【キャスト】
筒井真理子、市川実日子、池松壮亮、須藤蓮、小川未裕、吹越満
【作品概要】
ある事件をきっかけに「無実の加害者」となった女が、運命を受け入れ再び歩き続けるまでの絶望と希望の間で揺れ動くさまを描いたヒューマンドラマ。
深田監督『淵に立つ』に続き、女優の筒井真理子と再びタッグ。そのよこがおに惚れ込んだという深田監督が、彼女を想定して作り上げたという物語です。
映画『よこがお』のあらすじ
美容師の和道(池松壮亮)の店に、彼を指名してリサ(筒井真理子)と名乗る女性がやってきます。
離婚を機にリフレッシュしたく、髪を明るいブラウンに染めてほしいと和道に頼むリサ。
そんなリサに、和道は「以前お会いしましたか?見た顔だと…」とリサにたずねますが、リサは初めてだと答えます。
数日後、リサはゴミ捨て場で偶然を装って和道に会い、会話の中でそれとなく近づいていきます。
そして和道が仕事へ向かうのを確認すると、リサは近くの安アパートに向かいます。そこはリサの家。
その家の窓からは、和道の家の窓が見えていました。
リサという名は偽名で、本名は白川市子。彼女は訪問看護師の仕事に携わり、会社の戸塚(吹越満)との結婚を控えていました。
また市子は、介護先の娘である基子(市川実日子)らと、ごく親しい関係を続けていました。そのつながりが後々、複雑な事件を巻き起こすとも知らずに…。
まとめ
深田晃司監督によるオリジナル脚本で描くヒューマンドラマ『よこがお』。
7月27日(土)に東京テアトル新宿にて開催された、完成披露試写会の舞台挨拶の模様をお届けしました。
主演の筒井真理子と、共演の市川実日子、池松壮亮、吹越満と、メガホンをとった藤井道人監督が登壇、映画への思いや撮影への向き合い方などを語り、場内は盛り上がりました。
なお、映画は『第72回 ロカルノ国際映画祭』の国際コンペティション部門に正式出品されることが決定。映画祭は8月7日から開催され、深田監督と筒井が現地に出向く予定となっています。
筒井は「本当に歴史の深い映画祭で、商業のほうに偏らず、自由な精神を続けクオリティの高い作品を選んでくださる映画祭ということなので、本当に光栄に思います」と感想をコメントします。
深田監督も「憧れの映画祭で、自分が信頼を寄せている監督が、そこで第一線の世界の映画たちと向き合っているということを知っていたし、今回やっと私もそこの行けるので、すごく嬉しく思っています」と同じく出品の喜びを語っていました。
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