日本映画初の快挙!エジプトでも高評価
文壇のなかで、注目を浴び続けている作家中村文則のデビュー作を武正晴監督×村上虹郎主演で映画化した『銃』。
2019年3月2日から3月8日までエジプトで開催された第3回シャルム・エル・シェイクアジアン映画祭(SAFF)の長編コンペティション部門において最優秀脚本賞を受賞しました。
シャルム・エル・シェイクアジアン映画祭とは
映画と観光の融合をビジョンとして掲げた映画祭として、エジプト東部やシナイ半島南端にある砂漠の第一の国際的リゾート地のシャルム・エル・シェイクで開催されています。
エジプトの文化やメディア、映画界に携わる専門家たちにより構成されるヌーン文化芸術財団が主催し、エジプトの文化省、青少年スポーツ省、観光開発総局および南シナイ県が支援しています。
今回の映画祭において映画『銃』は日本映画として初の受賞を飾りました。
長編コンペティション部門の審査員長は、『香魂女 湖に生きる』で第43回ベルリン国際映画祭金熊賞受賞した中国の重鎮シェ・フェイ監督が務めています。
本年度の映画祭はアジア文化を中東全体に広めることをテーマにしていて、インドネシアやシリア、タイなどの作品とともに、日本からは『銃』が選出されました。
「アルベール・カミュの作品を読んだことのある人なら誰もが馴染み深いものになるでしょう。荒削りだが実験的な映画へのこだわりが感じられる」
このように評された映画『銃』。武正晴監督もコメントを発表しました。
映画大国、エジプトの映画祭で評価されたことに感激感謝です。
撮影スケジュールと重なり、シナイ半島での映画祭に参加できなかったのが残念でなりません。
中村文則さんの文学がグローバル的である事の証明だと素直に嬉しいです。脚本というよりも中村作品の脚色作業は自分にとっては責任重大だったので、賞の評価は力になります。
これを機会にアジア、アフリカにこの映画が拡がっていく事を願わないではいられません。
モノクロームの映像表現により人間を追及していくことで、日本映画独特な心理の内面を描き純文学性をもった質の高い作品となっています。
今回の受賞でさらに注目され、多くの人たちがより目にする映画となることでしょう。
映画『銃」の作品情報
【公開】
2018年(日本映画)
【監督】
武正晴
【原作】
中村文則
【企画・製作】
奥山和由
【キャスト】
村上虹郎、広瀬アリス、リリー・フランキー、日南響子、岡山天音、新垣里沙、後藤淳平(ジャルジャル)、中村有志、日向丈、片山萌美、寺十吾、サヘル・ローズ、山中秀樹
【作品概要】
中村文則の同名原作は、新潮新人賞を受賞した他、英訳版の『The Gun』が2016年の「ウォール・ストリート・ジャーナル」年間ベストミステリー10冊に選出されるなど、国内外から評価を受けた作品です。
主演は『武曲 MUKOKU』で第41回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞した村上虹郎。
ヒロインには広瀬アリス。快活な一方で、心の中に何らかの問題を抱えている女子大生・ヨシカワユウコを演じます。
そして、トオルを追いつめる刑事には、怪優リリー・フランキー。彼の独創的な発想と演技力が刑事という人物をより浮き彫りにし、主人公を追いつめる姿は、さらに本作を盛り上げる要素となっています。
そのほかにも日南響子、新垣里沙、岡山天音など、個性派俳優の面々が脇を固めています。
偶然銃を拾った主人公の西川トオルがその魅力に捉われ、徐々に銃に支配され狂気に満ちていく様を鮮烈に描く、ジャパニーズ・フィルムノワール。
映画『銃』のあらすじ
Ⓒ吉本興業
大学生の西川トオルは、雨の夜の河原で、ひとりの男の死体と共に放置されていた拳銃=COLT社の「LAWMAN MK Ⅲ 357 MAGNUM CTG」を手にし、それを自宅アパートに持ち帰りました。
まもなく、その銃は彼にとって、かけがえのない宝物のような存在になります。
悪友のケイスケに合コンに誘われたトオルは、欲求不満気味のケイスケとの「付き合い」から、その夜出逢った女と一夜のアヴァンチュールを楽しみます。
女の部屋でのセックスは、銃の存在によって高揚しているトオルにとって心地よいものでした。
翌朝、彼女の部屋で目覚めると、女はトーストを焼いていました。
カフェでバイトしているという女は、バイト先で分けてもらっているという豆で淹れたコーヒーとトーストで彼をもてなしました。
食べながらテレビを見ると、あの銃と関係する男の遺体が発見されたというニュースが目に飛び込んできます。
途端に気分が悪くなったトオルはトイレで嘔吐。
優しくしてくれた女を再び抱いたトオルは、その日以来、彼女を「トースト女」と頭の中で呼ぶようになり、セックスフレンドとして、度々性欲を吐き出すようになりました。
また、大学の学食で、以前も講義中に話しかけてきた美女ヨシカワユウコと再会したトオルは、彼女に興味を抱きますが、それ以上に銃の存在感がトオルの中で圧倒的な位置を占めるようになっていきます。
やがて、刑事の突然の訪問を契機に、精神的に追い込まれてしまったトオルは、ある決断を下しますが…。
まとめ
モノクロで創られた映像は、目鼻立ちのはっきりした広瀬アリスの顔をより引き立たせています。
また切れ長の目と通った鼻筋の村上虹郎の存在感をより際立たせて、リリー・フランキーの善とも悪ともつかない唯一無二の雰囲気をより強調しています。
その映像の美しさで観るものを魅了するのはもちろんのこと、原作の世界観を壊すことない脚本によって、シャルム・エル・シェイクアジアン映画祭において日本映画として初の最優秀脚本賞を受賞しています。
今回の受賞での武正晴監督のコメントのように、今回の受賞を機会に映画『銃』がアジアやアフリカに拡がっていくことを願います。
映画『銃』は現在全国公開中のほか、3月23日からは福岡県北九州市の小倉昭和館でも公開します。
ぜひお見逃しなく!