映画『ピストルライターの撃ち方』は2023年6月17日(土)より渋谷ユーロスペース他にて全国順次公開中!
2023年6月17日(土)より、渋谷ユーロスペースで劇場公開を迎えた映画『ピストルライターの撃ち方』。
再び原発事故が起こった地方を舞台に、ヤクザの下で除染作業員を運ぶチンピラ、チンピラの親友で刑務所帰りの男、出稼ぎ風俗嬢による共同体の再生と崩壊を描いた群像劇です。
このたび、2023年6月24日にユーロスペースにて映画上映後トークショーが開催され、本作を手がけた眞田康平監督、キャストの奥津裕也さんと中村有さんと小林リュージュさん、そして『菊とギロチン』『ラーゲリより愛を込めて』などで知られる瀬々敬久監督がゲスト登壇しました。
本記事では、同イベントの模様をお届けいたします。
CONTENTS
映画『ピストルライターの撃ち方』トークショー・リポート!
山田達也役:奥津裕也さん
念願の企画の実現と思わぬ“撮影被り”
トークショー序盤、自身の監督作を通じて奥津さんとは度々現場を共にしている瀬々監督は「お前は脇役向きの顔なんだよ」「昔の映画で例えるとしたら、諒役の中村くんが松田優作、マリ役の黒須さんが桃井かおりで、お前は原田芳雄なんだ」と、奥津さんが魅力的な役者であることをふまえた上で、本作で主演を務めたと聞いた際に驚いたことを明かしました。
同じく瀬々監督の作品に度々出演している小林さん曰く、奥津さん・中村さんを除いたほとんどのキャストがオーディションを通じて選ばれたとのこと。なお瀬々監督は小林さんについても「昔の映画のキャスティングでいえば、梅田役の君は石橋蓮司」と例え、それを聞いた小林さんは「いい役者さんばかりじゃないですか(笑)」と答えました。
工藤諒役:中村有さん
眞田監督は本作のキャスティングについて、10年以上の付き合いであり、役者として本当に好きな奥津さん・中村さんをメインに映画を撮りたいとずっと考えていたこと、自分たちで資金を集めたインディーズ映画で撮る以上は“好き放題”にやろうと決断したことを説明し、本作でついに念願の企画が実現できた喜びを露わにしました。
また『ピストルライターの撃ち方』の制作裏話として、実は本作の撮影は、奥津さんが収容所の捕虜役として出演していた瀬々監督の作品『ラーゲリより愛を込めて』(2022)の撮影と被っていたことを眞田監督が暴露。
梅田省吾役:小林リュージュさん
奥津さんは『ラーゲリより愛を込めて』撮影の体作りのために「ゆで卵しか食べていなかった」と告白。その体作りは『ピストルライターの撃ち方』で演じた主人公・達也のどこか心身のやつれた佇まいを演じる上でもプラスに反映されましたが、“撮影被り”を聞かされた瀬々監督は「ひどい人間だよ(笑)」と苦笑しながら返しました。
そしてQ&Aの時間にて、観客席にいたものの急遽登壇することとなった中村さんは、本作の撮影開始日の前日まで別の舞台作品の公演があり、その作品で演じた役は食事制限を要するものであったため、撮影開始日当日のコンディションは過酷だったことを告白。その日はメイクによって顔色を誤魔化したものの「メイクさんに怒られました」と苦労を語りました。
原発という“現実”に対する問いかけ
眞田康平監督
「本作を手がけるにあたって、過去の映画作品をイメージすることはあったのか」という瀬々監督からの質問に対し、眞田監督は「原発ジプシー」を描き、“原田芳雄つながり”の作品でもある映画『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』(1985、監督:森崎東)を挙げ、脚本に悩んでいた時に同作を観たことで「これだけやっているんだから、自分もやっていいんだ」と吹っ切れたと明かしました。
また瀬々監督は、かつて手がけたピンク映画『昭和群盗伝 月の砂漠』(1990、公開題『破廉恥舌戯テクニック』)についても言及。『ピストルライターの撃ち方』で二郎役を演じた佐野和宏さんも出演している同作で、自身も福島県出身のマラソン選手・円谷幸吉を通じて原発事故について描こうとしたことを語りました。
瀬々敬久監督
そして瀬々監督は、3.11以降の被災地へ訪れた際に「震災を機に、多くの若者が地元から離れてしまった」と地元の人々から聞いたこと、それ故に震災後も残り続けた人々の「地元を何とかしたい」という想いは非常に強いことに触れ、『ピストルライターの撃ち方』の魅力はその想いに基づいていると説明。
その想いに基づく現実に対する問いかけを通じて、実際に今存在する問題に切り結ぼうとする映画としての姿勢、3.11から12年経つ中でそうした映画を作ろうとする精神が素晴らしいと本作を評しました。
映画『ピストルライターの撃ち方』の作品情報
【公開】
2023年(日本映画)
【脚本・監督】
眞田康平
【キャスト】
奥津裕也、中村有、黒須杏樹、杉本凌士、小林リュージュ、曽我部洋士、柳谷一成、三原哲郎、木村龍、米本学仁、古川順、岡本恵美、伊藤ナツキ、橋野純平、竹下かおり、佐野和宏
【作品概要】
再び原発事故が起こった地方を舞台に、ヤクザの下で除染作業員を運ぶチンピラ、チンピラの親友で刑務所帰りの男、出稼ぎ風俗嬢による共同体の再生と崩壊を描いた群像劇。
オール宮城県ロケで撮影された本作を手がけたのは、東京藝術大学大学院・映像研究科修了作品『しんしんしん』(2011)が渋谷ユーロスペースはじめ全国10館で劇場公開された眞田康平。
瀬々敬久監督作品に多数出演し、自身も劇団「狼少年」を主宰する奥津裕也を主演に迎え、中村有、黒須杏樹の3人を中心に物語は描かれていく。また杉本凌士、小林リュージュ、柳谷一成、佐野和宏など実力派キャストが脇を固める。
映画『ピストルライターの撃ち方』のあらすじ
遠くない未来、地方で再び原発事故が起こった。しかしその隣町では一見変化のない生活が続いている。
ピストル型のライターで煙草に火をつける残念なチンピラの達也は、ヤクザの下で立入禁止区域の除染作業員をタコ部屋まで運ぶバンの運転手をしている。
そんな達也の下に、刑務所に入っていた親友の諒と出稼ぎ風俗嬢のマリが転がり込んできて、行き場の無い3人の共同生活が始まる。
達也はヤクザに取り入って、バラバラになっていく故郷や仲間をなんとか食い止めようと行動するが……。
まとめ
映画を手がけた眞田監督、奥津裕也さん・中村有さん・小林リュージュさんキャスト陣に加え、スペシャルゲストとして『菊とギロチン』『ラーゲリより愛を込めて』などで知られる瀬々敬久監督が登壇した『ピストルライターの撃ち方』上映後トークショーは、盛況の中で幕を閉じました。
2023年6月17日(土)から同月30日(金)まで上映されるユーロスペースでの劇場公開において、ついに2週目の上映へと突入した『ピストルライターの撃ち方』。1週目に引き続き、2週目も本作の監督・キャスト陣やゲストが登壇してのトークショーが連日開催予定です。
さらに、『ピストルライターの撃ち方』の京都シネマでの劇場公開の決定が発表。大阪の映画館での劇場公開の決定も近いなど、本作の全国公開はさらなる発展を続けていきます。
映画『ピストルライターの撃ち方』は2023年6月17日(土)より渋谷ユーロスペース他にて全国順次公開中!