山中さわお&オクイシュージの迷コンビぶり、そんな二人に親しみを見せる岡山の姿に、暖かさを見せた会場
大人気ロックバンド「the pillows」のデビュー30周年プロジェクトの一環として製作された、オクイシュージ監督の映画『王様になれ』。
2019年9月14日(土)に東京・シネマート新宿にて映画公開記念の舞台挨拶がおこなわれました。
主演を務めた岡山天音、監督のオクイシュージ、原案と映画の音楽を担当した「the pillows」の山中さわおが登壇した舞台挨拶の様子をお届けします。
映画『王様になれ』舞台挨拶リポート
映画『王様になれ』が公開され、2019年9月14日に東京・シネマート新宿にて舞台挨拶がおこなわれ、キャストの主演を務めた岡山天音と監督のオクイシュージ、原案と映画の音楽を担当した「the pillows」の山中さわおが登壇しました。
山中さわおは「怖い人」?
役柄的には本人役とはいえ、非常に厳しいキャラクターを演じていた山中。司会者からは「山中さんは怖い人なのでは?」という質問が。
すると山中は焦りながら「あんなには怒らないかな。どちらかというとネチネチいくタイプで」と返答。
これに対しオクイ監督は「怖い人ですよ。日常の8割は怒っています」などと話を焚き付けながらも「ドーン!と怒るようなシーンは、僕が(怒るように)言いました」とフォロー。
一方で「でもそうしたら、僕が想像していたより上からきた」と想像以上に感情が出た様子で、驚いたことを振り返り、笑いを誘います。
そんな山中とオクイ監督に挟まれるように立っていた岡山は、山中のファーストインプレッションについて「初めてお会いしたのは赤坂での(the pillowqの)ライブだったんですが、しょっぱなから本当に優しい方だなと」と好印象を抱いていた様子を回想します。
ミュージシャンの演技
劇中にはthe pillowsにゆかりのあるミュージシャンが多数出演。山中が直接ミュージシャンたちに直接コンタクトを取ってオファーしており、そのほとんどは二つ返事で出演を快諾していたことを明かします。
本編ではthe pillowsの30周年記念イベントを模したステージが映し出されており、様々なミュージシャンがプレイを披露。
特にオクイ監督はGLAYのTERUの歌唱が印象に残っていたことを明かし「本当に生で歌ってもらっていたんですが、何回も撮った中で、何回も本気で歌ってもらえたんです。本当に感動した」と振り返ります。
また、山中はストレイテナーの日向秀和の演技は、現場でもスタッフなどから絶賛を得ていたことを回想します。
そしてその役柄に関して「ガツンとブチ切れて、その後にチャーミングさが出る」と考えていたといい、そのキャラクターであれば日向が適任と思っていたと明かします。
これらミュージシャンの出演に関し岡山は「ずるいな、と思いましたね。本当に本職やられている人だけど、やっぱり(演技も)できるんだと。
モニターを見たら花を感じました。そこから切り返しでラーメン屋(の僕)を観たら『薄いな~』って…」などとジョークを交えながらも、ミュージシャンたちの演技に賞賛の声を贈っていました。
しかしそんな岡山に対して山中は、かつて今の岡山のようなヘアスタイルをしていたことを明かし、ルックス的にも似た感じであったことから、自分に似ていると感じていたことを吐露。
岡山は「恐縮ですね。ファンの皆さんの前でそういっていただけると…」と光栄に感じた様子を見せていました。
映画制作を決めた「鈍感力」
300曲以上というthe pillowsの楽曲から、劇中に使用する楽曲を選曲したのはオクイ監督。
the pillowsの楽曲については、特別企画でリリースした会場限定販売のカップリング曲まで覚えているというほどにその楽曲を知り尽くしているオクイ監督だけに山中は強い信頼を寄せ、選曲をすべてオクイ監督に任せたといいます。
そんな経緯で出来上がったこの作品に対して、岡山は「撮影が終わってもthe pillowsの曲を聴いているけど、改めてカッコいいバンドだなということを感じています」とコメント。
さらにそのバンドの節目に作られたこの映画で初主演という大役を任されたことを光栄に思っていることを明かしました。
一方山中は今回の映画が、ここまで完成度の高い仕上がりになるとは想像していなかったことを振り返る一方で、自分の強みは「鈍感力」であるとコメント。
映画を作るということに対して「鈍感力もあるから怖いもの知らず。だからできるはずだと決断しました」と、今回のプロジェクトを決断した時のことを回想。
そしてthe pillowsの30周年記念プロジェクトの第5弾として行われる予定となっている9月16日の神奈川・横浜アリーナのステージに向けて「鈍感力をもって横浜アリーナに立ちたいと思いました」と断言し、この日の舞台挨拶を締めくくりました。
映画『王様になれ』の作品情報
【公開】
2019年(日本映画)
【監督・脚本】
オクイシュージ
【原案・音楽】
山中さわお
【キャスト】
岡山天音、後東ようこ、岩井拳士朗、奥村佳恵、平田敦子、村杉蝉之介、野口かおる、オクイシュージ、岡田義徳、山中さわお
【作品概要】
ロックバンド「the pillows」結成30周年のアニバーサリーイヤープロジェクトの一つとして制作された長編映画。彼らの音楽が紡いできた世界観と、カメラマンを目指す青年が成長していく過程を重ね合わせ、心熱くなる青春の物語を描きます。
監督を務めたのは、演出家や俳優として活動し、本作では監督・脚本のみならず出演もこなしたオクイシュージ。本作が映画監督としてのデビュー作となります。
キャストには岡山天音、後東ようこ、岡田義徳らをはじめ、岩井拳士朗、奥村佳恵、平田敦子、村杉蝉之介らの個性派キャストが花を添えています。
さらにthe pillowsにゆかりのあるミュージシャンも多数出演しており、音楽ファンにもしっかりアピールする内容となっています。
映画『王様になれ』のあらすじ
カメラマン志望の祐介は、亡き父の影響で始めた写真にのめり込みプロを目指していましたが、カメラアシスタントとして怒られてばかり。夢は叶えたいものの、現実はあまりにも厳しく、祐介は苛立ちと焦りにさいなまれながら毎日を過ごしていました。
一方で生活費を稼ぐために、叔父の大将が営むラーメン屋でアルバイトをしていた祐介でしたが、そのラーメン屋である日、かつて大将が所属していた劇団のメンバーであるユカリを見かけた祐介は、一目で彼女に思いを寄せるようになっていました。
そんな中、ユカリがロックバンドthe pillowsに興味があることを知り、自分でもthe pillowsのライブに初めて足を運ぶことに。そこでユカリを見かけ、祐介は話をするきっかけを得ることになりました。
ユカリとの距離が近づくにつれて、the pillowsの魅力にもどっぷりはまっていく祐介。ところがある日、カメラの師匠から突然にアシスタントのクビ宣告を受けることに。
これからどうしようと悩む中、先日足を運んだライブでステージを撮影していたカメラマンのことが頭に浮かんだ祐介。その男性が虻川というカメラマンであることを知り、祐介はこれに最後のチャンスを掛けるべく、弟子入りを直談判し、なんとか仕事のチャンスをつかむことになります。
そして、わずかな可能性に必死に食らいつこうともがく祐介。また一方でそんな彼を応援しつつも、祐介には明かしていない自分の人生に不安を抱えるユカリ。それでも二人は未来に向かって、前に進み出していきます…。
まとめ
映画の初日舞台挨拶では、客席に映画の感想をたずねると、その問いに客は拍手で返すのが通例ではありますが、この日山中が感想をたずねると「良かったー!」などと大きな声で気持ちを返していたのが印象的でありました。
映画ならでは、音楽ならではといった通例というものは意外に多くあるようですが、この映画のように音楽と映画という異なるジャンルが結びついたとき、実は普段意識していないそういった行動に気づくことがあります。
一方で、この日フロアにいた映画のファンは、いつもの映画の初日舞台挨拶とは少し違う雰囲気に新鮮な空気を感じたのではないでしょうか。
作品作りの経緯や出来上がった作品に関してもそうですが、そういった何気ない解除の雰囲気からも、この作品は音楽と映像という関係に新たな風を吹き込んだともいえるでしょう。